医療保険の種類
医療保険は大きく分けて、健康保険・共済組合などの「職域保険」と、国民健康保険の「地域保険」に分けられます。
(1) 健康保険
会社などに使用されている人とその家族を対象にした医療保険で「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「組合管掌健康保険」があります。
全国健康保険協会管掌健康保険は、比較的小規模の事業所の従業員とその家族を対象としているのに対し、組合管掌健康保険は、300人以上の従業員を使用する企業やその共同体が国の認可を受けて設立するもので、一般に大企業やそのグループ企業の従業員とその家族を対象にしています。
(2) 共済組合
「国家公務員共済組合」と「地方公務員共済組合」があり、国家公務員及び地方公務員とその家族を対象としています。
(3) 国民健康保険
市町村などの自治体が運営する医療保険で、職域保険以外の自営業者や無職の人などが対象となります。国民健康保険には、都道府県知事の認可を受けて設立される「国民健康保険組合」もあり、医師国保や建設業国保などが有名です。
(4) 後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上(一定の障がいのある人は65歳以上)の人を対象とした独立した医療制度です。国民健康保険の被保険者や、健康保険・共済組合の被保険者・被扶養者であっても、75歳になると全て後期高齢者医療制度に加入します。
後期高齢者医療制度とは
健康保険や国民健康保険などに加入していた人が、75歳(一定の障がいのある人は65歳)になると、全てが「後期高齢者医療制度」に加入します。
□ 後期高齢者医療制度のポイント
(1) 対象者:75歳以上(一定の障がいのある人は65歳以上)の人が対象
(2) 医療費の自己負担割合:1割(現役並み所得者は3割)負担
(3) 保険料:原則として年金から天引き(保険料は全国一律ではなく都道府県によって異なる)
(4) 運営:都道府県単位で運営
(5) 申請の受付や届出先:市町村が窓口
□ 後期高齢者医療制度への移行例
【例1】Aさん(夫)74歳、Bさん(妻)70歳で世帯単位で国民健康保険に加入→ 夫が75歳になると後期高齢者医療制度に加入、妻は国民健康保険を単独で継続。
【例2】息子の健康保険の被扶養者である74歳のCさん→ 75歳になると後期高齢者医療制度に加入し、新たに保険料負担が発生。
【例3】Dさん(夫)74歳(健康保険に加入)、Eさん(妻)68歳(Dさんの被扶養者)→ 夫は75歳になると後期高齢者医療制度に加入。妻は国民健康保険に単独で加入し新たに保険料負担が発生。
【例4】Fさん(夫)74歳(健康保険に加入)、Gさん(妻)74歳(Fさんの被扶養者)→ 75歳になると夫・妻共にそれぞれ後期高齢者医療制度に加入し、妻にも保険料負担が発生。
退職後(定年退職以外)の医療保険はどうする
退職後の医療保険は、次ののいずれかが考えられます。
(1) 健康保険の任意継続被保険者になる(退職後2年間が限度)
(2) 国民健康保険に加入する
(3) 家族の健康保険の被扶養者となる
(4) 再就職して健康保険に加入する
(参考)協会けんぽのHP
【解説】
1 直ちに再就職すれば(4)となります。
2 当面は雇用保険の失業給付を受給し職探しをする場合は失業給付という収入がありますので、通常はその間(3)にはなれません。(1)(2)を選択することになります。
□ ポイント
(1)を選択する場合
健康保険の任意継続被保険者を選択する場合は、保険料は全額自己負担となります。
(2)を選択する場合
国民健康保険の保険料は前年の所得から算出しますので、保険料が割高になることがあります。市町村役場で国民健康保険料がどの位になるか確認し、健康保険の任意継続被保険者を選択した場合と比較されることをお勧めします。
(関連Q&A)国民健康保険料の減免措置&国民年金保険料の特例免除とは何か
(3)を選択する場合
退職後に働く予定もなく、かつ家族が会社勤めをしているなら、家族の健康保険の被扶養者になるという方法があります。この方法であれば健康保険料の負担はありません。かつ配偶者の被扶養者であれば、国民年金の第3号被保険者になりますので、国民年金保険料の負担もありません。
定年退職後の医療保険はどうする
定年退職後の医療保険の加入は、いくつか選択肢があります。
1 国民健康保険に加入する
国民健康保険料は、前年の所得を基準に毎年4月に決定されます。前年の所得が高いと保険料も割高になります。
(関連Q&A)国民健康保険料の減免措置&国民年金保険料の特例免除とは何か
2 健康保険の任意継続被保険者になる
健康保険の任意継続被保険者の保険料は、退職時の標準報酬月額(注)に保険料率を掛けた額で、全額本人負担です。加入期間は、退職後2年間が限度です。
【注】協会けんぽの場合、上限は30万円。組合管掌健康保険の場合は、各健康保険組合により異なります。
3 組合管掌健康保険の特例退職被保険者になる
特例退職被保険者とは、厚生労働大臣の認可を受けた特定健康保険組合が運営する制度で、定年などで退職し人が、75歳からの後期高齢者医療制度に移行するまでの間、健康保険の保険料と同程度の負担で在職中と同様の保険給付や健康診査などを受けることができる制度です。いったん加入すると、原則として75歳まで脱退できません。
ご自身が加入していた健康保険組合が特定健康保険組合であれば、特例退職被保険者になるのも選択肢の一つです。保険料は全額本人負担で、特定健康保険組合により保険料は異なります。任意継続被保険者より保険料が高くなることもありますので、加入していた健康保険組合に確認することをお勧めします。
4 家族の健康保険の被扶養者となる
再就職しない場合やパートタイマー等で働く場合(60歳以上は、年収が180万円未満の要件あり)で、家族が健康保険に加入していれば、その被扶養者となる方法です。保険料負担はありませんので、最も経済的な方法です。
