古くなった屋根やサイロ内部、防水処理を施していない基礎廻りからの水分が、サイロの表面をFRPで皮膜した事に拠り煉瓦の呼吸を止めて吐出す事ができなくなり、FRPに接した部分の煉瓦内部で結露し、凍上して爆裂(凍結融解)したものと推察されます。
FRPを解体した後、どの様な方法でサイロの改修を進めていくか札幌牛舎責任者の松田先生と協議を重ねましたが、1.損傷部の改修時強度計算の非確実性、2.生産施設としての費用対効果、そしてなによりも古い煉瓦建築としての景観保全の面から弊社の提案した工法で、河田校長先生ならびに学校各位の了解を得ました。
強力な接着剤としても使用されるFRPの解体はかなりの難工事を予想しておりましたが、長年の凍害に拠る表面劣化(凍結融解)で、全体の85%程度が煉瓦接面と剥離していました。写真では解り難いでしょうが剥離部分に流れる程の水分が溜まり、有機物の様なものが一面付着していました。
摩擦と均一圧縮の力がかかる組積の基本通りに煉瓦が組み積みになるべく、偶数奇数各段凹凸に解体します。
表面から5~50ミリ程度何層もある剥離。
屋根下の蛇腹はねだし部(段逃げで躯体を迫り出していく工法。興味のある方はれんがの積み方のページへどうぞ)。屋根の設計ミスで内部の醗酵時の水蒸気や雨水が煉瓦躯体の内部に迄浸透し、深い箇所で150〜200ミリ程度劣化損傷が進んでいました。
打撃に拠る解体補修なので、視覚では確認できない瑕疵や劣化が生じる為、ステンレスアンカーで補強を取りました。
凹凸に解体した躯体に新しい煉瓦がしっかりと噛み込む様に改修しました。改修した部分が乾燥すると、接した未解体の部分の剥離が浮き出てきて、また新たに解体改修箇所が増え、せっかくFRP解体で短縮できた工期が逆にだんだんとずれ込んでしまいました。
可能な限り丁寧に凹凸に解体しましたが、新規の煉瓦を加工したり大きく空いた目地の部分にモルタルを充填したりして空隙の無い様に改修しました。今回の改修工事で最も重要な部分でこの工程を地道に根気強く丁寧に施行する事が上部の荷重を均一に下部に分散させる組積造の長所を生かすことになります。
屋根の板金や木下地の荷重を、部分的に残した旧躯体で受けながらの外部全面解体改修工事になるので、円柱部の補強の他に水平の目地部分に銅線を噛ませ煉瓦と小屋裏木下地とのアンカーに結線して補強の強化を計りました。
銅線配置
5ミリ以下の劣化や小さな瑕疵、解体時の欠けは着色した樹脂モルタルで補修し、非改修部のFRP滓や汚れも含め、サイロ全面ワイヤーブラシで清掃しました。
改修部が目立たぬ様、全体を無鉛水性ステイン着色でぼかし、工期を十日もずれこんでやっと完成です。サイレージ(牛の飼料。身欠き鰊を入れると人間でも食べられそうです)投入を待って下さった職員、学生の皆さんにお詫びと御礼を申し上げま
2003/10竣工