くりっ
くりっ
くり〜♪
くりっ
くりっ
くり〜っ♪
女の子がそんなクリクリクリクリと! ……いやまあ、虹子が歌っているものですから、致し方なきことと思うべきか。小さい子だからという意味と、虹子だからという意味の二通りで。
さて、今日からいよいよ10月突入ということで、トゥルー的にはどうやら食欲オータム的な雰囲気が訪れたようですね。秋の味覚を歌いつつも諳んじる虹子の誇らしげな「えへへへへ♥」に、むしろこの笑顔こそが何よりの馳走であると思うわけですが、そんな虹子が好きな秋の味覚とは――
にじこはね――
なんてったって――
くりきんとんっ♥
あまーくて
きいろくって
トロトロなんだよ!
と、トロトロ……いや、いやいやいや。さすがにそれで色々思ってしまうのは病気の領域のような気がするので自粛しますが、それもこれも虹子という子の魔性ということで片付けられるので、いくらか後ろ暗い性癖や衝動を抱えて生きるリアル俺としては、いくらか気分が楽になるというものです。虹子は(性的に)かわいらしいからしょうがないよね!……と。ほら、「お口のまわりに
ベタベタいっぱい」とか!
――しかしながら。そんな妄想における性的なイメージなど……
おにいちゃんは――
ちゃーんとおじょうずに
食べられるかしら?
クフフフフ♥
こんど、にじこが
見ててあげますからね!
……このッ、二歳児にお姉さんぶられることへの歓喜に比べれば、まるで取るに足らない……ッ! 嗚呼、ここであえて、上手に食べられないふりをして、虹子に食べさせてもらう姿を想像するだけで、俺と言う人間が終わってそこから新しい何かを始められるという気分になってしまいそうです。絶頂しつつ。
結局、明日のおやつは――
1人2種類に決まりました!
おお、明日のおやつが決まりましたか星花!
……………………って、明日? 明日というと10月3日ですが、一体何かありましたでしょうか。ちょっと一般的な催しには思い当たるものがありませんし、ここ最近の日記でも、特に何かあるとは言われてなかったハズ。
……ひとつ、「イベント」という表現で心当たりが。ええ、思い切りリアルとトゥルーの壁を超えてしまいますが……ほら、このような。
いや、まさか……確かに、こんなグッズも出ていますし、関係があるといえば関係はあるわけなんですが、しかしながら……むむむ?
とはいえ、「明日と明後日はみんなで一緒におでかけ」という表現や、「幕張までは京葉線がいい」なんて発言が飛び出しているというところから、どうもこれで間違いなさそうな雰囲気が濃厚に。(追記)今月のG's読んでみたら、「19人姉妹が電フェスに来る!!」って明記されてますね。
しかし、いくらトゥルー家族がリアルとリンクしている存在とはいえ、いくらなんでも普段どおりの生活で、電撃のイベントに家族で赴くなんてことは考え難いわけですよ。コスプレ目当てが可能なホタあたりや、移動手段が目的になり得る麗あたりはさて置いて。
……と、すると。個人的には、単なるグッズ販売以上の何かもサプライズ的にあったりするんじゃないかなあと内心で期待してしまったりもするわけなんですが、まあそれは、記載されていない以上はあくまでだったらいいな程度で。まだ慌てるような時間じゃあない。
とまあ、そんなこんなで、トゥルー家族はこの土日、家族でイベントにお出かけというちょっとした行事をすることになったわけで。持っていくおやつのことで小さい子たちの間で色々と揉めていたりもしたようですが、綿雪の一声で事態が収まるという、ちょっと目を引く出来事も。
2人ともユキちゃんには
弱いんだから。
ま、氷柱お姉ちゃんが
ユキちゃんの後ろにいたせいも
たぶんあるかも知れないけど――
……ああ、まさに氷柱。そのときの様子が手に取るように想像つきます。
そんなこんなで、明日の準備は整ったようです。星花もいつものように「お守りします!」モードに入ってくれてますが、傘で守ってくれるというのは、これはちょっと、小学生の妹に傘をさしてもらうという、心くすぐられるシチュエーションであり。
それだけでなく、お出かけということで、いくらか気分も高揚してるのか――
星花、お兄ちゃんの隣に座れるかなぁ……
あ、お写真もいっぱい撮れるといいな!
エヘヘヘヘ――星花、
お兄ちゃんとこっそり
2ショット撮ってもらっちゃうの
狙ってるんだぁ〜♥
なにやらいつになく積極的ですよ星花! ええ、いくらか控えめなところもないわけではない星花ですが、こういうときぐらいは、ガンガン思い通りに甘えてくれるのがいいと思う次第です。
どうしたものかのう――
今日はさくらの番だったのじゃが。
……
もう――
――寝てしもうた。
さくら、日記を寝落ち! ……とは言うものの、実のところこんなに小さい子たちが、月に一度ぐらいとはいえきちんと夜に日記を書いてくれていること事態、けっこうすごいことではあるんですよね。さくらぐらいの子の就寝時間は8時から9時ぐらいでしょうし、家で決めた就寝時間もあるわけで、むしろ今までこういう寝オチ的な事態がほとんど見受けられなかった事のほうが驚くべきかなと。で、さくらと一つしか違わない観月がこうしてピンピン起きていることもこれまた驚嘆すべきことではありますが、そのあたりはまあトゥルーらしくファジーに。
とまあそんなわけで、ピンチヒッターとして観月がこうして書いてくれているわけですが、なにやらさくらの番を飛ばしてしまうことになるのを気に病んでいる様子。……ふと思ったのですが、このトゥルー日記の順番って、一体どうやって決めてるんでしょうね。一応こうして、その日に誰が書くかは決まっているようなのですが、それほど長期的に割り当てがされているという感じでもないので、毎朝誰が書くかを決めてるとかなのかも知れませんね。
ちなみにさくらが寝てしまったのは、やはり先日のイベント参加で疲れたからでしょうね。加えて幼稚園での運動会の練習もあったとあっては仕方なし。
そんなわけで観月が思いついた妙案が――さくらの寝言で更新! そ、そんなラブプラス的なことを……とまあ、さっそく聞いてみますが、
「ここはさくらやさん。
お兄ちゃん、お兄ちゃん
さくらはいりませんか?
もし、いらないって
言われたら――
……
さくら泣いちゃう――」
……………………ぷるぷる。(←あまりの可愛さに悶絶しています)
……ええ、観月の妙案によるクリティカルヒットが、もののみごとにトゥルー俺の父性本能に直撃してくれましたが、明日はさくら本人から、この寝言の説明を受けられるかもしれません。もちろん、個人的には買占めの方向で。
ごめんなさい、ごめんなさい、
お兄ちゃん、
ごめんなさい――
さくら、
きのう
眠っちゃったの。
というわけで今日は、昨日寝落ちしてしまったさくらのターン! まずトゥルー兄としては、別にごめんなさいを言うほどのことではないよと主張したいわけなのですが、それだけこの日記が、トゥルー家族にとって大事なものであり、さくらもそれを深く自覚しているってことなんでしょうね。……そのわりに、何日間も独り占めしていた子も居たりしますが、まあそれはそれというか、個人の性格による認識の差というか。
さて、期待通り、昨日の寝落ちの説明をしてくれていますが、やはり運動会の練習が影響していたようですね。さくらがこうやって、非常に前向きに努力している姿というのは、兄心というよりは父心を沸き立たせてくれますね。
えへへ♥
だって、あのね――
さくら、かけっこ
昨日は初めて
ころばなかったの!
もうこのあたりの言葉を聞くだけで、ただでさえ緩みがちな頬の筋肉が、いよいよとろけて崩れ落ちそうな気分にさえなってしまいます。
とはいえ、そんな興奮した気分の中に、しっかり溜まっていた体の疲れが圧し掛かって――と、そういうことのようで。
そんなわけで、「やっぱり――悪い子になっちゃった」というのが、さくらにとっては一大事のようで。あの麗でさえ、嫌だった時期にさえ数行は日記を書いていたわけで、よほど「日記は家族のたいせつなもの」って思いが強いんでしょうね。それは確かにそうなのですが、昨日の観月のフォローを見るまでもなく、たとえ誰かが書けなくとも、他の誰かが必ずカバーはしてくれるんですよね。今までにも、誰かが体調を崩したりしたら、必ず他の子が書いていたわけですし。
……もっとも。さくらにとって今回のことは、「ごめんなさい」という以上に、「さくら――かなしい――」という気持ちになってしまうようで。このあたり、単にさくらが怒られることを気にしているというより、自分自身の中で大切なものをもってくれているんだなあというのが分かるので、嬉しい言葉だったりもします。
さて、そんなさくらに、自分は悪い子じゃないかと問われれば、当然のように「ちがう」って答えるわけですが。
そしたら――
さくらのこと、
いる?