5 再就職や継続雇用して、引き続き健康保険に加入する。
任意継続被保険者とは何か
会社を退職しても、希望すれば2年間に限り、引き続き継続して健康保険の被保険者になれます。これを健康保険の「任意継続被保険者制度」といいます。ただし、次の条件があります。
(1) 離職日まで継続して2か月以上の被保険者期間があること
(2) 資格喪失の日(離職日の翌日)から20日以内に申請すること
【注】任意継続被保険者の資格は2年間です。2年を経過すると資格を喪失します。
□ 任意継続被保険者の保険料
(1) 健康保険の保険料は事業主と従業員が折半して納付しますが、任意継続被保険者の場合は全額本人負担です。
(2) 健康保険の保険料は賞与に対しても標準賞与額を基準として保険料の納付が必要となりますが、任意継続被保険者はこの納付は必要ありません。
(3) 任意継続被保険者の保険料は本人が直接、当月分を10日までに納付します。(ただし初回分は指定された日までに納付します。)保険料の前納制度もあります。
(4) 保険料は、協会けんぽの場合は離職時の標準報酬月額(上限は30万円)×保険料率です。ただし、組合管掌健康保険の場合は各健康保険組合によって異なります。
□ 手続
「任意継続被保険者資格取得申請書」を住所地を管轄する協会けんぽ(組合管掌健康保険の場合は健康保険組合)に郵送または窓口へ提出します。手続きは任意継続を希望する本人が行います。
■ 任意継続被保険者資格を取得する際の被保険者証交付の変更点について(協会けんぽ)
従来、協会けんぽでは日本年金機構からの健康保険の資格喪失データを確認できないと、任意継続被保険者証の交付ができませんでしたが、令和元年10月から、任意継続資格取得申出書に以下の書類等の添付があれば、日本年金機構からの健康保険の資格喪失データの確認を待たずに、任意継続被保険者証の交付が可能となりました。
● 退職証明書の写し、雇用保険被保険者離職票の写し、健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届の写しなど
【解説】退職後に働かなければ国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険の保険料は前年の所得を基に4月に決定されますので、退職前に高い報酬を貰っていた人は国民健康保険料が割高になることがあります。ご自分の国民健康保険料の概算を市町村の国民健康保険の窓口で確認し、任意継続被保険者の保険料と比較し確認されることをお勧めします。
なお、任意継続被保険者の中途脱退は認められていませんが、保険料を指定期限までに納付しないと資格喪失となります。この場合は、納期限後に協会けんぽへ「任意継続被保険者資格喪失申出書」を提出(郵送可)し退会手続をします。協会けんぽから「資格喪失等確認通知書」を入手したら、市町村の国民健康保険の窓口で国民健康保険の加入手続きを行います。
組合管掌健康保険の書類入手等については、所属の健康保険組合にお尋ねください。
(詳細)協会けんぽのHP
就職したときや退職したときの国民健康保険の手続
1 就職したとき
国民健康保険に加入していた場合、就職して会社の健康保険に加入したとしても、国民健康保険は自動的に脱退とはなりません。本人が市町村役場で国民健康保険の脱退手続きを行わないと、市町村から国民健康保険料を請求し続けられる恐れがあります。
□ 就職時の国民健康保険の脱退手続(新潟市のケース)
以下を持参のうえ、市役所の国民健康保険窓口で手続きを行います。
(1) 国民健康保険証
(2) 会社から受領した健康保険証
(3) マイマンバー通知カードまたは個人番号カード
(4) マイナンバー通知カードの場合は、運転免許証など顔写真付きの身元確認書
2 退職したとき
退職後の医療保険については幾つかの選択肢がありますが、国民健康保険に加入する場合は、本人が市町村役場で国民健康保険の加入手続きを行わなればなりません。
□ 退職後の国民健康保険の加入手続(新潟市のケース)
以下を持参のうえ、市役所の国民健康保険窓口で手続きを行います。
(1) 資格取得(喪失)連絡票または健康保険・厚生年金保険資格喪失確認通知書
(2) 失業給付等を受給している場合は、雇用保険受給資格者証
(3) マイナンバー通知カードまたは個人番号カード
(4) マイナンバー通知カードの場合は、運転免許証など顔写真付きの身元確認書類
(5) 金融機関のキャッシュカード
国民健康保険と健康保険から保険料を二重徴収されることはあるか
月末時点において加入している保険者が保険料を徴収することになっていますので、基本的には保険料を二重に徴収されることはありません。
例えば、国民健康保険加入者が、9月16日に就職し健康保険に加入したケースでは、9月末時点では健康保険に加入していますので、9月分の保険料は健康保険から請求されます。8月末時点では国民健康保険に加入していましたので、8月分の保険料は国民健康保険から請求されることになります。
【解説】国民健康保険の脱退手続は会社は行いませんので、本人が市町村役場で行わなればなりません。脱退手続を怠ると市町村から国民健康保険料を請求し続けられる恐れがあります。この場合は、二重徴収されることがありますので、市町村役場の国民健康保険窓口で還付請求手続を行うことになります。
また、国民健康保険料の徴収方法は市町村により異なりますので、脱退時点で保険料の未徴収分が残っているケースがあります。この場合は未徴収分を請求されます。
被扶養者の認定基準は厳しくなった
健康保険の被扶養者になれる人は以下の人で、かつ健康保険の被保険者の収入により生計を維持していることが条件ですが、平成30年10月から被扶養者の認定基準が厳格となり、添付書類等の取扱いが変更となりました。
