『S−Report』  3/14  エキストラから − メディアのパラダイムシフト(3)


 大林宣彦監督といえば出身地の尾道を舞台として数々の映画を撮っていることで有名です。大林監督の映画は地元の尾道の人々の協力によって成り立っており、映画のロケは尾道の人々の愛着をもって迎えられています。
 今回、大林監督の大分県の臼杵市を舞台にした新作映画でも地元の人たちの参加と協力があったようです。

 こういう映画にはどうしても地元自治体の協力が必要である。 仕事柄色んな地方で仕事をするが、臼杵市役所ほどやりやす く気持ちのいいところは無かった。市役所内の調整は色々大変だったと思うが、とにかく内部の事情をこちらに見せず、頼んだことは必ずやり遂げてくれる。私は個人的に「男気の市役所」と呼んでいる。
「男気のある市役所」大林宣彦 http://nagoriyuki.com/index2.html

 このように映画は役者やスタッフばかりでなくロケ地の人たち の協力で成り立っています。このようなボランティア以外にも映 画スタッフのロケを補助する現地コディネーターという専門の会社もあります。
 しかし、現在ではこのようなロケを補助する組織としてフィルムコミッション(Film Commission)が各地で設立されるようになりま した。
 フィルムコミッションは映画ロケの受入・撮影の補助をする非営利組織(自治体・各種団体・NPO)で映画だけでなくテレビ番組・ CMの撮影の誘致や支援を行うものです。フィルムコミッションにはロケ地の地名の知名度のアップや経済波及効果があり、地元の地域活性化の手段のひとつになりつつあります。
 フィルムコミッションはアメリカで1940年代後半に既に始まり、 日本でもあちこちで設立され昨年には全国フィルム・コミッション 連絡協議会が設立されました。

 全国フィルム・コミッション連絡協議会  http://www.film-com.jp/

 地域で企画され出資し、製作される映画も昔から多数ありまし たが、今までは一般的にはプロだけで映画やテレビを作り、アマチュアは出演・エキストラ、つまりその他大勢として参加するのが 常識でした。今やこのように映画でも幅広く製作参加するようになってきました。
 また、テレビでも、福井県では県内の学校とNHK福井放送局が協力して「発信マイスクール」という番組を放送しています。「発信 マイスクール」は生徒が撮影した番組をNHK福井放送局に送りNHKがこれを5分間に編集して毎週水曜日に放送しています。

 NHK福井放送局の『発信!マイスクール』は、いじめや不登校など学校の一面しか伝えてくれないメディア情報に風穴をあけようと 企画され、学校の先生や生徒が制作した番組を全県に放送している。三方中学校では、生徒たちが「体育大会」を作り上げていく過程を番組にして放送したところ、たいへん好評を得て、保護者・地域と学校のつながりがより強くなった。学校放送や校内放送の新し い意義を考える。
 NHK「学校ONLINE」  http://www.nhk.or.jp/sch/atoz/01/taikaiRp/taikaiRp_06_08.html

 このように「一面しか伝えてくれないメディア情報」に対して、子どもや住民が番組を作り放送(前から言っているネットのストリーミング放送ではなく)する時代が来ています。
 このことが可能になったひとつはもちろん子どもや住民の意識の高まりがありますが、大きな要因としてデジタル映像機器と技術の普及があります。
 デジカム(デジタルビデオカメラ)の普及やパソコンによってデジタルビデオを編集するDTV(ディスクトップビデオ)技術の一般化によ り、従来、プロ用、局設備の必要だったテレビの分野でも簡単に放 送できる素材が出来てしまいます。
 このように、ここでも普通の人がテレビに単なるその他大勢として出演・参加から製作参加する方向へと変わってきています。