……ここで昨日の「さくらやさん」的なニュアンスのお言葉が! はい、生活必需品につき、買占めの方向で。
今朝からはいよいよ
気温も冷え込んできて――
秋本番。
秋本番とともに、海晴姉さんもやってきた! ……どういうわけか、のっけから春風さんを思わせるほどの妄想を引っさげつつ……!
ええ、秋といえば気温は当然冷え込みますが、その一点の事実をもって、「私のカワイイ弟くん」の寝相について心配してくれているのですが。これがまた、えらく具体的というかなんというか……
この海晴お姉さんが
一緒の寝室だったら
元気なねぞうのおかげで
はねのけられちゃった
おふとんなんかを
そっと――
寝ているキミの体に
かけてあげられたんだけど。
ふふふ♥
妄想一発目! ……いやまあ、これに関しては、「一緒の寝室だったら」などというデンジャラスな内容を含んではいるものの、要はふとんをかけなおしてあげたいという率直な思いなワケでして。「元気なねぞう」という独特の言い回しに、どことなく性的な雰囲気を感じないでもないのですが、まあいいとしましょう。
しかしながら……
そして、そのついでに
そっとほっぺた
なでちゃったりして♥
妄想二発目!
もひとつおまけに
そっとくちびるも
奪ってみちゃったり
なんかして――
なんて♥♥♥
そしてすかさず三発目! ……なんなんでしょう、この怒涛の桃色甘やかし妄想の連打は。まるで春風さんのよう……と思いきゃ、自分で言ってますよこの人! 「あは☆」とか言いつつ! まあ、春風さんに関してはその春風吹きっぷりは家族みんなが知るところでしょうからね。
それに、この海晴姉さんの妄想は、春風さんのとはいくらか異なり、「弟を甘やかしつつ弟に甘えたい」というかなり純度の高い姉属性も多分に含まれていますよね。そこはまあ、当然といえば当然なのですが、どうしてこのタイミングで、家族みんなのお姉ちゃんであるところの海晴さんがこんなテンション高まったのか――それは。
だから、お願い!
今日と明日の2日間――
この強力な台風から
家族を守るのはキミの役目よ!!
これでしょうね。弟を発奮させてあげたいがための姉心。……今回の台風は相当すごいらしいですしね。去年も色々やった気がしますが、今年はより危険が高い台風なわけで。
……もっとも、台風が来て一番心配なのは、それを中継したりしなければならない海晴姉さん自信だったりするのですが……こればかりは、お仕事ですから、さすがに出来ることはごく限られてくるわけで。
だから、海晴姉さんのために何かしてあげたいならば、しっかり家族を守ってね、長男クン――ってことなわけで。……もちろん、海晴姉さんだって、自分自身のことを心配してないわけがないでしょうけれど、そういう不安は全部、家族の心配のほうにベクトルを向けてしまうのでしょうね。
ちなみに、他のお姉さん組の海晴姉さん評価はというと、
霙ちゃんはイマイチ当てにならないし、
春風ちゃんは力仕事は向かないし、
ヒカルちゃんは――
意外とパニクるタイプだから。
……と、それぞれにやや厳しめ。特に霙姉さん。特に具体的なことではなくて、なんとなく頼れないという、ある意味一番困る扱いのような気がするわけですが――まあ、霙姉さんみたいな人は、年下の立場からすると、頼れなさそうで頼れるような気がする人ではありますよね。春風さんは妥当として、ヒカルの弱点もしっかり見抜いているあたり、さすがは長女のお姉さん。
そんなわけで――今夜からは、トゥルー俺が、「男」をしっかり見せねばならないようです。……ここんち、超豪邸なんですから、強い台風ぐらいじゃそんなに深刻な被害なんて起きないような気はするんですが、まあそれでも、ガラスとかはカバーしないとだめってことでしょう。すでに準備万端整えてくれているわけで、あとは――
私達の妹をしっかり――
頼んだわよ?
私「達」の妹――と。ええ、もちろん。ヒカルや春風さん、霙姉さんについても、可能な限りは。
昨日の夜から
すごい嵐で――
本当に
こわかった――
……トゥルー俺にとって姉妹のみんなは、それこそ年上のお姉さん達に至るまで、守るべき対象であるということは当然の認識であるわけですが、その中でも、最も「守ってあげなければ!」的な気持ちを駆り立てられる子といったら、それはやはりこの子ですよね。病弱とかそういう部分もあるわけですが、もっとこう、本人のキャラ的な部分まで含めて。
そんなわけで、トゥルー俺の活躍が大いに期待されていた台風の夜。その最優先保護対象となったのは、どうやらユキだったみたいですね。なにしろ、台風の夜のことを思い出すだけで、具合が悪くなってしまうのでは――と心配しなければならない子ですからね。
まあ、そんなユキに対して、トゥルー俺はよく頑張ったようで、具合が悪くなるどころか、よく眠ることさえ出来たとのこと。
夜中の大きな雨の音で
起きちゃったユキのこと、
とってもやさしく
ギュってしてくれて――
ユキ本当に本当に
嬉しくて――
でかしたトゥルー俺!
……ええ、この事実を知ったら、海晴姉さんなどは、その場で満点をくれるのでhなはないでしょうか。氷柱が知ったら――まあ、それはひとまず置いといて(明日の日記で反応があるかなーと期待しつつ)。
まあ、綿雪は女の子とはいえ、まだ小学一年生の子でもありますからね。嵐の夜が怖くて当然ですし、それを慰めてあげるために、兄がそっと抱きしめてあげるというのも、当然やってあげてしかるべき行為とも言える訳で。何が言いたいのかというと、邪念はゼロでありましたよ、と。
本当はね、目にいっぱい
たまってた涙の粒、
たったの1つだって、
ほっぺたにこぼれて落ちちゃう前に――
すっかり安心して、
ニコニコの笑顔になっちゃった!
うーむ、綿雪の表現も、これまた実に感性豊か。
とはいえ、こういう夜に対する思いというのは、他の子よりもずっと、深刻に、深く深く向き合ってきた子でしょうからね。本人自身がこうして語ってくれていますが――まだ幼稚園児ぐらいの子が、家族と離された病院で、病気の体のまま、嵐の夜、どんな思いで過ごしているかといえば――語ってくれている以上に辛いことだと思うわけですよ。
そんなユキが抱えてきた、怖い怖い思いを、あっさりと覆してしまえたのがトゥルー俺であると思うと、これはまた実に面映く――
おまけにユキが眠れるまで
ずっと一緒にいてくれるって――
ユキ、お兄ちゃんのこと
大好き♥♥♥
本 懐 達 成 ――
トゥルー俺が、何のためにこの家族と暮らすようになったか。こういうことを言ってもらえるようになるために、ですよね。
しかしそれにしても、こんな思いを味わったユキは、これからはむしろ嵐の夜が楽しみとすら思えてしまったようで。少しばかり女の子の魔性の片鱗を垣間見た気もしないではないですが、まあ、ユキの魔性であれば、喜んで翻弄される次第。
ちょっとまってそのタイトルは。
……とまあ、思わず即座に突っ込まずに入られないタイトルではありますが、もちろん科学の子であるものの、あくまでもトゥルー家が誇る良い子の一人でもある吹雪が、食べたら幻覚系のイリーガルアイテムのことを語るわけもなく、要するに今日はきのこのお話であります。
我が家は――
きのこ好きな子が多いです。
……と、さっきの前置きをしておかないと、どうも安心して語れないと思い、あえてフォローいたした次第です。
ともあれきのこ、きのこですよトゥルー諸兄。……ここで即座に、トゥルー俺の下の方に生えてるキノコとかそういう発想を行ってしまうのは、責めこそしませんが、心の中にのみ閉まっておく方向で是非。
またも前置きになってしまいましたが、本題を。……今日のトゥルー晩ご飯は「まつたけごはん」とブルジョワジーっぷりをいともさりげなく。いかに豪邸住まいとはいえ、トゥルー家は本質的には、きちんと庶民的な経済観念を持ち合わせている家なのですが、それでも時折、このような面が堂々と表に出てくる場合もありますよね。まあ、まつたけは秋の味覚の定番ということで、季節の風情を大事にするトゥルー家としては、たとえ贅沢でも食べておくべきものってことなんでしょうね。
そんなゴージャスな秋の味覚ですが、家族的には、まつたけだからというより、単純にきのことして美味しいからって部分の方が大事みたいですね。虹子もお腹が大きくなってしまうぐらいの食べっぷりだったようです。……いや、そこでボテ腹的な想像をするのはこれまた責められませんが(以下略)
食べすぎでお腹が破裂するのではないかという心配も、吹雪らしく、実に冷静に分析して、逆にその人体の能力に感心しているほど。……虹子は虹子で、これまた食いしん坊な青空にも負けないぐらいの食欲はある子なのかもですね。すでに思考は食後のデザートに及ぶほどですし。
ともあれ、そんな虹子を見て――
――フフ。
まったく――
小さな子供というものは
不思議ですね。
吹雪自身もまだまだ十分すぎるほどに小さい子だよ、って言いたくもなりますが、まあそこは主観的な見方ということで。
吹雪が目をつけたのは、まだ知識を身に付けていない小さい子であるがゆえに分かる本能レベルでの力。
世間ではその希少価値によって
珍重され、比較的高価とされる
松茸でさえ、虹子や青空にとっては
ただの「きのこ!」です。
香り成分のケイ皮酸メチルよりも
きのこ全般のうまみ成分であるグアニル酸に
価値を見いだしているのでしょう。
……いや、言ってること自体はやたら科学的ではありますが、要は、「きのこだから美味い」ということで。それはきっとそうでしょうね。別に小さな子でなくとも、まつたけの香りそのものを味わうなんて、それほど行える人はいないですし。
そんなナチュラルな味わい方の楽みっぷりを見て、「ああ――知識という物は案外邪魔な物なのかも知れません」という結論に達する吹雪。もちろん、邪魔なだけではないという前提があってこその意見でしょうけれど――
私は――
松茸はキライではないですが、
対費用高価という面ではどうなのか、
はたしてそれほどの価値があるのかと
よく考えてしまいますので――
それほど旨いとは思わないというのが
真実です。
……まつたけを食べるとき、恐らくはほとんどの大人が思うであろうことを、吹雪もしっかりと感じておられるわけです。まあそこは、経済観念というものが備わっていないと持ち得ない見方ですから、ないほうがいいというのは極論ではあるのですが――ただ。吹雪の年齢ならばまだ、虹子たちと同じような食べ方、味わい方をしていても全然いいとは思うので(きっと吹雪自身もそう思っているのでしょう)、それゆえの意見なのかも知れませんね。
久しぶりに更新が遅い遅いと待ち続けてたら、日付変更ジャストで更新ですか観月さんッッッ!!! ああもう、久方ぶりにトゥルー日記をF5アタックにならない範囲でクリッククリック更新し続けましたですよ。
今まではこういう更新の場合、家族になにか緊急事態があったとかのケースが多かったのですが、今日はどうやらそういう事情ではなく、更新時間の遅さとは無関係な内容のようです。いかに観月とはいえ、こんな時間にまで起きてて更新するっていうのは本来イリーガルな事態だと思うのですが、まあその辺は置いといて。久方ぶりに、日記はまだか(カチカチカチ)な思いを堪能することができました。
さて、それでは気を取り直しつつ、今日の日記はというと――
今日から――
わらわたちの幼稚園でも
いよいよついに衣替えじゃ!