(参考)日本年金機構のHP
□ 同一世帯条件
1 被保険者と同一世帯でなくてもよい人
(1) 配偶者(内縁関係でもよい)
(2) 子、孫、兄姉弟妹
(3) 父母・祖父母などの直系尊属
2 被保険者と同一世帯が条件の人(同一世帯とは戸籍まで同一の必要はなく、同居し家計を共にしていればよいとされます。)
(1) 叔父・叔母、伯父・伯母、甥・姪とその配偶者。孫・兄姉弟妹の配偶者。配偶者の父母、連れ子など上記1以外の3親等内の親族。
(2) 内縁関係の配偶者の父母、連れ子
(3) 内縁関係の配偶者が死亡後の父母、連れ子
□ 生計維持条件
年収130 万円未満(60 歳以上または障害者の場合は、180 万円未満)で、かつ以下の条件が必要です。
・同居の場合は、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以下
・別居の場合は、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
● ポイント
(1) 認定基準における年収とは、過去における収入のことではなく、扶養の事実が発生した日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。税法上の所得による認定基準とは異なります。
(2) 給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下であることが必要です。この収入には、通勤手当も含まれます。
(3) 雇用保険等の受給者の場合は、基本手当日額が3,611円以下であることが必要ですが、待機期間中については被扶養者とすることができます。なお、妻が60歳以上の場合は、受給日額が5,000円未満であれば被扶養者になれます。
(4) 被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付のほか、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。
(5) 自営業者についての収入額は、必要経費を控除した額となります。
(6) 健康保険の被扶養者については年齢制限がありませんので、フリーターなどで年収が「生計維持条件」に当てはまる場合は、同居・別居に係わらず被扶養者になれます。
(7) 別居の場合は、別居家族の年収よりも被保険者からの仕送り額が多いことが必要です。なお、健康保険組合によっては仕送り下限額を設けているところもあるようですが、協会けんぽでは下限基準額というものはなく、申請内容により生計維持関係を判断するとしています。
(8) 以上は協会けんぽの場合です。健康保険組合によっては異なるケースもありますので、所属の健康保険組合にご確認ください。
□ 添付書類等(同性・別姓の区別はない)
1 直系尊属・配偶者・子・孫・兄弟姉妹
■ 同居の場合
(1) 身分関係…戸籍謄本、戸籍抄本または世帯全員の住民票
【注】住民票は、被保険者と被扶養者が同居していて、被保険者が世帯主である場合に限ります。
【添付書類を省略できる場合】
事業主が被扶養者の続柄を確認した上で、届書に被保険者と被扶養者のマイナンバーを記入し、届書の備考欄に「続柄確認済み」と記入した場合は省略できます。
きます。
(2) 生計維持関係…@所得証明書等、A住民票
【注】障害年金・遺族年金・傷病手当金・失業給付等非課税対象の収入がある場合は、受取金額の確認ができる通知書等のコピーが必要です。
【添付書類を省略できる場合】
@ 所得証明書等
16歳未満は省略できます。また、被扶養者が所得税法上の控除対象配偶者または扶養親族であることを事業主が確認し、届書の「事業主確認欄」の「確認」部分を○で囲んだ場合も省略可能です。
A 住民票
原則添付は不要ですが、日本年金機構において同居の確認ができなかった場合は、同居の確認ができる住民票等の提出を求めるとしています。
■ 別居の場合
(1) 身分関係…戸籍謄本または戸籍抄本
【添付書類を省略できる場合】
事業主が被扶養者の続柄を確認した上で、届書に被保険者と被扶養者のマイナンバーを記入し、届書の備考欄に「続柄確認済み」と記入した場合は省略可能です。
(2) 生計維持関係…@所得証明書等、A預金通帳等の写しまたは現金書留の写し
(別居の場合の生計維持条件は、前項「生計維持条件のポイント(7)を参照)
【添付書類を省略できる場合】
@ 所得証明書等
16歳未満は省略できます。また被扶養者が所得税法上の控除対象配偶者または扶養親族であることを事業主が確認し、届書の「事業主確認欄」の「確認」部分を○で囲んだ場合も省略可能です。
A 預金通帳等の写しまたは現金書留の写し
16歳未満は省略できます。また、16歳以上でも学生の場合は省略可能です。
(参考)日本年金機構のQ&Aから抜粋
扶養認定を受ける方の年間収入が被保険者からの仕送り額未満であることを確認するため、仕送りの事実と仕送り額(1回あたり)が確認できる次の書類を添付してください。
(1) 扶養認定を受ける方の口座へ振り込みをしている場合
被保険者の預金通帳の写しを添付してください。なお、預金通帳の写しについては、振込者(被保険者)、振込先の方(扶養認定受ける方)、振込額が確認できるものを添付してください。
(2) 扶養認定を受ける方へ現金書留で送金している場合
現金書留の控え(写し)を添付してください。なお、現金書留の控え(写し)については、依頼主(被保険者)、届け先(扶養認定を受ける方)、送金した金額が確認できるものを添付してください。
なお、確認書類の添付がなく、申立のみでは、被扶養者として認定を行うことはできません。
2 1以外の三親等以内の親族
■ 同居のみが対象
(1) 身分関係…戸籍謄本、戸籍抄本または世帯全員の住民票
(住民票は、被保険者と被扶養者が同居していて、被保険者が世帯主である場合に限ります。)
