フフフ。
そんなにこの――
芋が欲しかったんだな♥
――ああ、この平和、この安息――!
先週まではずっと、氷柱の留学がきっかけの騒動で、気もそぞろな日々を過ごさざるを得なかったわけですが、こうして週が明けて、ようやくいつもどおりのトゥルーライフが戻ってきたと痛感いたしました。
そんなわけで今日は、なにやら序盤からほのぼのとした雰囲気から始まるヒカルの日記でありました。ヒカルの日記って、たまにドキドキさせられる騒動(主に年頃の男女的な意味で)もありますけれど、それ以外に関しては、姉妹の中でもトップクラスの心休まる内容が多いですよね。特に、他の姉妹のフォローというか、騒動の締めくくりに顔を出して、トゥルー俺を安心させてくれるみたいなところがあります。霙姉さんとはまた少し違うベクトルの、安心して背中を任せられる安心感みたいなのがヒカルにはありますよね。
そんなわけで、今日の日記もまさにそのような感じを受けるわけですが……なるほど、ダッチオーブンですねこれ。焼き芋でもなんでも、大変美味しく出来上がるというある意味魔法の調理器具。ホタが欲しがるのも当然といえるアイテムですが――どちらかというと食いしん坊系であるヒカルも、それがもたらす秋の味覚に興奮気味のご様子ですね。
焼き芋ってさ、やっぱり――
こうでっかくて太いお芋の真ん中から――
……はい。こう平和だと、妄想の飛躍も楽しく行うことができるわけで。
それはさておき、おイモの半分ことか、ちょっとかじっちゃってるけどきょうだいだからいいよなとか、ああ、芋の美味しさや暖かさ以上に、ヒカルのぬくもりに心が温まる感じです。「つい――両方かじっちゃうんだ♥」……くそうかわいいなあ!
さて――効して少し和んでから話そうと思ったのか、単純にたまたま思い出したのかは分かりませんが、氷柱の留学騒動の件について、詳しく話してくれております。
結局、今回のチャンスは見送る――と。なるほど、突発的にそういう話が舞い込んできて、それであんなに心乱れていたわけですね。虹子がその手続き用紙か何かにいたずら描きをしちゃってましたが、まあそれでどうこうって話でもないのでしょう。試験日当日朝の受験票とかそういうわけではないですしね。
この9月から交換留学で来た
ルーシーとすっかり仲良くなって誘われて、
その気になってたらしいけど――
……ほう!? 「ルーシー」……いや、あの氷柱のお友達という意味で気になるのはもちろんですが、キャラ的にも興味を引かれるというか……ゲフンゲフン。氷柱の学級って特別クラスなので、外国からの留学生がいるのも納得ですね。ともあれ、きっかけはそんな感じことだったようです。
ただまあ、ヒカルも言ってる通り、氷柱はまだ中学生ですからね。もちろん、その年だろうと留学して悪いわけでは全然ないんですが、するならするで、きちんと本人が気持ちの整理をつけられないことにはね。もちろん、氷柱の能力や目指す進路を考えると、いずれはそういう日が訪れることも覚悟しなければならないのでしょうが――その「未来」が、この「べびプリ」語られる範囲内であるかどうかはさて置き――まあ、それはまた「いずれ」のお話ということで。
さて、そんなこんなでひとまずの決着がついた氷柱の留学話。氷柱の前ではもうその話をぶり返すなよと釘を刺すヒカルは、「ひねくれ者だからな。あんまりつつくと――かえって暴発するんだ」と、氷柱の扱いを熟知しておられます。さすが姉妹の実質的お兄さん。
フフフ――まあ、氷柱がキイキイと
うるさかった先週が明けて――
やっと平和な生活が帰ってきたんだ。
芋でも食べてのんびり――あ。
のど詰まらせないように気をつけろよ?
なにげない日常においては、トゥルー俺にとっても、どちらかというと兄貴分ですよね。……普段はこうでも、いざ男と女って面がくっきり出てくる場面になれば、トゥルー俺も男の子度を全開にして、ヒカルに見せてあげなければ。
大変です、お兄ちゃん!
月曜日から急に――
爆発的に流行が!!
ええ、そうなんです、
ついに私達の身近にも
新型インフルエンザが――
……ついに、ついに恐れていた事態が――! ……ってこの書き出しで思わず天を仰いでしまったわけですが、結論から先に言えば、その最悪の事態、すなわち家族への感染はいまのところ免れているとのこと。ほっ。いや、この赤ちゃん含む小さな子ばかりの大家族で一人でも感染しようものなら、それだけでもう大変なことになってしまうでしょうからね。
とはいえ、だからといって楽観できるほどの事態というわけではなく。語る小雨も相応の緊張感を持って話してますが――
ついに幼稚園は今週いっぱい
閉園になってしまいました!
……なるほど。今年はあちこちで見る光景ですけれど、ついにトゥルー世界の身近なところにまで。とはいえ、トゥルー家の子たちへの感染はなかったようで、それは本当になにより。ただ、幼稚園がお休みとなると、観月やさくらもそうでしょうが、特に園児ライフを全力で謳歌している真璃はかなり残念がっているでしょうね。
まあ、それはさておき。ウチの子三人がそろって感染しなかったのは、もちろん運とかもあるでしょうけれど、やはり日ごろの予防をきちんとしていたからという面は大きいのでしょうね。そのことを真っ先に触れる小雨ですが――うむ、そういう発想がすぐに出てくるあたり、もう立派なお姉ちゃんですよね。
3人とも、毎日がんばって
声をかけあって、
歌を歌い合って――
手洗いやうがいをしていたおかげですね、きっと。
とってもエライ――お家の3人の園児さんたちです♥
あとで――お兄ちゃんもほめてあげて下さい!
いや、全く同感なわけですが、トゥルー俺としてはそれと同じぐらい、そうやってきちんとこの子たちのことを見守ってあげている小雨のことをほめてあげたい気分であります。
それだけではなく、万一家族にインフル患者が出た場合についても、実に恐ろしい事態が生じると想像してしまっているわけですが、これに関しては決して、いつもの小雨のネガ嗜好と切り捨てたりはできない、切実かつ現実的な事態ですからね。「本当に想像しただけでも――こわくて、どうしたらいいかわからなくって――」と、そのぐらい心配してあげられるのが、むしろ適切だと思います。
小さい子たちが苦しむ姿を見るのは、本当に辛くて胸が痛くて苦手――と。これはむしろ、正しく優しい気持ちを育めているからこその怯えなわけで、むしろ誇ってもいいぐらいだとは思いますが、それに加えて必要なのは、そういう事態が生じてしまった際、きちんと向き合っていける強さ。
ただ……
ダメですよね――
もう小学校も最上級生、
本当ならがんばってお姉ちゃんたちを助けて
看病しなくちゃいけない立場なのに――。
これからは小雨ももっともっと!
強くならなくちゃ。
きちんと自分から、こんな風に発奮できるぐらいなのだから、それについても何の心配もなさそうですね。
いや、今日の小雨はなんというか、いつもにも増して頼れるお姉ちゃんというか……。いつぞや、マリーにお姉ちゃん度で抜かれてしまうんじゃないかと心配していましたが、この分なら、まだまだ大丈夫って思えますよね。
そんなわけで、案の定幼稚園がお休みで退屈している三人をかまってあげる役目も受けているようです。これきっと、自分から率先して行ってることなんでしょうね。なんとなくそんな気がしますよ。
クスクス――♥
お部屋から――
つまんないの歌が聞こえてきてる。
お兄ちゃんも気が向いたら――
ご一緒にいかがですか?
おおお……今日の小雨なら、ホタにだって負けませんね。誘いを受けたとき、その母性オーラにちょっぴりクラリと来た気さえします。
あーもう!
ほんとにうるさいわ〜。
たった3人増えただけなのに――
チビちゃんたちパワー倍増!!
