「リラックスのために」

―W リラックスできないことに悩むことはありません―
 
カサイト先生のリラクセイション講座

からだは必ずしも本人の意志通りにはならず、 無意識の心の動きを映し出します。 身体心理療法は、無意識の心と身体の関わりを調整して 素敵に生きていくことを支援します。



「リラックスできなくて本当に悩んでいます…」

日々、このことで苦しみが続いているような場合は、先に書いたように友達に相談したり、場合によっては臨床心理士の方のカウンセリングを受けたり、心療内科や精神科の専門家の力の力を借りることもぜひ考えてみてください。とりあえず、誰かに話をするだけでも少し気持ちが楽になることがありますし、適確なアドバイスがもらえることが大きな安らぎになることもあります。

さて、「リラックスできないで悩む…」ということですが、カサイト先生の実験的研究によれば、「ほとんどの人はすぐに力を抜いてリラックスことができない」ことが分かっていますので、「リラックスできないことの方が当たり前」のことです。むしろ、すぐにリラックスできる人の方が少数派なので、そういう人達は「すぐにリラックスできる変わった人達」と思う方が正しいんですよ。

えっ?!リラックスできる方が少数派なんですか?!

そうなんですねえ、リラックスについての常識はあちこちで間違っているのですが、その一つがこれで、「リラックスできない方が当たり前で多数派」なんです。だから、リラックスできなくと悩んでいる人は、そういうように自分と同じように悩んで苦しんでいる人達が世間には沢山いることに気がつく必要があります。「自分だけがこんな風にリラックスできず苦しんでいて…」というような間違った脚本は、すぐに赤ペンで訂正しておくことにしましよう。

私だけがリラックスできなくて苦しんでいるわけではないのですね…。

ええ、お仲間が沢山いるんですよ。「やあ、あなたもそうですかあ。実は私もリラックスできなくて、いろいろと失敗があって…」という会話は、お天気の話と同じくらい通用する話題だと思います。同病相憐れむと言いますが、結婚式のスピーチなどでの緊張のあまりに起きた失敗は、正直に失敗すると意外に好感をもってもらえたりもします。「…緊張してああいう失敗をして、本人には気の毒だけれども、分かるなあ」…とかですね。

リラックスできないことを自分のせいにしてそれほど悩む必要はないわけですね。

はい、その通りです。ただし、ここでは少し厳しい状況にもふれておくことにします。
仕事の場などで、状況が非常にシビアなときにはもちろん話が違ってきます。スムーズに仕事を進めていけることが要求されているわけで、その中での失敗となればすぐに自分の身の上に影響してくるのでシンドイわけです。
しかし、そういう場面だからこそ「リラックスできないことに悩んでいる」場合ではありません。あるいは、悩んでいる時間やエネルギーがもったいないので、「悩んでいる余裕はありません」。リラックスできないとかできるとかは棚上げして、仕事の内容にエネルギーを集中してみてはどうでしょうか。

「リラックスできなくて悩む」ということに時間とエネルギーを消耗しないようにするということですか?!

はい、時間とエネルギーを「悩む」といった心的作業に費やすよりも、仕事そのものの内容ややり方などを正確にあるいは適切に考えて実行する方向に使うほうが理にかなっているのではないでしょうか。不安や緊張で手が震えたり言いよどんだりしながらも、仕事を進めてみてはいかがでしょうか。
これは「仕事優先」ということを言いたいのではなく、すでに説明したように、不安や緊張などに直接関わることによってますます問題を深めてしまうという、リラクセイションに関わるひねくれた構造への対策といえます。
「リラックスできなくて失敗したらどうしよう」とか「緊張のあまり上手に言えなかったりどうしよう」とか、マイナスの予想を自分で想像して、あらかじめ苦しむ…。予期不安という言葉がありますが、「予期して不安におちいる」のですが、実際にそうなる遙か以前から「あらかじめ苦しむ」というわけですが、どうなんでしょうか?

失敗しないための実際の方策ではなくて、失敗したときのことをあらかじめ悩んでしまうというのは、なんだか可笑しいですね…。

そうですねえ。ここにはリラックスの問題ではなく、失敗したらどうしようといった予期不安の影の方が強いように思います。問題は「リラックスできない云々」ではなく「失敗したらどうしよう」といったように先の見通しについての問題へとふくらんでしまっています。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があります。人としてできることを全てやり尽くした上で、それについての結果を運を天に任せる…という意味ですが、ここには「すべきことをする」ということと、「その後は身を委ねる」という二つの事柄が組み合わされています。誠実に仕事に向かうというのは、不安であっても緊張で手や声が震えても「すべきことをする」という覚悟が必要です。「リラックスできない」と悩むことに時間を費やすのではなく、仕事や用務が全うできるように時間とエネルギーを費やすこと、そのことを覚悟している、あるいはそういう「態度」を選び取っています。
その後で「身を委ねる」…。

リラックスできないときは、もしかしたら「身を委ねる」ということが難しいように思います。

はい、自分自身のことを「あきらめる」ことを含んでいますね、「天命を待つこと」「身を委ねること」には。つまり、自分のことがずいぶん大事で大事で、自分のことが気になって気になって…というように、もっぱら自分のことに注意が向かってしまうという傾向がありそうですね。
さて、一人一人のあり方は違っているのでここから先は個別の対応が必要になってきますので、ここはひとまず、「リラックスできないことに悩まないほうが良い」ということから始めてみていくことだと思います。



*無断転載を禁じます。 (C)葛西俊治 2009-2017
*イラスト (C)Tsuzura, 2002