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遺棄毒ガス・砲弾訴訟 第1次・第2次訴訟 最高裁 決定に対する弁護団声明

本年5月26日,最高裁判所第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は,上告人兼申立人(一審原告)らが,日本政府に対し,旧日本軍が中国に遺棄してきた毒ガ ス・砲弾の被害による損害賠償を請求していた事件(一次訴訟,二次訴訟)の上告審で,同人らの上告を棄却する不当な決定を下した。

一次,二次訴訟とも,地裁及び高裁のいずれの段階においても,大量の遺棄毒ガス兵器がいずれも日本軍のものであること,遺棄毒ガス兵器は,旧日本軍が川に 投棄しあるいは地中に埋設するなどの方法により遺棄・隠匿したものであることが明確に認定され,本件各毒ガス兵器について,ソ連軍あるいは国民党軍のもの であるなどとする国の主張は,証拠に基づきいずれも排斥されていた。

また,被害者らが,戦後,これらの遺棄毒ガス兵器が発見される過程で重篤な被害を受け,現在まで日々進行する症状に苦しんでいることも明確に認定されていた。

にもかかわらず,原審判決は,毒ガス兵器を大量かつ広範囲に遺棄・隠匿したがために,遺棄・隠匿した場所を特定できず,事故を未然に防ぐことが出来なかった等として,結果回避可能性や条件関係を否定する極めて常識に反する判決であった。

私たちはこの誤りは必ず最高裁において是正されるものと確信していたところであり,今回の不当な決定を容認することは出来ない。

他方,一次訴訟の原審判決では,「総合的政策判断の下に,全体的かつ公平な被害救済措置が策定されることが望まれる」との異例の付言が付けられている。す なわち,化学兵器禁止条約の批准を待つまでもなく,わが国が,遺棄兵器に関する情報を収集した上で,中国政府に対して,遺棄兵器に関する調査や回収の申出 をすること,また,情報を提供することは「国家としての責務である」と述べた上,上記責務を果してもこれによって被害の発生を未然に防止できる可能性が少 ないとか,すでに中国政府が遺棄毒ガス兵器の調査回収を行なっているなどの理由で,「情報の収集やその提供を真摯に行なわないなどということは,責任ある 国家の姿勢として許されない」とし,本件毒ガス兵器の被害者や遺族が現在に至るまで全く何らの補償もおこなわれていないことを指摘した上,本件毒ガス被害 者を補償しないことは「正義にかなったものとは考えられない」として,「全体的かつ公平な被害救済措置の策定を望む」としている。

加えて,日本が化学兵器禁止条約を批准し日中間で遺棄化学兵器処理について覚書を交わした後に発生したチチハル,敦化の事故についての訴訟も係属中であ る。また何より,日本政府による遺棄化学兵器の廃棄処理が終了しない以上,近い将来同様の被害が繰り返される可能性が非常に高く,この問題の解決は避けて 通れない。

日本政府は,被害者らに賠償し,さらに中国国内における旧日本軍による遺棄毒ガス兵器被害者への医療支援,生活支援を含む被害者全体の救済を一日も早く実現すべきであり,私たちは引き続き被害救済問題の法的・政治的・道義的な解決に向けて全力で取り組んでいく。

2009年6月10日
遺棄毒ガス・砲弾被害賠償請求事件弁護団

 

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