こんなにスゴくなるとは思わなかったな。
早く幼稚園――
始まってくれればいいのに。
海晴姉さんの眉間にシワが! ……などと思わず怒鳴られそうなことをつい口に出してしまうトゥルー俺は本能的に短命タイプなのでしょうが、ともあれ海晴姉さん、幼稚園休みによる家庭内のやかましさ増大に頭を悩ませておられるご様子です。
別に普段の休みの日だってみんないるといえばいるのですが、今回のお休みはあくまでインフルエンザによるイレギュラーということで、普通の休みよりも遥かにストレスが溜まるのでしょうね。
それになにより、休みなのは幼稚園以下の子たちだけ、っていうのが致命的なのでしょう。トゥルーママ……に関しては、お仕事もあるでしょうし、家に居られるにしても、あさひさんについてなければいけないでしょうからね。自然と残った小さい子たちは、暇を持て余しモードに突入してしまうのでしょう。このぐらいの子たちにとって、幼稚園とかが休みになるのって、それだけ大きなことでしょうからね。自分達だけで遊びにいけたりもそうそうできないでしょうし。インフルエンザのこともありますし。
とまあ、そんなわけで、幼稚園児以下ばかりが残ったトゥルー家平日日中は、なかなかにカオスな状態。
いつもタイクツは大嫌いっていってる
真璃ちゃんはもちろんイライラしてるし、
観月ちゃんは疫神退散のお祈り始めるし、
さくらちゃんは――
なんか知らないけど泣いてるし。
そしたらつられたあーちゃんが泣き出して、
それを青空ちゃんがくすぐって、
転がりだしたあーちゃんが虹ちゃんに
ぶつかって今度は虹ちゃんが泣き出して――
んもう。
……オオウ、これはなかなかに修羅場っぷり。まあ、保育園とかなら、ごく日常的な光景でしょうけれどね。さすがの真璃も、この状況を収められるほどにお姉さんオーラを成熟させられているわけではないようです。……そしてこの中で、観月の行動がちょっぴりシュール。
なにはともあれ、やっぱりこの子たちには、きちんと大人がついていないといけないなあと改めて。
そして、何より海晴姉さんがおかんむりなのは、この状況によってもたらされた、家中ちらかりまくりの惨状。「部屋の床いっぱいに巻き散らかされた、おもちゃ、おもちゃ、おもちゃ――」と、説明を聞くだけでも容易に想像できますね。
今回は事態が事態ということで、おもちゃ持ち出しの制限――っていうか、トゥルー家19人分の歴代おもちゃの量を想像するだけで頭がクラクラします。麗のものだけよくわかるでしょうねきっと。……とまあそれはさておき、それだけの量があるからこそ、普段は持ち出しの制限をしているようなのですが……解禁した結果がこれだよ!
もう――
もう――
「もう、いい加減にしなさ―――いっ!!!!」
久しぶりに――どなっちゃった♥
……いやいや、姉さん(はぁと)とかちょっと。さすがはネアカ系の海晴姉さんというべきか。まあ、しかりつけること自体は何も悪くないとは思いますけどね。
おまけに――みんながあわてふためいて
片付けるのをみて――
ちょっとすっきりしたりして☆
あはは♥
悪いお姉さんね?
……このお茶目さんっぷり。海晴姉さんの御歳でそれはちょっぴりギリギリという気もしなくは無いですが、まあ間違いなく破壊力満点なので問題なしの判断をば。
とはいえ、こういう茶目っ気というか可愛げみたいなものは、海晴姉さんにはたっぷり備わってますよね。そのあたり、長女ならではの人間力って気がします。
その後、お片づけを手伝ってあげたのは、さすがに優しい姉さんだなあ……などと思っていたら、
でも、片付けてるうちに懐かしい――
セーラームーンの人形見つけちゃって。
ちょっと遊んじゃったから――
よけい散らかっちゃったり――
した、かな?
あはははは――♥
……セーラームーンだと!? いやいや、それはまあ、女の子向けには超ポピュラーなタイトルですし、それよりむしろ「ちょっと遊んじゃった」の部分のほうがアレといえばアレなのですが……
……………………。
………………いや待て、トゥルー俺よ。大事なことを見逃すなかれ。
セーラームーンですよ、セーラームーン。……これの直撃世代って、リアルタイム放送時だと……小学生時代に見ていたとして、だいたい25歳ぐらい……? いやまあ、再放送もたくさんしてましたし、幼稚園前後のときに見ていたってことなのかも知れませんしね! ええ、妙な勘繰りをするのは良くないことだと思えるトゥルー俺は本能的に長寿タイプ。はい、海晴姉さんじゅうだいですまだ。
いくらなんでも――
1週間は長すぎだってば!
ほんと、もう――
何考えてるのかしら?
園長先生ってば――。
いや、いくら園長先生とはいえこればかりは――などと思ってしまうのは、これすなわち平民の発想。いかに新型インフルが猛威を振るうとはいえ、それとこれとはまた別とばかりに、女王様らしい不満を主張なさるのが、まさにマリー流ライフということなのでしょう。
こんなに元気でかわいくて
死ぬほどタイクツが苦手な
このマリーに――
1週間も家にいろだなんて!!
おおお……そこまで言われてしまうと、確かにこれは大事、と対策を考えないわけにはいかない心境に追いやられるトゥルー俺は、フェルゼンという以上にやはり下僕体質が身についているような気がしてなりませんが、まあそれはさて置くとしても……幼稚園児にはやはりキツいですよね。マリーも言ってる通り、トゥルー俺たちが休みというわけではないのですから。
しかしもちろん、そのような事情を斟酌してくれるという発想が女王にあるわけもなく、
んもう――バカッ!
ばかばかばかばかばか――っ!!!
なんて気の利かないフェルゼンなの?
こんな時くらい――
マリーのためにずーっと
お家にいるよ、ボクのかわいいプリンセス♥
とかなんとか言ってくれたっていいのに!
……あふぅおふぅ!(←前半部分の罵倒で悦んでいます)
それはさておき、後半の「ボクのかわいい〜」という言い方に、海晴姉さんの血を色濃く感じました。こういう男の子惑わせ系の発想といい、性格の系統としてはかなり近いものがありますよねこの二人。
そして始まる――マリーの妄想劇。おお、これまた凄い勢い……「アデュウ、アデュウ――永遠に――私の愛しい人♥」とか、春風さんあたりにも負けない強力妄想状態!
……と思ってたら、「なんて――楽しく。
マリー・アントワネットごっこができて、
少しはタイクツもまぎれたのに」なんて、わりと冷静にも自分を見ておられたご様子。ううむ、さすがに器が大きい。まあそれに、幼稚園児ぐらいまでならこのぐらいの妄想演劇ごっこをいきなりやってみせたところで、年齢的に当然といえば当然なんですよね。どこも不自然ではない。……ええ、中学二年生にもなっていきなりシャーロックホームズごっこを行うのは、ちょっぴり面白すぎる行動のような気はしますが。
とまあ、そんなわけで、真璃たちにとってこの土日は、ようやく退屈から解放される日でもあるわけでして。それはもう、トゥルー俺には大変な期待がかかっているとは想像しておりましたとも。「いーっぱい遊んでくれなきゃ嫌よ?」 いいですとも! ええ、どんな遊びでも――
やりたいことは、舞踏会ごっこにお馬さんごっこ、
お店やさんごっこに――あ。
最近は予防注射が流行ってるから
お医者さんごっこも外せないわね!
……なんですと?
「お医者さんごっこ」……そう、言ったのですか。
あー楽しみ!
かしこーい美人女医のマリー様が
瀕死のフェルゼンのお身体を
すみからすみまで診察してあげてよ☆
フフフ――覚悟なさい?
……ドM天国(パライソ)、開催決定?
……マリーの言う「お医者さんごっこ」とか、すみからすみまでの範囲とか、果たしてどの程度なのか、大変気がかりですが……はい。最大限の覚悟という名前の期待をもって望ませていただきたく!