秋にちなんだ日記が続く中、今度は衣替えの話題が出てきました。リアル俺は寒い環境に住むDOUMINなので、今になって衣替えというのも少しタイムラグを感じるわけですが、東京準拠だとまさに今時期なんでしょうね。
しかしその衣替えよりもまず、観月の秋を堪能する様が実に本格的。さっすが、姉妹の中でも最も季節の風雅に通じていそうな子ですよね。
秋じゃのう――
――ふぅ♥
あっつい渋茶が
旨いはずじゃ!
……風情を理解するどころか、年季すら感じられる堪能の仕方って気もしますが、まあ、渋好みの幼稚園児というのも、トゥルーならではの醍醐味であります。っていうか、渋茶うまうまする観月可愛いです。
さて、衣替えの話題ということで、普段は巫女服で過ごす観月には、改めて思うところがあったようで。和服は基本的に風情のあるものながら、衣替えという概念はあまりないですからね。そのへん、観月としては少し残念なのでしょう。とはいえ、幼稚園用のスモックは長袖に変わったとのことで、そのあたりでしっかりと衣替えを堪能することはできている模様。……観月のスモック姿って、なにげに想像つきませんけど。G'sのイラストでは、袴を着て通園していた気がしますし。
うむ。
普段は鼻を垂らしているような
クラスのオノコどもも、
なんだかみな――
少しきりりとして見えるの。
良きかな、
良きかな!
……相変わらずの超幼稚園児っぷりではありますが、マリーの例を見るまでもなく(あちらはあちらで超幼稚園児ですし)、このぐらいの年頃なら、どちらかというと女の子の方がいくらか年よりませている傾向はあるのでしょうね。とはいえ基本的には、マリー相手に嬉ションしちゃうような子たちなわけですが。
とまあそんなこんなで、トゥルー兄にも衣替えを促して終りかな、と思っていたところ――
これで、あと――
体操服のブルマも衣替えしてくれれば、
真冬の体操も寒くないのじゃがの。
体操服ばかりは衣替えがないのは――
どうにも不思議な事じゃ……
発覚! トゥルー世界は未だにナイスブルマ!
なんということでしょう。いや、俺は決してブルマ派ではなく、むしろジャージ姿の女の子にこそ欲情するタイプの人間なのですが、しかしそこはそれ、それこそ風情の問題というべきか、トゥルー世界が未だにこのブルマという名前の風情を保ち続けているシュバルツバースばりの異空間であることを改めて思い知るとともに、深い畏敬の念を払わずにはいられません。とはいえ、それを穿いて寒い思いをしている観月たちのことを思うと、冬場ぐらいはジャージの着用を認めてくれても良くってよ、と思わず貴婦人のように思ったりも。
連休は――
海晴姉様の誕生日にかこつけて
結構遊んだわね。
さりげにスルーされてしまっていた海晴姉さんの誕生日に改めて触れる氷柱はやっぱり優しい子! それはもちろん言うまでもないことですが、しかしそれでも、19人分もある以上わりとおざなりになりやすい誕生日を、こうしてフォローしてくれるというのは、氷柱の繊細な家族思いっぷりが垣間見られるかのようですね。
まあ、日記で触れる触れないはともかくとしても、トゥルー内リアルとしてはもちろん盛大にお祝いしているわけなんですけれどね。今回の海晴姉さん誕生日も、みんなでずいぶん楽しめたようですが……なにやら氷柱の空気が重いです。これはどうやら、単に誕生日のフォローをしたというだけではなくて、
海晴姉様は――
見た目は――
あんな風で。
正直けっこう軽そうなのに。
妹たちの笑顔を見るのが
1番楽しいってさらって
言えちゃう人だから――
……まさにその通りの、海晴姉さんという人の美徳。それを改めて語ってくれているわけですが……まあ、ここまで言われれば、氷柱の言わんとしていることも、それなりに察しは付きますよね。
はい、海晴姉さんは一応18歳なようですが、すでに社会人として外の世界で働いている、もう大人といっても問題ない存在なわけで。ましてやあれほどの美人で、お天気お姉さんという露出の多い派手な職についているにも関わらず――みんなと同じく、誕生日までも家族第一に過ごしているということに、氷柱としてはやはり、一人の「社会と向き合うことを考えている女の子」として、思うところがあるようです。
氷柱が例に挙げていることは、まさに誰もが思うような……けれど、だからこそ説得力のある、本来の成人女性のあるべき――というか、望むであろう姿なわけで。
もちろん、改めて誰かに言われるまでも無く、幸せの形は人それぞれなんてことは氷柱も理解しているでしょうし、ましてやこのトゥルー家の絆が特別なものだってことも、その一員としてよく分かってはいるんでしょうけれど。
恋人作ってディナーとか
そんなこと全然考えもしないって顔で。
さくらや真璃が作った花かんむりをかぶって、
自然公園の芝生の真ん中にすわって
最高に幸せって顔で笑ってる海晴姉様――
……このような海晴姉さんが幸せであるということに、誰も異存は唱えられないのでしょうけれど。でもそこには間違いなく、家族に縛られているという現実もあるわけで。氷柱はそれを言っているんですよね。
で、なぜ氷柱がこんな海晴姉さんを見て、いろいろと思っているのかと言うと――氷柱には、家の外に出るという形での夢があるから。
もし、留学とか――
……
したいって言ったら。
ユキは――寂しがるのかな。
ねぇ、下僕は――
どう思う?
……
……留学、と来ましたか。ええ、家族モノとしては、定番といってもいい要素ですが……このトゥルー家において、姉妹の誰かがそうなるということの重さは、氷柱のこの言葉の雰囲気と重さがなにより如実に表現しています。
まあ、普通は――高校を出れば、もう家から出て暮らすようになってもまったくおかしくはないわけで。むしろ海晴姉さんみたいな人が実家暮らしというのはそれなりに珍しい形でもあるわけで。
まあ、家族で過ごす幸せがかけがえのないものというのは、改めて語るまでも無いとしても……それを乗り越えなくては叶えられないのが、「夢」ってモノなんですよね。多くの場合。
氷柱の場合は、脳科学者という大きな夢があるわけですから、それはもう、ヘタをすると高校の時点でそういう話が出てきても全くおかしくないんですよね。超優秀な子でもあるわけですから。
もちろん、「海晴姉さんみたいにするのは耐えられそうにない」と言い切る氷柱とて、それが平気なわけでは当然なくって――ましてや、もともとこの夢は、綿雪のために抱いたものなんですから。ユキのために、ユキから離れて暮らす――と。そういうことなわけです。
この問題に、さっと答えなんて出せるはずも無いでしょうけれど。
しかしながら、この氷柱は間違いなく――トゥルー俺に、その答えや是非を求めてます。
ある意味、トゥルー家族の一員となってから、一番重い問題を突きつけられた……そういう気分です。
うわ〜。
おふとん、いーっぱい!
