『S−Report』  3/28   ローカル・フリーペーパー − メディアのパラダイムシフト(4)


  かつて、北海道の足寄町には「とかち新聞」という新聞がありました。この「とかち新聞」は現在帯広市にある十勝毎日新聞とは別の新聞です。
  「とかち新聞」を発行していた松山明翁は東京や札幌での新聞社勤務を経て足寄でたった一人で記事を書き、活字を拾い、 印刷してこの新聞を発行していました。一人ではなく家計をささえるために妻は工事現場で働き、子供たちも協力したそうです。 この「とかち新聞」は松山明翁が亡くなって廃刊となりました。 「とかち新聞」に限らず、地方新聞よりローカルな地方紙は年々衰退しています。

 北海道北見市で89年続いた日刊の夕刊紙「北見新聞」が昨年11月2日付で突然廃刊になりました。理由は

 広告収入と部数減が経営を悪化させた。市内全戸に無料で配 られているフリーペーパー「経済の伝書鳩」の存在も無視できない、と多くの関係者は指摘する。
 地域情報のほか、一般ニュースや求人情報などを掲載しているこのフリーペーパーに、地方紙にとって「ドル箱」の求人広告を奪われ、折り込み広告も激減したという。
 徳本社長も「このことが経営環境の悪化に拍車をかけた」と話す。

「無念さにじむコラム」  http://mytown.asahi.com/hokkaido/news02.asp?c=5&kiji=372 

 この北見市のフリーペーパー「経済の伝書鳩」は株式会社伝書鳩が北見市と網走市など近隣2市6町に配布しています。

1.全国唯一の日刊情報フリーペーパー「経済の伝書鳩」を発行

 どの店がどんな売り出しをするのか。自分と同じ生活圏内にはどんな人達が、どんな考えや活動をしているのか。或いは興味深 いイベントが行われていないか、など、地域の人や文化、環境や経済の“今”を細やかに取材し、商業広告をも含めた生活情報を タイムリーに毎日紹介します。

2.“全世帯から部分指定エリアまで宅配”独自の配達システム事業

 情報紙やチラシ、サンプルなどの生活・経済情報を、オホーツクの2市3町、約7万1千世帯に、200〜300件を1エリアとして部分指 定エリアから全世帯まで、毎日(日曜日除く)宅配を実現した独自の配達システム。

3.北見市・網走市・紋別市・遠軽町に設置した光情報伝達システム

 屋外文字・映像掲示板により各種イベントや商業・生活情報を光で伝達。全道や全国各地の電光板にも連動ネット掲示します。 4.各種イベントを通して多彩な生の情報を発信する多目的貸ホール事業  オホーツク圏の中核都市北見市の中心商店街に開設した貸ホール(ギャラリー)は、発表会・展示会・教室・即売会などに幅広く利用 されます。
「情報発信の4つの柱」 株式会社 伝書鳩 http://www.okhotsk.or.jp/syokokac/kigyou/kigyou9.htm

 各県の地方新聞は最盛期よりは購読者数を減らしたとはいえ依然として高い購読率を保っていますがこの頃はこのようにローカル・フリ ーペーパーが逆に地方新聞を超えてしまうこともあります。

 これはもちろんローカル・フリーペーパーが無料で配達されるということばかりでなく、「経済の伝書鳩」のように多様な方法で収入を確保 して、地域に密着した情報を提供していることにあります。

 その他にも山口県山口市にも新聞折り込みのローカル・フリーペーパーである「サンデー山口」があります。

 「サンデー山口」は、開作社長(35)の父が24年前、勤めていた地方紙が廃刊になったためローカルニュースを住民を提供にするために創刊した。(中略)
 「うちを折り込んでいないとと、配っている新聞の購読者が減るまでになった。地域密着の勝利ですよ。」(サンデー山口 開作社長)と自信を見せている。
 「地域発 2002」朝日新聞 3月17日