長かった1週間が
終わって――
ようやくおうちにも、
いつもの生活が――
戻ってきましたね♥
トゥルー世界を襲うインフル禍もようやく収まり……ってことではないんでしょうけれど、しかしさし当たって幼稚園のお休みはようやく終わって、ようやく通常通りの日常が戻ってきたようです。星花の小学校にも、それなりにインフルの影響はあったのでしょうけれど、ともあれ家族に感染した子が今のところ出ていないことこそが何よりであります。そんな晴れやかな週明けの今日はちょうどマリーのお誕生日とのことで、なおのことめでたいです。マリーはきっと、幼稚園でもみんなから盛大に祝って貰うでしょうから、本当にちょうど良いタイミングだったのでしょう。
それにしてもやはり、普段は幼稚園に通っている子たちがみんな平日日中家にいるという状態は、かなり特殊というか、面倒を見なければならないお姉ちゃんたちからすると、ある意味非常事態みたいな状況ではあったようですね。
なんだかみんなが
まだ赤ちゃんだった頃に
もどったみたいで。
星花はけっこう――
楽しかったんだけれど――
エヘヘ♥
とはいえ、星花ぐらいの子たちにしてみれば、むしろトゥルー家のちょっと昔を思い出させる、いい機会でもあったみたいですね。マリーたちがまだ幼稚園前の赤ちゃんだったころというのは、ちょうど星花にとっては、お姉さんの自覚が芽生えて下の子たちを見られるようになる時期だったのでしょうね。
しかしながら今回は、星花が当時覚えている3人の幼児――当時よりはずっとお姉さんになってるとはいえ――に加えて、現役幼児たちまでが加わっているわけで、やはり海晴姉さんや春風さん、ホタといった面倒見役のお姉さんたちにとっては超修羅場だったようです。テンテコマイとか、言い方がちょっと可愛いなあ。
そんな海晴姉さんたちのみならず、その災禍は霙姉さんにまで及んでいたとか。ううむ、トゥルー幼児パワー、恐るべし。マントに緑のベトベトって……一体なんなんでしょう。俺ら世代だとスライムとかが思いつくわけですが、さすがに海晴姉さんすら直撃はしていないだろうアイテムなので却下ですが。
まあ、でも、あれは――
夕凪ちゃんも悪いんだけれど――
……あ、なんでもナイ♥
星花、告げ口は良くないですもんね。
……物体の正体は良く分かりませんが、誰の所持品であったかは判明。いや、星花さん。その良い子っぷりと「なんでもナイ」って言い方は思わず悶えそうなぐらい可愛いんですが、日記に書いた時点で手遅れというか。氷柱だとゲンコツ制裁でしょうけど、霙姉さんが叱ったりする場合、どういう手段を用いるのか、夕凪さんには悪いですがちょっと気がかりなので、事の顛末に注目です。
さて――それはさておき。
もし――
明日、大きな星が流れて。
また――お家に新しい赤ちゃんが
やって来るようなことがあったら――
きっとまたこんな風に――
大騒ぎになったりするのかなって。
……またも新家族のフラグっぽい発言が。いやあ、この世界をあくまで『べびプリ』という作品としてみると、さすがにこれ以上人数が増えるというのは考え難いわけですが、しかし星花たちの立場に立って見ると、今まで毎年生まれてきていたはずの新生児がいなくなっちゃったということは、何か大きな喪失感みたいなものがあるのかもしれませんね。
でも――。
そんなこと――もうないですよね?
お兄ちゃん。
なにしろお家にはもう19人も
女の子が――
いるんですから――
……という風には言っていますが。新しい家族が増えて欲しいわけではないにしろ――どこかやはり、毎年あるはずのものがないという喪失感が、こんな風なことを言わせているように思えます。
(新型インフルのせいで)
すっかり――家を
出られなくなっていたユキが、
今日の午後、久しぶりに――
外出することになりました。
そんなユキのことを話してくれているのは吹雪というこのユキユキコンビの連携! この子たちはなんというか、まさに「綿雪」と「吹雪」という名前が示している通り、それぞれ性質は違っていても、根っ子の属性は近いというか、通じるものがあると言うか――とにかくなんだか並んでいるのがお似合いって感じの二人ですよね。
それはさておき、インフルのとばっちりはやはり綿雪にも及んでいたようで。まあ、この子がかかった日には、赤ちゃんがかかる以上に深刻な状況になりかねないわけですから、気をつけすぎるってことはないですよね。
そんな状況もようやく終わって、ようやく綿雪にもお出かけの許可が出たようです。引率は、氷柱を初めとするお姉ちゃん4人と、まさにVIP待遇。立夏あたりは、付き添いという以上に自分もお出かけしたいからって感じなんでしょうけれど。
そんなノリでの付き添いに、ここのところたまたまお出かけしていなかったという吹雪も参加。暗号解読の本にハマっていたせいとか、いかにも吹雪って感じの理由ですね。金色の三角クリップが足りなくなったとのことですが、やっぱ読み物かなにかに挟めているのでしょうか。
ともあれ、そんなお出かけの際のお話。
駅の近くのショッピングモールを
目にしたとたんに――
ユキが声を上げました。
「わぁ――もう、すっかりクリスマスだ!」
そう、街は早くも――
ツリーやリースやトナカイだらけだったのです。
――ある意味定番の、気が早すぎるクリスマス風景。所詮は商業主義によるもの――という思いがないわけでもないですが、しかしこのユキの反応を見れば、「それはそれでいいな」と柔らかな気分になることは容易です。ホント、綿雪はこう、ちょっとした幸せを感じてくれているだけでも、それを見守るこちらを大いに幸せにしてくれる子ですよね。
そんな思いは、どうやらおおむね吹雪たちも同じだったようで。「いくらなんでも早くないでしょうか?」と思いつつも――
そう言ったユキの笑顔が
とても嬉しそうで、
それを見ている姉たちもみな
とても幸せそうで、
だから――
私はヴァージニアと
アメリカの新聞社の話を思い出して――
何も言わないことにしました。
ああ……なんだか、今年たくさんあったトゥルー家の幸せの中でも、一番心温まる光景ですね。本人だけでなく、見守るお姉ちゃんたちまで幸せに。ユキは皆に幸せをくれる天使。誰も異論は唱えないはず。
さて、吹雪が語っている「ヴァージニアとアメリカの新聞社の話」というのは、どこかで聴き覚えもある話でしたが――いちおうぐぐる先生にお尋ね。吹雪の知識は本当に幅広いなあと思いつつも、まさにというべき良いエピソードです。
そんなユキの笑顔にあてられてか、今年は家族のみんなでサンタクロースに手紙を書くことに。そういうのはあまり好きではないという吹雪の感覚は、大人のみならず大人びた子供でも頷けるところはあるでしょう。しかしながら――
本当に返事が来るという
フィンランドの宛先については読んだことがあるので。
我が家の平和を――今年も願います。
今、キミがここにいることの平和を――
……単純に知識があるってだけではなく。この子は本当の意味で、心を良く成長させている、立派な大人び方をした子ですよね。まだ子ども扱いできるうちに、大いに褒めたりなでたり抱っこしてあげたいところなんですが……冬の間ぐらいなら、外の寒さと相殺ってことにはならないでしょうかね。
今日も――
お家の中いっぱいに、
みんなの歌う楽しそうな
バースデーソングが
響いています。
10月からは
1カ月の間に
2回もやってくる、
我が家の――
バースデーパーティシーズン!
そうそう、トゥルー姉妹の誕生日って、それなりに散ってはいるんですが(というか1ヵ月ずつ綺麗にズレている)、それでも19人もの人数なので、10月〜4月の間は、1ヵ月に2回のバースデーが行われるんですよね。これにお正月やクリスマス、バレンタインなんかのイベントが加わるので、この季節のトゥルー家族は、いっそうイベントたっぷりに過ごせるわけです。……改めて、ホタ大変だろうなあとしみじみ。
とはいえ、当のホタはそんな大変さなど微塵も見せないのは、今日の日記を見ての通り。今日誕生日を迎える霙姉さんのためにケーキを焼くのも、実に嬉しくも感慨深そう。もうこんな主婦生活を過ごすようになってどのぐらいなのかと気になっていましたが、少なくともこんなケーキを焼けるようになったのは、6年前――すなわち、小学3年生ぐらいからってことに。星花あたりには、まだまだ荷が重そう……っていうか、超小学生にもほどがありますよホタさん!
ホタはケーキを焼くのが好きだから、
こんなにたくさんのきょうだいがいて、
こんなにたくさんのバースデーケーキを
焼くチャンスがあって――
とっても幸せ者ですよね!
……そしてこの、筋金入りの天使っぷり。いやもう、蛍って女の子は、この大家族であるトゥルー家に、神様が遣わしてくれた天使としか思えませんよ。この家に生まれるべくして生まれてきた女の子。ホントにそう思いますね。
そんなホタですが、トゥルー俺のケーキを焼いてあげる機会がこれまで一度しかなかったことがご不満の模様。
本当なら――ホタの初めてを
もらってほしかったのにな。
……いやあ、今からでも、別に、全く、遅くは――とまあ、そんな定番のトゥルートラップはさて置くとして。ええ、さすがにこういう一言だけで発狂しないぐらいには慣れてきました。十分すぎるほどに興奮はしますがね!
