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新潟市|佐藤正社会保険労務士事務所/TEL:025-277-0927

安全衛生・健康診断Q&A

○改正労働安全衛生法

 改正安衛法による労働時間の客観的な把握の義務づけについて

 改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について

 労働時間の状況把握にかかるQ&A

○安全衛生管理

 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任が必要な事業場とは

 安全委員会・衛生委員会を設置しなければならない事業場とは

 法人の代表者は産業医として選任できない

 労働者数50人未満の事業場の安全衛生管理はどうなる

 安衛法における事業の単位

 安衛法における常用労働者の定義


○健康診断

 健康診断には会社の実施義務と労働者の受診義務がある

 会社が実施を義務づけられる健康診断とは

 健康診断の検査項目

 特定業務従事者の健康診断における深夜業の業務に常時従事する労働者とは

 二次健康診断等給付とは何か

 ストレスチェック制度導入のポイント

 メンタル不調者の「職場復帰支援モデルプログラム」

○健康診断の実務

 応募者の採否を決定するための健康診断を実施することができるか

 雇入時の健康診断の費用は必ず会社負担か

 雇入時の健康診断はいつまでに行えばよいか

 健康診断に要した時間の賃金はどうする

 育児休業などで休業中の労働者の健康診断はどうする

 人間ドックを受診すれば会社の健康診断を省略できる

 健康診断結果について医師等からの意見聴取とは何か

 労基署に提出すべき健康診断結果報告とは

 健康診断結果の保存期間は何年か

 健康診断個人票保存義務と個人情報保護法の関係

○その他


 改正健康増新法により、2020年4月から全ての施設において原則屋内禁煙へ

 結核予防法や伝染病予防法は感染症法に統合

 インフルエンザに罹患した従業員を就業制限した場合の賃金の支払いはどうする

 労働者私傷病報告における休業日のカウント方法

 有機溶剤とは何か

 有機溶剤等使用の注意事項にかかる掲示内容が変更へ

 鉄骨切断機等も安衛法令上の規制対象に

 じん肺健康管理実施状況報告とは何か

 特定化学物質障害予防規則の改正(平成27年11月施行)

  陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン

 小売業・社会福祉施設における危険の「見える化」ツール

 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

本文

 改正安衛法による労働時間の客観的な把握の義務づけについて

 労働安全衛生法では、長時間労働に対する医師の面接指導制度が定められていますが、2019年4月から、長時間労働に対する医師の面接指導制度が強化されると共に、労働時間の客観的な把握が企業に義務付けられました。次項の「改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について」と併せてお読みください。
(詳細)厚生労働省のリーフレット平成30年9月7日基発0907第2号

□ 具体的な流れと変更点
1 労働時間の状況を客観的に把握し記録する義務(安衛法66条の8の3)
(1) 医師による面接指導を行うため、事業者はタイムカードやパソコン等による記録など客観的な方法で労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存しなければなりません(安衛則52条の7の3第1項)。
(2) 上記の労働時間の把握は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければなりません。
(3) 管理監督者や裁量労働制などのみなし労働対象者も面接指導の対象となることから、当該労働者に対しても、労働時間の記録・保存が義務化されます。

2 労働者に対する通知と産業医への情報提供
(1) 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた場合は、速やかに当該情報を当該労働者に対して通知しなければなりません(安衛則52条の2第3項)。
(2) 産業医に対しても、同様の情報提供を行わなければなりません(安衛則14条の2第2項)。
●(参考)H30.12.28基発1228第16号、問5答
 時間外・休日労働が1月当たり80時間を超えた労働者がいない場合においては、該当者がいないという情報を産業に情報提供する必要がある。

3 医師による面接指導の実施
(1) 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、労働者の申出により、遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりません(安衛則52条の2第1項、同52条の3第1項)。
(2) 研究開発業務に従事する労働者が、時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超えた場合は、労働者の申出の有無に関係なく、遅滞なく医師による面接指導を実施しなければなりません(安衛則57条の2第2項)。
【注】(1)の面接指導については、管理監督者や研究開発業務に従事する労働者を含め、全ての労働者が対象となります(ただし、高プロ対象労働者を除く。)。(2)の面接指導については、研究開発業務に従事する労働者のみが対象となります(ただし、研究開発業務に従事する労働者が、高プロ対象労働者や管理監督者である場合を除く)。

4 面接指導後の労働者の健康を保持するための必要な措置
(1) 面接指導結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません(安衛則52条の6)。
(2) 面接指導の結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴き、必要に応じ、就業場所の変更、職務内容の変更、有給休暇の付与(労基法39条の規定による有給休暇を除く)、労働時間の短縮、深夜業の回数の制限、などの措置を講じなければなりません(安衛法66条の8第5項、同66条の8の2第2項)。

