『S−Report』  1/10号   自前のメディア  − メディアのパラダイムシフト(1)
 
 今年は日韓共同開催の2002FIFAサッカーワールドカップの年です。いろいろとある韓日の友好にも寄与するといいですね。

 サッカー日本代表メンバーに何回も選ばれた中田英寿はマスコミ嫌いで有名で、自分のオフィシャルサイト(HP)  ” nakata.net”でのみ自分の真意を主張しています。  
  http://www.nakata.net/jp/
 そのため、朝日新聞が彼のオフィシャルサイトから記事を転載 (無断転用)した事件まで起こりました。

 去年清原和博がFA権(フリーエージェント)を行使するかが問題になったとき取材攻勢があったにも関わらず彼は日本シリー ズに配慮して沈黙を守り続けました。そして、シリーズ終了後に唯一TBS系でドキュメンタリー番組「ZONE」でその真意を語り ました。これはプライベートをほとんど公開したことのない彼が自宅までも公開したこともあって関東地区での視聴率は13.7% にもなりました。
 しかし、問題はテレビの視聴率もさることながら次の日のスポーツ新聞は一面でこの「ZONE」での清原発言を取り上げたというこ とです。つまり、テレビ見て新聞の一面書かれたわけです。
 このことは中田英寿や清原和博限らず今の一部マスコミに対す るプレーヤーの不信を表しています。

 さて、少し古いですがこれは”野人”岡野雅行の応援個人サイト ”Nissy's Homepage”で公開されている岡野本人とサイト管理者 Nissyとのやり取りです。

岡野選手に聞いて来ちゃいました(^^;
 ○自分が聞いた内容 ■岡野選手のコメント 
 >コメントに対しての自分のコメント (^^;) ○新聞報道で・・・。

■ああ、あれは新聞の方が勝手に・・。自分でもビックリした。  
 ・自分が思っていることをいったら勝手に移籍になっていた。
 ・スピードのあるサッカーをしたいと言ったらアヤックスになってた。
 ・カウンターをしたいと言ったらFC東京になってた。
 ・交渉とかはこれからの話だし移籍するなんて話はない。

>チームへの不満を「もの凄い虚言癖の記者」がかなりの尾鰭をつけて報道したというのが事実のようです。
 っていうか、スポーツ新聞の記者なんて虚言癖が無いと出来ないのかもしれないですね(爆)
 岡野選手はこういっています。

■スポーツ新聞なんて信じちゃダメですよ。
 そんな(移籍)ことないのでその辺(掲示板に)書いて置いて下さい。

  http://nissy.red-diamonds.net/voice01.html


 もちろん、すべてのスポーツ新聞がそうではありませんし、スポーツ新聞をエンターテイメントとして読む、つまり毒のある「裏情報」や「本音」や噂を楽しむという見方はあります。それはそれである種の週刊誌のように商売が成り立つものでしょう。

 週刊文春は今春から「雑誌ジャーナリズム王道」である取材を強化 し、半年も取材して大きなスクープを取ったそうです。

 しかし、売れ行きは期待したほど伸びず、「スクープやってる、で終わり。買ってもらえなかった。」(木俣編集長)
 (一方)週刊誌の売り物である「裏情報」や「本音」は、ネットに取って代わられつつある。(中略)
 文春の木俣編集長は「お金をかけた雑誌の情報と、ただのウワサが違うことは、もう3年もたてばはっきり分かる」という。
  「毒の取り扱い どんどん難しく 週刊誌ジャーナリズムは厳寒期」  朝日新聞 2001/12/12

 確かにネットに取って代わられている「裏情報」や「本音」は裏付けのないものが多いでしょう。それは上記のようなある種のスポーツ新聞も同じです。

 評論家の宮崎哲弥さんは(ネットは)「アナキーな言語空間としてのおもしろさも含め、毒の塊であることは確か。それに比べれば、週刊誌は生ぬるく見えてしまう。」と話す。
 前出 朝日新聞 2001/12/12

 しかし、お金をかけて「雑誌ジャーナリズム王道」の取材しても、噂や「毒」 の部分でも成り立たず、取材相手から拒否され、素人と同じ情報しか得られないとなると、「もう3年もたてば」週刊誌はどうなってしまうのでしょうか。

 今、まさにメディアのパラダイムシフトが起きています。
 中田のようにプレーヤーが既存のメディアに不信を抱きプレーヤー自身が発信するメディアを持ち、また、”Nissy's Homepage”のようにマスコミ関係者ではない個人がプレーヤーに取材して情報発信することができる時代になってきました。

 この時代では清原の場合で分かるようにテレビ番組「ZONE」を見た視聴者とスポーツ新聞の記者とは差が無くなってます。こうなるとプレーヤーやフ ァンにとってスポーツ新聞をはじめとするメディアの重要性は低下していきま す。  
  つまり、メディアのパラダイムシフトとは今までの情報発信の占有性が崩れ、誰でも発信できるようになってきたことです。そして、作者・原作者・当事者が直に発信し、今まで読者・聴視者の立場にいた人々が徐々に自前の「マス・ メディア」を持ちつつあります。

 もちろん、当事者は嘘もつきますし、自分の都合のいいことを言います。事実は何なのか、ジャーナリズムとは何か、などいろいろ問題はあります。
 しかし、そういう問題も含めて自前のメディアを前提に考えなくてはならなくなってきています。

             「メディアのパラダイムシフト(2)」へ 

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 毎年、年初にはCyber Labのサイトを全面改訂してますが、今年の全面改訂からサイトと『S−Report』 の連携をいっそう深めることにしました。
  詳細はこのレポートでお知らせします。また、従来通り『S−Report』バックナンバーはサイトで閲覧できます。
   http://www.ne.jp/asahi/cyber/lab/rindex.htm

 今回より2002年度のコンセプト「バラダイムシフト−仕事の再定義−」のコンテンツ分野のテーマに基づいて「メディアのパラダイムシフト」の連載を開始しました。
 また、これと関連して実際にメディア実験を行います。これが2002年度コンテンツ分野テーマ「ネット・コンテンツ・トライアル」です。
 詳細はCyber Lab Siteのコーナーや『S−Report』「メディアのパラダイムシフト」でお知らせします。
 また、ご関心のある方はメール等にてご連絡ください。

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