3月9日のコラムで、ノルドストリーム事件に関する米独メディアの報道ぶりを紹介しました。3月3日の米独首脳会談を受けた米独メディアの「時宜を得た」(?) 報道は、少しでも常識が働くものであれば誰しもが首をかしげる類いのものです。ましてや、「5人の男性と1人の女性から成るグループ(船長、2人の潜水員、2人の潜水補助員、1人の医師)」が犯行を行った可能性を匂わす内容(ドイツの検察筋)に関しては、高度の専門性を要する今回の爆破事件の性格との比較において、「眉唾もの」である… 

日中平和友好条約(以下「条約」)締結45周年に当たる今年、政治、経済、安全保障等各分野で日中の立場の違いが鮮明になる中で、習近平新体制下の中国の日中関係に関する所信を問われた秦剛外交部長は「言而有信、以史為鍳、維護秩序、互利共嬴」の4つのポイントを指摘した(3月7日)。「以史為鍳」(歴史を以て鑑となす)と「互利共嬴」(ウィン・ウィン)は、日中関係が立脚するべき原則として、中国が以前から用いてきたキー・ワードだが、秦剛は日中関係の厳しい現実を踏まえて… 

韓国の尹錫悦大統領の訪日は、「日本の朝鮮植民地支配の正当性」に固執する日本政府のいわゆる「徴用工問題」に関する無理無体に対して尹錫悦政権が全面的に屈服することではじめて実現したものであり、そのような日韓関係は「砂上の楼閣」という形容しか当てはまりません。なお、「徴用工問題」に関しては昨年(2022年)8月1日のコラムで私なりの理解を記しましたんで適宜参照願います。尹錫悦政権は3月6日に「解決策」なるものを発表しました。同日付の韓国・聯合通信は… 

 3月7日、ニューヨーク・タイムズ紙はアメリカ政府筋の情報として、ノルドストリーム爆破事件が「親ウクライナ勢力」によって起こされた可能性があると報道しました。同じ日、ドイツの国営放送ARD・SWRとツァイト紙は、爆破に使われたヨットとして、ドイツの調査当局が2人のウクライナ人が所有し、ポーランドの会社に所属するヨットを特定したと報道しました。

 ウクライナ問題と台湾問題は、国際法的には異質の問題であって同日に論じる余地はない。その点をまず明確にする。
他方、この二つの問題は国際政治的には同質の問題として論じられる状況がある。すなわち、バイデン政権はロシアを「直接の脅威」、中国を「最大の脅威」と規定する。そして、ウクライナに侵攻したロシア、(台湾の一方的独立宣言及び米日等外部勢力による武力介入の可能性に対する最終手段として)台湾を武力解放する選択肢を残す中国を、「力による現状の一方的変更」を目指す動きと断定する。
二つの問題の国際政治的意味合いを検討するのが… 

  ロシアによるウクライナ侵攻を含むウクライナ問題に関する中国の立場を理解・認識する上では、以下の諸点を踏まえることが不可欠である。
 第一、ソ連崩壊後のロシアとアメリカ以下の西側諸国との関係の歴史的推移に関する中国の受け止め方。日本を含む西側諸国の見方においては、この歴史的経緯に関する視点が完全に抜け落ちており、このことがロシアに対する一方的批判につながる重要な原因の一つとなっている。しかし、ロシアのウクライナ侵攻の是非を判断するに際して、中国政府及び中国専門家はこの歴史的経緯を極めて重視している。ウクライナ問題に関する中国の立場を正確に認識する上では…

2022年9月26日にノルドストリーム・パイプラインが爆破されてからすでに5ヶ月以上が過ぎました。アメリカ・コロンビア大学のジェフェリー・ザックス教授は2月21日に行った国連安保理に対するブリーフィング発言で、①70-90メーターの深い海底に、内径15メーター、4.5センチの分厚い鋼板のパイプ、しかも10.9センチのさらに分厚いセメントで覆われた頑丈な作りのパイプラインがデンマークとスエーデンの排他的経済水域の海底に横たわっているのを秘密裏に爆破するのは国家レベルの関与なくしては不可能であり、技術的能力とバルト海へのアクセスの二つを備えた国家のみがなし得ること、以上の条件を満たす国家は…

過去1年の経緯を振り返るとき、当時から今日まで一貫して、西側・日本では「ロシア=悪、ウクライナ=善」とする決めつけが支配し、政治的外交的解決の模索はないまま、戦争被害だけが膨らみ続けている。そして、国際情勢は間違いなく深刻化し、悪化し続けている。
1月25日、「人類最後の日」までの残り時間を示す「終末時計」は過去最短の「90秒」と発表した。米・NATO対ロシアの正面対決となれば、ロシアの核兵器使用という最悪の事態を招くという警告だ。しかし、その同じ日にドイツとアメリカはウクライナに戦車を提供する決定を発表した。国際経済も…

ノルドストリーム・パイプライン破壊に関する2月8日のセイモア・ハーシュのブログ(the Sudstack platform)発言に対する西側主要メディアの対応は総じて異様です。私は日本のマスコミにはとうの昔から愛想を尽かしていますが、ハーシュのスクープに対する米英主要メディアの対応を知って、「ブルータスよ、おまえもか」という絶望感を今更ながら味わいました。ハーシュ自身が2月11日、Radio War Nerdとのインタビューの中で、主要メディアがモスクワとキエフの紛争に関して多くのことを報道していないと指摘し、「私が知っているこの戦争はあなたたちが読んでいる戦争とは違う」、…

2022年9月26日に爆破されたノルドストリーム(ロシア産天然ガス輸送海底敷設パイプライン)について、ヴェトナム戦争当時にアメリカ軍が行ったミライ村虐殺事件(1968年3月。ソンミ虐殺とも)を摘発(1969年12月に雑誌『ニュー・ヨーカー』で)してピューリッツァ賞を受賞(2004年にはその前年のイラクのアブ・グレイブ捕虜収容所スキャンダルをスクープ)した経歴を持つセイモア・ハーシュ記者(現在85才)が2月8日、独自の取材に基づく「アメリカはどのようにノルドストリーム・パイプラインをぶっ壊したのか」(原題:"How America Took Out The Nord Stream Pipeline")と題する文章をブログに掲載… 

近刊(三一書房)のご案内

新年のご挨拶(コラム)の中で触れましたが、年明けからほぼ4ヶ月余をかけて取り組んできた原稿がある程度形をなし、出版の目途が立ってきましたので、ご案内を始めることにしました。

新著のタイトル(まだ確定ではありません)は、『日本政治の病理診断 -丸山眞男:執拗低音と開国-』です。出版社は三一書房、刊行予定日は8月15日です。「私の考えを本にまとめてみないかというお誘い」(1月1日コラム)に即し、今のところ、以下の章立てとなっています(編集過程で変更があるかもしれません)。

一 個人的体験
(一)「執拗低音」との出会い
(二)外務省勤務時代の体験
(三)大学教員時代の体験
(四)外務省の「親米」体質
(五)歴史教科書検定と中曽根靖国公式参拝
二 執拗低音
(一)丸山眞男の問題意識
(二)石田雄の批判
三 開国
(一)丸山眞男の日本政治思想史の骨格
(二)「開国」の諸相
四 「普遍」と「個」
(一)「普遍」
(二)「個(尊厳)」
五 日本の「開国」への道のり
(一)精神的「開国」
(二)物理的「開国」
(三)強制的「開国」
六 21世紀国際社会と日本
(一)21世紀国際社会について正確な認識を持つ
(二)国際観を正す
(三)「脅威」認識を正す
(四)国家観を正す
(五)国際機関に関する見方を正す