【添付書類を省略できる場合】
事業主が被扶養者の続柄を確認した上で、届書に被保険者と被扶養者のマイナンバーを記入し、届書の備考欄に「続柄確認済み」と記入した場合は省略できます。
きます。
(2) 生計維持関係…@所得証明書等、A住民票
(障害年金・遺族年金・傷病手当金・失業給付等非課税対象の収入がある場合は、受取金額の確認ができる通知書等のコピーが必要です。)
【添付書類を省略できる場合】
@ 所得証明書等
16歳未満は省略できます。また被扶養者が所得税法上の控除対象配偶者または扶養親族であることを事業主が確認し、届書の「事業主確認欄」の「確認」部分を○で囲んだ場合も省略可能です。
A 預金通帳等の写しまたは現金書留の写し
16歳未満は省略できます。また、16歳以上でも学生の場合は省略可能です。
【所得税法上の控除対象配偶者・扶養親族以外の場合の添付書類】
次の添付書類が必要です。
@ 退職した場合
退職証明書又は雇用保険被保険者離職票のコピー
A 退職後の雇用保険の失業給付の受給中又は受給が終了した場合
雇用保険受給資格者証のコピー
B 年金受給中の場合
年金受給額が確認できる年金証書、直近の改定通知書又は振込通知書のコピー
C 自営業による収入、不動産収入がある場合
直近の確定申告書のコピー
D 上記A〜Cに加えて他に収入がある場合
A〜Cのの確認書類に加え、課税(非課税)証明書を添付
E 上記以外の場合
課税(非課税)証明書
健康保険被扶養者(異動)届の「被扶養者になった日・被扶養者でなくなった日」の記載はどうする
健康保険被扶養者(異動)届を提出する際の、J欄「被扶養者になった日」K欄「被扶養者でなくなった日」の記載は、原則として届出の日を記入しますが、以下のような例外があります。
□ 被扶養者になった日
(1) 出生の場合…出生年月日
(2) 結婚の場合…結婚年月日
(3) 退職の場合…退職年月日の翌日(資格喪失日)
□ 被扶養者でなくなった日
(1) 死亡の場合…死亡年月日の翌日
(2) 離婚の場合…離婚年月日
(3) 就職の場合…就職年月日
ちなみに、被扶養者のいる従業員を採用した場合は、健康保険・厚生年金保険資格取得届に併せて健康保険被扶養者(異動)届の提出が必要ですが、退職した場合は被保険者資格喪失届の提出と健康保険証の返納のみでよいので、異動届の提出は行いません。
夫の扶養から妻の扶養に変更する際の健康保険の手続はどうする
夫が離職するなど、子の扶養を一時的に妻の扶養に移すことがありますが、この場合の手続は、夫の健康保険被扶養者(異動)届により削除の手続を、併せて妻の異動届により追加の手続をします。
なお、被扶養者でなくなった日と被扶養者になった日は同日になります。
共働き夫婦の子はどちらの被扶養者になるのか
共働き夫婦の子どもについては、原則として年収の多い方の被扶養者とされます。
ただし、夫婦双方が協会けんぽの被保険者である場合においては、年間収入の少ない方の被扶養者とする旨の届出があった場合、当該家計の実態等に照らし、主として年間収入の少ない方により生計を維持している者と認められるときは、年間収入の少ない方の被扶養者として認定してよいとされています。
健康保険の被扶養者が失業給付を受給するとどうなる
例えば、夫婦共働きで妻が失業した場合は、一般に妻は雇用保険の失業給付(基本手当)の受給手続をします。この場合、離職理由が自己都合退職のケースでは、離職後7日間の待機期間+2か月間の給付制限期間ののち基本手当の支給決定がなされます。
妻は、7日間の待機期間+2か月間の給付制限期間中は無収入ですので、夫の健康保険の被扶養者になれますが、基本手当を受け、基本手当日額が3,612円以上であれば健康保険の被扶養者になれませんので、この間は国民健康保険に加入することになります。
なお、組合管掌健康保険組合の場合は取扱いが異なる場合がありますので、所属の健康保険組合にご確認ください。
□ ポイント
(1) 健康保険の被扶養者の資格喪失日は、基本手当受給の初日となります。
(2) 国民健康保険の資格取得日は、健康保険の資格喪失日となります。
(3) 国民健康保険料の負担は、資格取得の日の属する月から発生します。
傷病手当金の手続
私傷病(労働災害を除く)による病気やケガにより労務に服せない場合は、健康保険から傷病手当金が支給されます。(詳細)協会けんぽのHP
□ 傷病手当金の支給要件
(1) 業務外の事由による病気やケガのために療養中であること
(2) 仕事に就くことができないこと
(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
【注】上記のほかに、療養のために休業した期間に報酬の支払いがないことも傷病手当金の支給要件ですが、報酬の支払いがあっても傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。報酬の額が、傷病手当金の額を上回る場合は傷病手当金は支給されません。
□ 待期期間
傷病手当金は、療養のため継続して3日以上仕事ができない場合(これを待期期間といいます)に、4日目から支給されます。待期期間には、有給休暇や土日・祝日などの休日も含め、給与の支払いの有無は関係ありません。また、待期は連続している必要があります。例えば、2日間会社を休んだ後3日目に出勤し、4日目にまた休んだような場合は連続しているとはいえず「待期3日間」は成立しません。
□ 支給期間
傷病手当金の支給期間は、支給が開始された日から起算して1年6か月です。一旦支給が開始されると、休んだり出勤したりを繰り返した場合でも、1年6か月すると傷病手当金の支給は終了します。
【注】
(1) 報酬の一部を受ける場合の支給開始日
(昭和21年6月20日保発第729号、昭和26年1月24日保文発第162号)その差額の傷病手当金の支給を受ける場合において、その支給を受け始めた日をいいます。
