『S−Report』  5/16号  オープン・ドア


 陽気に誘われて谷中を散歩しました。谷中は静かでいい佇まいでした。その後に谷中のギャラリー"ART SPACE GENT"で開かれた「越前漆器デザイン展」におじゃましました。

  「越前漆器デザイン展」は越前伝統開発研究会(オープン・ドア) が開催している展示会です。

 越前伝統開発研究会(オープン・ドア)は、福井県内(越前)の伝統的技術を有した、職人と商人の協働プロジェクトとして発足 しました。
 越前の伝統技術は、千四百年以上の歴史に培われ日本の文化を代表する技術が伝承されています。しかもその技術は、時代に対応した商品に支えられてきました。 こうした技術と歴史の文化遺産を、漆器・和紙・織物・眼鏡など 異業種と異業種の融合を図り共に新しいコミュニケーションの場を築いていくことを目的として活動しています。 特に、モノづくり集団と使い手との対話から生まれていくコミュニケーションを大切にしながら、新たなライフスタイルや価値創造 を目指します。
 具体的には、モノ・コト・ヒト・技術・情報・場所の交流関係を大切にし、開かれた技術開発と研鑽を積み重ねてゆきたいと考え ています。これは、私たちの自己創造と自己改革の積極的なチャレンジとして、オープン・マインドなモノとコトの関係やヒトの関係、あるいは生活関係・場所関係をつくる自立的で新しい伝統 開発プロジェクトと考えています。
 「趣旨説明」越前伝統開発研究会(オープン・ドア)   http://www.makieshi.com/index.html

 「越前漆器デザイン展」はその越前伝統開発研究会(オープン・ ドア)が「越前漆器のつくり手とそのつかい手がコミュニケーションを図り、一緒に創り上げた商品と新たなライフスタイルの提案を 企画・展示します。」 越前伝統開発研究会(オープン・ドア)

 1/31号の「有田焼のインパネ」でもお話ししましたが、伝統工芸の 関係者がマーケットインの考えに立っていることはまれです。この 越前漆器デザイン展がすばらしいのは伝統工芸の関係者がつか い手の意見をこのように自ら把握しようとしているところです。

 しかし、これは言うは易く行い難しで、越前伝統開発研究会の代表である松田祐明さん(松田蒔絵工房)は後日メールでこう語ってくれています。

 私たちのグループは、やはり作り手の顔が見えなければ、販売に繋がらないのでは?という疑問から東京でのお客様の生の声を聞こうと言うことになり始めまし た。
 私自身は7〜8年前から始めていますが、やはり波に乗るのには 5年くらい掛かりました。
 正直、言えることは、作り手が思い切って出れないのは、まだ、仕事があるからだと思います。
 仕事が減ってきても、単価が安くなってもまだ仕事があるし、ひょっとして景気が良くなればまた戻るかも知れないという甘さがあると思 います。

 伝統工芸というと伝統手法を守ることに重点がおかれていますが、 越前伝統開発研究会では伝統にとらわれず、新しい越前漆器・紙器等を作っています。この「越前漆器デザイン展」でも斬新なデザインのものが展示されていました。
 このような新しいデザインのためにプラスチック素材もたくさん使われていました。現在でも漆器の木地(塗る前の器)にはプラスチックが使われていますが、漆器の木地を金型でプラスチック成形もしている 蓑輪久範さん(蓑輪産業)はプラスチックで木地を作ることの難しさをメールでこう語ってくれています。

 ずっと、気になっていたんですが、やっぱり金型は、バリがでないことにこしたことはないのですが、いろんな意味を含めて今の金型の精度で満足していると言うことではないでしょうか。ほんとうは、もっと貪欲にその辺も追求していかないとだめなのでしょうが、今のところはそれでやっていくつもりです。

 このように越前伝統開発研究会の皆さんは伝統工芸の現状に甘んじず新しいチャレンジをしています。

 さて、越前漆器デザイン展ではもちろん漆器や紙器もよかったですが、 越前の産地の海の幸、山の幸がいっぱいで・・・そして、何よりも越前伝 統開発研究会の皆さんのもてなしの心に感動しました。

 最後に長田和也さん(長田製紙所)のメールを引用したいと思います。

福井の春もたけなわ、そろそろうちの山にもたけのこが顔を出す季節 になりました。去年は不作であまりたくさん取れなかったのですが多分 今年は期待できそうです。実はまだやっていないことですが朝とったた けのこを皮ごと炭火で焼こうと考えています。今度の日曜日ぐらいに出来るかな・・・よだれ

  紙はなかなか売れず、懐は寒いですがこんなことを考えているとなんと なく豊かな気持ちになります。昨日TV(NHK-BS)でみたスローライフ? と言う考え方になごんでしまいましたがもしかしてこんなことだったのですね。ぜひ機会があればこちらにも来てください。

 長田和也さんの言う「スローライフ?と言う考え方」は4/4号の「冬のスイカ、月のリズム」に書いたような「自分の身近なところで自分の体と自然のリズムと向き合うことにつながり、このことから新たな越前伝統工芸が生まれてきたらさらにすばらしいことです。

 オープン・ドア!!

   イベント情報



 
越前伝統開発研究会の松田祐明さんからの福井県鯖江市河和田町で開かれる「蛍を聴く会」のご紹介です。

 「蛍を聴く会」

  6月12日(水)〜6月16日(日) PM5:00〜PM11:00

 できれば、浴衣できていただけるといいなぁ。と思います。
 まず、松田蒔絵工房(有)に来て頂き、そこから、近辺の蛍を見れる場所やその他の工房&ショップ(4件程度)を案内した地図をお渡しします。
  また、県外からのお客様でホテルまでお送りして欲しい方は、メンバーがお送りいたします。

 予約制で会食(一人¥5,000)も受付中です。

 詳しくはこちらです。  http://www.makieshi.com/index.html



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