で、そんなホタの「初めて」……のケーキ作りは、なんと海晴姉さん直伝。今まであまり、お料理をするイメージがなかった海晴姉さんですが、それはすでに外で働いているからで、やろうと思えばホタや春風さんクラスの技能はお持ちなのかもしれません。長女ですしね。……次女なのに食べる係専門な人もいるような気はしますが。
「胸一杯のドキドキを込めて初めて焼いた――ホタの初恋みたいなケーキ♥」なんて言い方を見ても、ホタにとってのケーキ作りが、どれだけ心ときめく行為なのかは伝わりますね。料理にしろコスプレにしろ、人のためにしてあげることっていうのが、ホタにとってはツボなんでしょうね。
そんな「初めて」ケーキは、あいにく失敗作だったようですが……
だって、そんなケーキでも
きっとお兄ちゃんなら――
「おいしかったよ」って――
ほめてくれたと思うもの――エヘヘ♥
ホタ――お兄ちゃん、大好き♥
……その様子を思い出すだけで、この一気呵成のお兄ちゃん大好き攻撃ですよ! ええい、このいけないラブ天使め。
ともあれ今晩は、霙姉さんに合わせた大納言ケーキ(ぐぐるまでもなく餡子入りと理解しました。そして正解)を堪能できたようですね。
お兄ちゃんには生クリームを
たっぷりサービスしちゃいますね♥♥♥
……ここで即座に、ホタの裸体にたっぷりクリームが乗っかってる姿を妄想してしまう俺ではありますが、それもある種のコスプレということでどうかご容赦!(されません)
私は――
ワイドドア車が結構好き。
この家でいきなりこんな唐突な車両関係と思しき話を出してくるのは一人しか居ない! すなわち麗! ……ということで、なんだか久しぶりって感じのある麗日記でございます。ええ、ここのところ、氷柱の一件なんかもあって、ずっと家族内がドタバタしていましたからね。それで久しぶりに感じられるのかと思ったら……実はもう二ヶ月近く間がありましたか!
そんなわけで、久方ぶりの麗のお話を堪能できるなと心躍らせざるを得ないわけですが……
この前、中野駅のホームで
吉祥寺行きの総武線を待ってたら、
たまたま、白線の入った05系の
ワイドドア車が来て――
うわっ、当たりッ♥
って――
ずごい嬉しくなっちゃった。
……うん。まさに麗。この方面に愛着のあるファンならではの喜びのツボはさすがに知覚できない身ではありますが、それでもこんな風にこの子がマニアックな喜びに浸っている様子を見るだけで嬉しいものがあります。
さて今回は、そんな喜んでいる対象について麗が詳しく説明してくれていますが……このワイドドア車って、有効性はさて置き好みって感じのモノみたいですね。というか、だからこそなんでしょうか。麗は車両関係には、あたかも頑張っている人のような思い入れを抱く子ですから。
最初から多扉車との生存競争に
勝つべく登場させておいて、
座席が少ないから座れないとか
やっぱり効果がなかった、なんて、
そんな――作る前にちょっと考えておけば
わかりそうな理由で、
みんなから嫌われてると思ったら――
かわいそうになるじゃない。
私――そういう車両に弱いの。
うん。案の定。この麗の共感力っていうのは、感受性が高いことはもちろん、本質的な心の優しさって部分からも間違いなく起因している類の思いなんですよね。分かりやすく一言で言うなら、「情にほだされやすい」ってことでもあるんでしょうけれど、それでもこの子のこういう思考の形を目の当たりにするのは、なんだかとても暖かい気持ちになれるわけなのですよ。麗は優しい子だなあって言ってあげたら、どんな顔するんでしょうね。
そんなわけで、ここ最近の麗は、鉄オタ行動まっしぐらだったようです。遠出で帰りが遅くなってしまうぐらいの勢いのようで、ちょっと心配――するまでもなくすでに叱られていたようですが。しかし……
なんだかすごくかわいく思えてきて、
「ああ、がんばれ、1000形のワイドドア車♥」
って――なでてあげたくなっちゃうの。
……うん。この子には色々と資質が。間違いなく。
さて――そんな麗の鉄オタライフの様子だけで終わるかと思ったら、なにやら気になる引きが。
は?
何しに行ったかなんて――
別になんだっていいでしょ?
アナタに関係ないじゃない!
ただの――買い物よ。
べつに。
フン。
はい。逆に改めてそう言われると、明らかに何かあるというフラグなわけでして。こういうところの麗は本当、竹を割ったかのような性格だなあとニヤニヤしてしまうわけですが。しかしそう言われてみれば、いかに麗が鉄オタとはいえ、いきなりそんなに遠出してしまうようなことって珍しいですからね。
今回麗が赴いたのは、中野駅から総武線で吉祥寺行きということで、ママの芸能事務所のある方面(表参道)とも全然違いますね。東京方面の地理には全く疎いので、目的を察するのは少々荷が重過ぎますが、はてしてはたして。
きょうから――
ようちえんのおべんとうが、
あったかあったか
になりました!
うれしいな♥
さくらが嬉しそうにしているとそれだけでトゥルー俺もうれしいな!(♥マークの使用はさすがに自重いたしました)
そんなわけで、ここしばらくの騒がしさも一段落し、なにやら実に穏やかな冬前の日々って感じの雰囲気が伝わってきますね。まあ、クリスマスあたりにはまた色々あるのでしょうけれども、こんな冷え込んでくる時期には、さくらのあったかさを堪能するに限ります。
さて、そんなさくらがあったかあったかしているのは……お弁当? なにやら、幼稚園で先生が暖めてくれるとのことですが、これは一体どういうことなんでしょう。電子レンジかな、とも思いましたが、さすがに全園児のお弁当をチンし続けるのはちょっと大変でしょうし。となると、保温庫か何か? 業務用にはこういうお弁当用のものもあるみたいですが、園児のために備え付けてあるとしたら、さすがはトゥルー家の子が通うレベルの幼稚園ですね。実にブルジョワジー……って、もしかして今の幼稚園には一般的に備え付けられているようなものなのでしょうか。
まあ、そんなことはさておき、
みんなみんな――
ぽっかぽか♥
ほかほかゆげさん、
いいきもち!
さくら、
たべるのラクチンになるの。
うーれしうれし♪
……こんな、いつにないほどハイテンションに幸せオーラ放ちまくりなさくらを見られただけでも、トゥルー幼稚園の配慮には圧倒的感謝の念を送らずにはいられませんね。更に食べるのが遅いさくらにとっては、休み時間を多く遊べるという効果まであるとか。
しかしながら、やはり良いことだけでもないようで――はい。トマトやみかんまであったまってしまうという副作用も。このへんはさすがにホタたちにとっても想定外の事態でしょうか。最近になって行い始めたことなのかもしれませんね。ともあれ、そのおかげでさくらが――
ちょっぴり、さくら――
うぇぇってなっちゃった……
うぇ――ん――
…………。
(言えない……)(さくらが「うぇぇ」ってしそうになってるのを想像して)(ほんのちょっぴりとはいえ)(心ときめくものを感じてしまっているだなんて……!)
それはさておき、こんどはみかんをナイナイしてもらおうと、状況に応じてリクエストを行えるようになったあたりで、さくらの成長も感じられるのでした。
お家には――
自転車がいくつかあります。
おお、ほのぼの日常モノであれば必ずや一度は通るであろう自転車話がついにトゥルー家にも! ……そんな日記を書いているのが綿雪という時点で、話の流れについて予感めいたものは頭に浮かんでしまうわけですが、それはひとまず置いておいて、トゥルー家の自転車事情について。
お姉ちゃんたち用の、つまり大人用の自転車が5つで、ちっちゃい子用のが4つ備わっているようです。この言い方だと、誰かの専用車っていうのはなさそうな雰囲気ですね。ヒカルや立夏あたりなら、自分専用に近い形で乗り回しているものもあるかも知れませんが、基本的には家族共用のものなのでしょう。かく言うトゥルー俺が一番自転車を頻繁に使うであろう立場でしょうね。
しかしながら、これだけ小さい子の多い家であるにも関わらず、補助輪つきのものが1台だけというのは、ちょっぴり意外というかなんというか。
それはさくらちゃんや観月ちゃんが
練習する用の小さい小さい、
1番小さい自転車――。
この口ぶりからすると、トゥルー家において自転車というのは、補助輪つきの自転車というのは、あくまでも練習用であって、常用する類のものではないって認識なんでしょうね。ううむ、これはさりげに本格的というか厳しいというか。さくらなんか、まだ自転車よりは三輪車に乗ってるべきなんじゃないかと思うわけですが、ともあれトゥルー家全体の向上心みたいなものを垣間見られました。
さて――今日の日記を書いてる本人であるユキですが。本人が語るのを聞くまでも無く……
ユキはこれまで1度も――
自転車には乗ったことが
ありません。
1度でいいから、
乗ってみたいなって――
ずっとずっと思って
いたんだけれど――。
危ないからまだ
いけませんって――
ずっとずっと
言われていたから。
ええ、まさに想像どおり。
しかしながら、ここ最近のユキは、体の具合もだいぶ良くなってきたことにより、今まで出来なかったことに色々チャレンジしてみようモードに突入しております。となれば当然、自転車にだって。
そんなわけで、観月からも自転車の練習を勧められていたようなのですが、そのたった1台の補助輪つきは、さくらや観月が乗るようなサイズなので、ユキには少々小さすぎ、と。……なんというか、春風さんや小雨あたりも、観月ぐらいの年齢でもう自転車の乗り方はマスターしていたのかなあと思うとけっこう意外ですが、なにしろさくらが今練習しているぐらいですからね。……で。他の家族みんなが、そんなにちっちゃいころに乗れるようになっていたとなると、やっぱ一人だけずっと乗ることが出来なかった綿雪にとっては、もやもやするものがあるでしょうね。
もちろん、今から練習するのだって全然遅くは無いわけですけどね。ヒカルあたり、小学生サイズの自転車に、ささっと補助輪を付けてくれるぐらいのことはしてくれそうですし。まあ、トゥルー俺がやるのももちろん可。
――とまあ、それはおいおい考えるとして。
ね。
お兄ちゃん――。
ユキのお願い。
今度お兄ちゃんの自転車の後ろに――
ユキを乗せてくれませんか?