(2) 報酬を全額受ける場合の支給開始日
(昭和25年3月14日保文発第571号、昭和26年1月24日保文発第162号)報酬の支給が停止された日から、または減額支給されることになりその支給額が傷病手当金の額より少なくなった日から起算されます。
□ 傷病手当金の日額
支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×2/3
【注】支給開始以前の期間が12か月に満たない場合は、以下の(1)または(2)の少ない方の額をもとに計算。
(1) 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
(2) 30万円
□ 支給調整
次の(1)(2)(3)の額が、傷病手当金の日額より多いときは傷病手当金は支給されず、また傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
(1) 事業主から報酬が支給された場合
(2) 退職し、老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金などの老齢年金を受けた場合
【注】現職中は傷病手当金と老齢年金は併給調整されず、両方支給されます。
(3) 同一の傷病について障害厚生年金や障害基礎年金が支給される場合
□ 出産手当金との調整
傷病手当金の額が出産手当金の額より多いときはその差額を支給します。
□ 手続のポイント
(1) 協会けんぽの場合は「傷病手当金支給申請書」を協会けんぽ支部へ郵送します。なお、長期療養の場合は給与の締日等に合わせ、1か月毎に申請する例が多いようです。
(2) 申請書2ページの被保険者記入用の申請内容4「療養のため休んだ期間(申請期間)」、3ページの事業主記入用の勤務状況欄の「労務に服さなかった日」、および4ページの療養担当者記入用の「労務不能と認めた期間」が一致していることを確認します。
(3) 療養担当者記入欄に記載ミスがみられることがあります。記載ミスがあると、再度医療機関に赴き訂正してもらわなければなりません。できれば、余白に療養担当者の捨印を貰っておけば万全です。
(4) 健康保険組合の場合は、各健康保険組合により制度が異なる場合がありますので、所属する健康保険組合にお尋ねください。
□ 添付書類
(1) 出勤簿、賃金台帳の添付は原則不要
「事業主が証明するところ」について、出・欠勤状況、賃金支給状況、欠勤控除の計算方法等を記入例に基づきもれなく記入されている場合は、出勤簿・賃金台帳の添付は不要です。
(2) 支給開始期日以前の12か月以内に事業所の変更があった被保険者
支給額計算に含める月を確保するため、以前の各事業所の名称・所在地及び各事業所に使用されていた期間がわかる書類(別添のダウンロード)の添付が必要です。
(実務上の参考資料)協会けんぽ北海道支部のHP
復職し、再度休職した場合の傷病手当金はどうなる
傷病手当金は支給が開始された日から起算して1年6か月です。
一旦復職したものの、同一の傷病により再休職した場合は再度傷病手当金を受給することができますが、当初の支給開始日から1年6か月経過すると傷病手当金の支給は終了します。
傷病手当金の受給期間満了後に同一傷病が再発した場合、再申請することはできるか
このケースの取扱いは「同一の疾病とは一回の疾病で治癒するまでをいうが、治癒の認定は必ずしも医学的判断のみによらず、社会通念上治癒したものと認められ、症状をも認めずして相当期間就業後の同一病名再発のときは、別個の疾病とみなす。通常再発の際、前症の受給中止時の所見、その後の症状経過、就業状況等調査のうえ認定する。」という通達によるとされます。
社会通念上治癒したものとは「社会的治癒」といわれ、医学的判断=「医学的治癒」とは概念が異なります。社会的治癒したか否かの判断は、協会けんぽなどの保険者が行います。
傷病手当金と労災保険の休業(補償)給付の違いは何か
(1) いずれも3日間の待期期間がありますが、傷病手当金は継続して3日間の休業を必要とするのに対して、休業(補償)給付は通算して3日間の休業があればよいとされます。
(2) 傷病手当金は待期期間中の事業主の賃金支払義務はありませんが、休業(補償)給付は事業主が待期期間の3日間の休業補償を行う必要があります。
(3) 支給額は、傷病手当金は標準報酬日額の3分の2ですが、休業(補償)給付は特別支給金と併せて給付基礎日額の8割です。
(4) 傷病手当金には支給額の調整がありますが、休業(補償)給付には支給額の調整はありません。
(5) 傷病手当金の支給期間は最大で1年6か月ですが、休業(補償)給付には支給期間の制限はありません。
傷病手当金と休業(補償)給付は併給できるか
休業(補償)給付を受給中に、労務に服することができない私傷病を併発した場合、休業(補償)給付と傷病手当金は併給することも可能ですが、休業(補償)給付が優先され、休業(補償)給付の額が傷病手当金の額より少ない場合はその差額が傷病手当金として支給されます。
傷病手当金を退職後も引続き受給するには条件がある
傷病手当金は、退職後も引き続き受給することができますが「引き続き1年以上の被保険者期間がある被保険者」が「退職時に傷病手当金の支給を現に受けているまたは支給を受ける状態にある」という条件があります。
具体的には「退職日より前に労務不能のため3日以上連続して仕事を休んでいる(待期期間が完成している)」かつ「退職日当日に労務不能ため仕事を休んでいる」ことが必要です。
□ ポイント
(1)「引き続き1年以上の被保険者期間がある」とは、退職時の会社で1年以上の被保険者期間がなくても、それ以前の協会けんぽまたは健康保険組合の加入期間を含め、間を空けずに連続加入していた期間が1年以上あれば対象となります。