●(参考)新技術、新商品等の研究開発業務とは…
 新技術、新商品等の研究開発業務とは、専門的、科学的な知識、技術を要する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいいます。以前は、新技術、新商品等の研究開発業務について具体的な行政解釈(以下を参照)が示されておりましたが、現在は廃止されています。ただし、これに代わる行政解釈が発出されていないため、当該行政解釈は引続き生きていると解されています。
(イ) 自然科学、人文・社会の分野の基礎的または応用的な学問上、技術上の問題を解明するため試験、研究、調査
(ロ) 材料、製品、生産・制作工程などの開発または技術的改善のための設計、製作、試験、検査
(ハ) システム、コンピュータ利用技術などの開発または改善のための企画、設計
(ニ) マーケテイング・リサーチ、デザインの考案並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエーティブワーク
(ホ)その他(イ)〜(ニ)に相 当する業務

●(参考)罰則規定
 3(2)に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。因みに、3(1)に違反した場合の罰則規定はありません。

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 改正安衛法による事業者および産業医の義務強化について

 労働安全衛生法の改正による産業医の機能強化に伴い、2019年4月から事業者および産業医に課せられる義務も強化されました。事業者に対する具体的な義務は以下のとおりです。
(詳細)厚生労働省のリーフレット平成30年9月7日基発0907第2号

□ 事業者の義務
1 長時間労働に関する産業医への情報提供等(安衛則14条の2第2項、安衛則52条の2第3項)
(1) 産業医を選任した事業者は、産業医に対して、以下のアからウまで情報を提供しなければりません
ア @健康診断、A長時間労働者に対する面接指導、Bストレチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報⇒ @からBの結果について、医師又は歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく(概ね1か月以内)。
イ 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者の氏名・当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報⇒ 当該超えた時間の算定を行った後、速やかに(概ね2週間以内)。
【注】時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者がいない場合も、該当者がいないという情報を産業医に提供する必要があります。
ウ 労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要と認めるもの⇒ 産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに(概ね2週間以内)。
(2) 面接指導の結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴き、必要に応じて措置を講じたうえで、その旨を産業医に情報提供しなければなりません(安衛法66条の8第5項、同66条の8の2第2項)
(3) 上記の情報提供によって、産業医は必要に応じ事業者から意見聴取を行ったうえで勧告を行うことができるとされますが、産業医から勧告を受けた事業者は、勧告および措置の内容(措置を講じない場合は、その旨・その理由)を記録し、3年間保存しなければなりません(安衛則14の3第3項)

2 衛生委員会への報告等
(1) 事業者は、産業医から労働者の健康を確保するための勧告を受けたときは、遅滞なく勧告および措置の内容を衛生委員会に報告しなければなりません(安衛則14条の3第3項)。また、事業者は、安全委員会・衛生委員会開催の都度、これらの委員会の意見・当該意見を踏まえて講じた措置の内容・これらの委員会における議事で重要なものを記録し、これを3年間保存しなければなりません(安衛則14条の3第4項)。なお、産業医は衛生委員会に対して、労働者の健康を確保する観点から、必要な調査審議を求めることができます(安衛則23条5項)。
(2) 産業医が辞任または産業医を解任したときは、遅滞なくその旨および理由を衛生委員会に報告しなければなりません(安衛則13条4項)。

3 その他
(1) 事業者は産業医に関する情報(事業場における産業医の業務の具体的内容、産業医に対する健康相談の申出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報取扱の方法)を労働者に周知しなければなりません(安衛則98条の2第2項)。
(2) 労働者の健康情報については、労働者の健康の確保に必要な範囲で収集し保管・使用しなければなりません(安衛法104条、じん肺法35条の3)。

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 労働時間の状況把握にかかるQ&A

 改正安全衛生法に規定する労働時間の状況の把握についてのQ&Aが、平成30年12月28日基発1228第16号の8ページ、問8から問13に記載してあります。
(詳細)平成30年12月28日基発1228第16号

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 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任が必要な事業場とは

 以下の事業場は、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医を、選任すべき事由が発生した日から14日以内に、所轄の労働基準監督署に選任報告を行わなければなりません。
(参考)東京労働局のHP

□ 総括安全衛生管理者の選任と届出
 事業者は政令で定める規模の事業場(注)ごとに、総括安全衛生管理者の選任が義務付けられています(労働安全衛生規則2条1項)。
【注】政令で定める規模の事業場とは
(1) 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業…100人
(2) 製造業(物の加工を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業…300人
(3) その他の業種…1,000人

■ 総括安全衛生管理者の資格
 事業場の事業の実施を統括管理する者の中から選任するとされていますので、特に資格要件はありません。

□ 安全管理者の選任と届出
 常時50人以上の労働者を使用する一定の事業場においては安全管理者の選任が義務付けられています(労働安全衛生規則4条1項1号)。

■ 安全管理者の選任が義務付けられる、常時50人以上の労働者を使用する事業場
 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備及び機械修理業の事業場です。
【注】一定規模以上の事業場は、専任の安全管理者の選任が必要です。

