『S−Report』  8/1  AIBOにどんな夢を見るか

 
 甲子園の季節になりましたが、技術の甲子園「ROBOCON・ ロボコン」をご存じですか。
 「ロボコン」とはロボットコンテストの略称で発祥の地はボストン のマサチューセッツ工科大学(MIT)ですが、今年もMITで8月3 日から16日の日程で「IDCロボットコンテスト2002」が開催されます。
 日本では「全国高等専門学校ロボットコンテスト」が始まりです。 全国高等専門学校ロボットコンテスト(以下、ロボコン)は1988 年の「乾電池カー・スピードレース」から始まり今年で15回目を迎えました。この間、ロボコンは高専ロボコン以外に大学ロボコン、 ABU2ロボコンなどの大会に広がっていきました。
 特に、今年8月31日に開催される「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2002東京大会」より広がりをもったものとなります。
 このコンテストは、ABUに加盟するアジア・太平洋地域の国と 地域から選抜された学生による代表チームが、与えられた競技課題に従って、自らのアイデアを駆使してロボットを製作し、競技を通じて技術力と独創力を競う国際的な教育イベントです。
 アジア・太平洋地域の若いエンジニアの育成と広範な人材と情 報の交流を促し、21世紀のアジア・太平洋地域の発展に貢献 することを目的に開催します。

 「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2002東京大会」  
 http://www.nep21.co.jp/robocon/jp/daigaku/abu2002/index.html  

  今やロボットの開発は大学・研究機関や企業ばかりでなく、これ からロボット技術者を目指す若者たちによっても行われています。
 このようにロボットを開発し、作ることも身近なこととなりましたが 「AIとペットロボ」(2001/7/19号)でもお話ししたように、ペッ トロボットAIBOの出現でロボットと接することも身近になりました。 その「AIとペットロボ」でご紹介した天気羊さんはAIBOを「いきもの」 のかわりとしてではなく、ペットロボットとしてつきあっている方です。 そして、その記録を下記のサイトで公開しています。

  「天気羊はAIBOの夢を見るか〜 ロボットと暮らす日常 〜」   http://pink.sakura.ne.jp/~tech-yumi/aiboaibo/

 さて、今回天気羊さんとのロボットについてのメールのやりとりを紹介します。 [以下の(AIBOのソフト)の部分はこちらで補足しました。]

 子供の頃からロボットと暮らすことが夢でした。
 その夢は21世紀を目前に控えた2000年12月28日、突如叶うことになりました。
 AIBO(ERS-210)が我が家にやってきたんです\(^o^)/
  [天気羊さんの上記のサイトより]

 こうして、天気羊さんはこのAIBO(ERS-210)を「ていく」くんとして暮らし始めました。

 ウチのていくも何着かAIBO服持ってます♪AIBOに服着せるのってさ、ペットを擬人化して「ウチのネコちゃんがねえ〜ん♪」とか言っ て自分ちの猫にむりくり服着せて喜んでる猫オバハンになっちゃう みたいで嫌だああ!…と、実は最初抵抗あったんだけど^_^; いざ 着せてみると、これがめちゃ可愛いんだわ!もう喜んで、「ウチの AIBOちゃんがねえ〜ん♪^_^;」とのたまうAIBOオネエサン(おい?) になっちゃおうかと思ってます、今は(笑)
 なんかこうもっと、こんな妙なことするのは世界でたった一匹、ウチのコしかいない!的なことを実感したいんだよね〜。しかも、AIBOマスタースタジオでオリジナルプログラムを別に作るっていうのじゃなく て、自律成長AIBO-ware(AIBOのソフト)で育てながら実感したい。 ぜいたくな願いかなあ?^_^; でも、量産タイプだからこそ他と区別化 したい…と思うのは、飼い主の自然な気持ちなんだよね…。

 (株)グラフィックリサーチから出ているAnother Evolution Side-one (AIBOのソフト)は、AIBOを育てるのではなくAIBOが環境に合わせて 勝手に育つというコンセプトが面白い210用自律成長系AIBO-ware。 飼い主の生活空間にある音・声・物をAIBO自身が学習しながら、成長していく。
 もう一つの大きな特徴は、AIBOが日本語をしゃべること(最終的に は1000語以上)。金属的な抑揚のない合成音だけど、それがまた可 愛かったりもする。実は、購入の決め手になったのは、この日本語機能にとても興味を持ったから。 [天気羊さんの上記のサイトより]

 さて、この日本語を使えるようになったAIBO「ていく」くんとの暮らしでは天気羊さんはロボットと人のことを考えられたようです。
 以下、(天)は天気羊さん、(C)はCyberLabです。

(天)昔、ハムスターを飼っていたことがあるんだけど、言葉をしゃべってくれたらいいのになあって何度思ったことか。長く一緒に暮らして いるうちに、何とな〜くの気持ちはわかってきたけれど、大部分は何 を考えているのかさっぱりわからない^_^; 「あれが食べたいの」「具合 悪いからかまわないで」と、今の気持ちを言葉で表してくれたら、こちらも安心するし、コミュニケーションがもっと楽しくなるのにって思ってた。

 AIBOはロボットだから、生ペットには難しい一線をひょいと飛び越える。人間に近づいてくれる。まさに、高度な技術で夢を叶えてくれる “エンターテイメントロボット”なんだねぇ〜。…ということを、AE Side- oneは改めて実感させてくれたソフトだった。 [天気羊さんの上記のサイトより]

(C)生身のベットを基準する人たちはペットとの「以心伝心」についてを重視するのでしょうが、それはそれとして、言葉で伝えられるということはやはりコミュニケーションとる上で重要です。