(2)「退職日当日に労務不能ため仕事を休んでいる」とは、欠勤、公休、有給休暇等で会社に出勤していない状態をいいます。退職日当日に出勤すると、退職後の傷病手当金は受給できなくなるので注意が必要です。
(3) 在職中から引き続き労務不能である傷病について支給対象となります。また、現職中と異なり、退職後に傷病が軽快し労務不能でなくなり再度労務不能となった場合は、再受給することはできません。
(4) 退職後の傷病手当金の申請は、本人が行うことになります。
□ 併給調整
(1) 老齢退職年金との調整
傷病手当金を受給している人が、退職後、老齢退職年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金)を受給することができるときは傷病手当金は支給されません。ただし、老齢退職年金の額が傷病手当金の額よりも少ない時は、その差額が支給されます。
(2) 雇用保険の基本手当との調整
雇用保険の失業等給付である基本手当(雇用保険の傷病手当を含む)を受給すると、健康保険の傷病手当金は支給停止となります。 雇用保険の被保険者が離職をして、雇用保険の基本手当の支給を受けられるのは離職の日の翌日から原則1年間ですが、離職の日の翌日から1年以内に、ケガや病気等の理由により引き続き30日以上職業に就くことができない場合は最大で4年間、受給期間の延長が認められますので、ハローワークに延長申請を行っておくことをお勧めします。
働いている女性(健康保険の被保険者)が出産したときの手続
協会けんぽを解説しています。健保組合の場合は、加入している健保組合にお尋ねください。
1 出産育児一時金(本人が、医療機関を介して協会けんぽに申請)
胎児数1児につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は39万円)の「出産育児一時金」が支給されます。
■ ポイント
(1) 出産とは、妊娠85日(4か月)以後で、生産、死産、流産、人工妊娠中絶等を問いません。
(2) 労災保険による給付がある場合も「出産育児一時金」は併給されます。
(3) 出産育児一時金には、直接支払制度・受取代理制度があり、出産費用としてまとまった額を事前に用意しなくても良いようになっています。詳しくは、医療機関にお尋ねください。
(参考)協会けんぽのHP
2 産前産後休業期間中の社会保険料免除(通常、産後休業期間中に会社が事務センターへ申出)
産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、事務センターへ「産前産後休業取得者申出書」を提出することにより、健康保険・厚生年金保険の保険料が、被保険者分・事業主分とも免除されます。
■ ポイント
(1)保険料が免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。
(2) 社会保険料の給与控除については、例えば産休開始日が4/1、終了日が7/7の場合、保険料免除期間は4月から6月まで、給与計算では5月から7月に支給する給与からは社会保険料を控除しません。
(3) 育児休業の保険料免除期間と産前産後休業の保険料免除期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が優先されます。
(4) 産前産後期間中に労務に従事しなかったことが条件ですので、この期間中に報酬が支給されていても社会保険料は免除されます。
■ 申請のポイント
(1) 産前産後休業期間中に申請を行わないと、保険料免除されませんので注意が必要です。
(2) 産前に免除申請することもできますが、出産予定日と実際の出産日が異なる場合は「産前産後休業者変更(終了)届」の提出が必要となりますので、出産後に申請する方が実務的です。
(参考)日本年金機構のHP
3 健康保険被扶養者(異動)届(出産後に、会社が事務センターへ届出)
生まれた子どもが健康保険の被扶養者となる場合は、事務センターへ「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。
4 出産手当金(通常、産後期間終了後に会社が事務センターへ申請)
「出産手当金支給申請書」を事務センターへ郵送します。出産手当金は、出産の日(出産が出産予定日後であるときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日以後56日までの間において、労務に就かない日について支給されます。
■ ポイント
(1) 出産日は産前期間に含めます。
(2) 予定日より遅れて出産した場合は「出産予定日から遡って42日間+出産予定日の翌日から出産日までの日数+出産日の翌日から56日間」となります。
(3) 会社から報酬が支給されるときは出産手当金は支給されません。報酬の額が出産手当金より少ないときはその差額が支給されます。
(4) 傷病手当金と出産手当金の両方を貰える場合は傷病手当金が支給停止されますが、傷病手当金の額が出産手当金の額より多いときはその差額が支給されます。
■ 出産手当金の日額
「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×2/3」
なお、支給開始以前の期間が12か月に満たない場合は、以下の(1)または(2)の少ない方の額をもとに計算。
(1) 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
(2) 30万円
■ 出産手当金支給申請書作成のポイント
(1) 従業員本人が記入する箇所、会社が記入する箇所、医師等が証明する箇所の全てを記入し、控えをコピーしておきます。
(2) 出産手当金は、通常は産後56日経過後に一括して申請しますが、産前と産後に分割して申請することも可能です。
(申請書ダウンロード)協会けんぽのHP
