ハエドクソウ

七月に入る頃、深谷市の最高峰である標高僅か330mの鐘撞き堂山の麓を散策すると、林縁の日陰に長い穂先を付け、その先に小さな花を付けた植物があちこちで目に付く。
普段は全く目立たないが、この時期になると長い穂先を出して花を付けるのでその全体像で人目を引く。
ハエドクソウ(蝿毒草)と呼ばれ、かっては蝿取り紙の原料になった花で、ハエトリソウ(蝿取草)とも呼ばれる。
硝酸カリ等を含み、強い毒性があって、誤って口に入れると嘔吐、腹痛を起こすが、この根を煮詰めて蝿取り紙を作ったと言われ、又、便所の蛆虫を退治するのにも用いられた。
蝿(ハエ)の毒になることからハエドクソウの名が付いた花であるが、花の後、先の尖った実を付け、これが動物や人間に引っ付いて運ばれ生殖範囲を広げる、いわゆる、 「引っ付き虫」 の一つである。( 「引っ付き虫しいろいろ」 の項参照) 
クマツヅラ科の花で、これ一つでハエドクソウ属をつくり、いわゆる、一属一種をなす。


近年では蝿取紙もほとんど見られなくなり、単なる雑草として林縁の日陰でひっそり咲いている花であるが、この花を見ると、あちこちに蝿取紙がぶら下がっていた昭和の時代を思い出す。

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