特に愛読している「私の美の世界」と「甘い蜜の部屋」
↓でご紹介しているビスケットとマリアが好きだったクレエム・ドゥ・カカオ(のオン・ザ・ロック)
「貧乏サヴァラン」 森 茉莉に捧ぐ
・・・なんと言っていいか・・・私などが取り上げていいのでしょうか?といった感じなのですが・・・
私が20年近く崇拝に近い感情を持っている作家・森 茉莉の食の世界を再現・・・再現などは出来ませんが、
私なりのアレンジを加えながら、ほんの少しですがご紹介させていただきたいと思います。
森 茉莉・・・1903年森鴎外の長女として生まれる。
50歳を過ぎて作家活動を始め、1957年「父の帽子」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
代表作には「甘い蜜の部屋」「恋人たちの森」「贅沢貧乏」「私の美の世界」など。
ご興味がお有りの方は是非、リンクをさせていただいている姫崎せりか様のHP「森茉莉浪漫館」へ
おいでになられてみてくださいませ。森茉莉をきちんと詳しくご紹介くださるHPは姫崎様のページ以外ないと思います。
タイトルに使用させていただきました「貧乏サヴァラン」は
新潮社刊「私の美の世界」(昭和43年6月刊)に収められています。
(昭和59年に新潮文庫からも発行されました。)
「ビスケットには固さと、軽さと、適度の薄さが、絶対に必要であって、また噛むと
カッチリ固いくせに脆く、細かな雲母状の粉が散って、胸や膝に零れるようでなくてはならない。」
・・・「貧乏サヴァラン」ビスケットより
(「噛む」「零れる」という字が本来作品で使用されている漢字とは異なります。
これ以外も明治の時代の美しい漢字はパソコンではほとんど入力できなくて、とても残念です。)
本当はマリア(森茉莉は自分をマリアと記しております。)が食していた団子坂上の伊勢屋の
ビスケットがご紹介出来ると良かったのですが伊勢屋さんが現存するのかわかりませんでしたので
(ごめんなさい。あまり良く調べておりません。)今回はビスケットの代名詞のような
スコットランドのWalkers(ウォーカーズ)社のショートブレッド(=ビスケット)でお許しください。
写真は下の大きめの箱がシャンパン・ショートブレッド、上がモルト・ウィスキー・ショートブレッドで
それぞれシャンパンとモルト・ウィスキーが2%ずつ入った大人のビスケットです。
美味しいビスケットは美味しいチョコレエトのようにコニャックやウィスキーのお供に
適していると思うのですが、いかがでしょう?
どちらも少し前に三浦屋さんで購入しました。2000年のミレニアム記念の限定発売の品なのでこれからは
購入していただけそうにありません。タータンチェックが目印のスタンダード品のショートブレッドでしたら
食品専門店やデパートでご購入いただけるはずです。
写真ではマリアが好んでいたリプトン・ティー・バッグで淹れたアイスティーを添えてみましたが、
シャンパン・ショートブレッドにシャンパン、モルト・ウィスキー・ショートブレッドにモルト・ウィスキーを
合わせてみるのもなかなかおつなものではないでしょうか?
1874年(明治7年)鎌倉郡にイギリス人ウィリアム・カーチス氏により設立されたハムの製造工場から
始まった日本初のハムとして知られる「鎌倉ハム」はマリアの食事には欠かせない品でした。
「貧乏サヴァラン」にはもちろん、「甘い蜜の部屋」の中でも品名こそ出ませんが登場しています。
「今度は燻製豚(ハム)だ」
そう言って林作は腕を延ばしてモイラの前にある燻製豚の皿を引きよせ、ナイフで小さな片(きれ)に、
切って遣るのである。
・・・「甘い蜜の部屋」より
明治の末には「鎌倉ハム」を名乗る製造元が幾つかあったようですが、現在は創業1900年の
滑剔qハム富岡商店さんだけだそうで、現在も手造りで当時の味を守りつづけておられます。
お皿左手前が「骨付きハム」奥が「樽仕込ロースハム」です。(こちら富岡商店さんのロースハムが日本初の
ロースハムだそうです。)どちらも自然な肉の味がする、そのままでいただきたい美味しいハムです。
「貧乏サヴァラン」の「好きなもの」の中に「オランダ・チーズ」と出てくるので
オランダ・チーズの代名詞(?)のエダムを添えてみました。
近年、オランダのチーズといえばミモレットが人気ですが、エダムはだいぶ古くから
日本に入ってきているようで、「赤玉」の名で親しまれていますね。食べやすい中にも
