スズナ

有名な源氏物語の注釈書 「河海抄」 の中に春に食べる野菜としてセリ ナズナ オギョウ ハコベラ ホトケノザ スズナ スズシロの紹介があり、これが転じて春の七草となったが、その中のスズナは現代で言う蕪(カブ)の事である。
カブの原産地はヨーロッパ、アフガニスタンで、日本には中国を経由して伝わった。
カブは4000年を超える歴史を持ち、ギリシャ時代に既にその記述があり、日本に伝わったのはダイコンより古く、万葉集にもアオナの名前で詠まれ、又、 日本書紀には持統天皇が桑や栗と共にカブの栽培の奨励をしたと書かれている。
アブラナ科アブラナ属で、アブラナ科ダイコン属のダイコンより本流で、花の色もダイコンが白であるのに対しアブラナ科の多くの花と同じ黄色であり、染色体の数もダイコンより二本多い。
カブの祖先から根を食べるカブやダイコン、菜を食べるハクサイ(白菜)、コマツナ(小松菜)、サントウサイ(山東菜)、芽を食べるブロッコリ−、芥子を作るカラシナ、油をとるアブラナ等に進化してきたと考えられている。

ちなみに、野沢菜も天王寺蕪(かぶ)の種を植えたところ、長野の気候、風土、地味に合って野沢菜になったと言い伝えられている。
アブラナ(油菜)、ハクサイ(白菜)、コマツナ(小松菜)、サントウサイ(山東菜)等いずれもカブの花と区別は付かないし、ブロッコリ−は多少異なるが、それでも良く似ている。
 

アブラナ(油菜)      ハクサイ(白菜)       ハクサイ

 コマツナ(小松菜)       ブロッコリ−     サントウサイ(山東菜)

カブは日本渡来時は根よりむしろ葉を食べていたようである。 現代では葉は捨てられる事が多いが、根より葉に栄養素が多く、根だけ食べて、葉を捨てるのはもったいない話である。
ビタミン、カルシュウム、ジアスターゼ、等いろいろな栄養素を多く含むと同時に腹部にたまったガス抜きにも効果があり、又、 根をすって塗ると、しもやけ、あかぎれ、毒虫さされに効く民間薬となった。
その後、日本で独自の発展を遂げ、いろいろな地方のいろいろな種類のカブ(蕪)が作られた。 天王寺蕪、聖護院蕪、金町小蕪等々である。
江戸の俳人 「蕪村」 はカブの産地として有名であった大阪天王寺に住んでいたので、俳号にその名を付けた。

カブの名の由来は形が弓の矢の先に付ける鏑(かぶら)に似ている為であるとされる。 スズナの名の由来も形が鈴に似ているからと言う説もあるが、万葉集にはアオナとあり、スズは古語で涼、青を意味するので、そのへんから来ているかもしれない。  諸葛孔明が戦時の食料として植えたとされるショカツサイと言えば日本ではムラサキハナナであるが、中国ではカブであり、名の由来で定説と言うのはなかなか無い。( 「ムラサキハナナの名の論争」 の項参照)。
都会では花の前に食べてしまうので、花はなかなか見れないが、この地方では、カブ、白菜、小松菜、山東菜、アブラナ、カラシナ、ブロッコリ−の花が畑や土手を黄色に染める 「菜の花」 となる。
 カブはこれら 「菜の花」 の祖先と考えられている。

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