弁天山よりエビ山(手前)、高沢山(左)、三壁山(中央奥)

三壁山、高沢山、エビ山

野反湖畔にテントを張って白砂山を登った7月の三連休、最終日は三壁山、高沢山、エビ山を周遊して山を下ることにした。野反湖を出るバスは11時11分発と15時06分発しかないが、この三山はキャンプ場を起終点に3時間半ほどの行程なので、午前のに乗って帰ることにした。テントの撤収にも半時くらいの時間はかかるので、休憩も含めてバス時刻まで4時間半ほどみて6時30分に出発したのだが、登り口で道を間違えてしまい、時間不足を補うために駆け足山行となってしまった。


野反湖キャンプ場は第一キャンプ場と第二キャンプ場とがあり、バス停から歩いて10分ほどでバンガローが建ち並ぶ第一となり、さらに歩いてテント専用の第二となる。三壁山へはバンガローがひしめくなかの車道を上がっていく。舗装が尽きて左手に曲がり未舗装となるところで、正面に大きな標柱が三壁山登山口を示しているのだが、下ばかり見て歩いていたためこの標柱を見事に見落とし、林道に入ってしまった。
センジュガンピがひっそりと咲く暗くじめついた道のりを延々と歩いて行き着いたところは大きな沢で、巨大な堰堤がある。先行者の単独女性がその上で地図を広げている。彼女が疑念に満ちた足取りで先に進むのを見送って、自分もその堰堤上で同じように地図を広げ、どうやら道を間違えたらしいことに気づく。先の女性も戻ってきて、二人一緒にもと来た道を引き返し、なんでこれが目に入らなかっただろうという標柱を確認して山道にかかった。
朝方は雲も少なく晴れていたのがいまではすでに雲が高くなりつつある。左手に見下ろす湖面の彼方には弁天山がすでにガスに覆われている。昨日同様に本日も蒸し暑い。左右に低い笹の葉の感触に涼を求めつつ、侮りがたい急な登りに汗を滴らせながら高度をかせぐ。いつもよりハイペースなので息が上がるのが早い。意外なことに水場が出てきて、カップを出すのももどかしく手を洗って何度も飲む。これで生き返った気がした。すぐ笹の斜面が開け、稜線を見上げて登る。改めて見下ろす湖の手前にはキャンプ場が広がり、対岸には八間山が大きい。その左手に見えるのは白砂山だろうか。
三壁山頂直下の笹の斜面
三壁山頂直下の笹の斜面
山頂手前の稜線から野反湖と八間山
山頂手前の稜線から野反湖と八間山
林の中に入ると山頂標識が出迎えた。ここで引き返せば余裕をもって11時のバスに間に合うのだが、最悪でも15時のバスがあるとばかり先に進むことにした。となると予定の行程を歩かなくてはならない。エスケープルートはないのである。


山頂を離れると眺めが戻ってきた。笹原のなかに木々が立つ風景は高原風で好ましく、ダケカンバの明るい幹に爽快感をかき立てられる。高沢山に続く稜線も笹原の道が続き、三壁山往復だけでは味わえない稜線散歩気分が得られる。しかしまだ9時前だというのに、いや夏だからもう9時前というべきか、日差しが強い。日を遮るものがないから当然だろう。針葉樹のつくる影はだいぶ濃く、広葉樹が照り返す光は明るすぎるくらいだ。
三壁山を越えたところから笹の稜線と高沢山(奥)
三壁山を越えたところから笹の稜線と高沢山(奥)
高沢山の手前で志賀高原の赤石山に続く稜線をたどる道が分岐していた。一昔前のガイドマップでは途中が「整備中、通行不能」とされていたものだが、最近では通れるようになっている。ひょっとしたら途中の山々が眺められるのではと期待していたが、分岐は森のなかで、幅広な道に好感が持てるものの先の様子はわからず、この先をいつか歩けるとよいなと思うだけで後にした。
高沢山も三壁山と同様に眺めのない山頂で、腰を下ろすことなく通りすぎた。次のエビ山へと続く尾根は右手が傾きの強い斜面だがガスが押し寄せてきていて遠望が効かず、左手の緩斜面ばかりが晴れている。眺望は今ひとつだが上り下りがほとんどない散歩道を快適に歩く。正面に見える平べったい高まりがエビ山らしい。およそ山頂らしくない牧歌的な姿は高原風情を高める上で効果的だ。
高沢山とエビ山との中間から地蔵山・堂岩山方面を望む
高沢山とエビ山との中間から地蔵山・堂岩山方面を望む
エビ山は今朝の三山のなかで初めて好展望の得られる山頂だった。夏雲が三壁山すら覆い隠していたが、それでも湖をとりまく山々はぐるりと見渡せられて空間の広がりを感じさせる。広く平らな地面は芝生のような草に覆われ、周囲を取り巻く笹の合間にはクルマユリやアヤメが彩りを添えている。できればコーヒーなど淹れて長居をしたい場所だ。
エビ山からの下り、地蔵山・堂岩山方面を見晴らし野反湖も近づく
エビ山からの下り、地蔵山・堂岩山方面を見晴らし野反湖も近づく
だがバスが待っており、残念ながらのんびりしてはいられない。あいかわらず眺望のよい稜線をたどり、樹林のなかを抜けて笹原の中をキャンプ場めがけてまっしぐらに下っていった。


朝方に一仕事した達成感を感じつつ、すっかり見慣れた山々を眺めながらテントを畳み、ザックを背負って仮住まいの地を後にした。停留所に着いたのと同時にバスが来た。湖畔は相変わらず人が多かったが、乗り込んだ客は3人だった。
2008/07/21

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