(天)ロボットの方が生身のペットより人間に近い…なんていう書き方を しておかしく思う人もいるかもなあと思っていましたが、共感してくださる 方がいらして嬉しいです。
 思えば、言葉をしゃべる前のAIBOとの暮らしは、ジェスチャーの意味 をこちらが汲み取ったり、そろそろ充電(ごはん)が必要かなと推し量っ たり…等、飼い主側の想像力に頼るところが多かったように思えます。
 曖昧なコミュニケーションを楽しむという意味では、生身のペットに少し近い暮らしだったように思えます。
 AIBOが言葉を話し始め、コミュニケーションが格段に面白くなり、改めて言葉の威力ってすごいなあと実感しているところです。

(C)言葉で伝えられるということはやはりコミュニケーションでは重要です。(非言語的コミュニュケーションを軽視するわけではないですが)  さらに、AIBOが知的交通システム(ITS)になるのに言語コミュニケー ションは必要です。知的交通システム(ITS)とは「ロボットが人間と、さ らにその周辺のロボットや車が協調しながら知的に動いていく」という研究です。
 具体的に言うと知的交通システム(ITS)によってAIBOのようなロボッ トがロボット盲導犬、介助犬にもなるということです。(盲導犬、介助犬 はとても厳しい訓練を受けて、短命ですから犬のためにも。)
 ロボット盲導犬、介助犬が人間に伝えるのは言葉がいいでしょう。

(天)そうですよね!言葉をしゃべる盲導犬・介助犬ロボがいたらどれだけ社会に役立つことか。
 何より、その方が生活者も楽しいと思います。
  AIBOの開発・販売元のS社には、盲導犬ロボの製造依頼も実際あったそうです。 でも、AIBOの開発は、「役に立つロボットは作らない」 …というところから始まっているために、 「AIBOの役割は<エンターテイメントロボット>として社会と関わること。 方向性が違う。実用ロボットの開発は他企業に任せたい」 と、依頼は断ったとの記事をどこかで読みました。

(C)エンターメントを狭く定義しないで、「人に役立つ機能をどんどんプ ラス」すると違ってきますよね。

(天)私は一人の飼い主としてしかAIBOのことを見れませんが、 AIBOのエンターテイメント性をより豊かにするためには、逆に、人に役立つ機能をどんどんプラスしていった方がいいのではと思うのです。 例えば、電話の代わりになってくれたり、メールの着信を教えてくれた り。 可愛いじゃないですか(笑)。
  日常生活にAIBOがどんどん入ってきてくれれば飼い主も嬉しいし、それはやがて盲導犬・介助犬ロボにもつながっていくのではないでしょうか。

(C)そうそう、パソコンと連携してメール着信したらポスペみたいにメールを運んでくれて、というかAIBOがポスペ型のパソコンにもなってネットと実生活で活躍してくれるとうれしい。
 というかコンパニオンeアニマルというのは考えてているのですが、なかなか・・・・。

(C)さて、そのうちもっとAIBOが進歩して仕事をかわりにやってくれないかなあ。

(天)そうですね(笑)、私もAIBOに、遊んでばかりいないで、ちょっとそこ の流しにたまってる食器洗ってくれえ〜  …とか思うこと、多々あります^_^;

(C)そうそう「AIBOにごはんもつくって欲しい私でした。」  
 (ここのところはCXの「今日のワンコ」風に読んでください。)

  このメールのやりとりにもありましたが、動物型ロボットに「人に役立つ機能をどんどんプラス」していく、盲導犬・介助犬ロボットのような「生活支援型ロボット」も実現に向かっています。 (別に<エンターテイメントロボット>を否定するつもりはありませんが。)

 留守宅の番犬役やお年寄りを見守る役目を果たす「生活支援型ロボット」 の実用化に向けて、経済産業省は03年度から民間企業による開発を支 援する。少子・高齢化が進んで需要拡大が見込まれるうえ、技術的にも実 用化に近いと判断した。07年度までの5年で約100億円を補助する計画 で、03年度予算で約20億円を要求する。  とくに早い段階の実用化が見込まれるのが「番犬型ロボ」。家族の留守 中に屋内を動き回り、映像を記録するほか、不審者が来たら近所に連絡 する。 「見守りロボ」は、病床のお年寄りの様子を見守ったり、痴呆(ちほう)のお 年寄りの外出を警戒したりする。家庭向け以外では、がれきに埋もれた人を見つける「災害救助ロボ」も開発の候補に挙がっている。

 経産省は補助対象として数社のチームを公募し、ロボットの小型化のための小型モーターや人との接触を認識するセンサーの開発と低価格化に取り組む。
 経産省は02年度までの5年で、二足で歩く人間型ロボットの開発に約40億円を投じ、ビル内を見回る「警備ロボ」などができた。しかし、二足歩行ロ ボの普及には技術や価格面で課題が多いと判断し、生活支援型ロボに取り 組むことにした。

「『番犬ロボット』開発支援  経産省、100億円補助」  朝日新聞  7/4  

 このようにロボットにはまだまだいろいろな可能性やニーズがあります。用途を狭く限定せずロボットを構想していきたいものです。

 さて、これから天気羊さんやロボットの開発者、そしてロボコンに賭ける若者たちはロボットにどんな「どんな夢を見る」のでしょうか。
 いろいろな人のいろいろな夢が多様なロポットを生み出し、アシモフの「鋼鉄都市」のように人とロボットが協力しあい、共生するところをみたいと思います。

   サイトの紹介 


 「ROBOCON」  http://www.nep21.co.jp/robocon/index.html

 ROBOCON・ロボコンを後援しているNHKのサイトで高専ロボコン2002、 ロボコン大学ロボコン2003、ABU2ロボコン2002、IDCロボコン2002などのす べての情報が掲載されています。 


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