 県独自の映像文化創出と映像関連人材育成を目指す「さいたま映像ボランティアの会」(会長・大林宣彦映画監督)の設立発起人会が 8日、JR川口駅西口のリリアで開かれた。03年2月に川口市のNH Kラジオ放送跡地に先端映像拠点施設「SKIPシティ」が完成するの を機会に設立した。来年4月にNPO法人(非営利組織)認定を目指す。
 発起人は大林監督、岡村幸四郎川口市長、田中徳兵衛同市商工会議所会頭、戸沼幸市早大芸術学校長ら10人。大林監督は 「21世紀の映像は平和に役立つものでなくてはならない。ボランティアが知恵を出し、地域文化を発信するのは最初の試みだ」と語った。
 同会は(1)地域での映像制作(2)ロケ撮影をコーディネートするFC (フィルムコミッション)活動 (3)公民館などでの映像関連生涯教育 (4)博物館や美術館の映像関連活動などを支援するほか、映画祭などイベント運営スタッフとして活動する。
 資格は中学生以上。年会費1000円。会の推進に協力する維持会員は個人1口5000円、法人1口1万円。
 問い合わせ電話048・226・1223同ボランティアの会。 「映像ボランティアの会」発起人会−川口/埼玉
 毎日新聞11月9日 森国郎   http://www.mainichi.co.jp/universalon/clipping/200111/125.html

 この「映像ボランティアの会」は単にフィルムコミッションや地域での映像製作を目的しているだけでなく、埼玉県が2003年開業を目指している「さいたま新産業拠点(SKIPシティ)」と連動することによって地域 の映像発信の担い手や若手映画監督やCG制作者を育成する目的も あります。

 「メディアのパラダイムシフト(1) 自前のメディア」(1/11号)では普通の人が自分のメディアを持ち、そのメディアがマスメディア的な伝播力を持ち広く人々に伝えることができるようになったことをお話ししました。そして、このようなデジタル映像・通信技術の普及によって映画やテレビなどの映像発信をすることが従来より容易になりつつあります。また、 デジタル映像技術とネットワークとの融合(「『千と千尋』もデジタル」2001 /9/20号)や放送・通信融合(「テレビの運命−通信・放送融合」2001/8/ 30号) によって双方向性のあるメディアを実現する基盤が整ってきまし た。

 普通の人もエキストラではなく、従来から言われていますが映像でも 「受け手」から「送り手」なる、そんな時代になりつつあります。

  映画の紹介


 
さて、今回紹介した大林宣彦監督の最新作がロケ地の大分県から 公開になります。

 「なごり雪」   http://nagoriyuki.com/index2.html

内 容
 六十四歳の監督が目差したものは「日本映画」の再点検である。技術の伝承である。画面作りの細部は勿論、演技に於いても台詞に依る時制の表出等が試みられた。 《転校生》の尾道の初心に戻るとの大林恭子プロデューサー企画製作作品。
 大分のプロダクションTOS.E.Pがパートナーとなり、大映が配給を兼ねて製作に参加した。

1.大分県内地域上映

 1)完成披露プレミア上映
  大分市 グランシアタ 4月14日(日)
   この間、大分県各地で上映
  山国町 コアやまくに 6月01日(土)

  料金     前売 一般1,400円 学生1,200円 ペア・チケット(大人二人)2,500円
          当日 一般1,800円 大学1,500円 高校1,300円 中学以下1,000円  シニア(60歳以上)1,000円
  地域上映のチケットは会場別になります。

 2)大分県内先行公開−大分県内劇場上映
  シネフレックス東宝11       4月27日(土)より 097-548-7800
  シネマ5               4月27日(土)より 097-536-4512
  別府ブルーバード劇場      5月25日(土)より

 3)全国公開予定   2002年 秋 


  USA現地取材レポート


 
   JUN-K-TEXT  (Produced by CyberLab)      http://homepage2.nifty.com/junkt/  

 ノンフィクションライター中田潤のサイト「JUN-K-TEXT」は2002年 版にリューアルしています。
 また、昨年に引き続きメジャーリーグ現地取材レポートを開始します。
 予定では3/20より。

  「まったく似合わない黒とオレンジのユニフォームを身にまとい、『おそらく、日本人が好きな住人はひとりもいない』アリゾナ州フェニックス から始動する新庄くんに密着取材。
 たのむで、Shinjo! (毎日現地から送るで)」



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