おふとんおやま!
……青空の喋ることって、どうしてこう何もかもが俺を幸せな気分にしてくれるのでしょう。そりゃあ1歳児の感性を、そっくりそのままよく喋って表現してくれるのですから、それはもう無垢とかそういうレベルじゃあないですよね。ああ、幸福。
そんなわけで今日は、そんな青空の語る何事も無い日常のワンシーン的な日記なわけですが……なるほど、お布団山。この大家族の人数分の寝具関係をカバーするとなると、それはもう、修学旅行のときなどに見る旅館やホテルの布団山と遜色の無いレベルでしょうからね。小さい子供にとっては、まさにかっこうの遊び場所でありましょう。実は小さい子にはけっこう危険な場所でもあるので、ちょっと心配ではありますが、まあ近くに誰か居れば問題ないかな。
とまあ、きっとトゥルー俺が傍で安全を確認しているのであろうと考え――
たかいたかーい!
そらのことを
よんでるよ?
のぼって、
のぼって、
そらちゃん、
のぼってって♥
……こんな見ているだけで幸福度が急上昇しそうな様子でお喜びな青空を、微笑ましく見守るのがトゥルー俺の仕事でございますああもう、俺が布団だったとしても、全力で昇ってほしいと訴えかけますよそれはもう。
しかしながら、別に童心に返らなくとも、こういう布団の山にダイブするというのは、心引かれるものはありますよね。「ほかほか、ふかふか! おひさまのにおい」なんて、魅力を感じない人間などいないでしょうから。
そら、おふとんくにの
おしめさま!!
ごろごろごろ〜ん――
ごろごろごろ〜ん――
おふとん国の、おしめさま! あああ……頬が緩む、緩みすぎる。言葉のたどたどしさの可愛さもさることながら、お布団国のお姫様とか、発想のレベルも可愛さの境地に達しているかのごとくです。こういう感性はやはり、女の子ばかりのトゥルー家族ならではなんでしょうね。
そんんわけで、「ごろごろごろ〜ん――♥」なんてされつつ誘われては、行かないわけにはいきません――が。
……
あれ?
おふとんおやま――
ざぶんざぶん。
おふとんうみになってきた――
……はい。荒廃してしまった王国の復興作業は、トゥルー俺のお役目ということで。
ばっばばば――
あばっ!
ふがっ。
ぴぎゃっ!
ふんば?
ば――――
あばばばばばばば――っ!
あさひさんの更新はいつだって嵐の如く! もうのっけから、ただごとならぬ騒ぎようであり、何事か起こったのかとちょっと心配になってしまったわけなのですが、本当に何かあったら別の姉妹が日記を書くでしょうからね。とまあそんなわけで、今日も恒例のYASEI味溢れるあさひスタイルな日記であろうと思いつつ、翻訳先生を頼らせていただきます。
なんかもう――
かゆいっ!
むずむず。
イライラするっ!
これのせいかな?
あー自分じゃうまくとれない――
だれか、このかゆいおむつとれーっ!
……おむつが、かゆい。ただ装着しているだけでも、そうなる可能性はありますが――ええ、赤ちゃんにおけるごく日常的なエマージェンシーが生じたと見るべきでしょう。すなわち……至急オムツの取替えを!
ところで、トゥルー俺もすでにこの家で長いわけですから、あさひのオムツを取り替えたことぐらいはあるのでしょうね。……いや、さすがに0歳児のうんちやおしっこを見たところで、せいぜい父性的な使命感を駆り立てられるぐらいでしょうけれど。はい。(自分に言い聞かせるように)
こんこん。
……
こほっ。
……
こんこんこん――
うおおおおおおさくらの身についにインフルが!? ……と思わず思ってしまいそうな今日の書き出しですが、どうやらそういうことではなさそうで一安心(さくらは「お風邪」って言ってますけど、これは多分インフルエンザのことですよね多分)。もっとも、今の時期、いつ誰がどこで感染していてすでに潜伏状態だったとしても不思議ではないので油断は禁物ですが、それはひとまず置いておくとして――
あ!
ごめんなさい!!
いま、さくら
おせき、でてきたのに――
おててで
お口おさえるの
わすれちゃってた……
……はい。インフル大流行の今年は、こういう光景をよく見ますよね。みんな新型インフルエンザに気を尖らせてますから、人前でするせきやくしゃみには、非常に気を使わなければならないご時世です。
さくらも今はついうっかり、って感じの様子ですが、やった後とはいえ、それをきちんと気にしているあたり、さすがにマナーはきっちり教え込まれているみたいですね。あるいは、そうしなければという空気をきちんと感じとってもいるのでしょう。トゥルー兄としては、そういうことをきちんと覚えていることを褒めてあげたいわけですが……危機感を煽られすぎてしまったのか、うつしてしまったのではないかと泣いてしまわれました。……まあ、最近では、外で近くの子供に咳き込まれただけで酷く嫌な顔をする人とかも居るので、さくらでなくとも、こういうことで思い悩んでしまう子供もいるのではないかな、とも思います。
お兄ちゃんがさくらのせいで
お病気になっちゃう――
お熱がでて、
こんこんでて、
おなかいたくて
ゲーが出ちゃうの。
うええええ〜ん!
さくらが悪い子だから――
おててしないで、こんこんする
悪い子だから――
しかしながら、さすがにここまで思いつめられてしまうと、逆になんとかしてあげないと、って思ってしまいますね個人的には。いや、もちろんさくらのいつもどおりの心配性って部分もあるんですが。
……とまあ、今日の日記は最初から読むと、思わずトゥルー内にパンデミックが、と心配しそうになってしまうわけですが、今日のさくらは幸いなことに、何の問題もないご様子。むしろいつもより元気なぐらいで、ほっと一安心ですね。小さな子供が山ほどいるトゥルー家にとっては非常に深刻な問題でもありますから、ホントなによりです。
そんなわけで、当然トゥルー兄にだって何の問題もないわけですが――
わ――、すごい♥
お兄ちゃんって、
やっぱり男の子だから
つよーいの?
お兄ちゃん――
かっこいい♥
……むしろちょっぴり得した気分です。
チャオ〜☆
今日はいいお天気だったネ〜!
立夏もゴッキゲン♥
立夏がゴキゲンでない日など、夏休み最終日とかの限られた日を除けば滅多に無いような気もしますが、そう思えるほどに立夏の日記というのはいつだって陽気な気分にさせてくれますね。
とりあえず晴天の話題から入るというのは、あらゆる人のやりとりにおいて基本ではありますが、立夏にかかればただの陽気のお話も――
なんか、お天気いいっていうだけで、
こんなに気分爽快なんて――
リカってお手軽〜☆
シシシ♥
ねねね、
カノジョにするなら、
やっぱりこんな子が
イッチバン!
いいと思わナイ?
なんかいきなり強烈なラブアピールへとベクトル転換されましたですよ!? いや、最近の立夏の発言をざっと振り返ってみても、なんというか、ここのところ凄いですよね。トゥルー兄へのアプローチっぷり。ちょうど今年のバレンタインあたりからその傾向がはっきり見えてきた気がします。
ええ、ヘタをすると、愛情表現こそ強烈なものの、直接彼氏彼女とかのお話には持っていかない春風さんよりもラブアピール度が高いんじゃないでしょうか最近の立夏。その表現こそ、超気軽でかつ子供らしさも大いに残ってはいますが、それでももっと小さい子たちとは違い、稚拙ながらも明確に「彼氏彼女」って部分を明示してきているわけですからね。
そんな立夏が、この陽気にかこつけて、彼女にするといいよってアピールしてきているわけですよ。いや、この立夏ならではの能天気なノリでさほど重さは感じませんが……いやあ、どうしましょうトゥルー兄。確かにこの可愛さで、もっと「女の子」って部分が強く現れてくるようになったら……トゥルー家族内でもっとも「男と女」って関係に近くなってしまう可能性が高いですよこの子。
「もうね、ちょっとしたコトですっごいよろこんでくれちゃうヨ!」って言い方に、どこか性的魅惑を感じずにいられないのは、ここんちの子全てに共通する傾向ではありますが――って、いきなりのチョコボール攻撃とな!?
ポイっとナ♥
へへへ♥
ナイスキャッチ!
学校の近くのお家の
ハスキーのジョンより
ぜーんぜん上手っ!!
