『ノスタル爺さん』への変態のきっかけは、前述の最初から3つを原因として考えることができます。ほとんどの場合は、第一か第二の場合です。第三つまり確信犯の場合は、ほとんどありません。
『アルツ君』の変態の場合と大いに違っているのは、変態するまでの時間がとても長くかかっていることです。あまりに長い間をかけて少しずつ、少しずつ変態してきたので、まわりの人は本人が『ノスタル爺さん』に変態したことになかなか気がつきません。『ノスタル爺さん』は、入社当時から元気で前向きなビジネス行動をすることで有名です。そして、数々の功績をあげビジネスにおける伝説もいくつもっています。
『ノスタル爺さん』本人は、変態後も、急激なカイシャ環境の変化に十分について行っると信じています。元気全開で、『オレはほかのカイシャ族よりずっとカイシャに貢献しているゼィ』という自信に満ちてバリバリに元気です。もちろん、カイシャ族成長ホルモンがみなぎっていると信じているのです。まさか、カイシャ族成長ホルモン分泌が止まったり、ましてメカニズムまで破壊されているとは、本人は夢にも思っていらっしゃいません。
『ノスタル爺さん』は、他のパラサイト系カイシャ族のようにドヨドヨした雰囲気や、コチラの元気やヤリガイ君を積極的に吸い取るブラックホール的な妖気を、全く漂わせていません。変態後も多少「アレ?」って感じさせることもありますが、オカシイながらもとりあえず、まわりとのコミュニケーションは、とっています。うっかりこの容貌や、態度にだまされちゃいますと痛い目にあっちゃいますからご用心です。
前にもお話したように『ノスタル爺さん』は、後輩に自分のビジネスマインド、ワークスタイル、過去の業績などを話してあげるといいますか、レクチャーするのが大好きです。しかし、『ノスタル爺さん』の陳腐化してオールドファッションで時代錯誤のレクチャーやビジネス行動は、だんだんと周りのカイシャ族のレベルと乖離していることが、明らかになって来ます。
『ノスタル爺さん』は、まわりからだんだんと『浮いて』きて、そのギャップを客観的に見せつけられる場に直面すると、突如、パラサイト系カイシャ族お決まりのリアクションである『アルツ』ってみたり、『シーラカンス化』したりという本当の姿が露顕します。このお決まりリアクションの露顕頻度が度重なると、周りのカイシャ族の『ノスタル爺さん』への接しかたがだんだんと『アルツ君』への対応の場合と同じように、なるべくかかわらない、『さわらぬ神に祟り無し』、つかずはなれずの状態をキープするようなります。
同時に、組織の体制を『ノスタル爺さん』なしで廻るように変更してしまうのです。職場環境がそうなると、『ノスタル爺さん』にとっては、大変居心地がわるくなり、急激に、『ノスタル爺化』の速度が増してますます『ノスタル爺さん』になっていくのです。このようにして、ドヨドヨの職場環境と『ノスタル爺さん』の間で、『ニワトリが先か卵が先か状態』に陥っていく悪循環がはじまるのです。