味わいのあるハード・チーズで、最近はカロリーが低めなことで人気があるようです。
私は巴里に小一年いたので、巴里人の習慣が見につき、食事の合間に紅(あか)葡萄酒を半々位に水で割って
飲むのが好きになったのであるので現在(いま)でも、西洋料理店に行くと、卓子(テエブル)にある紅葡萄酒を
水で割って、それを相手に西洋料理をたべたら、巴里時代の感じの美味しさで食事を楽しむことが出来るのに、
とひそかに嘆くのである。だが、下らないことに人目を気にする日本の紳士淑女の目前では一寸困るのである。
・・・「ほんものの贅沢」葡萄酒より
ということで、仏蘭西産・紅葡萄酒に仏蘭西産の水をご用意してみました。
本当はマリアが好きなサンテミリオンにしようかと思ったのですが、普段のお食事の合間に気さくに水割りで楽しまれたのは
きっとこんな軽いワインでいらしたのでは?とお手軽なコート・デュ・ローヌのAOCミニボトルをご用意しました。
材料
馬鈴薯、にんじん、いんげん(マリアのレシピでは缶詰の青豆)、玉ねぎ、
白身の魚(鯛、ひらめ、えびetcマリアファンならひらめですね)、固ゆで卵、
EXV.オリーブオイル、モルトヴィネガー(または白ワインヴィネガーetc)、塩、胡椒、
パセリ、ドライ・ヴェルモット(または白ワイン)少々
作り方
馬鈴薯は賽の目に切って塩茹でにします。にんじんといんげんもそれぞれ適当に
切って茹でておきます。玉ねぎは今回は新玉ねぎをスライスしただけですが、普通の辛い玉ねぎの
時にはスライスかみじん切りしたあとよく水にさらして辛味をとるといいと思います。
今回魚は刺身用のひらめにしました。適当に切って耐熱皿に入れ、ドライ・ヴェルモット
(または白ワイン)をさっとふり、塩胡椒して、電子レンジで1分半〜2分弱軽く火を通し冷ましておきます。
固ゆで卵も適当に切っておきます。パセリはみじん切りにしておきます。
これらの材料をさっと和えてから、まず、EXV.オリーブオイルをまわしかけ混ぜます。
次にヴィネガー、塩、胡椒を加えさくっと混ぜて出来上がり♪
マリアのレシピは「貧乏サヴァラン」卵料理の中で紹介されています。
きっとマリアレシピではもっと賽の目を細かくして、美しく作られているかと思います。
白身魚は茹でて皮をとりむしるとあったのですが、刺身用のひらめを使用し
マリアが好きだったヴェルモットの香りをつけて火を通してみました。
ヴィネガーに関しては指定はありませんでしたが、私はやわらかい酸味のモルト・ヴィネガーがおすすめです。
この「ロシア・サラダ」も鎌倉ハム同様、かなりお気に入りでいらしたようで「甘い蜜の部屋」にも登場します。
レシピの紹介の中で「焼きの良いパンと、ビイルを添えれば、ドイツの郊外の料理店の昼食のようである。」
とありましたので、メルバ・トーストとオランダのグロールシュ、アンバー・エールを添えてみました。
(ドイツの美味しそうなビイルが手に入らなかったので、味があるのに飲みやすいグロールシュにいたしました。)
焼きの良いパンのイメージは黒パンのようなもっとしっかりしたパンなのですが、マリアが毎日食していた
サンドウィッチパンのイメージからメルバ・トーストにしてみました。
軽くトーストするだけで、牛酪(バター)を塗ってはいけません。マリアの嫌いな塩煎餅の味に似てしまいますので(^_-)
以前「涼しいつまみ」でご紹介している「たまごジェリー」や「桜の木下で・・・」の「春野菜ジェリー」など
コンソメ・ジェリー系レシピが多いのも、実はマリアの影響だったりいたします。
最近、作品を読み返していると、昔からたまたま好みが似ているものが多かったのか、
それとも影響を受けて好みが似てしまっていたのか、わからなくなってきてしまいました(^^ゞ
もし、この紹介でお一人でも森茉莉の魅力を知ってくださる方がいらしたら・・・
なんて素敵なんでしょう。。。
是非、ご興味をお持ちいただけましたら、作品をお読みになってみてください。
(2000.5.13)
2003.3.3追記
上記でもご紹介させて頂いている姫崎せりか様のHP「森茉莉浪漫館」が
このたびリニューアルなさいました。おめでとうございます☆彡
更に今年2003年は森茉莉生誕100年ということで、
別館森茉莉同盟も開設されました!!
森茉莉ファンでまだ行かれていない方はいますぐただちにお出かけください!
(不肖私めも登録させて頂きました。)