さっすが、オニーチャンだネ☆
犬! トゥルー犬ここに生誕! いやまあ、これはむしろ立夏自身にも似合いそうというか、お互いに投げ合って食べあうみたいなノリを期待してのことなんでしょうが、当方のM心も多少なりとも刺激させられまして候。
さて、そんなノリでいつでもお菓子が出てくる立夏のポケットは、夕凪さん顔負けの魔法のポケットなのではと主張する立夏さん。……いや、そのポケットこそが立夏のお腹の肉を作り出す元凶でもあるわけで、ちょっとどう反応すべきかって気もしますけれど、
リカも一緒にチョコボールを
1つ高く高く投げて――ポイッ
うん――ヤヴァイ♥
マジで幸せ♥
……この笑顔と反応を見せられたら、どんなにぽっちゃり度が高くなったとしても、どうこう言えなくなっちゃいますよね。
そしてまたお買い得彼女度のアピールを。「チョコボール1個でこんなに幸せなんて――こんな安上がりな子他にいないヨ」と、さりげに健気さもプッシュしているあたり、実にノリノリというか。
この立夏の彼女アピール、さっきも言ったとおり、ノリこそ実に軽くって、あくまで家族愛の延長にあるとも思えるわけですが……うん、やっぱ、そこからは一歩、ほんの一歩ぐらいではありますけれど、確実にそのラインは踏み越えてますよね。本人もごく軽い意識ながらも、そうだと自覚していますし。ああ、トゥルー兄、ひそやかに迫る兄=男としてのピンチ状況。「オニーチャンって本当にラッキーだね♥♥♥」なんて言われてる通り、実に幸福状況であるのと同時に。
未来とは――
無数にあるもの。
……おや、今日の日記は霙姉さんですが……いつものような日記のように見えつつも、それよりもどこか雰囲気が重めと言うか――タイトルの時点でなにやら不穏と、穏やかならぬ空気が漂ってます。
霙姉さんが語っているのは、未来の話――ええ、霙姉さん自身にしてみれば、未来はそのまま終末と読み替えることもできるのでしょうが、ここではもっと普遍的なお話が出てきています。自分自身はそれを信じるものではないと前置きしつつ。
すなわち、姉妹達に関わる――「if」の話。
きっと私達姉妹にも――
様々な可能性があったろう。
例えば――(略)
……たとえのお話だとしても、理屈の上ではわかるとして、あまりいい気分になることではないですよね。今居る家族が、もしかしたらいなかったかもしれないという可能性のお話は。ましてやトゥルー俺など、そもそもそれが偶然と言えるのかさえ分からない、数奇すぎる運命に翻弄された末にこの家にたどり着いたわけですから。
そこでさらに、「そしてヒカルが――いや、オマエが」と、あえてヒカルとを関連付けて語ろうとしたこの部分。小説版を読む限り、トゥルー俺すなわち陽太郎と同い年の「きょうだい」であるヒカルには、出自的に何かがあるような、そんな言われ方をしていた部分があった気がしますが……まあ、ここではスルーしておきましょう。
霙姉さんが総括して語る未来のお話は、理屈としては面白いものの、ある意味では普遍的な内容でもあり、どうしてこんなことをいきなり語り始めたのかといぶかしんでいると、
ああ――儚い
この世界。
運動会が終わって
秋も深まり――
なぜだか我が家に
不穏な空気が満ちているのを感じる。
発信源は――
氷柱か?
……と、いきなり原因が判明してしまったような。
ただ、特に今日何かがあったと言うわけではなく、この秋の季節が、繊細な氷柱の心に何か影響を与えたんじゃないかとか、そんな類のことみたいですね。あくまで「きっかけ」としては
しかしながら、氷柱がこうして深く悩んでしまう原因というのは、先日本人が語ったこと――これが大きいのでしょうね。ちょうど間に、青空たちや立夏の、陰り一つ無い日記が続いて挟まれていたおかげで、リアル俺には読めなかったことですが、あの日以来、氷柱の周りにはそういう空気が漂っているのかもしれません。
その悩みは、直接的には、将来の進路とかそういう部分なのでしょうけれど、根源としてはやはり、脳科学者を目指そうと思ったそもそものきっかけである、綿雪の病気のことがあるわけでして。今は非常に落ち着いた状態の綿雪で、もしかしたらこの先体が悪くなることなんて無いのかもしれませんが――だからといって、いきなり氷柱が心に抱き続けてきた夢がどうでもよくなってしまうことなんてないでしょうから。
ただ――
アイツはきっと――
いつもいつも。
心の隅で、綿雪が病気に
なっていなかった可能性を
追い求めているのだろう。
現実の未来を知らずに。
綿雪が病気じゃなかったら――すなわち、この家を出たりすることを深刻に悩まないで済む自分がいたのではないか。そういう思いが、氷柱の心をかき乱しているのでしょう。それで霙姉さんは、ちょっと遠回りに、こういう未来のお話をしてくれたわけで。
……ええ、もちろん、霙姉さんがこんなことをトゥルー俺に語っているというのは、それなりの理由――というか期待が込められているということは重々承知しているわけですが。
ああ、無駄な努力をこそ――
人は愛と呼ぶのかも知れないな。
私には氷柱を止めることはできない。
……「私には」と。霙姉さんが、あえてそう言ったという様な気がする、秋の日であります。
小さい頃から
心に決めていた――
春風の大切な大切な
将来の夢は。
それはもちろん――
大好きな人の――
お・よ・め・さ・んっ♥♥♥
のっけから秋風どころかシベリアン・ブリザードすら吹き飛ばしそうな勢いで強い春風が吹いております!!!
ええもう、昨日霙姉さんが言ってた不穏な空気なんて一瞬でかき消してしまいそうですこの人のテンション。いやまあ、わりと日常的なことではあるんですが、春風さんは本当に、トゥルー俺がそこにいる限りいつだってこんな状態でしょうからね。個人的には春風さんがピンだったり、トゥルー俺とは関係ない部分での振舞いってどうなんだろうなって気になったりしてるんですが、少なくともトゥルー俺視点からそれを窺い知ることは難しそうです。
もっとも、このガッチガチに王子様大プッシュな春風さんも、そのあたりを深く突きつめると、それこそ氷柱に劣らないぐらい重い空気を帯びることだって考えられるわけですが……とりあえず今心配することではなさそうですね。今の春風さんはご覧の通りですし、いかに将来ということがあるといったって、明日明後日に訪れることでもないわけですから。
しかしそれにしても――ノリノリであるこの春風さん。
なんだか、こうして
改めて――
それも、こんなに大きくなってから
口に出すと――
照れちゃう――
きゅんっ♪
おまけに今すっごく
最高に――
気になる人の――
前だし。
きゃっ♥
言っちゃった――
……この勢い、この加速度。いや、止める気は全然ないんですが、止めようと思っても誰も止められなさそうです。まさに恋する春風タイフーン。
……と、ここまででむやみにテンションをあげたところで――とつとつと、春風さんが語り始めるのは、ある意味同じ内容ではありますが――自身の抱いた、夢のお話。
もしかすると、このやたらとテンションが高いのも、昨日言ってた重い空気を払拭したくて、あえてやったという部分はあるのかも知れませんね。いや、ほぼ素でもあるでしょうけれど、そういう意図もあったのではないかなあ。春風さんは頭が春風なだけでなく、常に優しいお姉さんでもあるわけですから。
「たぶん、とってもありふれたちっちゃなちっちゃな夢」――そう語る春風さんの姿は、さっきまでとは裏腹に、しっかりとした重みがあって、きちんと聞かなければならないって思わせるには十分な内容です。それが叶えば、あとはもう他にはなんにもいらない、世界で一番大きな夢……そう言い切ってしまえるからこそ、春風さんは春風さんなんですよね。本当はもっと深い部分で葛藤があるってことも、トゥルー俺としては十分に理解しておくべきではあるのでしょうけれど、そういうことをきちんと踏まえたうえでの本人の結論であり、今の彼女を突き動かすベクトルなわけですから。
そんな春風さんが、かなり豊かであろう胸を張って言える、その夢。
氷柱ちゃんみたいに――
世界に広がるような“大きな”夢を
持つことは素晴らしいことだと
春風も思うけれど――
でも、春風だって♥
この熱い胸の思いを全部かけて――
春風の夢を思っています♥
……やっぱ、春風さんという人は、心の中の「思い」の部分が、人よりずっと強いんでしょうね。迷わない……というか、それを信じて突き進めるって意味で。
そんな春風さんの姿に、まばゆいものを感じてしまうトゥルー俺は、人間として春風さんのことを改めて尊敬する部分があるなって思うに違いありませんよ。
もちろんそのお相手は――
ウフフフフッ♥
まだ――
教えてあーげないっ♥♥♥
……ええ、こんな風に、小悪魔というかなんというか、とにかくこちらの脳を揺さぶるような言動には晒されつつも!
