ハルタデ

麦刈りや田植えの時期に散歩をすると、休耕田や田の畦にやたら目に付くタデの花に出会う。
タデは普通、秋の花で、秋には種々のタデの花が咲くが、春に咲くタデがあってハルタデ(春蓼)と呼ばれる。( 「タデ食う虫も好き好き」 の項参照)
春に咲くとは言っても5月頃から秋にかけて花期の長い花で、咲く時期もさることながら、茎が紅紫色を帯び、葉の中央に黒い斑紋があって、これが特徴になっている。 この斑紋を八の字に見立ててハチノジタデと呼ぶ地方もある。

ハルタデの葉の斑紋

「蓼食う虫も好き好き」 はタデ(ホンタデ)の葉には辛味があるにもかかわらずこれを好む虫もいる事から、十人十色の比喩であるが、ホンタデ(ヤナギタデ)はこれを逆に利用して古くから香辛料に使用されてきた。 奈良時代から用いられていた記述があり、魚や鳥等の臭みのある食材に添えられ、臭みを消し、味を引き立て、現在でも鮎の塩焼きに添えられるタデ酢等に使われる。 タデの名の由来も辛くて口がただれると言うことから付いたとされる。
芭蕉が 「草の戸を 知れや穂蓼に 唐辛子」(薬味にヤナギタデとトウガラシを使っていますからぜひおいで下さい) と詠んだ様にタデはかっては唐辛子と並ぶ高級な薬味であった。
ハルタデは残念ながら、ヤナギタデのような辛味が無く、利用価値は皆無で、むしろ麦畑の害草でしかない。

麦畑に咲くハルタデ

麦畑の害草ではあるが、良く見ると可愛い春に咲くタデの花である。

 

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