★メール紹介・Q&A 第5回 2001/01/21

●santosring77 さん からのメール
 本によると、某芥川賞受賞小説が新人賞の1次で落ちた後再度軽い手直しをした後に送り直したものだと言います。
 となると、これは和田さん達には失礼かもしれませんが実に荒い才能をすくい上げる網なのではないかと思います。

○和田曜介のコメント
 これはよく聞く話なのですが、おそらく最初に応募する賞を間違えていたからだと思います。
「ああ、○○賞に応募していれば最終選考に残ったかもしれないのに……」と悩みながらも、結局、一次選考で落とす、私もそういうことがよくあります。本当に出来が良い時には、ABCの評価は付けずに「ちょっとこれ読んでみてください」と言って原稿を編集部に戻すこともありますが、でもそうやって戻した作品が実際に最終選考に残ったということは一度もありません。
 芥川賞受賞作だろうが、直木賞受賞作だろうが、カラーの違う賞に応募すれば、落とされてしまうのが普通です。
 実は、過去に一度だけ、私がそうやって悩んだ末に一次選考で落とした作品が、翌年、別な賞で入選した、ということがありました。そのニュースを聞いた時、私は「あの時、悩んだけど、ちゃんと落としてあげて本当に良かったな」とホッとしたんです。
 カラーの違う賞では、たとえ入選できたとしても、大賞は無理で、佳作などの末席での入選になるでしょう。編集部の期待も他の同期受賞者に比べて低いものになるでしょう。そして、カラーが違うわけですから、本来、自分が書きたかったものとは違うものを書かされる、というようなことにもなります。それに対して、翌年、自分のカラーに合った賞で大賞を受賞して、編集部からも最高の待遇を受け、自分の書きたいものを書かせてもらえるという状態になったら、どちらが作家として恵まれたスタートであるかは、説明するまでもないことだと思います。
「A賞を受賞した作品は、実は去年B賞の一次選考で落とされた作品だった」などと聞くと、単純にB賞の選考システムに問題があるかのように感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。最初にカラーの違うB賞で正しく落としてもらえたからこそ、A賞受賞という現在があるのです。
 ここらへんを勘違いしないようにしてください。

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