ぽん、
ぽろろん♪
ぽん、
ぽろろん♪
なーみだの
しーずくが
ぽん、ぽろろん♪
……
うぇぇん!
おしりいたいよぅ――
おお虹子さん、いきなりご機嫌――って、虹子尻に一体なにが!? いや、最初のこのノリノリな歌い方からはちょっと唐突にどうしたのかと思ってしまったわけですが、「なみだのしずくが」ってあたり、現在の虹子自身の心情を即興で歌にしたってことなんでしょうね。なんという優れた感性、そして心の余裕……っていうか、痛くて痛くてっていう状況ではないんでしょうね。どっちかというと、お尻が痛くなってしまったことそのものが悲しくて泣いているってノリなのでしょう。いや、それにしても、普通に泣いたりするより先にそれを歌にすることを優先するというのは、本当に感性豊かだなあ。
……とまあ、そういう分析はそのへんで。一体なんでお尻が痛いのかが気になりまくるわけですが――ああ、(歌う余裕もあるとはいえ)そんなに痛いだなんて。痛くて赤くなっちゃったお尻(虹子のお尻って単語を書くたび俺内部の興奮度が上昇しております)をさして「ちっちゃなかわいいにじこのおさるさん」って表現するぐらいの感覚があるとはいえ――って!?
見てみて、おにいちゃん!
ほら、
にじこのおしり――
まっかっかっかっか!
――直見せ!?
おくすり、
ぬりぬりしなくても
大丈夫かなぁ?
――「塗れ」と!?
……いやもう、心配したり事態を把握するより先に、とことんこちらの悩乱の度を深めてくれる傾国っぷりをとことん発揮してくれている虹子さんではありますが! お尻に魅了されてどっぷりぬりぬりと浸りたいという気持ちはやまやまなのですが! さすがに何が起きたのがすごく気になりますのでここらでお先にッ! トゥルー兄たるもの、お尻に流されない鋼鉄の意志もまた必要不可欠。
……さて、一体虹子に何が起きたのかといいますと。
もう――にじ、
つららおねえちゃん
キライ!
ああ、やはり先日から続いている氷柱がらみの事態でしたか。まあ、氷柱に関しては、夕凪さんの日常を見れば分かるとおり、小さい子たちを時には叩いて叱ることもある役割のお姉さんなので、今回の虹子についても、その類のことなのだとは思うのですが。叩かれて痛いといっても、お歌を歌うぐらいの余裕がある程度の痛みなのでしょうしね。
しかし、いくらそれほど痛くない叩き方といっても、けっこう悪いことをしなければそういう怒り方はしませんよね。普段ならば。
今回に関してはどうやら、虹子が何か、大事な資料かなにかの裏にお絵かきしてしまったようなのですが……モノによっては確かに怒らざるを得ませんよね。そのこと自体はワカるんですが……この一連の話の流れの中で、「必要な書類」って単語を想像してしまうと、どうしてもこう、急展開の予感を覚えずにはいられないわけですが……はたしてはたして。
……で、今回の自体の重さを教えてくれる発言が――
だって、だって、
にじ――
つららおねえちゃんが――
ないちゃうなんてちっとも
おもわなかったんだもん!!
……なんという。
この怒りっぷりと悲しみっぷり、やっぱ思いつくとしたら、それこそ留学とかの手続き関係の書類とかになってしまうんですが……そう見せかけて案外フェイク、って流れも考えられなくは無いですが、それでも少なくとも、いたずら描きをされて、あの氷柱が思わず泣いてしまうぐらいの大事な書類ってことで……ああもう、考えれば考えるほど、氷柱が何か重大なことで思いつめていて、かつその一歩を踏み出そうと悩んでいる状態としか思えません。
こんな重大な事態なのに、日記の更新は狙ったように金曜日。とりあえずは月曜日の日記待ちということになりますが……いやあ、トゥルー兄としてどうしたらよいか、これほどまでに悩ましい事態も初めてという気がします。未来へ歩むことへの正しさと、家族とともに過ごすことの正しさ。どっちも大切なものですし、それがときに二者択一になることも確かなわけで。正しさだけで答えが出せない、とても大変な状況です。
まあ、今はとりあえず――
うえぇぇぇ〜ん……
おにいちゃん――
にじ、悪い子?
ごめんなさい――!!
改めて大泣きしちゃってる虹子を慰めてあげることから。歌ったり怒ったり泣き出したりと、感情豊かだなあ。それだけ今トゥルー家というか氷柱の周りの空気が色々と煮詰まっているってことなんでしょうけどね。
不気味な空気が――
満ちておる。
うーむ。
観月的にも今のトゥルー家に何かを感じずにはいられないようで――。ううむ、週明けと同時に家族を覆う暗雲も晴れている、ってワケにはいきませんよね、やっぱり。時間が経てばいい類のことが原因ってワケではないですし。
とはいえ、今回の氷柱を巡る事の次第というのが、まだトゥルー俺視点では完全に明らかになっていないのも事実なわけでして。もちろん、この家族の雰囲気を察する限り、トゥルー家で過ごすようになって以来最大の問題だとは思うのですが、それでもやはり、詳しい事情がきちんと明らかになっていないと、どうリアクションしたら良いか分からないという部分もあるわけで――。今までの氷柱が忠臣となった事件に関してもそうでしたが、やっぱ最終的には、本人の口から直接語ってもらわないことには、どうすることもできないんですよね。
とまあ、そんな身悶えしてしまいそうな間が続いている今日の日記担当は観月なわけですが、この状況について、さすが観月ならではの的確な表現を。
――苛苛。
おお!
まさにそれじゃ!
今、我が家に満ちておるのは
折しも接近しておる
この台風の渦にも似た――
苛苛の渦――
人の発する気の“低気圧”。
うん、実に観月らしい、子供らしからぬ知識で語る、どこか子供らしい感性による言葉。こういう表現が一番しっくり来ますよね、こういう状況は。……いや、「サザエさん」なる固有名詞が出てきたことにはちょいと同様しましたが、以前にもこういうのはありましたからね。このあたりはギリギリセーフ、といったところでしょうか。某ネズミーランドだけはダメだったようですが。
ともあれ、この悪い空気の大本が、氷柱の苛苛から発せられていることは間違いないわけで。「この苛苛がぐるぐると渦をまいて幸も不幸も周囲にある様々な感情、魂を巻き込み飲み込んでは――」って表現は、まさにまさにと思う次第です。……はい、一応ちゃんとぐぐる先生にお尋ねしました。
観月的には、誤用したかと思っているようですが、むしろ今のこの状況だと、そうあって欲しいという言葉でもありますよね。「ん? ちとチガウか」と言ってますが、これが後になってナイスな表現だったと言える状況になることを願うばかりです。
……とか思ってましたら、なにやら観月さんが、何か――
あぁっ!
やややややややっ!!
氷柱姉じゃの頭上に巨大な暗雲が!!!!!
これは大事!
いざ――ゆけ!
キュウビよ、あれらを
喰らいつくすのじゃ――!!!!!!!!!
……何か、霊的な事態に!? いや、これはそもそもそういうことでは――という思いもありますが、もともと、こういう妖関係のことって、人の抱くネガティブな感情こそがその根源であることがほとんどですからね。実際、観月から見ると、氷柱の取り巻くオーラ的なものは、そんな感じのことになっちゃってるのかもしれません。
さて、ちょっぴり霊的には恐ろしめな存在・キュウビさんが放たれてしまいましたが、これで事態が何か良い方向に……向かうかどうかは、さすがにトゥルー俺の理解の外のお話ではありますね。ともあれ、少しでも氷柱の気分が和らぐのであれば、是非もなし。……氷柱の食べてはいけない部分まで食べられたりしませんように。魂とか。
もういい。
よーく、
わかった。
どうせ私なんて、
いない方が――
……
私は――
消えます。
探さないで下さい。
氷柱
……ついにこのお約束イベントがが来てしまった……!
はい。見ての通りです。以上が本日の日記の全文であり、いわゆるひとつの書きおきであります。ああああああああああなんということ――!
