8月4日の中国外交部定例記者会見で、プノンペンで設定されていた日中外相会談を中国が取り消すという異例な決定について理由を問われた華春瑩報道局長は、「日本がG7及びEUとグルになって('伙同')中国に対して道理のない非難を行う共同声明を発表し、黒白をひっくり返し、アメリカが中国の主権を侵犯した行動について提灯持ちしたことに対して、中国人民は極めて不満だ。したがって、中国はプノンペンでの外相会談をアレンジしないことにした。日本は台湾問題について歴史的罪責があり、四の五の言ういかなる資格もない」と述べました(同報道局長は、「G7が中国の主権問題で中国の核心的利益を尊重せず、ひいては傷つけるならば、G7と中国との関係及び重要問題での協力にも影響しないはずはない」とも述べました)。同日夜、中国外交部の鄧励次官はG7及びEUの大使を召喚して抗議するだけではなく、垂秀夫大使を別途召喚して、日本がこの共同声明に参加したことについて抗議し、「台湾問題は中日関係の政治的基礎及び両国間の基本的信義にかかわることだ」と釘を刺して、中日4基本政治文書の原則と台湾問題に関する政治的誓約を遵守することを「強烈に促す」と指摘しました。
 また5日の定例記者会見では、東アジア・サミット外相会議において林外相が発言する際、王毅外交部長がラブロフ外相とともに退席したことについての共同通信記者の質問に対しては、同報道局長は、「この機会に日本に注意を喚起しておきたい。あなたたちの指導者の最近の台湾問題に関する言動は極めて良くなく、中国人民の大きな不満を引き起こしている」と指摘し、「本日日本の岸田文雄首相がペロシと会見したとき、道理のない中国非難を行い、貴方たちの外相は一連の東アジア協力外相会議の期間中、米国務長官とともに中国に関する虚偽の情報をまき散らし、中国に対して道理のない非難を行った」と非難しました(中国外交部WSの発表文の中には岸田文雄個人名の言及はありませんが、環球時報が紹介した華春瑩発言には個人名が出ていました。環球時報の記事では、華春瑩が「貴方たちの指導者の台湾問題に関する最近の言動は極めて良くないというニュースを日本国内に伝えてくれることを希望する」とする異例の発言を行ったことも伝えています。これは、4日の夜中国外交部に召喚された垂秀夫大使が、中国側の抗議に対して反論したことを踏まえたものだと理解されます。中国外交部が垂秀夫大使に対して強い不満を持っていることを示唆しています)。また、5日の定例記者会見で華春瑩は、アメリカ以下の国々はほんの一握りであり、160ヵ国以上が一つの中国原則を支持する立場を明らかにしていることを強調して、「今日の中国は120年以上前の中国ではもはやない」と述べました。
 8月6日付け(ウェブ掲載は5日23時21分)の環球時報社説「勝手に自ら招いた日本の「不安全感」」(中国語原題:"日本的"不安全感"纯粹是自找的")は、以上の経緯を踏まえて書かれたものであり、(極めて内外に問題が多い韓国の尹錫悦政権との対比においてすら)対米追随が極まっている岸田政権に対する中国の怒り心頭ぶりが窺える内容です。

 メディアは、ペロシが韓国の公の場では一度も「台湾」に言及しなかったことに注目した。報道によれば、彼女が韓国議会議長と会見したときも、尹錫悦大統領と電話で会話したときも、双方が彼女の訪台を話題にしなかったという。ところが、日本に来るやいなや、ペロシは顔つきを一変させ、大げさになった。彼女は記者会見の席上、今回のアジア旅行は地域の現状を変えるためではないけれども、アメリカは中国大陸が「台湾を孤立させる」ことを「絶対に許さない」と主張した。
 このようなギャップが生まれた大きな理由は、ペロシが日本で聴衆あるいは「知己」に出会ったと考えたからだろう。確かにその通りだ。しかし、ボトムラインもわきまえないワシントンの政治的疫病神の「知己」になるということは、日本にとっては恥辱であり災いでしかないといわなければならない。日本がペロシに対して表した親近感は入念にして突出していたが、それよりも重要なことは、台湾問題に関して是非をわきまえず、責任を負わない日本政府の本質が際立っていることである。岸田文雄首相は5日、ペロシとの朝食会後にメディア向けに発言し、こともあろうに矛先を中国に向け、中国のミサイル発射は「深刻な問題」であり、「日本の国家的安全と人々の安全を脅かす」と述べた。さらに彼は、日米は「台湾海峡の平和と安定を共同で擁護する」と述べた。これほど皮肉な話はない。
