三浦アルプス南尾根から二子山(中央が下二子山、右が上二子山) 東逗子から二子山

横須賀線の東逗子駅は両側を山の斜面に挟まれている。踏切を渡れば神武寺に湘南鷹取山が行き先となるところだが、この日は駅前広場(というほどの広さはないが)を横切り、反対側の山側へ向かう。向かうのは葉山の二子山。だいぶ前にたどったコースを久しぶりに歩いてみようと初夏の三浦半島に来てみたのだった。

交差点を2つばかり渡ると、小学校があり、道なりに左へと回り込んでいく。学校のフェンスに妙に目立つ看板があると思えばハイキングコース案内で、昔は知る人ぞ知るというコースだったのが今ではだいぶ知られるようになってきたものらしい。とはいえ、看板には「神武寺・鷹取山は駅の反対側です」みたいなことも書いてあって、山岳雑誌に載っているような短い記事と概略地図だけで登りに来る人も多いのだろう。

学校を回り込むと校庭が見えてきて、奥の丘陵地山腹には新しそうな家が重なり合って建っている。初めてこのルートをたどった頃にはなかった眺めだ。分岐点ごとに設置されている標識も、便利で助かるのだが、妙に整備された山道になっていたらどうしようと不安になりもする。だがそれは杞憂で、足下が土の道になると山の雰囲気となり、植林のなかをわずか行くと雑木林となって厚い葉群の天井が初夏の日差しを遮ってくれる。出だしの荒れた一角を過ぎると堅く踏みしめられた平坦な山道が緩傾斜で続き、ほどよい負荷で軽やかに歩いて行ける。

左手が開けると広い谷間状になった先に低い山並みが左右に伸びている。稜線が上下していて、よく見ると岩峰がところどころに突き出している。湘南妙義とも呼ばれる鷹取山だ。若葉の木々が山腹のあちこちに点在して浮き立っている。本日クライミングしている人たちは気分よく岩と戯れているに違いない。


鷹取山を望む

意外にも左手の谷間は深くなり、対岸の山腹が急峻に見えてくる。三浦アルプス北尾根から派生している小尾根だが、規模は小さいものの山深さを感じさせる眺めだ。気分よくなったところで三叉路に着く。標識が立ち、「マムシ注意」の札がくくりつけてある(クサリ模様の蛇にはご用心)。道筋は二手に分かれ、直進すると田浦方面への下り口を経て乳頭山に続く。二子山へは右へと入る。

驚くような太さのコナラらしきが立つ道筋は眺めがなくても愉しい。まるで見通しが利かないわけではなく、左手の木々の合間から、小振りとはいえ鋭く尖ったコブが二つ、青空に浮かんでいるのが窺える。三浦アルプス南尾根の稜線で、なかなか歩きごたえのあるものだ。そんなものが遠望できてこれまた愉しい。行く手を見上げると丸く大きな山体が覆い被さるように迫る。二子山本体だ。規模は違うものの海沢探勝路の稜線近くから眺めた奥多摩の大岳山本峰のようで、さらに愉しい。

樹間から仰ぐ上二子山
上二子山を仰ぐ

森のなかを行く

左手から森戸川から上がってくるルートを合わせてすぐに砂利舗装の林道に飛び出す。すぐ下に南郷上の山公園という広い運動公園があって、車を停めて上がってくる人が少なくない。なのでここからは少々賑やかだ。とはいえこの日はすでに3時半近くなので下る人の方が多い。上二子山の山頂に残っていたのは夫婦連れらしき二人きりだった。

刈り払われてあいかわらず見晴らしがよいが、それでも木々は育っているようで、展望台に乗った方がさらによい。「二子山はこういうものだった」と多少嬉しくもある。本日は湿度が低いらしく遠望が利き、大楠山はもちろんのこと、東京湾を隔てて房総半島の双耳峰である富山やその手前で海になだれ込む鋸山が窺える。都心の沿海部に目をやれば横浜のランドマークタワーがひときわ目立つ。その左方には横浜市民の森を抱える尾根筋が延びて鎌倉アルプスらしき丘陵地に繋がっている。ここのところよく足を運んでいる丹沢山塊は木々に遮られて眺められなかった。

上二子山から東京湾を望む
上二子山から東京湾を望む

本日は軽装で、湯沸かし道具は持参していない。ペットボトル飲料を口にして渇きを癒し、眺めに満足したので下二子山は割愛と決めれば、あとは下るだけだ。当初は田浦に出ようと思っていたが、車道歩きが長いので、舗装路をあまり歩かずに済むよう東逗子駅に戻ることにした。写真など撮りながら登りが一時間強だったところ、下りは、ときおり落ち葉で滑りそうになりながらも快適に歩いて、半時強だった。それだけ歩きやすい道のりだということでもある。午後に出ても十分楽しめる山なので、例によって寝坊した日など、再訪先の一つに挙げるようにしよう。

2014/05/11 


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