クサノオウとヤマブキソウ

クサノオウ

「死なば秋 露の干ぬ間ぞ 面白き」・・・・尾崎紅葉

クサノオウは尾崎紅葉が胃癌の痛み止めに使った 「白屈菜」 として有名な薬草である。
上記の辞世の句を残したが、若干37歳であった。
ケシ科クサノオウ属の花で、分かっているだけでも12種類のアルカロイドが含まれ、ケシと同じ様に鎮痛作用や神経を麻痺させる作用があるので、尾崎紅葉が胃癌の痛み止めに使ったものであるが、尾崎紅葉の壮絶な死とは結びつかない可愛い花を付ける。
この花の蕾の頃に根元から刈り取り、数日間乾燥したものを煎服すると消炎性鎮痛剤となり、茎の汁を付けるとイボや魚の目を取る薬ともなる。
イボクサの別名もあり、皮膚病全般に効く薬として有名な漢方薬で、丹毒の別名である瘡(くさ)を治す薬効の為、瘡(くさ)の王の名が付いたとされるが、茎を折ると黄色い汁を出すので、草の黄(クサノオウ)の名の由来とする説もある。
ユ−ラシア大陸一帯に広く分布し、古代ギリシャでも神話と共に薬用とされた記述が有るそうなので、洋の東西を問わず古くから用いられた薬草である。 

クサノオウとてんとう虫

このケシ科クサノオウ属にはクサノオウともう一つ、クサノオウの花を大きくしたようでずっと派手に咲かせるヤマブキソウがある。
全体の感じが一重のヤマブキ(山吹)に似ているのでその名があるが、ヤマブキの花が五花弁であるのに対し、クサノオウと同じ様に四花弁である。( 「ヤマブキと太田道潅」 の項参照)
四月の中旬過ぎに近くの丘陵地帯に咲くが、クサノオウのように何処でも見られる花ではない。 

ヤマブキソウの花と葉

クサノオウもヤマブキソウも種子に蟻の好物の脂肪隗(エライオソーム)を付け、種子を蟻に運ばせるケシ科クサノオウ属の花であるが、近年ではケシ科クサノオウ属、ケシ科ヤマブキソウ属に分ける動きがあり、それぞれ一属一花の花になってしまう。 分類の世界もなかなか大変である。

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