 このように無料な上に地方新聞に匹敵する記事・サービスを行うの が新しい地方新聞型のローカル・フリーペーパーです。

 また、こういった地方新聞型のローカル・フリーペーパーとは別に廃刊になった有料誌「じゃまーる」(リクルート)のような地域の個人情報誌に「情報誌ぱど」があります。

「情報誌ぱど」とは、個人メッセージ満載・お得な情報満載のフリーペーパーです。
 情報誌ぱどには、家庭版と呼ばれる、各家庭に配られる ものと、オフィス版と呼ばれるオフィスに配られるものがあります。
 ぱどに個人メッセージを載せたいならこちらから!
 うちの会社にもぱどを届けて!という人はこちらへ
 ぱどに個人メッセージを載せたいならこちらから!
 メッセージを載せる人は電話番号や住所を公開せずにメッセージに対する反応を知ることができます。
 ぱどを読む人も簡単に、24時間いつでも電話で、個人メッセージへの返事を録音できます。 ホテル・飲食店などの情報をFAX・音声でもっと詳しく手に入れること ができます。
    http://www2.pado.co.jp/kb-p.htm

 この「情報誌ぱど」は各地版があり、今年3月15日の和歌山版創刊により「ぱど」総発行部数が198エリア11,036,300部となり、ギネスブック認定の発行部数世界一のフリーペーパーとなりました。この発行部数は 「情報誌ぱど」が単なる個人情報誌にとどまらない多様なサービスを展開しているところにあるのでしょう。「情報誌ぱど」に限らず各地でこのような個人情報誌型のローカル・フリーペーパーも増えています。

 このように地方新聞型や個人情報誌型の違いはあるもののローカル・ フリーペーパーは今後もある程度増えていき、既存のメディアに取って代わるものも出てくるようになります。
 また、このようなローカル・フリーペーパーばかりでなく、ローカルメディ アのネット上での展開も進んでいます。既にアメリカではこのことに関してこういった見解も出ています。

 地方紙が今すぐ廃刊に追い込まれるとは思わない。しかし,地方紙の読者は既に,紙面で得られる情報が無料で,必要な時にどこででもオンラインで得られるという事実を発見してしまった。こうした読者の向かう所 に広告費も向かう。  旧メディアから新メディアへの,視聴者の大移動は数年を要するだろう。 だが,将来振り返ってみたとき,この数年を,旧メディアがインターネットを 凌いで反映するように見えた短い期間として,またその後旧メディアが急 激に衰退していった曲がり角として思い出すだろう。

 Jesse Berst,ZDNet/USA  http://www.zdnet.co.jp/news/0007/12/berst.html

 事実、「情報誌ぱど」は「ぱどタウン」(http://www.padotown.net/)という ネットワーク上の展開を始めています。
 しかし、前出の廃刊になった「じゃまーる」(リクルート)はその後「ISIZE じゃマール」としてネット上で展開してきましたが2001年12月20日をもって サービス終了しました。

 このようにローカルメディアのネットへの移行が一挙に進むとは思いませんがこのようにある部分はネットに移行していきます。

 今、ローカルメディアにもパラダイムシフトが起こってます。
 まず、地方新聞、地方紙、タウン誌などのローカルペーパーメディアは地方新聞型や個人情報誌型のローカル・フリーペーパーに移行するもの が出てきます。
 また、ローカル・フリーペーパーも含むローカルペーパーメディアはネッ トワークメディアに移行するものが出てきます。
 どちらにしても、今後のローカルメディアのポイントは無料で配布(配信) し、多様なサービスを展開するところにあります。

 しかし、こういったメディアの変化の中でもペーパーメディアの築いた良い伝統は継承する必要があるのではないでしょうか。
 冒頭の「とかち新聞」を発行していた松山明翁は有名な歌手松山千春の父であり、足寄の旧社会党の支部長も務めた人でしたが、党員でありながら党からも自立した立場で新聞を発行しました。
 そして、なによりも松山翁は地元の政治家や有力者、有名人におもねることなく、ジャーナリズムの原則をつらぬき地域に密着した新聞を発行し続けました。
 メディアの違いはあれ、この姿勢に私たちも見習うところが多いのではないでしょうか。

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  生活情報紙


 
このようなローカル・フリーペーパーも含む生活情報紙は全国で数多く あります。
 とりあえず日本生活情報紙協会正会員リストを参考にして、あなたの近 くのローカル・フリーペーパー・生活情報紙を探してみては。

 日本生活情報紙協会正会員リスト  http://www.jafna.or.jp/05/051.htm

 日本生活情報紙協会          http://www.jafna.or.jp/


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