フタリシズカとヒトリシズカ

フタリシズカ

「しずやしず しずのおだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」・・・・静御前

上記の歌は頼朝に捕らえられた静御前(しずかごぜん)が義経を慕って舞いながら歌ったとされるが、その静御前の名を取ったフタリシズカはその名前の由来に魅(ひ)かれる花である。
能の謡曲 「二人静」 の中で静御前の霊とその霊に憑かれた菜摘女(なつめ)が舞を舞う姿にこの花を見立てて、フタリシズカの名が付いたとされ、1700年代に書かれた 「和漢三才図絵」 にも記載されている。
同じセンリョウ科の花にヒトリシズカと呼ばれる花があり、やはり静御前の舞う姿から名付けられ、花茎が一本である事から、二本のこの花がフタリシズカと名付けられたと簡単に説明するむきもあるが、やはり静御前の亡霊とその霊に憑かれた女が 「しずやしず しずのおだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」 と舞う姿を想像するほうが面白い。
5月から6月の初夏の兆しが現れる頃、林下にその清楚な姿をあらわす。 古来から日本に生育している花で、万葉時代には 「つぎね」 と呼ばれ、万葉集に長歌が一首ある。

フタリシズカと呼ばれるように茎は二本が原則であるが、下の写真のように一本や三本のものもあり、多い場合は五本もあるようである。

フタリシズカの花と葉

一本の場合、ヒトリシズカと思ってしまうが、ヒトリシズカは下の写真の様に花の形がまったく異なり、開花時期も初春とフタリシズカより一月以上も早い。

ヒトリシズカの花と葉

フタリシズカの白い花のように見えるのは雄しべで、これが花とされており、一方、ヒトリシズカの場合は雄しべの付く花糸が花のように見える。
フタリシズカもヒトリシズカも義経を慕う静御前の姿に見立てられた清楚なセンリョウ科の花である。

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