ある日のフライト ハイヤー |
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20**年**月**日 ハイヤーは門扉のところで待っている。 そろそろ来るかと思ったのだろうか、後部ドアを開ける準備をしている。 若かりし副操縦士の頃は威張っているようで馴染めなかった。 自分よりも先輩にドアを開けてもらうのが心苦しくて、「いいですよ」と言ったこともあったが、いい年になってくると気にしなくなった。 気にしないということは、 職業に貴賤はなく、仕事上では平等で、運転手は運転手でいい仕事をこなしているということを理解しているからだ。 ”仕事に上下はない”と私は常々そう思っている。 極端な例としては、機長とトイレの掃除婦の場合も同じだ。 機長のいい仕事とは、安全で快適なフライトをお客様に提供すること。 掃除婦は、使われる方に気持ちよく使えるように綺麗に掃除してくれること。 この仕事の仕方においては全く同じだ。 いい加減なフライト、いい加減な掃除をされてはたまらない。 時々掃除婦とトイレで会うことがあるが、いつも気持ちよく使用できることに感謝するとともに、ありがとうと頭を下げる。 運転手が開けてくれたドアより後部座席に座り、「おはよう、お願いします」と挨拶を交わした。 運転手は発進してしばらくすると、「キャプテン、今日は飛べるのでしょうかね?」と聞いてきた。 「そうだなー、キャンセルになっている分けでもないので、行ってみなければ分からないな・・・」と短めに答えた。 街路樹の枝は大きく舞って枯れかけた葉っぱが道路を転がっている。 まだ雨が降っているわけではないが台風の接近をj感じさせてくれる光景である。 ドコモの携帯を取り出して、小さい画面で台風情報をチェックした。 (現在ではスマホとかタブレット、ipadとかで大画面で確認できるようになったがあの頃はそんな優れた機器はなかった) 作者は知らなかったが、”Pocket Dispatch"というパイロットにとってはありがたいサイトがあった。 素晴らしく強力で空港の実況天気、予報、レーダー、雲画像、台風情報・・・等を確認することが出来た。 いつも感謝してそのページを開けたものだ。 いまでも「ありがとう」と言いたい! 現在はPC版として”Private Dispatch"として下記のURLがあった。 http://www.ne.jp/asahi/oku/net/p/wxbu.htm (そこに携帯用のリンクもある) 那覇、先島地方の実況天気では横風も制限値内だし、レーダーでは台風のスパイラル(台風の棒状に伸びた雨域、これがかかると風雨が強くなる)の先端が画面に現れていたが飛べそうだと感じた。 ![]() 「携帯でチェックしてみたが、今のところは飛べそうだな・・・」と運転手に言った。 「揺れそうだし気をつけてくださいね」と運転手も気遣って答えてくれた。 ちょっと目をつぶりぼんやりしているといつの間にか空港が見えてきた。 朝が早いのでいつもリも早く着いた。 止まると直ぐに後ろに回りドアを開けてくれる 「ありがとう」と感謝の言葉をかけて会社のロッカー室に向かった。 (最近はハイヤー送迎も無くなったようだが・・・、是か非かの論争は別にして以前は安全の延長線にハイヤー送迎があったと理解していた) 前ページ 次ページ |
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