■ 添付書類
(1) 支給開始期日以前の12カ月以内に事業所の変更があった被保険者の場合
支給額計算に含める月を確保するため、以前の各事業所の名称・所在地及び各事業所に使用されていた期間がわかる別添の添付が必要です。(別添ダウンロード)
(2) 出勤簿、賃金台帳の添付は原則不要
「事業主が証明するところ」について、出・欠勤状況、賃金支給状況、欠勤控除の計算方法等を記入例に基づきもれなく記入されている場合は、出勤簿・賃金台帳の添付は不要です。
出産育児一時金・出産手当金は退職後でも貰えるか
□ 退職と出産育児一時金
次の場合は、退職後であっても健康保険から「出産育児一時金」を受給できます。
(1) 資格喪失日の前日まで継続して1年以上の被保険者期間があり、かつ資格喪失後6か月以内に出産した場合。
(2) 資格喪失日の前日まで継続して1年以上の被保険者期間があった人が任意継続保険者となり、任意継続被保険者の資格喪失後6か月以内に出産した場合。
■ ポイント
出産時に国民健康保険に加入していた場合や任意継続被保険者や夫の健康保険の被扶養者になっていたような場合は、重複して出産育児一時金を受給することはできません。
□ 退職と出産手当金
出産手当金は、退職後も引き続き受給することができますが、「引き続き1年以上の被保険者期間がある被保険者」が「退職時に出産手当金の支給を現に受けているか支給を受ける状態にある」ことが必要です。
具体的には「退職日当日が産前産後期間内である」かつ「退職日当日に仕事を休んでいる」ことが必要です。
■ ポイント
(1)「引き続き1年以上の被保険者期間がある」とは、退職時の会社で1年以上の被保険者期間がなくても、それ以前の会社の協会けんぽまたは健康保険組合の加入期間を含め、間を空けずに連続加入していた期間が1年以上あれば対象となります。
(2)「退職日当日に労務不能ため仕事を休んでいる」とは、欠勤、公休、有給休暇等で会社に出勤していない状態をいいます。退職日当日に出勤すると、退職後の出産手当金は受給できなくなるので注意が必要です。
(3) 出産育児一時金と異なり、退職後に国民健康保険に加入していた場合や任意継続被保険者であっても支給されます。
健康保険の被扶養者(専業主婦など)が出産したときはどうする
■ 家族出産育児一時金(夫等が医療機関等を介して協会けんぽ等に申請)
胎児数1児につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は39万円)の「家族出産育児一時金」が支給されます。
【注】
(1) 被扶養者に支給される家族出産育児一時金は、夫等の被保険者の死亡後や被保険者資格喪失後に出産した場合は健康保険から支給されません。この場合は、国民健康保険などから出産育児一時金が支給されます。
(2) 以上は協会けんぽの場合です。健康保険組合では独自の給付を行っている場合もありますので、所属の健康保険組合にお尋ねください。
高額療養費とは何か
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が、後日払い戻される制度です。なお、協会けんぽの自己負担限度額は所得に応じて5段階に設定されています。
(詳細)協会けんぽのHP
□ ポイント
(1) 70歳以上75歳未満の高額療養費は別建てとなっており、所得に応じ3段階に設定されています。
(2) 70歳未満で医療費が高額になることが事前に分かる場合は「限度額適用認定証」を提示する方が便利です。詳細は、次項Q&Aをご覧ください。
(3) 人工透析を実施している慢性腎不全の患者の自己負担限度額は 10,000 円となっています。この場合、事前に協会けんぽから「健康保険特定疾病療養受療証」の交付を受けておきます。
(4) 世帯内の同一の医療保険の加入者が、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、一定のの基準額を超えた場合、その超えた金額を支給する「高額介護合算療養費」の制度もあります。
(詳細)厚生労働省のHP
(2) 75歳以上の高額療養費は後期高齢者医療制度により運用します。
なお、平成30年10月から、高額療養費などの申請にマイナンバーを記入することで(非)課税証明書の添付が省略できることになりました。
■ 対象となる申請
(1) 高額療養費
(2) 高額介護合算療養費
(3) 食事療養標準負担額の減額申請
(4) 生活療養標準負担額の減額申請
(5) 基準収入額適用申請
(6) 限度額適用・標準負担額減額認定申請
高額療養費の限度額適用認定証とは何か
□ 協会けんぽの場合(組合管掌健康保険の場合は、所属の健康保険組合にお尋ねください。)
医療機関において外来や入院により診療を受けると、まず医療機関に医療費を支払います。支払った医療費の額が、高額療養費の自己負担限度額を超えた場合、協会けんぽに高額療養費支給申請書を提出し、後ほど、差額の払い戻しを受けます。
高額療養費の限度額認定証とは、70歳未満の協会けんぽの加入者が、あらかじめ医療機関に「限度額適用認定証」を提出することにより、医療機関への支払額が自己負担限度額までで済む制度で、高額療養費の現物給付といいます。
□ 限度額適用認定書発行までの流れ
1 協会けんぽの場合/(参考)協会けんぽのHP
高額療養費の現物給付を受ける場合は、事前に「協会けんぽ都道府県支部」に「健康保険限度額適用認定申請書」を郵送し、認定書の交付を受ける必要があります。なお、認定書の交付には1週間程度かかりますので、余裕を持った申請が必要です。
【注】70歳以上75歳未満で、所得区分が一般または現役並みVの場合は「高齢受給者証」を提示することによって自己負担限度額までの支払いとなりますので、限度額適用認定証は必要ありませんが、所得区分が現役並みTまたは現役並みUの場合は「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要です。
