4月30日付けの新華社上海電によると、上海市当局は前日(29日)、新たに増えたオミクロン株感染者及び発症者全員が隔離コントロール下の対象であったと発表するとともに、入院者数よりも退院者数が上回り、封鎖地域が逐次縮小に向かっているなど、上海市のコロナ状況が全体として安定し、いい方向に向かっていると発表しました。「動態ゼロ」に向かって一歩前進した安堵感がうかがえます。ただし、これまでに57万人以上が感染し、300人以上が死亡したことも指摘して、防疫コントロール措置はさらに強化する必要があり、気を緩めることはいささかも許されないとも付け加えました。ちなみに、29日の新規発症者1249人中、284人は隔離コントロール下で見つけ出され、985人は無症状感染者が発症したものであり、8932人の無症状感染者はすべて隔離コントロールの下にある人々だったそうです。
 日本国内の報道は、封鎖疲れの上海市民の不満が嵩じていることを指摘することに偏っている感じを受けますが、中国国内でも、コロナ押さえ込みが重要であると同時に、人々の正常な生活が確保され、特に生活必需品の供給及び通院者に支障が出ないことを強調する論調も多くなっています。例えば、国営新華社の5月2日付け論評は、市民に対する物資供給の任務で問題を起こした多くの幹部が問責されたことを伝えるとともに、次のように指摘しています。

 コロナ防疫コントロールは硝煙のない戦争である。特に、封鎖期間においては市場メカニズムが一時的に失われる状況の下、政府機関は確実に責任を担い、統一的な計画能力、組織能力、調達能力を強化し、平時よりも力と工夫を凝らし、秩序だった物資供給等の任務をこなさなければならない。  管理強化一辺倒がトラックの通行等を困難にしている問題に関して、国務院聯防聯控センターは通行を円滑にするよう通知を出した。また4月18日には国務院物流保障工作機構の成立を決定し、十分な対策を取ることとした。
 現在、70万人以上の党員がボランティアを志願し、そのうちの31万人以上が現場の様々な任務に就いている。防疫第一線及び基層コミュニティは巨大な圧力に直面し、大変な仕事を担っている。さらに広範な党員幹部を動員して第一線に赴かしめ、人々の中に入ってその苦しみと困難を助け、特に全力で物資保障工作に当たらせるべきである。
 こうした報道の中で、5月1日付の新華社発行の雑誌『瞭望』の記事「コロナ防疫コントロールにも大衆路線を」(中国語原題:"做好疫情防控要走好群众路线")は、昔から中国共産党の持ち味の一つである「大衆路線」(中国語:'群众路线')に関心がある私には格別興味が引かれるものでした。「いよいよ出たな」という実感です。しかも、「ネット大衆路線」(中国語:'网络群众路线')という表現まで出てきているのでますます興味津々となった次第です。この文章は「大衆路線」のなんたるかをも説明していますので、皆さんにも紹介しようと思い立った次第です。
 現在各地でオミクロン株の流行による、深刻で複雑な防疫コントロールという大きな険しい戦いとなっている。いかにして困難を克服して勝利を制するか。カギは大衆路線を歩むことを堅持することにある。
 大衆路線は中国共産党の生命線かつ根本的な工作路線である。それは、党が永遠に青春の活力と戦闘力を保つ家宝である。大衆路線堅持の核心は人民大衆との緊密な連携を保つことであり、いかなる時いかなる状況の下でも人民大衆と呼吸、命運をともにする立場を変えてはならず、全身全霊で人民に服務する宗旨を忘れてはならず、大衆こそが真の英雄であるという史的唯物論の観点を失ってはならない。すべては大衆のため、すべてを大衆に依拠することを堅持して、党の主張を大衆の自覚的行動に変え、大衆路線をコロナ防疫コントロール及び経済社会発展の全プロセスの中で貫徹しなければならない。
 コロナ防疫コントロールの中で大衆路線を歩むということは、一人一人の小さな声にも耳を傾けるということである。封鎖コントロールの下では、平時においては小さな困難で済むことが大問題になる可能性が極めて大きい。社会は一つの有機体であり、一カ所で起こったことが全身に伝わることもある。起こりうる問題を先取りし、末梢神経の痛みを瞬時に感じ取って報告し、処理する。特殊なときにはなおのこと、心で相手の心を読み取り、心で相手の心を温め、人々の訴えに打てば響くように応える。
 コロナ防疫コントロールの中で大衆路線を歩む上では、大衆の自治の力を十分に発動しなければならない。基層コミュニティは都市防疫コントロールの基礎単位である。防疫コントロールという条件の下では、4~5千人の住民居住区の煩雑な仕事を数人で担当するのは無理である。大衆に依拠しつつ、党員のパイオニア的役割を適時に発揮させ、様々なボランティアを組織し、どんな問題でも常に誰かが対応可能な状況を作るということが各地に共通した経験であり、大いに広めるべきである。
 ネット時代に防疫コントロールを行う上では、ネット大衆路線が特に必要となる。この分野では多くの成功実践例がある。例えば、ネット・ユーザーの告発に基づいて物価をつり上げるものを処罰したとか、ネット・ユーザーの提案に基づいて公共交通の緊急運搬対応力を調整したとか、ネット・ユーザーの意向に従ってネット募金を行ったとか、大衆を豊かにする「クラウド生活」の場を提供するとか、等々。これらすべてはネット大衆路線ならではの知恵であり、ネットならではの有力な「武器」である。
 ネット時代においては、特にネット・ユーザーの「つっこみ」(中国語:'槽点')に注意する必要がある。とりわけ、意見が集中する「つっこみ」は対策上の重点とし、問題解決に力を入れるようにし、ネット・ユーザーがいくら「つっこみ」を入れても解決しないというようなことがないようにし、ましてや、「つっこみ」が赤信号にまでなってしまうようなことがあってはならない。
 ネット大衆路線を歩む上では、民意のチャンネルの風通しをよくすることに留意する必要がある。言論の場を闊達にし、ネット・ユーザーが問題を反映する上で理性的に行動するようにし、フィード・バックされた問題を迅速に解決するようにし、ネット・ユーザーの「つっこみ」をコロナ防疫コントロール上のパワー・ポイントに変えることによって、政府機関の工作に対する「いいね」に変わるように注意する。
 コロナ防疫コントロールと経済社会発展工作を統一的に計画する上では、コロナ対策に全力で取り組むとともに、コロナによる経済社会発展に対する影響が最小限にする必要がある。人民大衆にしっかりと依拠し、人民大衆の知恵と力を十分に発揮し、社会成員すべての積極性と参加度を動員することによってのみ、防疫コントロールと経済社会発展両面での勝利を勝ち取ることができる。