タデいろいろ

ホンタデ(ヤナギタデ)

「蓼食う虫も好き好き」・・・・諺

辛くて口がただれるの意味でタデの名が付いたとされる程タデ(蓼)には葉に辛味があり、それでもそれを好んで食べる虫もあって十人十色と言う事の比喩が上記の 「蓼食う虫も好き好き」 である。
一方、その辛味を利用して古くから香辛料に使用されてきた。 奈良時代から用いられていた記述があり、魚や鳥等の臭みのある食材に添えられ、臭みを消し、味を引き立て、現在でも鮎の塩焼きに添えられるタデ酢等に使われる。
芭蕉の句に 「草の戸を 知れや穂蓼に 唐辛子」 (薬味にタデとトウガラシを使っていますからぜひおいで下さい) とあり、かっては唐辛子と並ぶ高級な薬味であった事が分かる。 古くから親しまれてきた植物で、万葉集に 「我が宿の 穂蓼古幹  摘み生ほし 実がなるまでに 君をし待たむ」 (庭のタデの実を摘んで植え、実がなるまであなたを待ちますよ)の歌がある。
もっとも、散歩道の途中で見るタデのほとんどははこの香辛料に使われるタデではない。 タデにもいろいろの種類があり、日本には50種程度自生しているが、香辛料に使用されるタデは本物のタデの意味でホンタデ、あるいはヤナギに似た葉を持つのでヤナギタデとも呼ばれるタデだけで、残りは辛味の無いタデである。
タデの中でも秋の野原や散歩道で最も目立つのはイヌタデで、名の由来は 「辛味がなく役に立たないタデ」 からホンタデ(ヤナギタデ)に対し、イヌの名を冠したものである。 ただ、和え物や煮物にすれば美味しいと言う人も居り、 「蓼食う人も好き好き」 か。
又、アカマンマとも呼ばれ、花をしごいて器にもると、赤飯を盛ったようになり、昔は子供達がママゴト遊びに使った。

イヌタデの花と群落 

その他、春に咲くハルタデ( 「ハルタデは春に咲く蓼」 の項参照)、外観はホンタデにそっくりであるが辛味が無いためポンツク(愚鈍者)の意味で名付けられたポントクタデ、サクラの花に似たサクラタデ、シロバナサクラタデ、イヌタデより大きいオオイヌタデ、オオイヌタデより大きく、茎に毛を持つオオケタデ、オオケタデよりさらに大きく、2メートル程度の木のようになり、幅広の葉を持つオオベニタデ、林縁に小さな花をまばらに付けるハナタデ等がある。

    ポントクタデ        サクラタデ       シロバナサクラタデ

オオイヌタデ        オオケタデ        オオベニタデ

タデ科の一家をなし、タデの名の付く花々は秋を代表する野の花である。

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