『S−Report』  3/21   コンパクトシティとコミュニティ型商業


 世界最大の小売業であるアメリカのウォルマート・ストアーズが西友を傘下におさめ日本市場に進出すると今月14日に発表しました。
 世界最大の小売業で、製造業も含めて売上高世界一の巨大企業、米ウォルマート・ストアーズが14日、大手スーパーの西友 に出資して傘下におさめ、日本市場に進出すると発表した。まず 今年5月に西友の第三者割当増資を引き受けて60億円を出資 し、発行済み株式の6・1%を取得する。07年末までに3回に分けて出資比率を引き上げ、最終的に66・7%とし買収する。出資総額は約2600億円になる予定。ウォルマート進出を機に、 日本の小売業界は競争が激化し、生き残りをかけた再編の動 きが加速しそうだ。

 両社は数カ月かけて、出店や商品調達、販売手法の共同調査を行い、ウォルマートが米国で展開している大型ディスカウント店などの日本での出店時期や規模を決める。西友の既存店にウォルマートの商品を供給するほか、西友は今後、食品スーパーの出店に絞り、大型店はウォールマートとし出店することに なると見られる。
 ウォルマートは強力な価格競争力を武器に90年代に急速に 事業規模を拡大し、米国内で約3500店舗を持ち、欧州、南米、 アジアなど他の9カ国で約1100店舗を展開している。数年前から日本進出を狙い、昨年9月に破たんした大手スーパー、マイカルの支援企業として取り沙汰されたこともあった。
 西友は80年代までダイエー、イトーヨーカ堂と並ぶスーパー大手3社の一角で、セゾングループの中核会社だった。しかしバブル期に子会社のノンバンクの不動産過剰投資で巨額の不良債権を抱え、財務体質が悪化。00年4月に住友商事の出資を受 け入れて同社が筆頭株主となり、食品スーパーに特化する戦略 を進めていた。

  「米ウォルマートが西友を傘下に日本進出 小売業界、競争激化」 毎日新聞 宇田川恵 3月15日

 さて、ウォールマート・ストアーズは1962年にアーカンソー州ロ ジャースにディスカウトショップ「ウォールマート」の一号店をオー プン以来、「日々の生活に必要な22の商品系列が一カ所で、し かもどこよりも安く買える」を方針として、競合他店が出店しないところに出店してきました。1992年にはシアーズ・ローズバックを抜いて世界一の小売業となり、2001年には売上でエクソン・ モービルを抜いて世界一の売上を達成しました。

 ウォールマート・ストアーズは自らの店舗をスーパーセンターと規定して、郊外にディスカウントストアの1.5〜2倍の広さで、青果、精肉や加工食品など食品全般を扱っています。
 さらに、ウォールマート・ストアーズはその次の店舗展開として、スーパーセンターのノウハウを生かした「ネイバーフットマーケット」 を展開してます。この「ネイバーフットマーケット」は巨大なスーパーセンターが建設できないような市街地に食品を中心に地域に密着した「地域のお隣さん(ネイバーフット)マーケット」です。

 スーパーセンターについては既にコストコ、カルフールが日本に進出しており、今回のウォールマート・ストアーズの進出で競争が激化します。
 しかし、ウォールマート・ストアーズがマイカルではなく、「食品スーパーに特化する戦略」を進めていた西友を買収したところがポイントです。これはスーパーセンターにとどまらず「ネイバーフットマーケット」を展開するパートナーとして西友を選び、今後は西友 の郊外大型店はウォールマートスーパーセンターとなり、中小店は日本に合わせたコンビニの要素を取り込んだ「ネイバーフットマーケット」になると考えられます。

  ウォールマート・ストアーズはコストコ、カルフールとは異なり「ネイバーフットマーケット」を新しい戦略の柱としているのはコンパク トシティなどの欧米の新しい街づくりへの対応を考えいるからです。

