★メール紹介・Q&A 第12回(つづき)
●匿名希望 さん からのメール
ある賞で最終選考まで残り、現在は、次回の応募に向けて編集者に原稿を見てもらっている状態です。
ところが、私の原稿に対して担当の編集者は、登場人物や結末の変更まで含む何十枚にも渡る修正など、私にはどう考えても改悪としか思えないような変な書き直しばかり要求してくるんです。
最終選考会での選考委員の評も、私の作品の面白さが理解できていないとしか思えないようなピントのずれたものばかりでした。
もしかしたら私は応募する賞のカラーを間違えていたのではないかと思い始めています。
私の作品を正しく評価してくれない現在の編集部には見切りをつけて、他社に持ち込みをしたほうがいいのでしょうか?
○和田曜介のコメント
どんな社会にも、その社会の常識というものがあり、その同じ常識を共有することができない人は、どんなに才能があろうとも、その社会の一員になることはできません。
たとえ入選しても、実際に活字にされる際には、担当編集者との二人三脚によって、何らかの改稿が行われるのが普通です。商業出版の世界において、素人が書いた原稿が無修正でそのまま活字にされるなどということは、通常ありえないことだと思います。
実物の原稿を読んでいないので断言はできませんが、詳細に書かれていたメールの内容からみて、あなたの担当編集者は、プロの文芸編集者として、極めて真っ当な、きちんとした仕事をしていると考えられます。
納得がいかないのであれば、自分が完璧だと思うオリジナル版と、編集者の指示に忠実に従った改悪版を、両方とも書いてみましょう。一枚でも多く習作を書くことがプロへの近道ですから、たとえ本当に改悪だったとしても、書いて無駄になることはないはずです。
完成したら、あなたが信頼できる複数の友人(できれば5人以上)に両方を読み比べてもらってみてください。もしも全員がオリジナル版を支持したならば、本当に賞のカラーと合っていないという可能性もあります。
せっかく最終選考に残り担当編集者が付いたわけですから、たとえ改悪であろうとも、とりあえず今は、そのプロの編集者から学べるものを、きちんと学びつくしておくべきです。
他社への持ち込みは、それからでも遅くはありません。