この頃、原宿で修学旅行生を見かけます。みんな竹下通りを楽しんでいるようですね。修学旅行の定番といえば奈良ですが、 奈良と言えば大仏です。奈良時代にあんな大きな大仏をつくっ
た技術はたいしたものです。
奈良時代の大仏の作り方は百済から伝わったという「削り中子法」でした。
この方法では、まず、木材を組み立てて骨組をつくり、その外側に壁を塗るようにして鋳物砂と粘土の混合物で大仏の原型を つくります。この原型に鋳物砂を用いて繰り返し塗り固め、外型の厚みを50センチぐらいにした外型をつくり、その外型を畳一枚
ぐらいに分割し焼成しします。
外型を取り外した大仏の原型の表面を削り元の形に戻すと、大仏の原型と外型の間には削り取った分だけの隙間ができます。 この外型と大仏の原型の間に少しずつ鋳込んでいきます。
このようにして、3年かかって大仏本体を鋳造し、さらに表面を砥石で磨き、水銀に金をとかしたアマルガムを塗るのにさらに5 年かけて完成しました。さらに光背づくりに8年、大仏殿の建築に4年がかかってます。
参考文献「鋳造」(石野享著、産業技術センター昭和52発行)等
さて、このようにして建立された大仏は現在の大仏とはちょっと 違っていたようです。まず、855年に地震により首が落ちるという 事故があり、1180年には平重衡の南都焼き打ちにあい、1567年には三好・松永の戦いで炎上という数々の被害に遭いそのたびに修復されたためです。
で、開眼当時の大仏はどんな顔をしていたのかというと「大仏の顔は面長だった」そうです。
これは東大生産技術研究所の池内克史教授のグループが開眼 当時(1250年前)の東大寺の大仏の姿を、CGで再現。現在の顔よ りほっそりとした「うりざね」型の顔であった事が分かった。
「朝日新聞」 4/20
6月19日の「画像電子ミュージアム2002」で池内教授は「大仏プロジェクト−The Great Buddha Project」として3DCGによる大仏の電子復元について発表しました。
2002年度画像電子学会年次大会 創立30周年記念コンファレンス 画像電子ミュージアム2002
http://wwwsoc.nii.ac.jp/iieej/trans/kinen-con.html
さて、今回の「画像電子ミュージアム2002」では「デジタルミュージアム」(本レポートの2/7号「イベントを持って帰る−メディアのパラダイムシフト(2)」でご紹介)を国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館、
東京大学総合研究博物館等が多角的に展開している現状が発表されました。
関心のある方はそれぞれのサイトをご覧になったり、実際に一度お出かけになるといいいかもしれません。
国立民族学博物館 http://www.minpaku.ac.jp/
国立歴史民俗博物館 http://www.rekihaku.ac.jp/
東京大学総合研究博物館 http://www.um.u-tokyo.ac.jp/
また、デジタルミュージアムの現状ばかりでなく3DCG技術を使った新しい試みも紹介されていました。
まず、上記の大仏プロジェクト(The Great Buddha Project)では鎌倉の大仏や中国の涅槃仏なども3DCGで再現した事例を報告しました。
「Great Buddha Project -観察に基づく文化遺産のデジタル保存」 倉爪, 大石, 佐川, 西野, 池内
情報処理学会 人文科学とコンピュータシンポジウム2001 2001年12月
http://www.cvl.iis.u-tokyo.ac.jp/papers/all/0005.pdf
”The Great Buddha Project: Modelling Cultural Heritage through Observation”
http://www.cvl.iis.u-tokyo.ac.jp/papers/all/0031.pdf
*詳細は画像電子学会年次大会予稿集(既刊)や報告集をご覧ください。
さらに、八村広三郎立命館大学教授はモーションキャプチャ・プロジェク ト(モーションキャプチャによる舞踊の身体動作解析と記述)を報告して いました。
現在、音楽では楽譜が体系化されていますが、踊り、ダンスなど人間の動作に関しては体系化された記述法は確立されていないのですが、モー ションキャプチャ・プロジェクトではコンピュータを利用し舞踊符と名づけた人間の一連の動作をのをデジタルで記憶する方式を開発しました。
このモーションキャプチャ・プロジェクトは後継者不足等で継承が途絶えていく民族芸能(踊り・芝居)を記述し記録する手法の確立し、今後の民 族芸能(踊り・芝居)の継承を促進することを目指しています。
立命館大学アート・リサーチセンター http://www.arc.ritsumei.ac.jp/
*詳細は画像電子学会年次大会予稿集(既刊)や報告集をご覧ください。
いずれのプロジェクトも単なるデジタルによる保存ではなく、デジタル復元や民族芸能の継承のための試みであり、ホジティブアーカイブの方向に向 かっています。
「今までのデジタルアーカイブは失われつつある歴史・文化資産を保存する というバッシィブアーカイブでした。これからは現在も記録として残し、歴史・
文化資産もネットワーク化して地域活性化にも利用・活用するポジティブア ーカイブが必要になります。」 (6/6号「ポジティブアーカイブ−デジタルアーカイブ構想」)
このような試みが理工学者から提示されていることの意義は大きいと言え ます。
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