『S−Report』  6/13   パブリックビューイング − メディアのパラダイムシフト(5)  


 アジア初のワールドカップの予選も終わりに近づき、多くの方々がご覧になっていると思います。幸運にもチケットが手に入っ た方はともかく、ほとんどの方はテレビでご覧になっているでしょ うか。
 さて、ワールドカップの試合を会場やテレビ以外でもスポーツバーなどで仲間と観戦している人も多いようです。その他にも最近ではスタジアム等の公共の施設で大型映像でゲームを観戦 している方も多いようです。

 このように告知や集客をして特定の場所で試合を放映すること を「パブリックビューイング」といいます。
  「パブリックビューイング」 には無料で行うものと有料で興行として行うもの(これをJAWOC の用語では「クローズドサーキット」と称する)があります。

 W杯期間中に行われる予定の大画面による放映イベントには、特定の場所に人を集めて有料で実施する「クローズドサーキット」 と、JAWOCがFIFAの要請によりW杯開催地(札幌、宮城、茨城、 埼玉、横浜、新潟、静岡、大阪、神戸、大分)にて無料で行う「パブ リック・ビューイング」の2種類がある(※国立競技場で行われるクローズドサーキットのイベントの名称も「2002FIFAワールドカップ (TM)パブリック・ビューイング・イン・東京」と「パブリック・ビューイ ング」の呼称が使われている)。スクリーンはそれぞれスタジアム常設のものから、車載形まで様々だが、グラウンド全体を1つのレ ンズでとらえ、3つのカメラに分割し、再びそれを連結して横長の広 大な一枚の画像として再現する高精細超大画面映像システム「メガビジョン」による放映も注目を浴びている。

「W杯放映イベントについて」スポーツナビ  http://www.sportsnavi.com/column/article/ZZZ0OAJUW0D.html

 今回のワールドカップではこの「パブリックビューイング」をめぐっ てJAWOC、FIFA等といろいろと問題が起きているようです。 福島県では  試合会場には行けなくてもファン同士で楽しもうと、県内でも各地 でさまざまな準備が進んできた。「みんなで集まり、映像を通じて観戦、応援を」という計画も多かった。ところが、そう簡単に事は運ばなかった。各地で「みんなで応援」の形式は中止を余儀なくされた。 W杯の日本組織委員会(JAWOC)が「告知や集客をして特定の 場所で試合を放映する」ことを意味する、いわゆる「パブリックビュ ーイング」について、実施するのは国内で試合が行われる10の自治体だけ、と決めたからだ。
 かみ砕くと、10自治体以外の本県などでは、FIFA(国際サッカー連盟)の承認がない限り、事前に案内し、ファンを集め、大型ビジョ ンなどを設置して大勢で観戦することはできない、ということになる。 日本組織委員会は「国内の放送権利者と調整した結果」とし「期間 中は(FIFAの承認を受けない放映については)厳しい取り締まりが 行われることになっている」とさえ言い切っている。 「好きな者同士で応援するだけなのに」「どうして待ったが掛かるの」 釈然としない、といった不満の声が各地で上がった。FIFAに承認を 求める道は残されている、とはいうものの、実現するには多額の費用も伴うようで、事実上、門戸は閉ざされた。

  「W杯 映像観戦の門戸拡大を」福島民報 05月04日 高橋雅行
   http://www.fukushima-minpo.co.jp/news/kennai/20020504/ronsetu.html

 問題は日本組織委員会(JAWOC)がワールドカップの国内テレビ放映権との兼ね合いで「パブリックビューイング」を試合を開催する 10自治体以外には認めないことにあります。
 この場合、法的にはFIFAが認めないクローズドサーキット型の「パ ブリックビューイング」で主催者が入場料収入を取るならFIFAの「興行権」に抵触し、「告知や集客をして特定の場所でデレビ放送をFIF Aの許可無くそのまま放送して「パブリックビューイング」を行えば国 内の放送権利者の「ビデオ化権」に抵触する点です。

 しかし、一般的に「食堂でテレビを見せていること」をテレビ放映権の侵害として法的に解釈できないことや、FIFAの許可無くテレビ放映しているスポーツバー等に「厳しい取り締まりが行われ」ていないこ とを見ると、やはり「釈然としない」。
 このように「パブリックビューイング」については法的問題を始めとしていろいろと問題がありますが、「パブリックビューイング」はこれから ますます重要になってきます。
 試合会場には行けなくてもファン同士で楽しむために人と一緒に行 ける場所としての「パブリックビューイング」の意味を考え直すことが必要です。

 多チャンネルテレビやネット配信によっていつでも見られる環境が整いつつあります。しかし、だからといって多チャンネルテレビやストリーミングネット配信が優勢になると考えるのは短絡的です。
 そういう時代だからこそ、「人と一緒にみる」ことが重要になります。 これからのメディアを考える場合にこの点を配慮しなくてはならない のではないでしょうか。

 最後にある人からこのようなメールを頂きました。

 それにしても、今日もチケットは、手に入りませんでした。
 きっと、パソコンとか使って、一気に電話掛け捲ってる人たちがいるの だろうなぁ。
 うらやましいなぁ。
 でも、実は、サッカーはTVで観るのが一番だと思っている私です。
 なんといっても、アットホーム。 家族が一丸となれるのです。
 そして、ハイライトまで観れるのです。 強がりかもしれないけどね。
 さて、12番目の日本代表選手のみなさん、家族や友達、仲間と日本代表チームを応援しください。

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  「Sports Graphic Number」(文藝春秋)のサイト

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   ノンフィクション・ライター 中田潤のウェブサイ



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