風を切ってビュンビュン走る
気持ちよさ――
お兄ちゃんに教えて欲しいの♥
ええ、こんな嬉しいお願いをしてもらえる流れにもなるのですから、もうしばらくは、ユキは自転車に乗れなくったっていいかなあ、と。
今日のお天気は――
雨!
いやぁねぇ?
まったく。
さすがに「晴れ」系の名前を持っているだけあって、海晴姉さんは雨が嫌! とのこと。……今日の日記は全般的に、これまた自分の名前に色々と思うところのある小雨が読んだらビクビクしてしまいそうな雰囲気を帯びておりますが、まあそれも、小雨が抱いて生まれた宿命ということでひとつ。慣れっこといえば慣れっこでしょうしね。
さて、お天気の話題が慣れっこといえば、お天気お姉さんであるところの海晴姉さん。当然、雨の予報もそれこそ日常的に行っているわけなのですが、
別に私が悪いワケじゃないのに、
お天気予報で――
「今日は1日雨の予報です」
っていうだけで。
なんだか私が悪物みたいに――
思われるじゃない?
べつに私が雨をつれてきてる
わけじゃないのに。
……なるほど。だいたいのところはこれで十分に分かりました。あと、天気予報も100%の的中率ではないでしょうから、うっかり晴れ予報を出した日に降られた日には、それこそもっと色々言われることになるでしょうね。ともあれ、海晴姉さんのこの嘆息は、ただ単に晴れが好きってだけのことではない、ある種の職業病みたいなものということで。働くお姉さん、やっぱ色々大変です。
そんな海晴姉さんが語る、寒い季節の雨の描写は、実に寒々と重々しく、詩的な雰囲気さえ感じられます。お天気お姉さんだからというだけではなく、トゥルー家の感受性みたいなものも感じますよね……って!
ああっ!
もう!!
クサクサするっ。
雨なんて大嫌い!
ひいッ! クサクサしててごめんなさい! ……と思わず反射的に自分の体をファブリーズまみれにしたくなってしまいましたが、これと同じような反応を小雨がしているのではないかともちょっぴり危惧。個人的には雨の日の匂いってそんなに嫌いでもないんですけどね。まあ、ここでいうクサクサは、どっちかというと臭いの表現ではなく、気持ちがくさくさするってことなのでしょうけど。
ともあれ、そんな社会人の鬱憤をどかーんと爆発させた海晴姉さん。この可愛らしさすら漂うキレ方、妹たちに対してもしばしば行いますよね。
ですが、そんなネガティブを引きずらないのは、ネアカな海晴姉さんの持つ美徳の一つ。無論、ただ何もなしに気分転換ができるわけもなく――
こんな日は――
そう。
きゅうぅっと♥
何か体が温かくなる
飲み物でも飲んで――
陽気に騒ぐのが
1番よね?
ウフフッ――
おやおやまあまあ。特に何とは言われてませんが、成人を迎えた人間の特権である飲み物の類が、いやおうなしに連想されてしまいますね。まあ事実その通りなのでしょう。いかにも好きそうですしね――って、海晴姉さん、それを飲むことが許される年齢なんでしょうか。今までそれについては色々議論がありましたが、はてさて……ってまあ、飲んでるものすら特に何とは言われてませんから、まあ問題なしということで。
そういえば以前、ホタがある時飲んでしまい、やたら陽気になったと思ったらしばらく体調を崩してしまった事件がありましたね。そこでは「ラベルのついてない謎のぶどう色の液体の入ったガラスビン」とありましたが……もしや?
とまあ、色々想像してしまうわけですが、当のトゥルー俺はそんなことを行っている場合ではなく――
まぁまぁまぁ♥
ちょうどいいトコロにいたね、
キミも!
さあ、我が最愛のオトウトよ、
今日はこの頼りになる
美しいお姉ちゃんに――
悩み事なんて相談してみたら?
すでに「出来上がって」おられる――!? いやまあ、普段から、特にトゥルー俺に対しては、こんなノリの人ではあるのですが! しかしこれは、なんとも嬉し恥かしな美味しいシチュ……でありつつ、色々な意味で危機をも感じてしまう状況であります。そりゃあ、何かを飲んでハイになってしまう海晴姉さんは、実に青少年の情操を刺激しまくってくれる存在であることは間違いないでしょうが、それと同時に、実に厄介なテンションでもあるわけで――ましてや仕事の愚痴モードがオプションで。だいたい、絡みのとっかかりからして、お悩みを話しなさいっていうあたり、今夜のトゥルー俺には相応の覚悟が必要とみました。……ああ、ヒカルあたりが機を見計らって助けてくれないものか。
それをサカナに――
楽しんじゃいましょ!
ウフフフフフ♥
……天国と言う名前の大ピンチが今ここに!
どんぐりだいすき!
どんぐり、
そらのたからもの!
日記を開いて「あ、今日は青空か」と確認した瞬間、心が穏やかになるのはきっと俺だけではないはず! ええ、時には波乱も起きるトゥルー家ですが、青空が日記を書く日というのは大抵穏やかな日常(青空が引き起こすゴイスーな事態を微笑ましいものと認識する限りにおいては)というのがほぼ確定していますからね。
そんなわけで、今日の日記も、青空のYASEIっぷりがどこかで発揮されるであろうという予感はしつつも、ああ、秋らしい日記だなあと穏やかな気分で挑める次第です。すなわち、どんぐりのお話。
ええ、いきなり「どんぐりってね、おいしいの」と言われた日には、それ食べちゃダメー!と慌てて駆け寄りたい衝動に駆られるわけですが、そこはさすがのトゥルー家、調理済みのものしか食べられないとは徹底済みのようですね。ぱんぱん=パン? ともあれ、おなかのおまつりが起きてしまうからって言い聞かせているのは、なんだか微笑ましくて良いなあと。
そらがどんぐり
おくちにいれると
ほたがおこるの。
ほた、おこりんぼの
なきむしんぼ!
ほた、ないたら
かわいそかわいそだから――
そら、どんぐりたーべない!
……ただ、それを躾けるホタは相当に大変であることも、きちんと認識しておかなければ。ううむ……この立場逆転的な認識っぷり。さすがは青空ではありますが、その理由はさておき、きちんと優しい心を備えさせつつしつけに成功しているというのはよきことではないかと。でもやっぱ、青空が何でも口にいれようとするのを泣きながら止めようとするホタの姿を想像すると、改めて大変だなあと思う次第です。料理を作ることは得意だし好きなので苦にならないのでしょうけれど、こういうところのお母さん仕事っていうのは、さすがにまだまだホタには荷が重いって部分はありますよね。
ともあれ、そんなホタのしつけが功を奏して、青空的にどんぐりというのは、食べずにただ収集するものとしてしっかり認識されているようです。
おでぶどんぐり
たっくさんたくさん。
クフフ♥
クフフフフフ――♥♥♥
……こ、この喜びっぷり……! あたかも金貨から漂う石鹸の香りを堪能するマッセナのような迫力すら感じてしまいます。おでぶどんぐり……太いのが素敵と?
さて、そんな青空がどんぐりを収集している箱をトゥルー俺に見せてくれるわけですが……
ほら!
どんぐりのはこ、
むしさんいっぱい!!
ぎゅうぎゅうずめ!
きっとどんぐりたべにきたの♥
そらのどんぐり
おいしいからだよ!
そらもたべてみたいなぁ――
トゥルーインセクトショック発生!! ……いやあ、リアルな絵とかがついてなくて本当によかった。そういえば以前に本誌でも、虹子の箱にクリーチャーを入れて泣かせてしまったことがありましたよね。まあ、これは青空自身の箱なので、どうすべきかは色々悩ましいところですが……とりあえず、ホタにだけは見せないように行っておかなければ。というか、トゥルー家で虫が平気な子って誰々でしょうかね。霙姉さんやヒカルあたりは問題ないとして……うーむ、なかなか判断が難しいところ。
さむ〜い!!