■ 安全管理者の資格
(1) 学校教育法による大学、高等専門学校における理科系統の正規課程を修めて卒業した者で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
(2) 学校教育法による高等学校、中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
(3) 労働安全コンサルタント
(4) 厚生労働大臣が定める者
 また、安全管理者の資格要件としては上記のほかに、安全管理者専任時研修を終了していることが必要です。

□ 衛生管理者の選任と届出
 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任が義務付けられています(労働安全衛生規則7条1項1号)。
【注】労働者数により、複数以上の衛生管理者の選任が必要となります。また「常時1,000人を超える労働者を使用する事業場」または「常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場」では、衛生管理者のうち、少なくとも1人を専任とする必要があります。

■ 衛生管理者の資格
 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者で、業種により資格者が異なります。

□ 産業医の選任と届出
 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、産業医の選任が義務付けられています(労働安全衛生規則13条1項1号)。

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 安全委員会・衛生委員会を設置しなければならない事業場とは

 一定の基準に該当する事業場は安全委員会・衛生委員会(または両委員会を統合した安全衛生委員会)を設置しなければなりません(労働安全衛生法17条、18条、19条)。
(参考)厚生労働省のリーフレット

□ 安全委員会
1 常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
 林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業

2 常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
 製造業のうち1以外の業種、運送業のうち1以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

□ 衛生委員会
 常時使用する労働者が50人以上の事業場(全業種)

■ 安全委員会・衛生委員会または安全衛生委員会の開催にあたっての留意事項
(1) 毎月1回以上開催すること
(2) 委員会における議事の概要を労働者に周知すること
(3) 委員会における議事で重要なものに係る記録を作成し、3年間保存すること

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 法人の代表者は産業医として選任できない

 常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、事業者は産業医を選任しなければならず、また、産業医を選任した際および産業医を変更する際には所轄の労働基準監督署へ届け出が必要ですが、法人の代表者等を産業医として選任することは禁止されます。
(参考)厚生労働省のリーフレット

●(参考法令)労働安全衛生規則13条1項2号
 次に掲げる者(イ及びロにあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)以外の者のうちから選任すること。
イ 事業者が法人の場合にあつては当該法人の代表者
ロ 事業者が法人でない場合にあつては事業を営む個人
ハ 事業場においてその事業の実施を統括管理する者

■ 具体例(以下が、産業医を兼ねることは禁止されます。)
(1) 代表取締役、医療法人又は社会福祉法人の理事長
(2) 病院又は診療所の院長、老人福祉施設の施設長

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 労働者数50人未満の事業場の安全衛生管理はどうなる

 常時使用する労働者が10人以上50人未満の事業場での安全衛生管理体制は以下のとおりです。なお、安全衛生推進者または衛生推進者および安全推進者を選任したときは、氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません(労働安全衛生規則14条の4)。なお、50人以上規模事業場と異なり所轄の労働基準監督署への選任報告義務はありません。
(参考)厚生労働省のHP

□ 安全衛生推進者または衛生推進者の選任
 労働者数10人以上50人未満規模の事業場においては、労働安全衛生法により、安全衛生推進者または衛生推進者の選任が義務付けられ、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならないとされます。ただし、労働基準監督署への選任報告の義務はありません。
(1) 労働者数10人以上50人未満規模で「安全衛生推進者」を選任すべき事業場
 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
(2) 労働者数10人以上50人未満規模で「衛生推進者」を選任すべき事業場
 上記以外の事業場
(3) 労働者数10人以上50人未満規模で「安全推進者」を選任すべき事業場
・小売業(ただし、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業は安全衛生推進者の選任義務事業場のため除く。)
・社会福祉施設
・飲食店

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 安衛法における事業の単位

 労働安全衛生法における事業場の定義(単位)については、労働基準法における考え方と同一としています。

(参考)東京労働局のHP

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 安衛法における常用労働者の定義

 労働安全衛生法における基準となる労働者(常用労働者)の定義について、厚生労働省では以下の者としています。

 「常用労働者」とは、以下のいずれかに該当する者をいう。
(1) 期間を定めずに、又は1か月を超える期間を定めて雇われている者
(2) 臨時又は日雇労働者で、調査日前の2か月の各月にそれぞれ18日以上雇われた者
 なお、取締役、理事などの役員であって常時勤務して、一般の労働者と同じ給与規則又は同じ基準で毎月の給与の支払いを受けている者、事業主の家族であって、その事業所に常時勤務して給与の支払いを受けている者、又はパートタイム労働者であっても上記(1)、(2)のいずれかに該当すれば、常用労働者とする。

