古い映画には今では見ることが出来ないものも多くありますね。
東京国立近代美術館フィルムセンターにはこうした古い映画も含めて年間200本近い映画とその関係資料を収集・保存しいます。このような活動を「フィルム・アーカイブ(ス)」といい、現在はフィルムをデジタル化して保存することがあります。
東京国立近代美術館フィルムセンター http://www.momat.go.jp/FC/fc.html
このような資料をデジタル化して保存する試みをデジタルアーカイブといいます。デジタルアーカイブとは音楽、パフォーマンス、演劇、映画、アート、建築から映像資料、文化財情報や学術研究資料までをデジタル化して保存しデータベースとして構築し、閲覧できるようにすることです。
まだ、「デジタルアーカイブ」の認知度は低いです。「デジタルア ーカイブ白書2001」(デジタル・アーカイブ構想推進協議会、以 下「JDAA」)によると「デジタルアーカイブ」の認知度はミュージア
ムや図書館、自治体はともかく、マスコミの新聞・通信社・出版系 でも58.3%でテレビ・ラジオ系では54.5%。です。
しかし、一方では「博物館・美術館の89.2%がデジタルアーカイブ に関心を持ち、既に557館が着手」しており(「デジタルアーカイブ 白書2001」)、企業や自治体が積極的にデジタルアーカイブを推進しています。
このような動きの中で「デジタルアーカイブ構想」が生まれました。
「デジタルアーカイブ構想」とは保存を目的とした「デジタルアーカイ ブ」にとどまらず、保存以外の目的をもって「デジタルアーカイブ」を推進することです。
このために1996年にJDAA デジタル・アーカイブ構想推進協議会が設立されました。JDAAは下記の目的で広く「地域における普 及啓発支援などに加え、特に白書作成の過程で接点を持った諸分野組織との交流を継続し、『情報センター』構築に必須な協力関係
を推進」しています。
長年にわたって人類が創造し、蓄積してきた文化遺産は、人類共 有の貴重な“財産”です。これらの“文化資産”又は“文化財”そのも のを修復・保存するとともに、“情報”として蓄積・整備して、次の世代に正しく継承することは、人類共通の重要な課題であります。
JDAA http://www.jdaa.gr.jp/
「デジタルアーカイブ白書2001」の一部はJDAAのサイトに「デジタ ルアーカイブ」されており、また、白書はオンデマンド方式でブックに
よる提供(有料)がされています。 http://www.jdaa.gr.jp/hakusho/index.html
さて、それぞれの地域でデジタルアーカイブ化構想に基づいていろ いろなプロジェクトが展開されていますが、重要な事例をふたつ紹介し ます。
ひとつは、岐阜県の「NPO法人地域資料情報化コンソーシアム」の活動です。
この「地域資料情報化コンソーシアム」は多くのデジタルアーカイブ 化構想のプロジェクトがデジタルアーカイブをひとつのプロジェクトにとどめているとは異なって、現状の活動や施設をネットワーク化して全体でデジタルアーカイブを行い、まちづくり推進や観光・文化産業
の活性化を行うおうとしている点です。
地域資料情報化コンソーシアム
1.市町村、施設の情報化(デジタル・アーカイブ化等)の支援
2.博物館等の資料の情報化(デジタル・アーカイブ化等)の支援
3.市域資料の学校・生涯学習施設等へ提供・利用の推進支援
博物館の展示会や市町村の資料をインターネット、CD やビデオで紹 介します。岐阜県内の博物館等各施設の展示物を岐阜県内の学校 や施設で展示会等に参加できなかった人々や、児童・生徒が見られるように、ビデオテープ、CD−ROMを製作・提供しています。
4.インターネット等を使い、市町村等の地域情報の流通支援
県内の各市町村の生活・文化・芸術・観光・教育・産業・自然等の情 報をコンソーシアムのサーバーで蓄積・管理(または市町村等のサーバーとリンク)し、インターネットで利用できるようにします。
5.「デジタル・アーカイブス」コンクール(県民パソコン作品コンクール)
幼、小、中、高校生から成人までの県民参加のパソコン作品コンクー ル(「デジタル・アーカイブス」コンクール)を開催し、地域の情報化の推 進を支援します。
6.情報教育資料の情報化研修の支援
「特定非営利活動法人 地域資料情報化コンソーシアム」(一部略)
http://www.gijodai.ac.jp/circ/da/d_1.pdf
もうひとつは山形県マルチメディア開発推進協議会の「山形デジタル映像アーカイブプロジェクト」です。
この「山形デジタル映像アーカイブプロジェクト」は他のデジタル・アー カイブ化構想のプロジェクトと同様に「映像による歴史と文化の継承」を目的のひとつとしていますが、違う点は「今を映像として残すこと」とを目的に加えたことと、プロジェクトを県民参加の運動として取り組むために
山形映像発掘探検隊を創設したことです。
詳細は「山形を未来に伝える山形デジタル映像アーカイブ
プロジェクトとは」 を参考にしてください。
http://www.archive.gr.jp/about_archi.shtml
時間をはじめ、制約の多いテレビ番組ではやむを得ないかも知れませ んが、ノイズというか、テレビが切り捨てていたものにもっと目を向けていきたいと考えています。そのために、探検隊ではテレビの「落穂拾い」と
いうか、マスメディアとは異なる視点で映像制作を行う方法を模索しています。取材や編集も素材にあまり手を加えずまとめていくつもりです。ま た、過去を再現するのではなく、今現在の記録保存に焦点を当て、私的
な情景を大切にしていきたいと思います。十年あるいはもっと先になるかもしれませんが、記録した映像の断片から生活に根ざした文化・風習の 手がかりが読み取れることでしょう。
「探検隊の使命は発掘とともに、今を映像として残すこと」 赤坂憲雄 民俗学者・山形映像発掘探検隊隊長
http://www.archive.gr.jp/archives_n.shtml
歴史・文化資産を単なるデジタルで保存・蓄積するばかりでなく諸活動や施設をネットワーク化して地域活性化に利用・活用するという岐阜県のNPO法人地域資料情報化コンソーシアムの方向と、歴史・文化資産ばか
りでなく「今を映像として残すこと」を目指す「山形デジタル映像アーカイブ プロジェクト」の方向はこれからのデジタルアーカイブ化構想の重要な指針
となると考えられます。
今までのデジタルアーカイブは失われつつある歴史・文化資産を保存するというパッシブアーカイブでした。これからは現在も記録として残し、歴史・文化資産もネットワーク化して地域活性化にも利用・活用するポジティ
ブアーカイブが必要になります。
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