とはいえ、ここ最近の氷柱の情緒不安定な感じと、それに加えて、家族全員で、腫れ物を扱うかのような雰囲気が蔓延していたことも、この決断に駆り立ててしまった大きな要因ではあるんじゃないかと。虹子の件は仕方ないとしても、日記がずっと氷柱のことばかりになってましたからね。(キュウビの影響がどうなのかは観月のみぞ知るってことで)中学生の繊細な心には、それだけでもけっこうキツいものがあったんじゃないでしょうか。
……いやまあ、これがリアルの交換日記であれば、もう少し配慮すべきかとも思うわけですが、トゥルー日記って存在のあり方が時として物理法則を越えるので、そういう繊細な部分はスルーできるのかなとも思っていた部分がありまして。結果としてそんなことはなかったわけで、反省せざるを得ませんが。
ともあれ、この文章をそっくりそのまま受け取れば、いわゆるひとつの典型的な「家出」モードであり、即座に氷柱の捜索を家族総出で行わなければならない事態です。一人でさっさと留学とかそういうことではなさそうですしね。極めて突発的ですし。
しかしながら、こういう感情的な飛び出し方であれば、それほど本格的な遠出ってことはなさそうな雰囲気ではあります。もちろん予断は許しませんが、まずは家から歩ける範囲、あるいは交友関係を当たってみるのが基本ですね。
ところでトゥルー関係での家出といえば、以前ゲストでやってきた桐乃のことが思い出されますが、さすがに氷柱が桐乃亭へ向かったってことは考え難いわけで、となると氷柱の個人的交友関係かなあ……って、氷柱の個人的な交友というのがふと気になりまして候。友達がいないってことはないでしょうけれど、多いということもなさそうであり、ちょっぴり学校での氷柱が気になります。G'sでもけっこうクラスに対してもプライド高めな雰囲気でしたからね。
ちなみに、小説版ではありますが、トゥルー俺であるところの「陽太郎」も家出経験者だったりも。
まあ、あれこれ考えるよりも先に、捜索の手を延ばさなければ。そろそろ夜が厳しい時期でもありますしね。……裏山あたりに逃げ込んでたら、それはそれでまた別の心配がありますし。
ともあれ、一つだけいえることは、この手の書き置きの「探さないで下さい」というのは、そっくりそのまま「探してください」って言葉と同意語だってことです。トゥルー俺、今こそ兄力を見せつけるべし!
どうしよう――
どうしようどうしよう
どうしよう――
お兄ちゃん、ユキ――
どうしたらいいの?
氷柱お姉ちゃんが――
帰ってこないの。
うわあああああああやっぱり一晩経ったところぐらいで解決するわけなんてないいいいいいいいいいいッ!! しかも心配事の一つだった綿雪が、想像通り非常に動揺してしまっております!
ええ、そりゃ家族の誰もが心配はしているでしょうが、やはり氷柱の愛情を常に一身に受け続けてきたのは、他の誰でもない、この病弱っ子だったユキなわけですからね。そりゃあ、ユキにとってどれだけ不安で心配をかきたてられることか、想像に難くありませんが……
氷柱お姉ちゃん、
ユキのこと――
置いて行っちゃった……
どうしよう――
ユキ、こんなこと、
初めてで――
ユキ――
ぅぅ――
……
グスッ。
……なによりも、この言葉を目の当たりにするだけで、その辛さや悲しみはトゥルー俺にこれでもかというほど伝わってきますよね。ええ、我がことの如く。
とりあえず、氷柱の気持ちについては確かに、同情というか、一方的に責めるわけにはいかない部分があったことも確かです。ただ、だからといって、こんな風に家族に――ましてやユキに心配をかけさせて、悲しい思いをさせてしまった時点で、そのことは責めないわけには行きませんね。
もっとも、氷柱に対しては、どんな言葉で叱るよりも、今日のこの日記を読ませることが一番の責めになるとは思うので、帰ってきてくれた暁には、是非その方向で。ええ、必ず読ませますとも。
ご、ごめんなさい、ユキ――
どんな時だって、
泣いたりしたら――いけないのに。
泣いたら不幸がやってくるのに。
……もうね。このあたりの文章を読むだけで、トゥルー俺の心すらかきむしられそうなほどにクるわけですよ。このいじらしさ、健気さ、そして強さ。……もしかすると、この「泣いたら不幸がやってくる」っていうのが、氷柱自身がユキに言い聞かせたことって可能性もあります。
とにかく氷柱と綿雪には、その深い絆を示すエピソードには事欠きませんが、どうやらこの子たちの間には、普段の日記では語られてないところでも、そういう愛情の証みたいなものがあったようで。ユキ自身が語ってくれてますが――
夜になると
ユキが眠る前には、
トントントンって
小さなノックの音がして――
(中略)
……氷柱さん、アンタどんだけ愛情溢れてるんですか……!
毎晩……毎晩そんなことを! それを受けてのユキの握りこぶし姿を想像したら可愛すぎて即失神モノだったので、その笑顔見たさと思えば、確かに共感も理解もできる行動ではありますが……しかしそれにしたって、立派すぎるお姉ちゃんでしょう。
しかしながら、そんな毎晩の夜のご挨拶――普段そんな愛情を受け続けられるからこそ、それがいざ……こんなことになってしまうと……うおおおあああああ見てられぬ! 青竜刀を手にしてでも連れ戻さねば!……とか思ってましたら、
ユキは知らなかったんだけど、
霙お姉ちゃんには
ちゃんと連絡があって――
「お友達のお家に泊まってくる」
からって、言ってたんですって。
……って、ちゃんと連絡はあったんですか! ああ、いや確かに、いかに氷柱が追い込まれていたからといって、それでもこのトゥルー家で育ったいい子なわけですからね。最低限の配慮はきちんと行っていたようです。霙姉さんを選ぶあたり、一番とやかく言われにくい人選をする余裕もあったわけで。。
しかしなるほど、友達の家……まずは、裏山に足を踏み入れてないことを安堵。しかし、氷柱の友達……いや、そりゃいるんでしょうけれど、こういう家出の際にお世話に成る程の親友というのは、プライドの高そうな子なだけあって、なかなかに想像がつきにくく。いや、ちゃんとそういう友達がいてくれるのであれば、これ以上ないほどいいことなんですけどね。あるいは、それこそ以前のパターンとは逆に、桐乃の家にお世話になっているとか。それはそれで、安心半分不安半分ではありますが。
ともあれ、きちんとどこに行くかは話してあった氷柱の家出。このことがある以上、家族でもお姉ちゃんグループの子たちは、そこまで不安に陥るようなことはないでしょうね。もちろんすごく気にしてはいるでしょうけれど、慌てることではないぐらいには。
ただ、小さい子たちには、そんなことないわけで……特にこの綿雪にとっては。そりゃあ、普段あれだけ氷柱が愛情を傾けていれば、ユキ自身にだって、自分が特別扱いされていることはよく分かるでしょうし。そのことが前提としてあると……
お兄ちゃん――
ユキ、なんか悪いこと
しちゃったのかな――
きっと――
ユキが氷柱お姉ちゃんに
あんまり面倒ばっかりかけるから
いやになっちゃったのかな?
……ほら、こんな風な心境にならざるを得ませんとも。そもそも、氷柱の将来ということ自体に、ユキの病気が大きく関わっているわけですが……そのことはユキ、どのぐらい知ってるんでしょうね。
もちろんこれはユキの思い過ごしではあるんですが、無関係ともまた言い切れないのが、ちょっと辛いところ。間接的にせよ、自分のことがきっかけで、氷柱が苦しんでいる――そういうことは、きちんと察してしまう子でしょうから。
それでもなるべく好意的かつ気楽な解釈をしようと健気に務めてますが……
でも、ユキは――
うぅん、きっと氷柱お姉ちゃんは
ユキのためにいままでそういうの
我慢してくれてたのかな――
……
お兄ちゃん――
ユキの涙が止まる方法、
教えて下さい――
……このユキの反応を見たって、たとえトゥルー俺がどれほど特別な存在であっても、氷柱の代わりなんてできるわけがない――そのことを改めて思い知らざるを得ませんね。この事実、一刻も早く氷柱自身にも知っていただかねば。
どうしよぅ〜!
大変大変大変!!
ユキちゃんが
お熱お熱お熱だよ―――っ!!
うわぁ〜〜ん!
どうしよぅ―――
誰かぁ――!!
お兄ちゃーん!!!!!
……こんな最悪の形になってしまうとは……ッ!