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 健康診断には会社の実施義務と労働者の受診義務がある

□ 会社の義務
(1) 法律上の義務
 労働安全衛生法66条1項で「事業者は、労働者に対して厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」として、従業員に対する健康診断の実施を義務づけています。また、違反者に対しては、労働安全衛生法120条により、50万円以下の罰金刑に処するとしています。
(2) 民事上のリスク
 健康診断を行わなかったことによる健康障害等により労働者から損害賠償請求をされた場合に、これを免れることは難しいとされます。安全配慮義務違反を問われた場合に、法で実施を義務づけているものを履行しないことに対しては無過失責任を反論できません。

□ 労働者の義務
 労働安全衛生法66条5項は「労働者は(中略)事業者の行なう健康診断を受けなければならない。」として、労働者の健康診断の受診も義務づけています。
 また、同項但書きで「但し、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」として労働者が会社の行なう健康診断を受けたくないときは、自身の費用で受診のうえ、会社に健康診断書を提出する義務を規定しています。

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 会社が実施を義務づけられる健康診断とは

 会社が行うことを義務づけられている健康診断は、以下のとおりです(労働安全衛生規則1節の2)。(1)と(2)の健康診断は、常時使用する労働者を雇用している全ての企業に実施を義務づけられますが、(3)以降は、その項目に該当するケースがある場合に実施を義務づけられる健康診断です。

(1) 雇入時の健康診断
 常時使用する労働者を雇入れるときに実施する健康診断
(2) 定期健康診断
 常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回実施する健康診断
(3) 特定業務従事者の健康診断
 坑内労働、深夜業等の有害業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回実施する健康診断
(4) 海外派遣労働者の健康診断
 労働者を6か月以上海外に派遣させるときや、海外に6か月以上派遣していた労働者を日本国内の業務に従事させるときに実施する健康診断
(5) 結核健康診断
 健康診断で結核の恐れがあると診断された労働者に対し、おおむね6か月後に行う健康診断
(6) 給食従業員の検便
 給食従業員を雇入れる際や当該業務へ配置替えの際に行う検便による健康診断
(7) 歯科医師による健康診断
 特定の業務に常時従事する労働者を雇入れる際や当該業務へ配置替えの際に、6か月以内ごとに1回実施する歯科医師による健康診断

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 健康診断の検査項目

□ 雇入時の健康診断・定期健康診断の検査項目
(1) 既往歴及び業務歴の調査
(2) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
(3) 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
(4) 胸部エックス線検査及び喀痰検査
(5) 血圧の測定
(6) 貧血検査
(7) 肝機能検査
(8) 血中脂質検査
(9) 血糖検査
(10) 尿検査
(11) 心電図検査

「定期健康診断」は、医師の判断により省略できる項目があります。なお「雇入時の健康診断」については省略できる項目はありません。

□ 定期健康診断で省略できる項目
1 身長の検査
 20歳以上の者
2 腹囲の検査
(1) 40歳未満の者(35歳の者を除く)
(2) 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの
(3) BM I が20 未満である者    BM I =体重(kg)/身長(m)2
(4) 自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BM I が22未満である者に限る)
3 喀痰検査
(1) 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者
(2) 胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
4 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 血糖検査及び心電図検査
 40歳未満の者(35歳の者を除く)
5 胸部エックス線検査
(1) 40歳以上→全員に実施
(2) 40歳未満→以下のア〜ウ以外は、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
 @ 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の人
 A 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている人
 B じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている人

【注】検診年齢は、年度の末日(3月31日)現在の満年齢でカウントします。

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 特定業務従事者の健康診断における深夜業の業務に常時従事する労働者とは

 厚生労働省のQ&Aでは、特定業務従事者の健康診断における深夜業の業務に常時従事する労働者は、以下としています。
・深夜業(午後10時から午前5時までの間に業務に従事)を1週に1 回以上又は 1月に4回以上行う労働者

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 二次健康診断等給付とは何か

 一次健康診断の結果、次の全ての項目で異常の所見があると診断されたとき、二次健康診断等給付を受けることができます。なお、二次健康診断等給付は労災保険による給付で、二次健康診断と特定保健指導があります。
(1) 血圧検査
(2) 血中脂質検査
(3) 血糖検査
(4) 胸囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
【注】一次健康診断とは、安衛法で規定される定期健康診断のうち直近のものをいいます。

 二次健康診断等給付を受ける場合は、労働者が二次健康診断給付請求書に会社から証明を貰い、一次健康診断の結果の写しを添付のうえ、二次健康診断を受ける病院等を経由して都道府県労働局に提出します。無料で二次健康診断を受けることができます。
(詳細)厚生労働省のリーフレット

