yagiya

ある日のフライト 朝

20**年**月**日


”リリーン”と目覚まし時計が鳴った。

音量の設定は小で大きくもないが瞬間的に音を消す。
目覚ましが鳴っても聞こえなかった若い頃とは大違い、まさに早業で瞬間的に手が伸びる。

女房も一緒に起きる。
「おはよう」とおきまりの言葉を交わした。

起き上がってベッドに座ると、窓越しに外から強い風の音が聞こえてきた。
窓の方へ行きカーテンを引いて外を見ると木々が不規則に大きく揺れている。
まだ雨は降ってないが空を見ると雲が垂れ込んで雲底が凸凹と低い。
いつもの小高い丘の鉄塔の先が雲に突き刺さらんとしている。
シーリング(雲底)は低いようだ。

今日は石垣行きの初便である。

直ぐにテレビのスイッチを入れ台風情報を気にするが他愛のない番組が流れている。
台風18号の接近が昨日からニュースで流れていた。
「今日は飛べるのだろうか?」
職業柄直ぐに今日のフライトをイメージしまう。

私が洗面をする間に女房は朝食をこしらえてくれる。
これが普通にいつものことではあるがありがたい。
感謝している。

食事を済ますとモーニングコーヒー
エスプレッソマシンのスイッチを入れ好きなコーヒー豆を抽出した。
朝一番の一杯のコーヒーは格別だ。
しかし、頭のなかは台風接近でのフライトのことでいっぱいである。
台風の強さは?、発達は?、進行方向は?、スピードは?、気圧は?、エンルート(航路上)積乱雲の発生は?、気流は?・・・
上げればキリがない。

女房は出来過ぎで、食事中に制服の準備を済ませおり、上着を持って袖を通させてくれる。
ネクタイを結んでいる間女房は後ろにまわり後ろ姿をチェックしてくれる。
「よしっ」と軽く右肩を叩いた。

OK、準備は整った。
フライトバッグを持っておまじないの「チュ」を交わしてから玄関ドアを開けて迎えのハイヤーに乗り込んだ。


                                       次ページ