もう、さむいさむい――
さむ〜いよ!!!!
うむ、確かに今日はリアル全国的に超寒いですね。そしてこういうところで改めてトゥルーとリアルとの密接なリンクっぷりを再確認するわけですが、そんな寒さに負けないぐらいのやかましさを発揮しているのは、ご存知トゥルー家族の地雷処理班・夕凪さんです。ちなみに処理方法は自分で踏む。
そんな夕凪さんですから、傍に居ればどれだけ暑苦しいまでに暖かかろうとも思うわけですが、本人自身にしてみれば勿論そんなことはないようで、自分の手の冷たさに可愛いリアクションを取ってたりします。
ユーナの手はいつも
ホカホカで、
チョコだってすーぐ
溶けちゃうのに!
うん、夕凪さんは姉妹の中でも特に体温が高そう。立夏にすら負けなさそうです。ああー寒い日には夕凪さんをゆたんぽ代わりにぬくぬくしたいなー、と、去年の押入れ監禁事件をちょっぴり思い出してしまったり。
それはさておき、どうやら今日の寒さが、先日の話題と微妙にリンクしてきたようで――
ねねね、
これって、
もしかして――
海晴お姉ちゃんのマホウ!?
――っていうか、
ノロイ!?
お天気お姉さんであるがゆえに、天気を的中させることは、夕凪さん的にはマホウの領域のようです。……いや、ノロイと称しているあたり、海晴姉さんに対する夕凪さんの認識もちょっぴり垣間見られるわけですが。またもプチ地雷踏みの予感。
とはいえ、やはりこういうところ、夕凪さんは純粋だなあとも改めて。小学二年生なのですから、もっとすれた考え方の子だっているでしょうに、夕凪さんのピュアっぷりは、まばゆいばかりです。だからこそのマホウ少女なんですけどね。
そんなわけで、「天気を言った通りにする」力のある海晴姉さんは、「さっすが夕凪のお姉ちゃん」的な意味でリスペクト対象になるようです。うーむ、さすが夕凪さん的認識。
海晴お姉ちゃんってば
お天気魔女だ!
……そしてまた華麗に地雷を踏んでいただいたいわけですが、本人がそれに気付いているかどうか。
とまあ、そんな思いはさておき、この寒さでトゥルー俺のことも気にかけてくれる夕凪さんはやっぱり天使。苗字のみならず。
寒くなかった?
寒い思いしてたんなら、
ユーナがホカホカにしてあげるよ!
Oh! 願ったことがそのまま叶うという俺のマホウが発動したかのごとく! ……と思いきゃ、暖めてあげたい夕凪さん自身が冷え切ってしまっているという罠が発動。ふだんの夕凪さんの手の暖かさには、なにやら定評があるようで……ってこれ多分、自分の実体験がゆえの自分内部の風評でしょうね。いかにもチョコとか握り締めながら遊びまわりそうですし。
しかしながら――
そっか。
今日は夕凪が冷え冷えなんだった!!
うわーん!
お兄ちゃぁーん!
冷え冷え夕凪をあっためて――♥♥♥
なんだかんだでトゥルー俺の願望マホウはものの見事に叶ったわけで。それにしてもこの夕凪さんの天然甘え行動……! トゥルー姉妹はみんな形こそ違えどそれぞれに身に付けているワザではありますが、とにかく侮りがたし。
こたつの上には――
みかん。
ただ――
みかん以外にあるべき
ものはない。
何の前触れも無くいきなり深そうで日常的なことを語り出す! それもやたら素朴な! もうこの時点で霙姉さん以外の何者のオーラを感じることはできないわけですが、いかに霙姉さんがこういうキャラとはいえ、さすがにちょっぴりインパクトがあり申した。
しかしですよ。霙姉さんといえば、ミステリアスなように見せかけて、餡子好きを初めとして、実は非常に日常的かつ地味な嗜好品が大好きなお方。こたつにみかんという魅惑の組み合わせも、実にマッチしているといえましょう。
なにやら宇宙の真理に例えつつ、こたつにみかんの本質を語りだす霙姉さん。……なんだかなあ、とは思いつつも、一定の説得力を感じることもまた事実です。ええ、トゥルー俺であれリアル俺であれ、霙姉さんに通じるちょいダメ系のセンスはバッチリ備えておりますゆえに。
この、ある意味詩的とさえ思えるこたつみかん語り。なるほどなるほど……と思って聞いていたわけですが。
……
などと――
言ったら。
オマエは私の頭が
おかしくなったと
思うだろうか?
フフフフフ――♥
…………え? い、いや全く。
それどころか実に霙姉さんらしいというか、いつもの霙姉さん的だなあとしみじみ思った次第なわけですが、まさか霙姉さん、外から見た自分のキャラ付けというものをあまり性格には理解しておられない……? いやあ、それはそれでまた霙姉さんらしいというか。うーむ、つくづくこの人は奥が深い。深くて味がありすぎる。
とりあえず、その理論を持ち出したことについて語ってくれる霙姉さん。そりゃあまあ、たとえというか何と言うか、宇宙になぞらえるぐらいこたつみかんを愛しているのだということは十分すぎるほどに理解できましたとも。「全然関係ない。まるで、なんにもだ」なんて言い方が軽くツボったりもしますが。
まあ要するに。霙姉さんは早くこたつでみかんという嗜好の快楽を堪能したかったと――それだけのお話なわけですね。
この家でコタツ解放の是非を決定しているのは、実質お母さんであるところのホタのようで。……ごはんんばかりでなく、こういうところまで家族の要を任されているとか。改めて感心しつつ――妹にこたつの許可を出してもらえない切なさに打ち浸る霙姉さんの姿に、ある種の哀愁を感じずにはいられません。ええ、なんというか……まあ、いざというときに頼れる人は、普段はちょっぴりこんなノリだとしても許されるよ的な。
ホタはいわゆるお母さん的な観点を持っているため、コタツがあまり好きではないようなのですが、それを称して霙姉さん、
不幸なことだ。
あのように――あたたかく
優しく、そして深遠なる
宇宙を――体現する存在は
他にはないというのに。
……ええ。どこまでもどこまでも、霙姉さんは霙姉さんらしく――
それはそうと、トゥルー家のこたつって超でかいのだろうと思いきゃ、それほどのものではないようですね。だって……
私は――今でも好きだが。
もし、あの中に――
すっぽり入ってしまえるだけの空間が
今なおあったら――
きっと私はチビたちと一緒に
入り込んでしまうかもしれない。
ああ――大きいこたつが欲しい。
……一応、入ってはいないようです。本当、一応は。ただこれは、可能ならばそうしていると実質言っているわけであり、およそコタツを前にした霙姉さんは、チビたち、恐らくは夕凪さん以下の子らと同等の存在になってしまうと。なんという恐るべきアーティファクト・こたつ……! もちろん真に恐るべきは霙姉さんなのですが、そんなネコのような霙姉さんの姿を想像したら、力が抜けるとともに全力で和んだので、ここはひとつトゥルー俺もホタに頼んでみる方向で。
ぐーっと、
寒くなってきて、
街の枯葉もずいぶん
増えて、
ついに――
本当の冬がやってきた
っていう気がします。
秋の終わりに小雨の日記! 小雨は服のイメージからか、いかにも秋が似合う女の子って印象がありますが、実際のところは名前のコンプレックスを感じてしまう梅雨時を除き、どの季節にも感性豊かに対応できる子って感じですよね。すでにこのトゥルー家と過ごすようになって二年近くを経ているので(トゥルー内時間はさておき)、そういうところもなんとなく実感できるようになってまいりました。
「ああ、もうすぐ白い季節が来るんだなって――」と、秋の終わりの様子を説明する口ぶりからは、豊かな感性のみならず、なんだか上機嫌な雰囲気すらも感じられます。ここのところ、小雨の気持ちはわりとハイな感じなときが多いですよね。よきかなよきかな。
そいでもって、話は今日のテーマである、夕食のシチューのことについて。作るのは春風さんと、やはり通例どおり、洋風メニューはどっちかというと春風さんが担当することが多いようですね。もちろん例外もいくらでもありますが。
ビーフシチューとクリームシチュー、どっちを作るかは、小さい子たちの支持を受けてクリームシチューの方に。「澄んだかすかな水色の空に似合う――」なんて表現してくれるあたり、やっぱ小雨のものの見方は実に繊細で豊かなんだなあと。高級で人気なビーフシチューより、っていうあたりに、小雨の嗜好みたいなものも伺える気がします。
そして、そんなシチュー作りに、小雨もお手伝いで参加していたようで。……なるほど、トゥルー家のお料理当番は、今のところホタと春風さんの二大体制ですが、その後継担当としては最有力候補なんでしょうね。小雨の前後を見てみると、立夏や氷柱、麗あたりはそこまでお料理ができそうな雰囲気じゃないですしね。星花も今のところはまだまだお外で元気に動き回るタイプでしょうし。
ここからの描写を見ても、小雨の料理適正は(特に気持ちの上で)なかなかって感じがしますし、きっとホタや春風さんも、それを見込んでそろそろ教え込んであげようっていうところなのかも知れません。小学六年生ですから、そろそろお手伝いがてら、本格的に調理場に立つことをはじめても良い時期――と、トゥルー家内部での空気みたいなものも感じられます。
そんな小雨に与えられた役割は、ある意味過酷な、タマネギ切り。しかし、人によっては水泳ゴーグルが手放せない仕事ではありますが――
玉ネギをたくさんたくさん
切っていると、いつも
涙が出てくるけれど――
これは、幸せな涙だから――
いくら流してもいい、んですよね?
