リンドウいろいろ

「リンドウは枝さしなどむつかしげなれど、異花などのみな霜枯れたれど、いとはなやかなる色合いにてさし出たるいとおかし」・・・・枕草子

リンドウは日本の秋を代表する花であるが、山上憶良の秋の七草の中には入っておらず、文学に登場するのは 「枕草子」 からで、清少納言がその生態や風情を上記の様に見事に述べている。 「リンドウは茎が倒れて枝ぶりはうっとうしいが、他の花が皆枯れてしまう頃に華やかな色合いで咲き、実に趣がある」 の意味である。 現代、我々が良く見るリンドウはエゾリンドウやミヤマリンドウを改良した園芸種で、枝ぶりもすっきりしているが、古来からの野生のリンドウはササリンドウとも呼ばれるようにササの葉に似た葉で、茎が倒れやすく地を這う傾向がある。
又、薬草としての歴史も古く、平安時代に書かれた 「和名抄」 にエヤミグサ(胃病み草/疫病草)の名で登場し、当時から苦味健胃薬として知られていた。 
リンドウの根から作られた漢方の生薬名 「竜胆(りゅうたん)」 は同じく有名な漢方薬 「熊の胆(くまのい)」 より更に苦い事から 「竜の胆」 と呼ばれ、竜胆を音読みしてリンドウになったとされるように、古くから中国、日本での有名な健胃薬である。 
ヨ−ロッパでも日本のリンドウとは異なるものの、同じリンドウ属の根から作る苦味健胃薬 「ゲンテイアナ」 はこの植物の薬用効果を最初に発見したゲンチウス(紀元前180年頃)を記念して命名されたもので、洋の東西を問わず苦味健胃薬としての古い歴史を持っている。

リンドウ科リンドウ属のリンドウやツルリンドウ属のツルリンドウ等、いわゆるリンドウの仲間は世界に400種程有り、日本には十数種自生している。
秋の代表的な花として見られるが、フデリンドウのように春に咲くリンドウもあり、又、エゾリンドウやミヤマリンドウから改良された園芸種も出回ってリンドウもいろいろである。( 「フデリンドウと鐘撞堂山」 の項参照)

リンドウ

  ツルリンドウの花と赤い実

エゾリンドウやミヤマリンドウから改良された園芸種のリンドウ

リンドウは薬として名があり、かっては水田周辺の草地やため池の堤防等、何処にでも見られ、その可憐な花姿から秋を代表する花であり、仲間のツルリンドウの赤い実は秋の山野の風物詩ではあるが、現在ではこの近辺の散歩道で見つける事はなかなか難しくなってきている。
春に咲くフデリンドウは近くの山裾で未だ散歩がてら見られるが、秋に咲くリンドウやツルリンドウは隣町である東松山市の武蔵丘陵地帯まで足を延ばす必要がある。

近くの長野県の県花でもあるが、年々見ることの難しくなっている花のひとつである。

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