ミズバショウ

「夏が来れば思い出す はるかな尾瀬遠い空 ・・・ ミズバショウの花が咲いている  夢みて咲いている水のほとり」 ・・・夏の思い出

ミズバショウは尾瀬を詠った 「夏の思い出」 の歌ですっかり有名になり、尾瀬では5月下旬頃から見ごろになるので夏に咲く花と思われがちであるが、実際は雪解けのころに咲く春の花である。 シベリアから北海道、日本海沿岸にかけての湿原に咲き、早いところでは4月上旬から咲き始める。
尾瀬のある群馬県と境界を接するこの地方でもさすがに簡単にミズバショウを見る事は、かっては出来なかったが、近年では道が整備されヒールの高い靴で尾瀬に入る女性まで現れ始め、更には群馬県の片品村から秩父の日野地区に移植したミズバショウが数を増やし、簡単に見に行けるようになった。


花のように見える白い部分は仏炎苞と呼ばれる苞で、中央にある円柱状のものが花序である。 花序には数百の小花が付いている。
雄蕊と雌蕊を持つ両性化で、仏炎苞が開いた時点では雄蕊は見えず、雌蕊がびっしりついていて受粉可能な状態であるが、数日後、雄蕊が花序の表面を押し上げるように現れ、花粉を放出する、いわゆる 「雌性先熟」 である。 他の花と受粉して強い子孫を残そうとする植物の知恵であるが、自家受粉する事もある。
サトイモ科ミズバショウ属の花で、葉が大きく芭蕉の葉に似ており、湿地に育つ事から水芭蕉(ミズバショウ)の名がついた。 氷河期から自然に適応しながら生き抜いてきた 「遺存植物」 としても名があり、この花やミツガシワが有名である。( 「氷河期の遺存植物ミツガシワ」 の項参照)
かっては、人知れずひそやかに咲いていたが、歌のお陰ですっかり有名になり、道や木道が整備されたり、花自体が移植されたりして簡単に見られるようになった花である。

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