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 ストレスチェック制度導入のポイント

□ ストレスチェックとは
 ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。労働安全衛生法により、労働者が50人以上いる事業所では、常時使用する労働者にストレスチェックを実施することが義務付けらています。
【注】ストレスチェック制度の規定は事業場ごとの適用となります。例えば労働者、本社100人、A支社60人、B支社30人会社の場合、ストレスチェックを義務化される事業場は、本社、A支社となります。
(参考)厚生労働省「こころの耳」

□ ストレスチェック制度の導入
1 導入準備
(1) 衛生委員会で制度の実施方法を検討します。
@ ストレスチェックは誰に実施させるのか
A ストレスチェックはいつ実施するのか
B どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
C どんな方法でストレスの高い人を選ぶのか
D 面接指導の申出は誰にすれば良いのか
E 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
F 集団分析はどんな方法で行うのか
G ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか
【注】法令の規定は事業場ごとの適用となりますので、全社共通のルールについても各事業場の衛生委員会等において確認し、共通化できない内容がある場合は各事業場の衛生委員会等で調査審議のうえ決定することになります。
(2) 実施体制・役割分担を決め、ストレスチェック制度実施内規などで具体的な内容を規定します。
■ ストレスチェック制度実施規定例(厚生労働省版)
■ 実施体制例
@ 制度全体の担当者…事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者
A ストレスチェックの実施者…ストレスチェックを実施する者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。)
B ストレスチェックの実施事務従事者…実施者の補助をする者(質問票の回収、データ入力、結果送付など個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。)
C 面接指導を担当する医師
(3) 従業員に周知します。

2 ストレスチェックの実施
(1) 従業員に質問票を配布し記入してもらいます。
(ダウンロード)職業性ストレス簡易調査票
(2) 質問票の回収等については、以下の方法が考えられます。
@ ストレスチェック実施者が回収する方法
A ストレスチェック実施事務従事者として会社の人事担当者や衛生管理者などを指定し、質問票の回収・データ入力・結果送付などの個人情報を取扱う業務を担当させる方法
B ストレスチェック実施事務従事者が回収を行うが、データ入力・結果送付などはストレスチェック実施者が行う方法
C 全てを外部委託する方法
(3) 回収した質問票をもとに医師などの実施者がストレスの程度を評価し、面接指導が必要な者を選定します。
(4) ストレスチェックの結果は直接本人に通知されます。会社が結果を入手するには、本人の同意(同意確認書類)が必要です。また、会社はストレスチェックの結果についての情報を把握しないということも可能です。この場合は、同意を得る手続きを省略できます。
(5) 結果の保存(保存期間5年間)は実施者または実施事務従事者が行います。

3 面接指導
(1) ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされた労働者から申出があれば、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。
(2) 面接指導を実施した医師からの結果報告書や意見書の入手については、本人の同意は必要としませんが、面接指導にあたり事前に本人に説明し、了解を得ることが望ましいとされています。
(3) 医師の意見等を参考に、必要に応じ会社は労働時間の短縮などの措置を行います。

4 ストレクチェック結果の労働基準監督署への報告(ダウンロード)様式第6号の2
 法令の規定は事業場ごとの適用となりますので、複数の事業場を有する企業の場合は、各事業場が管轄労働基準監督署に対して報告します。

□ ストレスチェック制度のポイント
(1) 定期健康診断と異なり、ストレスチェックを受検するか否かは労働者の自由です。したがって、質問票の提出や医師の面接指導を受けるか否かは労働者の自由とされます。
(2) 会社で実施事務従事者を選任する場合は「解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ管理監督者」以外の者から選任しなければなりません。
(3) 実施者および実施事務従事者には守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。
(4) ストレスチェック制度の対象者は、定期健康診断を実施する労働者と同一です。具体的には、正社員および週所定労働時間の3/4以上働くパートタイム労働者が対象となります。
(5) ストレスチェックおよび面接指導に要する費用は会社の負担となります。また、要した時間について賃金の支払いの有無は会社の自由です。一般健康診断の考え方と同様です。

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 メンタル不調者の「職場復帰支援モデルプログラム」

 労働者健康安全機構で、事業場規模等に対応したメンタル不調者の「職場復帰支援のモデルプログラム」を公開しています。
(詳細)労働者健康安全機構のHP

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 応募者の採否を決定するための健康診断を実施することができるか

 
採用選考時に応募者の採否を決定するために健康診断を実施することの是非についての行政の考え方は、以下の事務連絡が参考になります。

● 採用選考時の健康診断に係る留意事項について(平成13年4月24日、厚生労働省職業安定局雇用開発課長補佐から都道府県労働局職業安定主務課長あての事務連絡)
 近年、新規学校卒業者の採用選考時に、労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、いわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施している事例が見受けられます。
 しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。
 また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。
 したがって、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討していただきますようお願いします。

