ハス

「はちす葉の 濁りに染まぬ 心もて 何かは露を 玉とあざむく」・・・・古今集

ハスを野の花として取り上げるのは多少気が引けるが、隣町の行田市は古代ハスの観光名所で、又近くに蓮沼や蓮田と言う地名の場所も多くあり、レンコンの生産日本一を誇る茨城県や、大賀ハス(古代ハス)の発見地千葉県を隣に控え、この地もハスの花を散歩がてら見るには事欠かない。
ハスの歴史はきわめて古く、一億年以上前の化石から見つかっており、インドでは五千年前のものと思われるハスの女神像が発見され、エジプトではピラミッドや王家の谷からハスの種子が出、王家の紋章ともなっている。 三千年前の中国の 「詩経」 にはハスを尊ぶ詩が詠まれ、日本でも大賀博士が二千年前の種から花を咲かせて話題になった。
万葉集に長歌一首、短歌三首が詠まれ、古今集に上記の有名な一首がある。 枕草子に 「・・・ハス葉、よろずの草より優れてめでたし・・・」 とあり、源氏物語にも記述が有る等、古くから親しまれた花である。 江戸時代にも蕪村が 「蓮の香や 水をはなるる 茎二寸」 と詠んでいる。
中国では菊を隠逸の花、牡丹を富貴の花、蓮を君子の花と呼び、清廉な花のイメージが強く、又、釈尊(釈迦)の説法にもしばしば出てくるので、日本でも仏の花、清廉な花として尊ばれてきた。
ハスはスイレン科ハス属に属し、赤色と白色の東洋産種と黄色のアメリカ産種の二種類がある。

東洋産種のハス

一方、地下茎の蓮根(レンコン)は食用として鎌倉時代の頃、中国から導入され、鑑賞用ばかりでなく、食用としても盛んに栽培されるようになった。 根に空気を送り込む穴が開いている事から、見通しのきく縁起の良い食べ物とされ、慶事には欠かせない食物となった。
ハス(蓮)の名の由来は果托の形が蜂の巣(ハチノス)に似ており、それが転じてハチスからハスになったとされる。 又、花(華)と実(菓)が同時に生じ、仏法で言う因果倶時の 「妙法蓮華」 に通じるので、蓮華(レンゲ)と書かれるようになった。 「開いた 開いた 何の花が開いた レンゲの花が開いた・・・・」 と歌われたレンゲはいわゆるレンゲでなく、ハスの花の事である。

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