 日本が台湾海峡から近くにあり、そのために台湾海峡の平和と安定に関心があるというのはもっともなことのように響く。しかし、そうであるならば、日本はもっと本気になってペロシ訪台に反対し、それを阻止するべきではなかったのか。ところが、ペロシ訪台のニュースで嵐が来ようとしていたとき、日本政府は「コメントする立場にない」と言った。そして、ペロシが台湾海峡の平和と安定をぶち壊した後には、日本はその張本人と一緒になって被害者・中国を非難する。これは一体どういう理屈なのか。まさか中国向けに特別にあつらえた理屈というわけではあるまい。
 台湾問題に関しては、日本は四の五の言う資格がもっともない。日本は台湾問題では、長期にわたって台湾を植民地統治したのみならず、今日に至るも徹底的に反省していないという深刻な歴史的罪責がある。すなわち、カイロ宣言、ポツダム宣言第8条及び国連総会第2758号決議に違反しているという「道理のなさ」('无理')、中日共同声明等の中日間の4つの政治文書で中国に対して行った厳粛な政治的誓約を顧みないという「情義のなさ」('无义')、外交の自主性を放棄し、ワシントンの戦略に盲従するという「見識のなさ」('无智')、反躬自省して歴史の教訓をくみ取ることをせず、地域諸国の平和安定に対する期待を顧みないという「品質のなさ」('无德')ということだ。
 それだけではない。日本はチャンスに乗じて焚きつけ、火事場泥棒しようとする。例えば、日本は解放軍の4日の軍事演習中に5発のミサイルが日本のいわゆる「排他的経済水域」に落下したと主張する。しかし、中国側が何度も厳正に声明したように、関連海域では中日間で境界線についての合意はなく、したがって、いわゆる「日本の排他的経済水域」なるもの・主張はもともと存在しない。仮に一万歩譲歩するとして、他国の排他的経済水域で軍事演習を行うということは正に米日が主張する「海洋の自由」及び「ルールに基づく国際秩序」ということではないのか。
 日本のこの振る舞いは極めて恣意的であり、「排他的経済水域」を持ち出して中国にかまをかけ、中国が誤って「承認」するように仕掛けているのだ。さらにまた、中国の正当にして必要な軍事演習を政治的に操作して「中国の脅威」を喧伝し、軍拡及び改憲の道につなげようとしている。有り体に言えば、今の日本はあらゆる「チャンス」を捉えて平和憲法の束縛を突破し、日本の「軍事大国化」を推進しようとしている。しかし、中国の核心的利益まで利用しようとするならば、強固な壁に必ずぶち当たることになる。
 中国が日本に対して発出しているシグナルは極めて明確であり、行う反応は極めて断固としたものである。中国は次のことを日本に強烈に促す。中日間の4政治文書の原則と台湾問題に関して行った政治的誓約を厳守し、中国の内政に干渉することをやめ、台湾にかかわる問題を慎重かつ適切に処理し、間違った道をこれ以上歩むことをやめること。日本がアメリカにくっついて中国の核心的利益を挑発するのであれば、中国によるより直接的、より強力な反撃に遭う確率は高くなる。やや耳障りなことを一言。日本を制裁することはアメリカを制裁することよりは若干簡単だ。このことについて日本はいささかの僥倖心も持たないことだ。
 今回の解放軍の台湾島周辺における軍事演習に関して、この演習の今ひとつの目標は日本ではないかとする世論が日本の一部にある。ここまで来ると、「馬脚を現した」という感じを受ける。日本が一つの中国原則を本当に堅持しているならば、解放軍が米台結託を威嚇する行動に対して、アジア諸国の中で、なぜ日本だけが「安全を脅かされている」と感じることになるのだろうか。「台湾有事は日本有事」と言い張って中国統一に干渉しようとする結果としてこの種の不安感に駆られるとするのであれば、その不安感は自分で勝手に作り出したものであり、中国の内政に干渉しようとする結果として必然的に支払う必要があるコストというべきだろう。