【解説】事務連絡では「健康診断を一律に実施している事例が見受けられる」と言っています。事務連絡ですので法的拘束力はありませんが、最終選考の段階において健康確認のため本人から健康診断書の提出を求める程度としておけば無難と思われます。また、不採用となった場合は速やかに本人に返還するか、本人に確認のうえ破棄するなどの配慮も必要と思われます。

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 雇入時の健康診断の費用は必ず会社負担か

 労働安全衛生規則43条は「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し医師による健康診断を行わなければならない。」として、雇入時の健康診断の実施を義務づけています。

 労働安全衛生法で定める健康診断は会社の全額負担が原則ですが、同規則但書では「ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。」としています。 したがって、本人が提出した3か月以内の健康診断書を、雇入時の健康診断とすることも可能です。

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 雇入時の健康診断はいつまでに行えばよいか

 雇入れ時の健康診断はいつまでに実施すればよいかについては、特に明文化されたものは見当たりませんが、労働安全衛生規則43条但書きを準用し、雇入れ後3か月以内に行う定期健康診断を、雇入れ時の健康診断として準用するなどしても差し支えないものと思われます。

●(関係法令)労働安全衛生規則43条
 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

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 健康診断に要した時間の賃金はどうする

 行政解釈では、一般健康診断の受診のために要した時間について「賃金を支払うことが望ましい」と留め置いていますので、支払わないことも可能と思われますが、特殊健康診断については「所定労働時間内に行うのを原則とし、時間外に行われた場合には割増賃金を支払わなければならない。」としています。なお、健康診断の費用については、会社が全額負担する必要があります。

●(参考通達)昭47.9.18基発第602号
 一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものでないので、その受診のために要した時間について当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることと考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい。
 特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。

【考察】健康診断の受診施設までの移動の際に交通事故に遭った場合の労災の取扱いはどうなる
 会社から健康診断の受診施設まで、徒歩や車で移動の際に交通事故などの災害にあった場合の労災の取扱いはどうなるかという問題があります。定期健康診断や特殊健康診断の受診について、所定労働時間内に行われた場合や割増賃金を支給のうえ時間外に行われた場合は、勤務時間中の事故ですので業務災害として取扱われると思われます。
 問題は賃金の支払をしない一般健康診断において、労働者が自分の時間で受診した場合の取扱いです。そもそも会社の指示による受診という前提があったしても、業務命令と賃金支払いは表裏一体であり、賃金支払いの前提がなければ業務とはいえず、労災は適用されないのではないかと考えます。

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 育児休業などで休業中の労働者の健康診断はどうする

 通達では、育児休業などで休業中の労働者の健康診断については以下としています。

● 育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて(平4.3.13基発第115号)
 育児休業、療養等により休業中の労働者に係る労働安全衛生法第66条第1項から第3項まで(労働安全衛生規則第44条第1項、第45条第1項、第48条、有機溶剤中毒予防規則第29条第2項、鉛中毒予防規則第53条第1項、四アルキル鉛中毒予防規則第22条、特定化学物質等障害予防規則第39条第1項及び第2項、高気圧作業安全衛生規則第38条第1項並びに電離放射線障害防止規則第56条第1項)並びにじん肺法第8条第1項に規定する定期健康診断(以下「定期健康診断」という。)及び指導勧奨による特殊健康診断の取扱いについては、下記によることとされたい。
1 休業中の定期健康診断について
 事業者は、定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が、育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえないものであること
2 休業後の定期健康診断について
 事業者は、労働者が、休業中のため、定期健康診断を実施しなかった場合には、休業修了後、速やかに当該労働者に対し、定期健康診断を実施しなければならないものであること
3 指導勧奨による特殊健康診断について
 休業中及び休業後の指導勧奨による特殊健康診断については、上記1及び2に準じて実施するよう事業者等を指導すること

【注】文中の指導勧奨による特殊健康診断とは、労働安全衛生法により定められた健康診断の他に、特定の物質を扱ったり、 特定の業務に就いたりする場合に行政からの通達により指導勧奨されている健康診断のことをいいます。

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 人間ドックを受診すれば会社の健康診断を省略できる

 人間ドックやかかりつけの医師による健康診断を受けた場合は、その健康診断の結果を会社に提出すれば、改めて会社が実施する健康診断を受診する必要はありません。この場合、人間ドック等の検査機関で、会社提出用の健康診断書を作成してもらい、会社に提出します。
 また、労働安全衛生規則では、雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断を受けた人は、その健康診断の実施日から1年間(特定業務従事者の健康診断については6か月間)は、重複する項目は省略できるともしています。

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 健康診断結果について医師等からの意見聴取とは何か

 労働安全衛生法では、事業者は健康診断等の結果、異常の所見があると診断された労働者について、就業上の措置について、3か月以内に医師または歯科医師の意見を聴かなければないとしています(労働安全衛生法66条の4)。
 また、事業者は、上記の医師等の意見を勘案し必要がある場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる必要があるともしています(労働安全衛生法66条の5)。

