『アルツ君』への変態の場合は、前回お話した最初の3つのパターン全てが原因として考えられますが、ほとんどの場合は、原因の第三、つまり確信犯の場合が多いです。
原因はともあれ、カイシャ族成長ホルモン分泌が止まる事からはじまります。自分では自覚していないうちに、カイシャ族成長ホルモンの分泌がだんだんと止まっていきます。そして、入社以来ずっと体内に貯蔵されていた分まで全く使い切ると、突然、自分自身は、『介護を受ける権利がある』と、なぜだか堅く信じてしまいます。この突発性、突然変態というのが、『アルツ君』の変態の大きな特徴です。
ですから周りのカイシャ族には心の準備なんてありません。ある日、突然、あんなに優秀でご尊敬申し上げていた上司(課長)が、『要介護者』になるわけですから、職場は、大騒ぎ、大パニックです。
『介護されて当たり前だ』と開き直ってしまえば、カイシャ生活は、実に楽×2です。
もともと、変態する前から「面倒くさいなぁ」が口癖だった『アルツ君』です。仕事はもちろん、いろいろな動作までが面倒になって来ます。以前、土砂降りの雨の中、傘をさすのが面倒だったのか傘を腕にぶら下げて歩いている『アルツ君』を目撃しましたよ。
あまりに何もしないことに周りが迷惑して、改善を要求しても無駄です。『アルツ君』特有の奇行に逃げるのです。机を叩いたり、物を投げたりといった暴挙に出たり、走ったり、徘徊したり、戯言を繰り返したり、大声で怒鳴ったりと、始末に負えません。奇行が、習慣的になり度々『アルツった発作』を見せるようになります。奇行の頻度がふえるにつけ、周りのカイシャ族は、業務の忙しさや、『介護疲れ』、それにどうにも『アルツ君』とはコミュニケーションがとれないことなどから、みんな『アルツ君』を再生させることを諦めます。
もともと『アルツ君』は、それなりの業績をあげたり、目覚ましい活躍を過去におこなっていたのです。しかし、過去の栄光はどうあれ、現在、もはや要介護の『アルツ君』の存在は、ビジネス組織の中でお邪魔にこそなれちっともプラスにはなりません。大変な問題となっています。みんなは従来の組織の体制を、『アルツ君』抜きでビジネスが回っていくように修正させるのです。
こうして職場環境はドヨドヨと淀みはじめ(職場環境破壊ですね)、そしてますます『アルツ君』の職場での存在意義がなくなるという悪循環に陥っていくのです。
さらに『アルツ君』職場での暴走を野放しにしていると、『アルツ君』にシンクロするカイシャ族まで出現します。職場環境のドヨドヨ度は進み、『アルツ君』の構成比率まで増加するという坂道をローラーブレードかキックボードで転がり落ちていくような悲劇がはじまるのです。初期消火第一ですよ。