ナノハナ

「菜の花や 月は東に 日は西に」・・・・蕪村

蕪村の句や司馬遼太郎の小説 「菜の花の沖」 にあるように、かっては一面の菜の花畑が日本各地に広がっていた。 油(菜種油)を取るためである。
野菜の花からその名が来ている 「菜の花」 はアブラナの花もカブの花もハクサイの花もカラシナの花も総てナノハナ(菜の花)であり、これらアブラナ科の花の祖先は皆同じで、色も形もほとんど変わらず、花だけでは一見して区別はできない。
菜の花の祖先はカブとされ、カブから種々分岐していったと考えられているが、油を取るためにアブラナが一面に植えられた為、ナノハナと言えばアブラナを指す様になり、アブラナ科の代表となった。( 「カブは菜の花の祖先」 の項参照)
菜の花の種子から油をとる事が少なくなった現在、名前は同じでも、切花用のナノハナはチリメンハクサイの事であり、現在河原等で群生している菜の花は帰化種のカラシナが多い。
アブラナも古くは食用とされ、種子から油が絞られるようになったのは日本では1500年代とされている。 それまで使われていた胡麻油(エゴマ油)に取って代わり、日本中に菜の花畑が出現した。
原産地は北ヨーロッパ、シベリアであるが、かなり古い時代に渡来した事は古事記や万葉集に見受けられ、又、平城京で出土した土器に残った油成分の分析で菜種油が検出されている。
菜の花は花が終わると右下の写真のように長い実(長角果)を付け、これがアブラナ科の特徴となっている。

アブラナの花と長角果

桃の節句に桃の花と一緒に菜の花を飾る風習は江戸時代から始まったものであるが、現代ではほとんど見られなくなっている。
油を採る為の栽培がなくなり、日本の伝統行事も忘れられつつあり、又、河原に広がる菜の花は帰化種のカラシナ等が多いが、それでも菜の花と言えば現代でもアブラナを指す事が多い。

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