□ 事業者が医師に聴かなければならない意見とは
(1) 通常の勤務でよいか→通常勤務
(2) 勤務に制限を加える必要があるか→制限制限
(3) 勤務を休む必要があるか→要休業

 会社は、健康診断の結果、要所見の労働者に対して、産業医や、産業医の設置義務のない会社の場合は地域産業保健センターの相談窓口等を活用し意見を聴かなければならず、また医師等の意見を勘案し、必要があるときはその労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じる必要があるとしています。

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 労基署に提出すべき健康診断結果報告とは

 労働基準監督署に提出しなければならない健康診断結果報告については、厚生労働省のHPに一覧が掲載されています。

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 健康診断結果の保存期間は何年か

 会社は、健康診断結果について「健康診断個人票」により5年間保存することを義務づけられています。
 また、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、健康診断結果について「定期健康診断結果報告書」により、所轄の労働基準監督署に報告することも義務づけられています。

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 健康診断個人票保存義務と個人情報保護法の関係

 企業は、健康診断結果について「健康診断個人票」により5年間保存することを義務づけられています。また、これらの健康診断情報については、従業員の健康状態や病歴等も明らかになっていますので、その保管や開示に対しては慎重さが求められます。
 したがって、鍵のかかる場所での保管は当然のことですが、鍵の保管責任者もキチンと決めておき、従業員が覗き見などをできないようにしておく必要があります。

 また、個人情報保護法23条では「個人情報取扱事業者は、(中略)あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」としていますので、健康診断結果についても第三者への開示が必要な場合は原則として本人の同意が必要です。
【注】ここでいう第三者とは家族も含みます。

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 改正健康増進法により、2020年4月から全ての施設において原則屋内禁煙へ

 改正健康増進法により2020年4月から、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等の施設など全ての施設ににおいて、原則屋内禁煙となりました。
 原則屋内禁煙の例外は、喫煙専用室または加熱式タバコ用喫煙室を設置した場合のみ屋内喫煙が認められとしていますので、これらの施設の設置がない場合は、全面屋内禁煙となります。
(詳細)厚生労働省のHP
 
 なお、多数の利用者がいる施設とは「2人以上の者が同時に、又は、入れ替わり利用するをいう」としていますので、事務所や工場などの屋内の職場も該当し、企業内においてはほぼ全てが対象となります。なお、違反した場合は50万円以下の過料の罰則規定もあります。


● 職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(令和元年7月1日基発0701第1号)

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 結核予防法や伝染病予防法は感染症法に統合

 伝染病予防法は平成11年4月に、結核予防法は平成19年4月にそれぞれ廃止され、感染症法に統合されました。
 病者の就業制限として、伝染病予防法や結核予防法を記載している就業規則を稀に見かけることがありますが、削除・変更しておいた方が良いでしょう。また、平成12年に安全衛生規則61条(就業制限)も次のように改正されています。

1 事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第1号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。
(1) 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者
(2) 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者
(3) 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者
2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。
【注】法により就業を禁止される場合は、事業主都合による休業ではありませんので、賃金や休業手当の支払義務は生じません。なお、1項3号の厚生労働大臣が定める疾病は、現在のところ例示がないようです。

【解説】
以前は、安全衛生規則61条の就業制限条項に「精神障害で自身に傷つけるか他人に害を及ぼすおそれのある時」の条文が掲載されていましたが、平成12年に削除されました。会社の就業規則に当該条文が掲載されていたら、これも削除しておいた方が良いでしょう。
(参考)平成12年3月30日基発第207号

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 インフルエンザに罹患した従業員を就業制限した場合の賃金の支払いはどうする

□ 従業員がインフルエンザに罹患した場合
 接客などに従事する従業員がインフルエンザに罹患した場合は、顧客への感染を予防するため自宅待機を命じることがあります。この場合は会社都合による休業とされますので、労基法26条による休業手当(平均賃金の6割以上)が必要となります。なお、従業員が年次有給休暇を請求してきた場合は、年次有給休暇で対応するも可能でしょう。また、労務不能期間が4日以上となる場合は傷病手当金の申請も可能です。
 なお、家族の罹患などで本人も罹患の恐れがある場合などに業務命令により休業指示をする場合についても会社都合による休業となりますので、休業手当の支払いが必要です。

● 労働基準法26条
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

□ 従業員が新型インフルエンザに罹患した場合
 従業員が新型インフルエンザに罹患し「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律」により都道府県知事が就業制限を行った場合は、直ちに就業を禁止する必要があります。この場合は事業主都合による休業ではありませんので、休業手当の支払義務は生じません。 