2 国民健康保険の場合
市町村役場で、事前に認定書の交付を受ける必要があります。詳しくは、お住まいの市町村役場へお尋ねください。新潟市の場合、申請書を新潟市のHPからダウンロードできます。
健康保険から埋葬費用が出る
健康保険から貰える埋葬費用は次の2種類です。なお、国民健康保険にも「葬祭料」の制度がありますが、詳しくはお住まいの市町村にお尋ねください。
□ 埋葬料
健康保険の被保険者が死亡したときに、被保険者に生計維持されていた人で埋葬を行なう人に支給されます。
ここでいう生計維持とは被扶養者資格のような厳密なものでなく、生計の一部でも依存していた事実があればよいとされ、同居が条件とか親族であるとかは問われません。また、埋葬料は実際に埋葬を行なわなくても支給されます。埋葬料の額は一律5万円です。被扶養者が死亡したときも「家族埋葬料」が支給されます。その額も一律5万円です。
□ 埋葬費
埋葬料を受ける人がいない場合に、実際に埋葬を行なった人に支給されます。埋葬費の額は、5万円の範囲内で埋葬に要した額が支給されます。
整骨院などでの健康保険の適用(療養費支給)はどうなっている
■ 接骨院や整骨院などの柔道整復師の場合
健康保険適用は、急性の外傷性の打撲・捻挫・挫傷・骨折・脱臼などの怪我に限られます。このうち、骨折・脱臼の施術については医師の同意が必要です。したがって、慢性的な疲労・肩こり・腰痛や、神経痛・リウマチ・五十肩・関節炎・ヘルニアなどの慢性的な痛み、筋肉疲労や筋肉痛などは保険適用されません。
■ 針灸の場合
神経痛・リウマチ・五十肩・頚腕症候群・腰痛症・頸椎捻挫後遺症について保険適用できますが、医師の同意が必要です。なお、医療機関で同じ傷病の診療を受けた場合は、針灸の施術は保険適用されません。
■ あん摩・マッサージ
筋麻痺・関節萎縮等の症状改善のため医師が必要と認めた場合は、保険適用されます。
保険適用の施術を受けられる場合は、療養費支給申請書の内容を確認し署名します。なお、健康保険が適用されない場合は、全額自己負担となります。
協会けんぽの保険料率は都道府県により異なる
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の保険料率は、都道府県により異なります。
(協会けんぽの料率表)都道府県ごとの健康保険料額 介護保険料率
健康保険被保険者資格証明書とは何か
協会けんぽの健康保険証は、発行まで通常2〜3週間かかります。保険証が発行されるまでの間に、本人や被扶養者が保険医療機関で診療を受けたいときは「健康保険被保険者資格証明書」の交付申請を行い、交付を受けた「健康保険被保険者資格証明書」を医療機関へ提示し診療を受けることができます。
□ 申請方法
申請は、本人または会社が事業所の所在地を管轄する年金事務所へ直接または郵送で行います。証明書の有効期間は20日間です。なお、組合管掌健康保険の場合は、所属の健康保険組合にお尋ねください。
(詳細)日本年金機構のHP
資格取得(喪失)連絡票とは何か
会社の健康保険の被保険者資格を取得(喪失)した際などに市町村役場へ提出する連絡票で、従業員に会社が発行する連絡票です。会社へ就職または退職したとしても、自動的に国民健康保険の加入・脱退手続が行われる訳ではありませんので、従業員本人の市町村役場への届出が必要となります。
□ 退職時の取扱い(新潟市の場合)
会社を退職し健康保険の被保険者資格を喪失あるいは健康保険の被扶養者から外れ、国民健康保険の加入手続をする際に市役所の窓口へ提出します。なお、会社から渡される「健康保険・厚生年金保険資格喪失確認通知書」により、連絡票の提出に代えることもできます。
(参考)新潟市のHP
健康保険証を紛失したときの手続
1 協会けんぽの場合/(参考)協会けんぽのHP
会社が、協会けんぽへ「健康保険被保険者証再交付申請書」を提出します。
2 組合管掌健康保険の場合
会社が、所属の健康保険組合に再交付の申請をします。
3 国民健康保険の場合
世帯主が、市町村役場へ身分証明書・印鑑を持参のうえ再交付の手続きをします。
(参考)新潟市のHP(新潟市の場合)
交通事故で健康保険は使えるか
自動車事故などの第三者の行為による傷病の場合は加害者負担が原則ですので、通常は健康保険を使いませんが、次のようなケースでは健康保険で治療を受けた方が有利なことがあります。
例えば、加害者が自賠責保険のみで任意保険に加入しておらず(こういうケースでは概して加害者が資力に乏しく、損害賠償能力がないことが多い)、かつ治療費が自賠責保険の限度額120万円を大きく超えそうな場合は、まず健康保険で治療を行います。そして、自賠責保険からの120万円はできるだけ休業補償や慰謝料などに当てるようにします。最初から自賠責保険で治療を行った場合は、自賠責保険の120万円は殆ど治療費に充当されてしまい、残りの休業補償などを加害者に請求しても、加害者に支払能力がなければ、結果として賠償されない恐れがあるからです。
この場合、加害者が支払うべき治療費を健康保険が立替えて支払うこととなりますので、協会けんぽなどの保険者が後日、給付した費用を加害者に請求することになります。
□ 第三者の行為による傷病届/(詳細)協会けんぽのHP
上記の理由から、仕事中や通勤途中以外の交通事故などの第三者の行為による傷病の場合は「第三者の行為による傷病届」を以下のような添付書類と共に、協会けんぽなどの保険者に提出する必要があります。
なお、交通事故の場合の添付書類は以下の通りです。
(1) 交通事故証明書(写し可)
(2) 事故発生状況報告書
(3) 念書
(4) 同意書
(5) 示談が成立している場合は示談書の写し
なお、車のナンバー、車の所有者の住所・氏名・電話番号、自賠責保険書番号と保険会社名は確認しておきましょう。