ウフフ――♥
――今、小雨から確かに感じる、母性のオーラ! まだ芽生えたばかりのつぼみのような、女の「子」と表現してしかるべき愛らしい感情ではありますが、こういう優しい気持ちが、いずれ育って母性へ至るんですよね。やっぱこの子は、女の子として将来有望ですよ。将来の良妻賢母的な意味で。
お兄ちゃんはクリームシチューには
ごはんとパンとどっちを一緒に食べる方が
好きですか?
小雨はチョット恥ずかしいけど――
やっぱり――
ご、はん――
です♥
ましてトゥルー俺とも相性バッチリじゃあないですか! これは将来の嫁として確保しておかなければと焦燥感に駆られても仕方ないですね。しかも、「ご、はん」とかの言い方やはにかみっぷりから漂う可愛らしさ――! ええ、子供の可愛らしさではなく、まだ幼いながらも確かに「女の子」としての可愛らしさですよ。男子的に反応してしまうという類の。パンよりごはんという庶民らしさもそのあたりを助長しておりますし。あとほんの少しで、女の子としての魅力が一斉に花開こうとしている、そんな予兆を感じるワンシーンでした。
いや――
今日は
暑かったな!
くんかくんか! ……と、タイトルの時点で雄の嗅覚を全開させずにはいられない単語が飛び出してまいりました今日の日記、こんなダイレクトな肉体直撃系の文章を書くのといったら、このトゥルー家ではヒカルしかいませんね。
ええ、汗。汗です。リアル俺は言うに及ばず、トゥルー俺とてうら若き高校生男子、同い年の女子の汗と聞いた日には、青臭い衝動とともにその匂いを想像しつつ即堪能せずにはいられないであろう衝動を抱えていることは想像に難くは無いのですが……って少々暴走気味で御座います。暑さのせいですね!(多分違います)
いや、だってホラ――
うっかりコートを着て
マフラーまでして
でかけちゃって、
もうすっかり――
汗をかいた!
そのマフラーをくんかくんか! ……って、これはもういいですかいいですね。
汗の匂い方向はさておき、どうやらこのうららかな日に似つかわしくない厚着は、春風さんの指示があったからの模様。「夕方になって急に寒くなったら困るから」なんて、家族の服装に気を使うあたり、お姉さんどころかお母さん領域の気配りではありますが、それが必ずしも適切でないあたりが、春風さんの特徴でしょうか。ホタがお母さん領域なのに対し、春風さんはどこかまだ娘っぽさが抜けない「お姉さん」って印象なんですよね。それはそれで個性ですし可愛いですし全て良し。
どうもその厚着傾向は、昨日のシチューの余波も引きずってるみたいです。なるほど、そういう季節ってイメージになりますものね。……まあ、日ごろの「王子様」へのきゅんきゅんっぷりを見るまでもなく、思い込みが激しい系の女の子だというのはワカりますよね。
春風は、冬が好きなんだ。
冬が来るといつも、キッチンに
いろんなものを買い込んで――
幸せそうにしてるよ。
それだけではなく、春風さんはそもそも冬が好き、と。確かに、春風さんの脳内は春風かもしれませんが、服装とかのイメージとしては、冬系ってイメージがないこともないです。少なくとも、夏よりは冬でしょうね。
そんなわけで、買い込む食材や服装も、冬のイメージによって偏りが見受けられるようで。大量のイモを前にして踊る春風さん……かわいいような、ちょっとシュールなような。
まあ、食べ物に関しては別に全く困りませんけど、服装となると、今日のヒカルみたいなこともあるわけですよね。……いやあ、汗というのは俺的に大変なご褒美ではありますがそれはそれとして。
冬らしい格好も大好きで――
きっと好みで、
気温予想してるんだ。
あれじゃあとても――
海晴姉の跡を継ぐのは
無理かもしれないな?
……と、からかうヒカル。ヒカルと春風さんは、向こうが姉なんだけど、しばしば立場が逆転する面白い組合せですよね。……って、なにやら「海晴姉さんの後を継ぐ」なんて言葉も出てきてますが、これはまあ、からかうたとえみたいなものなのかな……と思ったら、
霙姉は絶対やらないだろうし、
春風もダメとなると――。
うわっ!
私は絶対にダメだ!
やらないからな!!
そうだ!
オマエが――
“お天気お兄さん”
やればいいんだ!
きっとママも喜ぶぞ――
……なにやら妙な方向へ? いやいやいや、そもそも海晴姉さん自体がまだ駆け出しだというのに、あとを継ぐとかそういう……って、ヒカルもけっこう話が飛躍しちゃうタイプなんですよね。
しかし……最後のトゥルー俺への無茶振りに、「ママも喜ぶ」という言葉が続いた時点で、お天気お兄さんという表現が唐突に現実の方向へ動き出すのではないかと言う思いが拭えないことに。ええ、あのママならば、その思い付きをすぐに実現させかねないわけで。あたかもトゥルー俺をこの家に導いたときの如く。
あーたん、ばおっば、おっばぼぼぼー♪
なんなん、ぶっじゅーっ!
ばおっばば、ぶっじゅーっ!
ぱいぱい、ぶっじゅーっ!
にゃーにゃ、ぶっばぁああああーっ♥
なんかいきなりものすごいですよあさひさん!? この子に出会ってからはや2年、いまだに0歳時のまま……という点は永遠に置いておくとして、時が経つに従って、どんどんYASEI味を増してきておられるように思えて仕方ありません!
赤ちゃんという生物は極めて獣性の高い存在というのは一般的に通じる事実なのかもしれませんが、しかしそれにしてもあさひさんのそれはなにやらカゲキ度高めというか……トゥルー家の血がそうさせるのでしょうか、やはり。
とはいえ、なにやら狂おしい獣の咆哮にすら思える今日のあさひさん日記、例によって自己解読は「あーたん」「にゃーにゃ」以外は難しいので、さっそく翻訳先生に頼らせていただく次第。
あーさひのすきなもの、
うたっちゃおー♪
おねえちゃん、ちゅーしてやる!
だいすきもうふ、
ちゅーしてやる!
おっぱい、ちゅーしてやる!