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 有機溶剤とは何か

 有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称であり、様々な職場で、溶剤として塗装、洗浄、印刷等の作業に幅広く使用されています。有機溶剤は常温では液体ですが、一般に揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
 このため、有機溶剤中毒予防規則において、対象となる有機溶剤(54種類)を扱う事業者に対して、以下のような責務を課しています。

1 使用する有機溶剤等の危険有害性の確認と周知を行うこと
2 譲渡・提供するときの容器・包装への表示や文書の交付等を行うこと
3 屋内作業場等において、有機溶剤業務を行うときは、作業主任者を選任し、次の事項を行わせること
(1) 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから、有機溶剤作業主任者を選任
(2) 作業主任者の職務
@ 作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
A 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1月以内ごとに点検すること
B 保護具の使用状況を監視すること
Cタンク内作業における措置が講じられていることを確認すること
4 有機溶剤蒸気の発散源対策を講じること
5 作業環境管理を行うこと
6 決められた掲示と保管を行うこと
7 有機溶剤業務に常時従事する労働者に対して、雇入れの際、または当該業務への配置替えの際およびその後6月以内ごとに1回、定期に特殊健康診断を実施すること

(参考)厚生労働省のリーフレット

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 有機溶剤等使用の注意事項にかかる掲示内容が変更へ

 有機溶剤中毒予防規則では、事業者は、屋内作業場等で有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、@有機溶剤が人体に及ぼす影響、A取扱上の注意事項、B中毒が発生したときの応急処置など有機溶剤等使用の注意事項について、労働者が見やすい場所に掲示しなければならないことになっています。

 平成27年1月から、有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置に関しての掲示内容の一部が変わりました。
(詳細)厚生労働省のリーフレット

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 鉄骨切断機等も安衛法令上の規制対象に

 鉄骨切断機等は車両系建設機械には該当せず、安衛法令は適用されませんでしたが、平成25年7月から、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、解体用つかみ機(鉄骨切断機等)も、労働安全衛生法令上の車両系建設機械の解体用機械として、規制の対象となりました。

(参考)厚生労働省のHP

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 じん肺健康管理実施状況報告とは何か

 じん肺法施行規則別表で定められた粉じん作業に従事または従事した労働者に対しては、 就業時、定期、定期外または離職時に健康診断を行わなければなりません。そして、毎年12月31日現在における、じん肺に関する健康管理の実施状況を「じん肺健康管理実施状況報告書」により所轄労働基準監督署を経由して、都道府県労働局へ提出することが義務付けられています。
 なお、じん肺健康診断は通常は3年に1回の実施となりますが、実施しない年についても報告する必要があります。
【注】じん肺法施行規則別表で定められた粉じん作業とは、じん肺健康管理実施状況報告書の裏面に、対象の粉じん作業の内容が記載されています。

(参考)厚生労働省の資料

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 特定化学物質障害予防規則の改正(平成27年11月施行)

 特定化学物質障害予防規則が改正され、平成27年11月から新たにナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーについて健康障害防止措置が義務づけられました。

【解説】厚生労働省では、事業場において労働者が有害物にさらされる(ばく露)状況を把握するため「有害物ばく露作業報告制度」を設けています。この報告に基づき、リスク評価を実施し、労働者に重い健康障害を及ぼすおそれのある化学物質については、必要な規制を実施しています。

(参考)■厚生労働省のリーフレット ■作業環境の測定基準・評価基準の改正

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 陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン

 厚生労働省は、荷役作業での労働災害を防止するために「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン(平成25年3月25日付け基発0325第1号)」を策定しました。
 厚生労働省では、陸運事業者だけで荷役作業の安全対策を講じることは困難なため、荷主等(荷主、配送先、元請事業者など)も、陸運事業者と連携して、ガイドラインにより荷役災害の防止に取り組んで欲しいとしています。

(ガイドライン)■陸上貨物運送事業者向け ■荷主・配送先・元請け事業者向け ■ガイドライン

(参考Q&A)トラックドライバーの荷待ち時間等の記録の義務付け&荷役作業・付帯業務の記録の義務付け

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 小売業・社会福祉施設における危険の「見える化」ツール

 厚生労働省で、小売業・社会福祉施設における危険の「見える化」ツールを公開しています。「見える化」は、危険認識や作業場の注意喚起を視覚に訴えることで分かりやすく知らせることができ、安全確保のための有効なツールです。費用も掛からず効果も大きいことから、導入をお勧めできるツールです。
 従業員参加のもとで危険個所の洗い出しを行うことにより、情報の共有化と対危険意識の向上が図れます。さらに「危険予知訓練」と併せて洗い出しを行えば、一層の効果が期待できます。

(参考)厚生労働省のHP

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 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

 「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン(H14.4.5基発0405001)」 が廃止され、新たに「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(R1.7.12基発0712第3号)」が発出されています