このところ、カタイ話が多かったので今回はオマケのお話です。 といっても、このお話がオマケなのではなくて「オマケ」そのもののことです。 ところで、オマケがあるとつい買ってしまいませんか。オマケを集めたり、コレクション、フギィア(人形)の趣味ない人でも何かオマケがあると買ってしまいますよね。 去年から女性誌に高級なオマケが付きはじめたのですが、これは日本雑誌協会が規定を変更して高いオマケを付けることが できるようになったためです。 まず、小学館が「美的」創刊号に「スワロフスキー」のガラスのブ レスレットを付けたことから始まり、講談社の「Style」はイタリア製ストッキング、双葉社「JILLE(ジル)」はポーチと続きました。(ヨー ロッパでもエルやマリ・クレールにオマケが付くこともありますがこういう価格のものはないです。)どれも雑誌の価格を大幅に越えているようですが、「美的」の藤田基予編集長によると「プアなものは付けられない」ということでブレスレットをつけたそうです。雑誌のオマケといえば幼児マンガ雑誌や主婦向けの雑誌の家計簿が定番でしたが、今はオマケをつけるならこのくらいのものをつけないとインパクトがないと出版社側で判断したようです。 また、女性誌に限らず、集英社「ウルトラジャンプ」1月号にはマウスパッドを付けたり、ワニマガジンが今年1月に創刊した「ワル蔵」にはデジタル画集CD-ROMがついていて、雑誌の「どっちがオマケか分からない」オマケブームはしばらく続くようです。 お菓子のオマケは古くはグリコのオマケ、仮面ライダーカード、ビックリマンシール、各種カードなどいろいろなパターンがありますが、 この頃のお菓子のオマケのブームはチョコの卵の中にオマケが入っているチョコエッグです。 チョコエッグとは海洋堂が企画し、フルタ製菓が販売する卵型のお菓子です。ヨーロッパのイースターエッグ型菓子が近年の規制緩 和で日本でも製造販売できることになり登場しました。(中略) (特徴は) 1、動物のモデルの造形を「松村しのぶ」という世界的有名な動物モデラーに担当させているところ。 2、お菓子のオマケの世界に「日本の動物」というアカデミックな切り口で展開したこと。 3、中身が分からないギャンブル性、シークレット動物などの希少品の混入。 4、お菓子のオマケの世界に「海洋堂」ブランドで登場した衝撃、またこのことで各ホビー誌が注目。マニア人気が定着したこと。 5、松村しのぶ氏による動物のセレクトがマニア心をくすぐるところ。 6、現在のペットブームによる追い風。 7、不況による低価格商品の注目、またコレクションのしやすさ。 「チョコエッグ大図鑑」 http://www.a-toys.net/chocoegg/qa.html このチョコエッグは1999年から毎冬発売されており、今や月間300万個も販売するフルタ製菓の主力商品のひとつとなり、チョコエッグのディズニー・キャラクターコレクションや外箱オマケ型のファイナルフ ァンタジークリーチャーズ、人形の国のアリスなどのシリーズを生み出 しました。 さて、このチョコエッグのヒットのポイントは「ベイブレード」( 「あそびの現在」2001/5/10号)やこの頃のヒット商品と共通する要素があります。 希少性−次年度、次のキャペーンには同じものがない。これはペプシのボトルキャップや各種カードと同じです。 オリジナル性−この場合は安易にキャラクターに頼らず「日本の動物」 というところがキャラクター物に頼りがちなオマケではオリジナリティがあ ります。 高級感−この動物のモデルを製作している海洋堂はオマケ専門のメーカーではなく高価なフィギアの専門メーカーです。ここでも「プアなものは付けられない」ということでしょうか。 今回、フルタ製菓の経営陣交代と同社が海洋堂の承諾もなしにディズニーのチョコエッグを出してたことでこの提携関係は終わってしまいまし た。さらに、前々からフルタ製菓側からコスト値下げ要求があり、海洋堂 が専門メーカーのプライドと品質を考えるとコスト要求に応えられないこと があったことも原因のひとつのようです。 フルタ製菓側としてはチョコエッグのディズニー・キャラクターコレクショ ンや外箱オマケ型のファイナルファンタジークリーチャーズ等があれば良いという判断でしょう。しかし、またチョコエッグもフィギア専門メーカーの ものだから人気が出たのではないでしょうか。 フィギア専門メーカーとしては品質の問題でお菓子会社としてはコスト低減は至上命題であり、最終的にはこうなる運命だったのかもしれません。 これらのオマケから比べればグリコのオマケは確かにお金はかかっていませんが、グリコのオマケを長年手がけた木のおもちゃデザイナーの加藤裕三はこう言っています。 ぼくは1987年頃から、そのおまけのおもちゃのデザインの仕事に関わるようになりましたが、自分が子どもの頃お世話になった?というべき<おまけ>のプランを出すときは胸がときめきました。 木のモデルから数十万個に樹脂化する過程で、いろいろな人の力に助 けられながら実際の<おまけ>は完成されます。もちろん予算や、大きさ、 安全性・安心性など、さまざまな条件が課せられているわけですが。 http://www.d3.dion.ne.jp/~aze/glico.html このようにオマケであっても愛着を持ち、手を抜がず、限られた条件の中でもきちんと作るということが大事ではないでしょうか。 「だかがオマケ」とフルタ製菓のように侮ったり、されど、雑誌の創刊号やキャンペーン号だからといって「プアなものは付けられない」というのはどう いうものでしょうか。 昔からよくオマケのある商品はどっちがオマケか分からないと言われてきたものも多いですが、オマケと本体、雑誌と付録、お菓子とオマケどちらも重要です。 (雑誌の例をあげましたが名誉のために言い添えておきますが、例えば幼児雑誌付録に担当者たちが賭けている配慮や情熱はすばらしいものです。) 当たり前のことですが、「どっちがオマケか分からない」くても、本体とオマケのそれぞれをきちんと作る必要があります。付加価値というのはそういうものでしょう。
昨年、亡った木のおもちゃデザイナーの加藤裕三のサイトと本です。 サイト AZe http://www.d3.dion.ne.jp/~aze/ 「グリコのおもちゃ箱」 著 者:加藤裕三 発行者:山口正也 発行所:アムズ・アーツ・プレス 定 価 :本体1,900円+税 発行日:2002年1月1日 ISBN 4-946483-67-5 C0072 (当面、本は通常の書店では並びませんので、ご入用の場合は事務局または、 出版社の方に直接お問い合わせいただくようお願い申し上げます。) 「グリコのおもちゃの試作品は、木を削ってつくったものです。粘土ではない、 木を削りだしてつくるからこそできるフォルムがある訳です。それをもとに何十万個もの樹脂のおもちゃが出来上がる訳ですが、その形に、木から削りだした という記憶を残すことは、とても大切なことだと思うんです。」 また、この本にはひとつひとつに本人がオマケにコメントを付けています。その ひとつに野牛バイソンの足に車輪をつけた「ダッシュバイソン」のコメントはこうです。 「アメリカ文明の発達と共に絶滅に瀕しているバイソン。とりあえずグリコのおもち ゃで、日本に40万頭増やしてみよう!」