いや、綿雪の体調はここのところずっと良かったわけですが、それでもいつか、どこかのタイミングで、ぶり返してきてしまうという気はしてたんですよ。ええ、だからといって、まさかこのタイミングで……いや、心理的な影響を考えれば、まさにここぞとばかりの展開なわけですが。あああ、これはもう暗雲どころの話ではない。トゥルー日記が始まって以来、最大最悪の事態であることは間違いありません。お約束といえばこれ以上ないほどお約束な展開ではありますが、そんな一言で片付けてしまえるほど達観は出来ませんとも、トゥルー俺としては。
ええ、なにしろあの夕凪ですらこの慌てようって時点で、事態がどれほど深刻かというのが伝わってきます。トゥルー家族内のお気楽雰囲気に関しては、最終防衛線みたいなものですからね。
それはさておき、どうして綿雪が熱を出してしまったのかというと、それはただ単に精神的に参ってしまったというだけではなく、
帰ってきた氷柱お姉ちゃんを
1番に笑顔でお出迎えしたいからって――
元気なところ見せて
安心して欲しいからって
ずっと玄関ホールに座って待ってて――
……なるほど。昨日の様子を見ていれば、大いに頷ける行動ではありますが……いずれにせよ、これが体調への決定打になってしまったようで。もっとも、ただ単純にもともとの病気だけが由来で熱を出したというよりは、こういう直接的原因があったというのは、ある意味では救いのある話……なのかも知れません。今はそんなこと言ってる状況じゃないですけれど、長い目で見れば。
夕凪さん自身は案の定というか、氷柱の家出に関しては、「ゲンコツもナシだ――しめしめ☆」というお言葉が全てを物語っているというか。まあ、夕凪さんはさっきも言ったように、お気楽最終防衛線なので、いざってときまではそのぐらいの気持ちで居てくれた方がむしろ家族としてはありがたいんですけどね。……そんなこと言ってたら、綿雪のほうでその防衛線を越えちゃったわけですが。
氷柱を玄関で待つユキを見て、エライなぁって思っただけというのは、まあ、夕凪さんぐらいの子であれば、責められませんよね。ここのところずっと体調も良かったわけですし。
ただ――「あっちっち!」って言ってしまうほどの高い熱――この文を読んだ瞬間、さっと血の気が引けてしまいました。
そういえば昨日の夜、
夕凪が“リューガク”のこと
話したときから――
ユキちゃん、
なんか顔色が悪かった気がする。
……って、思いっきり引き金を引いてくれてたんじゃないですか夕凪さん! この子は本当、どんだけ地雷を踏んづけちゃうんですか。ああ、これがきっかけで……うわわ、昨日の時点で、むしろトゥルー兄とかお姉ちゃん達の誰かから、そのへんの事情は話しておくべきだったんでしょうね、きっと。もともと、何か氷柱が隠しているってことだけは敏感に察していたわけですし。
あ――夕凪のバカバカバカ!
もっと早く気がついてれば!!
……と自らを思い切り責めても居ることですし、そもそも留学話が綿雪にとってクリティカルだってこと自体、夕凪さんにはなかなか窺い知れない事情って部分もありますからね。いかに夕凪さんが精神的にタフすぎる子だとはいえ、今回のことはさすがに堪えるでしょうから、むしろユキの病状とともに、こちらもなるべくフォローする方向で。
ユキちゃん、ごめん。
とりあえず、お部屋に行って
ねんねさせてあげなくちゃ――
……それとともに、今回の事態は、いつもお気楽ご気楽な夕凪さんに、お姉さんとしての自覚を持たせてあげる機会でもあるなって、この反応を見て思ったりも。家族が大変なときに、全力で心配してあげること。それが、互いを成長させてくれるわけですから。
さて……ユキの具合はもう当然心配なのですが。気持ち的に徹夜看病は当然って勢いなわけですが。それと同時に、この事態を氷柱が知ってしまったら、どれだけ自分を責めることになってしまうんだろう……ということも、同じぐらいに心配です。「もうこんな自分は家にはいられない……」ぐらいのことは思いかねませんし。
ごめんなさい。
こんなつもりじゃなかったの――
まさか帰ってきたらユキがあんなことに
なってるなんて――
……
なんて、今さら言っても
白々しい、だけよね。
……はい。この書き出しの時点で、すでに安堵することができました。さすがに氷柱、ユキの一大事ならば何を置いても――と言いたいところではありますが、どうやらたまたま帰ってきたら大変なことになっていた、って感じのようですね。
もちろん、「私は――消えます」なんて言っちゃってた割に、わりとあっさり帰ってきてくれていたというのは、安心したような、ちょっと拍子抜けだったようなという気が無いでもないのですが、まあこんなこと、大事にならない範囲なのが何よりですからね。原因はさて置き、このぐらいの家出であれば、思春期には一度や二度あってしかるべき範囲のことでしょう。
もちろん、今回の家出の根本的な原因――夕凪さん曰く「リューガク」――に関わることについては、まだ根本的なところには触れられていないわけで、それが気になるといえば気になりますが、まあ、まずは綿雪の具合と、氷柱の気持ちの整理が何よりの優先事項ですからね。留学関係のことも当然気にはなるので、そのあたりは来週にきちんと触れられることを期待しつつ――今は、氷柱の言うことを聞いてあげなければ。
結局いつも。
なんだかタイミングの悪い女なの。
ユキのためにって思ったことだって
いつも空回りして――
みんなに迷惑をかけて――
愛情が空回りする――氷柱という子のことを、端的に示す言葉ですよね。今回のことに限った話ではなく。氷柱は頭はいいけれど、気持ちの表現の仕方はとても下手な子でもありますから。……まあ、純粋なタイミングの悪さでいえば、麗とか夕凪さんあたりはもっとひどいような気もするのですが、氷柱の言いたいことはそういうことではないですよね。
……氷柱が語る、綿雪という子が背負わなければならなかった境遇。その辛さとは裏腹の、あたかも天使のような優しい心。それらに感じ入るのは、お姉ちゃんとしてはある意味当然ですし、それだけ強く感じられる氷柱の心もまた、とても優しい心の持ち主であることは間違いないわけで。
ただ、氷柱が心に抱いていることの中には、客観的に見ても、ユキの視点から見ても、ちょっと間違ってしまっていることがいくつか。
誰よりも辛い運命を背負っているのに
誰よりも優しくて清らかな心を持ってるユキを――
いくら海晴姉様がキョウダイ平等って言ったって。
私ぐらいは思いっきりえこひいきして、
誰よりも大切にしてあげたいって
そう思っているのに。
……「なんで上手く行かないんだろう」と呟く氷柱。その原因は、この言葉の中におおむね含まれていますよね。ユキが望んでいるのは当然、えこひいきな扱いではありませんから。(むしろそれに傷ついてもおかしくない。ユキは賢くていい子なので、そういう氷柱の気持ちを、自分の思いを押し殺した上で、きちんと汲んであげられてるんですよね) 氷柱はむしろ、そんな綿雪を特別扱いしてでも大切にしてあげることで、自分の優しい心に生じる痛みを和らげようとしている――と言うこともできます。辛そうな綿雪にしてあげられることがない自分の苦しみから逃れるために。……もちろん、こういうことを直接氷柱に言ったりはしませんけどね。
加えて、もっと大きな間違いは――
ユキは私みたいに短気でわがままで
おまけにタイミングの悪い女なんかより、
ずっとずっと――
この世にいるべき子。
そんなユキにこんな心配かけちゃうなんて
いくらユキのためだったとはいえ――
私の方こそこの世から消えてしまえばいいのに。
……まあ。この言葉の気持ちが、分からないわけではないです。もちろんトゥルー兄として、こんなことを言わせたままにしておくべきでは決してないと思いますが……今日のところは、あえて聞くだけで。
ただ、この言葉をそのままユキに言ったら……それはさすがに怒ります。トゥルー兄も、それ以上に綿雪自身も。
でも、まあ。
正直に言うわ。
ごめん――と、ありがとう。
私のユキを守ってくれて。
おかげでユキはたいしたことなくてすんだみたい。
この一言が聞ければ、それで良し、ですよね。色々間違って悩んで、それで少しずついい形の愛情というものを身に付けていってくれれば、それで。
そして何より、綿雪の症状はそれほどひどくはなかったということ。これが本当に何よりの朗報です。昨日の熱は、もともとの病気ではなく、単に気持ちが滅入ってたときに体を冷やしてしまったからなんでしょうね。こうして氷柱が戻ってきてくれた以上、多分もう大丈夫かなと。
「私、ユキはもう――アナタの方がもう好きなんだと思ってたの。だから私、もう私なんてって――」って言葉が、今回の――いや、氷柱がずっと抱いてきたヤキモキの、全ての要因なのかも知れませんね。留学のことだって、この「自分はもう必要ない」って思いがあったからこそ、今の時点で突然その話を動かそうとしたのかもしれません。もちろん、もともとの将来の夢ではあるんでしょうけれど、今はまだ中学二年の女の子なんですからね。
……この言葉からも、氷柱の抱いている揺らぎの根本的なところも、分かるという気がします。氷柱って、何か、あるいは誰かに、必要とされたい子なんですよね。たくさん愛して、その愛を返してくれる相手がいて欲しいって。そういう意味では、むしろ氷柱の愛情を真正面から受けてくれる綿雪が、むしろ氷柱の心の支えになっているということも間違いないわけです。
……そんな氷柱の前に突然現れた、トゥルー俺という兄の存在は、彼女にとっていったい何なのか。
突然の家族という部分に戸惑うのは当然ですし、氷柱の安心できる綿雪との関係を崩してしまうかもしれない相手って思うのも、良く分かります。ただ、それらの面があってもなお、「お兄ちゃん」って存在は、氷柱と言う子にとって、本当はずっと望まれていたものなんじゃないかって、今回の件で改めて思いました。もともと小さい頃には、そう言っていたみたいですしね。
というわけで、そんな氷柱のお兄ちゃんであるところのトゥルー俺としては。
もう少しだけでいいから
このままこうして――
あなたの背中で
私の涙を隠していて――
……一晩中だって、泣いてる氷柱に付き合ってあげようと思う次第です。
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