11/28(火)

【ユーロスターでパリへ】

 今日で短かったロンドン滞在が終わり、ロンドン〜パリ間を海底トンネルで結ぶ列車「ユーロスター」でパリへと移動する。朝早く荷物をまとめ、ユーロスターの発着駅であるウォータールー駅に向かった。ホテルで呼んだタクシーの運転手は昨日と同じ人で、向こうもそれに気付き、笑顔で挨拶をしてくれた。
 道中も、その運転手と話をしながら過ごした。通り過ぎる町並みについてガイドまでしてくれる。その言い方から、ロンドンを本当に愛しているんだろうなというのが窺えた。昨日は一言も話さず、黒人でむっつり顔だったので、正直怖い印象をもっていたのが、申し訳なくなる。
 バックミラーの脇に小さな国旗がぶら下げてあり、そこには「ERITORIA」と書いてあった。聞くと、やはりエリトリア人だとのことだった。それからエリトリアについて、ひとしきり話してくれた。ただ、その後、「じゃあ、ロンドンに来てもう長いんですか?」と聞くと、少し暗い表情になり、うなずきながら「...もう10年以上になる。」とだけ答え、それきりぷつりと会話は途切れてしまった。何か事情があってロンドンに来ているのだろうか、そしてそれはあまり楽しくはない事情なのかもしれない。そう感じ、僕も黙り込んでしまった。

 駅に近づき、テムズ川を渡る時、ビッグベンとロンドン・アイが見えた。ここには毎日来ていることになる。運転手の方とは話が再開でき、ここからの風景がすばらしいこと、ロンドン・アイにはこの夏乗りに行って、予約が一杯で一週間待たされたことなどを話してくれた。やがて駅に着き笑顔で挨拶をしながら、チップを多めに渡して彼と別れる。僕の旅の目的は人に出会うことではないのだが、やはりこういった触れ合いには嬉しくなる。

 ウォータールー駅でのチェックインは簡単なもので、普通に電車に乗り込むだけ、といった風だった。改札でチケットを見せ、中に入って待合室に座り、時間が来たら乗り込むだけ。国境を超えるという雰囲気は全く感じられない。
 僕らの乗る18番コーチは一番奥にあり、ホームに出てから延々と歩いた果てにあった。乗り込むと意外にすいていて、動き出した後、空いている4人掛けの席に移動する。快適なシートで、外もよく見える。
 しばらくの間、郊外の住宅街のような風景が続くと、だんだん人家が少なくなり、綺麗な緑の芝が目につきはじめる。公園や牧場やゴルフ場など、全てが一面青々とした風景で、目に映えて美しい。たまに人家が密集している場所には、必ず中心あたりに背の高い教会が見える。ビデオを構え、動かさずに撮り続けると、そのまま、「世界の車窓から」の映像になる。
 1時間ぐらいコトコトと走ったあたりでアナウンスが入り、いったん止まることが告げられた。途中の停車駅はないはずなのに、と思っているとすぐにまた動き出し、長いトンネルに入る。どうやら、海底に潜ったようだ。フランス側に出るまで20分ほどはかかると聞いていたのだが、確かにそのぐらいの時間が経過したあと、また外に出た。何も表示などはないのでわかりにくいのだが、アナウンスではちゃんとそのことを告げていたのだろう。

 フランス側に出るとTGV(フランス版新幹線)と同じ路線を走るため、かなりスピードを出すことができる。TGVと同じなら、時速300kmぐらいは出ているのだろうか。確かにイギリス側とは違い、飛ぶように風景が過ぎていく。見ると、さすがに風景にも飽きたのか、両親は二人とも眠ってしまっていた。
 しだいに天気が良くなってきた。そして高いビルがまばらに見え始める。所要時間は3時間と少し、ようやくパリに到着したようだ。静かに列車は止まり、ざわめきの北駅ホームに立つ。入国は簡単なもので、パスポートを見せただけでおしまい。ハンコも押されない。パスポート提示を求められないことさえあるようだ。フランスの入国はいつも簡単なのがよい。
 歩いて構内を移動する。北駅は、静かにアナウンスの流れる綺麗なところだった。3時前になっていたので、この駅の中で食事をとる。パンと飲み物だけで簡単に済ませる。パンは、とてもおいしい。さすがに、パリだ。
 今日はこの移動だけで、他に予定はない。タクシーでモンマルトル近くにあるホテル「ABRIAL」に向かいながら、ロンドンと似てはいるがどことなく違う、パリの景色を楽しむ。

 ホテルは白亜の外観で、中も綺麗だった。フロントはみな若いスタッフばかり。チェックインを済ませて部屋に入ると、シングルでもツインの部屋が用意されていて、ロンドンよりもかなり広いスペースがあった。何より先に、電話回線のチェックを行う。フランス用のコネクタをPCに接続し、更にモデムセーバーをつなげてみる。逆配線なので、その設定にした。ダイヤルアップを試してみる。すると、難なく接続に成功!これでようやくサイトの更新ができる。一安心だ。それにしても、モデムセーバーを持っていて、良かった。これがなければ、ここでも接続不可能だった。早速、たまっていたメールを受信し、こちらからは写真付きのメールを送る。
 バスタブも広くて快適だ。ここで、四泊。いい感じになりそうだ。


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