 コンパクトシティは地域や提案者によって異なっており定義も様々ですが、 こういう形態の都市をコンパクトシティと呼ぶ、というようなものではないと思います。コンパクトシティというのは、都市計画に関するスタンスを表したものです。 つまり、都市を拡大して可住地を増やし続け、人口を増大させる方策をとり続けてきたこれまでの都市計画の基本的な姿勢を、この機会に考え直してみては、という問いかけだと思っていただいた方がいいように思います。
 ですから、ライフスタイルを変える(例えば、自動車依存から公共交通+徒歩を中心にする等)といった場面が中心になってくるので あって、そのために、都市部に公共施設や住宅が整備されることは非常に効果的なことであると思われますが、それは目的像ではなく、 単なる手法のーつです。
 人口や面積が拡大していくことが、都市の成功であるという考え方を全く違う方向に転換させること、それこそがコンパクトシティ論の本 質であると思います。
 「コンパクトシティ」  http://www.compact-city.net/contents/questions/questions.html

 このようにコンパクシティは基本的には街の機能を徒歩圏単位に集約し、その相互の交通を含めて街を形成するひとつの手法です。
 これはモーターリゼーションの進展により地域の生活や商業の中心が郊外や郊外型大型店舗へと移行して、中心市街地や中心部の 商業が衰退していくことに対してアメリカではコンパクトシティによる都市再生計画が立てられました。 (このアメリカのコンパクトシティによる都市再生のお手本として日本の街づくりや商店街等を参考にしています。)

 さて、その日本では市街地の活性化のために中心市街地整備改善活性化法等関連3法が制定され各地で中心市街地活性化事業が 進められています。これは大店舗を核として小店舗を併設するテナン トミックス戦略により衰退した中心市街地の活性化目指すという仕組 みになっていましたが、大型店の倒産や地域からの撤退が日常化し ている現状では実施には多くの困難が伴っています。

 2月21日に開催された「中心市街地活性化シンポジウム〜持続可能なまちづくりに向けて〜」(中心市街地活性化推進室主催)でもコ ンパクトシティの論議や、大都市から小さな町までの多様な中心市街地活性化の事例が発表されていました。
 その中には中心市街地活性化のテナントミックス戦略以降の試みとして青森市の「パサージュ広場」(若手商店主を育成支援するため、 低コストで小店舗を開店できる広場)や柳井市の「にぎわい創出事業」 など各地で「歩いて」楽しめる仕組みづくりが紹介されていました。
 この中で青森市の「パサージュ広場」計画は、青森の中心市街地に駅前の大規模店舗から既存店舗をつなぐ小径(パサージュ)を形成することにより、人が集まり商業が活性化した生活できる生活圏を形成する試みです。
 ウォールマート・ストアーズのような世界的流通企業から地域に根ざす商店や企業まで「ネイバーフットマーケット」の展開や中心市街地活性化の新しい取り組みを行っています。

 このような商業のありかたをここでは「コミュニティ型商業」とします。
  いろいろな意味で生活に身近な範囲にある商店街・商店やスーパーは安心して暮らせる必要条件です。また、高齢化社会の進行により小さな街ばかりでなく、大都市圏でもこの「コミュニティ型商業」の維持・育成は急務となっています。
 都会的な品揃えや便利さをもつ郊外のショピングモール・アウトレットや大型店には無い魅力をもち、親しみやすくコンビニエンス性・利便性を備えた新しい商店街・スーバーである「コミュニティ型商業」が今求め られています。

  都市再生関連諸法


 
コンパクトシティとコミュニティ型商業と関連して都市再生関連の法案の改正案・新法が第154回国会(常会)に提出されました。これらは住 民への提案権の付与などの面はあるもののいろいと論議を呼んでいま すので、今後にご注目ください。

1.都市再開発法等の一部を改正する法律案

 民間事業者等によって行われる都市の再開発を促進するため、一定の要件に該当する民間会社を市街地再開発事業の施行者に追加するとともに、高度利用推進区(仮称)を定めた土地区画整理事業における 換地の特例の創設、民間都市開発推進機構の土地取得業務に係る取 得期限の延長等所要の改正を行う。

2.都市再生特別措置法案(仮称)

 近年における我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応し、都市の再生を図るため、内閣に置く都市再生本部において都市 の再生の推進に関する基本方針等を策定するとともに、都市の再生の拠点として緊急に整備すべき地域における民間都市再生事業計画の認定 制度の創設、都市再生特別地区(仮称)等の都市計画等の特例措置の 創設及び都市再生緊急整備協議会の設置等所要の措置を講ずる。

「第154回国会(常会)提出予定法律案について」

 国土交通省 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/00/000121_.html


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