毎年行われている「全国地場産フェア’02 」が今年もありました。東京会場は「ニッポン全国むらおこし展」と同じ会場でしたが出展者が少なく寂しい様子でした。このこと自体が地場産業の現在を象徴しているようです。 その中でも「有田焼の新商品開発事例」は他の物販を中心としたブースとは違っていました。 これは中小企業総合研究機構の「平成12年度伊万里・有田における陶磁器製品製造業事業推進の方向性に関する調査」 に基づき多摩美術大学と地元組合、窯元が共同で行った新商品開発の報告展示でした。 主な内容はアート的な食器、給食用の食器や自動車用インストメンタルパネルの部品のプロトタイプでした。 アート的な食器はともかく、給食用の食器は給食センターでの現状の業務用食器洗浄機には耐えられない材質や形状のもで した。 自動車用インストルメンタルパネル(略称インパネ、自動車のハンドルより前の内装部分)の部品についてはかつてその商品開発に関わっていたものからみればモックアップモデルにも採用されそうにないものでした。 多摩美術大学(特にデザイン研究センターや生産デザイン学科)は1986年から現在まで、ホンダ、SONYなどとの産学共同 プロジェクトの多数の実績があり、秩父市の「知々夫ちぢみ」の新商品開発を大学のカリキュラムに取り入れて行うという試みも しています。 この「全国地場産フェア’02」で同時に展示されていた福井県、福井県眼鏡協会、多摩美術大学が共同で新しいメガネフレームの商品開発を行った「EYEWEAR製品開発研究会」の報告もなかなかのものでした。 しかし、「有田焼の新商品開発事例」は有田焼の材料特性上の制約や地元の対応の問題もあったのでしょうが、プロダクトアウト的発想で商品がデザインされていました。それはプロトタイプとはいえ実際に商品化が出来るものではなかったのです。 もちろん、地場産業ではない大企業でも自社の商品分野ではない新製品を開発する場合はこのようなことがよくあります。コンセ プトや意気込みが空回りしてトンデモ企画が出てきたり、自らの専門分野ではない場合には調査を行うといった当たり前のことしないと商品の開発はうまくいきません。 また、「有田焼の新商品開発事例」の給食用の食器は一応ユニバーサルデザインを意識して作られていますがやはりデザイン優先でした。 ユニバーサルデザインは今後の商品開発の大きな課題です。 ユニバーサルデザインとは「国籍、年齢、性別、障害の有無にかかわらず誰もが使いやすいように施設、商品(環境、メディア、ソフ トフェア、サイト)などをデザインすること」です。 先ほどの多摩美術大学の産学共同プロジェクトでもユニバーサルデザインをテーマにNECと共同で1996〜2000の4年間行いました。 そのプロジェクトでは、まず高齢者疑似体験、障害体験をしてヒアリングや技術交流ミーティングをしてからモックアップを作るという開発プロセスを経ています。 http://www.nec.co.jp/design/ja/universal.html このように、商品開発のプロセスのステップをおろそかにせず、自分たちが当たり前としていることを反省し、別の視点に立って再構成することから新しい、そして、良いものが生まれます。 「商品開発」は良い商品をつくればいいというプロダクトアウトはもはや論外として、ユニバーサルデザインを考慮しつつニーズとはマーケットインとは何か考えてみる必要があります。 それはつまり、基本に立ち戻って「良いものをつくる」というのは「誰にとって良いものか」をもう一度考えることが必要です。
アートやネットでの新しい試みがたくさん紹介されています。 多摩美術大学 http://www.tamabi.ac.jp/ 多摩美術大学産学共同研究実績 http://www.tamabi.ac.jp/deken/drc_data/sangaku_list.html