ギシギシいろいろ

アレチノギシギシ

この地方の散歩道で一年中一番目立つ植物の一つがギシギシである。 秋に発芽し、放射状に地面を這うように葉を広げて(ロゼット葉)冬をやり過ごし、春になると他の植物に先んじて茎を伸ばして鬱蒼と生い茂る。 ロゼット状で冬を越すのは地上に近い所で寒さをしのぎ、放射状の葉で日光を出来るだけ多く取り込み、春には他の植物の陰になる前に先んじて茎を伸ばそうとする植物の知恵である。
日本に古来からあるギシギシや明治時代にヨ−ロッパから帰化したアレチノギシギシやエゾノギシギシ等が入り混じって繁茂している。
ギシギシはタデ科のスイバ(スカンポ)の仲間で良く似ているが、スイバの風情は無く、鬱蒼と茂り、花や実も美しくはないので現代では雑草として土手や田の畦に生える厄介者とされ、省みられる事もない。( 「スイバはスカンポ」 の項参照)

野の花として取り上げるにはあまりにも冴えないが、花期に拡大して見ると思わぬ表情を見せる。 ギシギシと馬鹿にして遠くから眺めているだけではいけないと反省させられる。

ギシギシ

アレチノギシギシ

エゾノギシギシ

日本に古来から生育しているギシギシは名の有る薬草で、太い根を水洗し、天日で乾燥させたものは漢方の生薬名で 「羊蹄根(ようていこん)」 と呼ばれ、二千年ほど前に書かれた漢時代の薬草の書 「神農本草経」 に記載がある。
緩下剤として使用され、便秘や高血圧等にも効果があるとされ、民間薬としては生の根を砕いた絞り汁を水虫、いんきん、たむし等の皮膚病全般に用いた。
若芽にはジュンサイの様な独特のぬめりが有って美味しく賞味でき、オカジュンサイとも呼ばれ、 若菜を茹でて水にさらしてアク抜きして調理すれば、おひたし、油炒め等で食用にもされたが、現代では食べられているとは聞かない。
ヨ−ロッパからの帰化種であるアレチノギシギシやエゾノギシギシは荒地(あれち)に生息するギシギシ、エゾ(北海道)で最初に発見されたギシギシの意味で名付けられたが、現在では日本中の野原に生育する。 果実の翼が卵形で、縁に鋸葉のような突起が有るのがエゾノギシギシで、無いのがアレチノギシギシと区別が可能である。
ギシギシの名の由来は伸びた花穂(かすい)をしごいて取るとギシギシと音がするとか、鈴のように付いた果実を振るとギシギシと音がするとか、擬宝珠(ぎぼうし)から来たとする説等いろいろあるが、牧野富太郎博士によると名の由来ははっきりしないとの事である。

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