エビスグサ

晩夏から秋にかけて、この地方では9月から10月に土手や田の畦に大きなマメ科の花が目に付くようになる。
名前をエビスグサと呼ぶが、 「ハブ茶」 の原料と言ったほうが通りがよく、筆者にとっては茶粥(ちゃがゆ)の材料として懐かしい花である。
筆者の故郷は瀬戸内海に浮かぶ大島で、幼児の頃を過ごし、小学校時代も夏休みは大島で過ごしたが、当時の朝食はハブ茶から作られた茶粥で、美味しく、大島での楽しみの一つでもあった。
現代では美味しく懐かしい茶粥であるが、江戸時代の農家にとって、茶粥は米の消費を減らす苦肉の策であった。
今でこそ大島はみかん栽培で有名であるが、江戸時代は山がちの平地の少ない土地で棚田を作って米を栽培しており、毛利藩が窮乏の時代は年貢も高く、農民は茶粥で米を膨らまし、芋を入れてしのいだと言われている。
美味しく食べる為の工夫がいろいろされたと思われるが、その習慣と伝統が昭和の時代まで美味しい茶粥として残った。

エビスグサの花

ハブ茶の材料となるエビスグサの豆果

エビスグサ(夷草)の名は異国から渡来した意味で名付けられた名前で、江戸時代に中国から伝わったとされ、花の後に豆ができるが、この豆はハブ茶の材料になると共に漢方の生薬名で決明子(けつめいし)と呼ばれ、便秘、消化不良、胃腸病、腎臓病、眼病等に効く万病の薬である。
現代では健康茶 「ハブ茶」 として流通しており、今でも栽培されている。
花や全体の形がエビスグサとそっくりで、葉の形が少し異なるハブソウもあり、同じくハブ茶として使われるのでややこしいが、ハブソウは沖縄等暖かい所で野生化し、この地方で野生化しているのはエビスグサである
又、エビスグサから取れる漢方薬 「決明子」(けつめいし) に効能が似て河原に多いのでカワラケツメイと呼ばれる同属の植物も見られるが、こちらも健康茶として使われ、「弘法茶」 と呼ばれる。( 「カワラケツメイは弘法茶」 の項参照)
長い習慣と伝統が残り、つい最近まで茶粥が作られてきたが、その風習も無くなりつつあるのは残念な事である。

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