![[Zochoten]](48.jpg)
いよいよ宝殿にやってきた。拝観料(大人300円、中高生200円、
小学生100円)とある。
入口で靴を脱いで中に入るとひんやりとした空気が肌に伝わってきた。
受付のオバサンがしきりと老夫婦に仏像解説を行っていた。
まず目に付くのは正面の本尊を収めた厨子とそれを取り巻く四天王像、
十二神将像である。本尊の薬師三尊は秘仏のため、扉が閉じられていたが、
手前に立てかけられた写真でその姿を見ることができる。
四天王像はなかなかのできであり、東大寺法華堂のものと比べても力強さや
躍動感の観点でこちらの方が優れているように思える。
この写真は「写真撮影厳禁」となっているところを、オバサン
の目を盗んで写した四天王のひとつ
増長天(像高201.0cm)である。
右側には本尊を収めた厨子の一部が見える。
十二神将についてはやはり秀作とは言い難い。忿怒相をとってはいるが、
迫真性に乏しく精彩を欠いている。
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![[Amida Nyorai]](47.jpg)
周囲を見回すと右に日光・月光菩薩を脇侍に従えた薬師如来坐像、
左に阿弥陀如来坐像が互いに対峙するように座している。
これはオバサンが例の老夫婦に伽藍の説明のため戸外へ出たところを
見計らって撮影した
薬師三尊の姿である。フラッシュはOFFにした。
薬師如来は右手を挙げて掌を見せる施無畏印の相を結び、左手は膝の上に
置いて薬壺(やっこ)を乗せる通形の形をしている。よく見ると右手薬指が
すこし前へ出ているのも薬師如来であることを主張している。如来特有の
慈の心を表す厳しさを湛えた半眼が印象的で、対面の阿弥陀如来と比べると
より男性的な表情を浮かべている。
鎌倉時代、榧材の寄木造り、像高235.0cm。
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![[Gekko Bosatsu]](46.jpg)
月光菩薩
(鎌倉時代、檜の寄木造り、像高271.0cm)
ゴム製品のマークのように右手の親指と人差し指でOKマークを作っている。
大半の金箔は剥がれ落ちてしまい、いまでは全身灰色の像となってしまっている。
腕や衣服の襞の部分に僅かに残る痕跡から、造像当時の金色の姿を思い描くことは
かなりの想像力を要する。東大寺法華堂の日光・月光菩薩のような張り詰めた
透明感はないが、より肉感的で柔和な印象を与える立像である。
背後では例の受付のオバサンが、今度は九品仏の神渡りのことを説明しているのが
聞こえてくる。相当なオタクの方のようで、親近感を覚えるものがある。
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![[Nikko Bosatsu]](45.jpg)
日光菩薩
(鎌倉時代、檜の寄木造り、像高283.0cm)
この宝殿で最も魅力的な仏像であろう。人差し指を立てて微笑する様は、
デビュー当時の桜田順子が♪クックック〜、クックック〜、私の青い鳥〜♪と
可愛く歌っていた様を髣髴とさせる。腰を右へ捻り、左手の指を優美に広げて
バランスを取りながらポーズを取る姿は、まさに現代のスーパーモデルのそれ
であり、官能的な怪しさで悩ましい。仏師の情熱が伝わってくるようだ。
年齢は21〜22才といったところであろうか?
解説テープと化したオバサンは今度は薬師如来と阿弥陀如来の印相の相違に
ついて説明を始めている。今度来たときには是非とも講釈をしていただこう。
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