おにいちゃん、
ちゅーだけじゃたりないから、べろべろたべるーっ♥
歌! 歌でありましたか! ……それにしても、この豪快な「歌いたい」意欲の発散ぷり……! まさに我が家のジャイアンと呼ぶのに相応しいほどの胆力を感じずにはいられません。
もっとも、その歌そのもののテーマは、「あさひのすきなもの」と、実に頬の筋肉が緩む感じの内容であります。一番最初に出てくるのはやはり「お姉ちゃん」。……まあ、18人ほど居ますから特定は難しいのですが、ママを差し置いて出て来るというのはさすがというか。ちゅー「してやる」というこの攻撃性、ピクルにすら勝る原初の衝動といったところでしょうか。
続き、「毛布」、そして「おっぱい」……おっぱい=ママってことなんでしょうか。なんでしょうね。いかにお姉ちゃんたちが多いとはいえ、母乳を出すことは特定の条件を踏まえなければ不可能でありますし。……ええ、深追い妄想は禁止の方向で。春風さんあたりが敏感に反応してしまいそうなので。
ちなみに、トゥルーお兄ちゃんもおっぱいは大好きでありちゅーもしたいと主張したいところではあるのですが、立場と言うものもありますし自重。……あさひさん相手だと、むしろこちらのおっぱい吸われかねませんしね。
……そして、最後の本命とばかりにトゥルー俺ご指名。ああ、実に嬉しいなあ可愛いなあ……とニヤニヤしたいところなのですが、「べろべろたべるーっ♥」……攻撃性どころか、捕食欲の領域に!? 先ほどから繰り返していることですが、いかに赤ちゃんが生物本能に対して衝動的とはいえ、あさひさんのそれはいささか強力という気がすごくすごく。なにはともあれ、この子はたとえ成長しても、きっといわゆる肉食系女子になるのだろうなあとしみじみ思った次第です。
寒くなってきて――
お皿洗いをするときの
お水がぐんぐんぐんぐん
冷たくなって――
(中略)
星花の手は早くも
今年も――
肌荒れです。
……
――ぐっすん。
星花にしては珍しいいきなりの弱音モード!? いや、この子の「ぐっすん」とか、思わず身を乗り出してしまうような可愛さがあるように思うのですが、しかしながらいつも元気で前向きな星花ですから、最初からのこういうノリはレアですね。
とはいえ、これは弱音というよりは、自分ではなかなかどうしようもない乙女要素の危機ということで、考えてみると納得というか。
とりあえず、まだまだ料理などはちょっと荷が重そうな星花ではありますが、その他の家事のお手伝いに関してはしっかりと行ってるようですね。さすが良い子。そんな中でもお皿洗いは基本的なところですが……なるほど、その悩みはいかにも女の子。
しかも、星花の肌はホタに比べて荒れやすいようで……って、
蛍お姉ちゃんなんて、
あーんなにたくさん
洗い物をしているのに――
ぜーんぜん、
ツルピカの手で――
星花、軟弱者の自分が
情けないです……
……こんなところでもすごさを見せ付ける我らがスーパー妹・ホタさんであります。いや、あんなそこらの主婦の数倍以上もの本格的な家事仕事、それも真っ先に手にダメージが行くであろう料理や針仕事を引き受けていながら、そこまで言われるほどにつるぴか肌を保っておられるとは……。もちろんまだ若いというのもありますし、ケアも相当気を使っているのでしょうが、それにしてもやはり何か主婦能力的に格の違いみたいなものを感じずにはいられません。
そんなホタと比べて、自分は軟弱と責める星花ですが……いやあ、ホタのそういう能力って、言ってみれば、勉強面で氷柱が天才なのと同じようなものなので、そもそも比較すべきですらないもののようにすら思えてなりません。これもトゥルー家の血のなせるワザなのかも知れませんが、少なくともホタレベルの家事能力を持ってなければ「一人前の賄い方」を称せないのだとしたら、それは少々ハードルが高すぎるのではないかと。
……しかしながら、そこはそれ、星花にだってもちろん彼女なりに誇れる(少なくとも兄が誇りに思える)部分はあるわけでして。それはこの生真面目さとフットワークの良さ。「こんなんじゃあイケナイと思って」、さっそくハンドクリームで肌のケアを始めた模様。
こんなガザガザの手じゃあ、
さわっただけで、
お兄ちゃんが嫌な思い
しちゃいますもん!
その動機にも、なにげにいつもの忠義のノリのみならず、女の子としての部分がわりと色濃く見えているように思えるわけですが……まあ、小学4年生の女の子ですものね。そういう部分があっても当然というか。……星花って、もしトゥルー俺が、「もっと早く女らしくなってね」って言ったりしたら、背伸びはしつつも相当早く女の子として開花しそうな気がします。まあ、そんなことを言われたら、星花に限らない話かもしれませんが、特にマジメな子でもあるので。
それはさておき。ハンドクリームで肌荒れをカバーしつつ、さっそく前向きにお皿洗い道及び家事の道に励もうとする星花は、やはりマジメで良い子だなあと改めて。
……と、それだけでは終わらず、
あ、そうだ!
お兄ちゃんと握手握手で、
ハンドクリームのお裾分けっ♥
エヘヘヘヘ――
お兄ちゃんの手もつるつるに
なぁ〜れっ!
……無意識、無意識なのでしょう。無意識ではあるのでしょうが……これは……! ……はい、星花の裡には間違いなく、トゥルー俺など即刻陥落させられるほどの「女の子」としての資質が備わっていて、それが今にも芽を出してきそうな状態にあると。そう思って間違いないと思う次第です。……手と手で……ヌルヌル……じゃなかった、ツルツルに。
わぉ〜〜〜ん!
わんわん!!
あーもう、ダメ。
もうリカ、
絶対に――
遠吠えしちゃう♥
立夏のYASEIの血がいよいよ本格的に!? ……いや、っていうか、いきなり「WAO〜N!!」とかいくら立夏とはいえ! この言語傾向だと、降ってきた隕石に頭をぶつけたら「ITEッ!」とか普通に口から出てきそうですね。
いやまあ、問題はそういう言語センスではなく、むしろこの遠吠え衝動。確かに、通常よりも治癒能力が高かったり、なにげに本当に通常の人類ではなさそうな雰囲気すら漂わせている立夏ですが、しかしそれにしてもこのYASEI衝動は唐突すぎて、トゥルー力を日々高めることを意識しているリアル俺をもってしてもその原因を推測することが困難です。何故にホワイ!? 「本当にわからないのォ」とか申されましても!
……ええ、それがよもや、「明日から12月が始まるからデスよ」と言われたところで。
きゃ―――嬉しい〜、
立夏跳ねちゃう〜!!!
ダイコーフンッ!!!!
ウホウホ、ウホホッ♥
もう鼻血が出てもおかしくないヨ。
…………。い、いや、その……いよいよ、YASEI化が押さえきれない状態に……。まえにもウホウホリアクションはあった気はしますけれどね。(not阿部さん)
ともあれ、理由を教えられても、その意味が良く分からないというのは、トゥルー俺的にもなんとももどかしいわけですが、まあ、立夏ぐらいの子であれば、クリスマスが控えていると言うだけでも十分すぎるほど喜べる理由にはなるのでしょうね、ともっともらしい推測を建てた次第。
……結論から言うと、クリスマスだから、って部分は間違ってなかったわけですが……それにしても、「シシシシシシ――♥」とまで笑みがこぼれる理由かどうかとまず。いや、立夏だからの一言で、全て説明できるといえば出来るのかもしれませんけどね。ほら、クリスマス前ということで、いい子モードにも入るようですし。今年は一体何をお願いするのでしょうか……
……って思ってたら、このYASEI化の理由が唐突に理解できました。実感をもって。
今年はついに決めたのダ!
欲しい物はもちろん、
オニーチャンと一緒の
クリスマスデート!
……そ、そう来たか……! い、いや、この立夏については、今年は例のバレンタイン以来、こんなノリを微笑ましく思いつつも、その裏にはしっかりとガチ女の子モードが脈づいているということも感じられてしまい、どぎまぎし続けてきたというのが正直なところ。そんな立夏に、このお願いをされるというのは……おっ、おっおっ?
うん。もう絶対に決まりだネ♥
それで聖なる夜についにフタリはハジメテの――
きゃ――――――っ♥♥♥♥♥
♥マーク新記録!? ……ってそんなこと言ってる場合じゃない! ……いや。いやいやいやいや。立夏がこういうドキドキ台詞をはくのは、今に始まった事ではありませんが……ありませんが……ホンット、この子は超子供らしい(そのうえYASEI)衝動や言動を思いっきり表現してくれるくせに、その傍らで、しっかり女の子モードを全開に育てまくっているのが、実にアブナイ……危なすぎであります。兄的には。立夏に、「そういう言葉の意味知らないだろ?」って訊いた日には、むしろバッチリ知っているということを身を持って思い知らされそうな……そんな危うさがあります。ヘタをすると、ヒカルあたりよりもよっぽど女子モードを成長させてますからね。いざとなれば、本当に……と冗談抜きで思えてしまいます。
まあ、現実的には、トゥルー俺とのクリスマスデートという願い事は、家族的な問題でなかなかに実現しにくそうな気もするわけですが……そのへんの無理を通してしまいそうなところも立夏にはあるので、予断は許せません。今回冒頭やたらとYASEIの血が騒いでいたのは、ぶっちゃけた話、女子としての生殖本能に起因する感情が刺激されまくったからではないかとさえ思えるわけで。……今年のクリスマスには、強固な理性が求められそうです。
ジンジャーボーイもクレセントクッキーも
明日からは食べホーダイ!
あ、オニーチャンもちゃんと
サンタさん信じてないと
来てくれないヨ?
モッチロン、信じてるよね???
……その傍らで、こんな超子供モードも同時にさらけ出してくれると言うのは……安心できることなのか、それともナチュラルに油断させられていきなりガブリ!(男の子と女の子的な意味で)ってことを心配しなければならないことなのか。なんともはや。
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