4月17日付けの朝日新聞朝刊の記事「中国「ゼロコロナ」、死守 不満高まるも政策堅持」を読んで、西側メディアの「ウクライナ」報道で完全に洗脳されている日本メディアが、「中国」報道においても同じく完全に西側メディア報道によって洗脳された状態にあることを改めて確認し、日本のメディアには「もはやつける薬もない」ことを痛感しました。要するに、"西側諸国+日本を含むほとんどの国が「ウィズ・コロナ」なのに、長期政権を目指す習近平が「ゼロ・コロナ」にコミットしているために、中国は政治的に変更できないでいる"とする決めつけです。参考のため、まず朝日新聞報道(要旨)を紹介します。

中国「ゼロコロナ」、死守 不満高まるも政策堅持
2022年4月17日 朝日新聞朝刊
 新型コロナウイルスの抑え込みを徹底して図る中国の「ゼロコロナ」政策が、感染力の強いオミクロン株の出現で苦境に陥っている。都市封鎖(ロックダウン)や厳しい行動制限が各地で続き、政策への不満は高まる。それでも、「体制の優位性」によってコロナを封じ込めてきたと主張する共産党指導部は、今秋の党大会を控えて政策を堅持する構えだ。(中略)
 あまりに厳格なゼロコロナ政策に対し、緩和を求める声は日に日に強まる。だが、習近平国家主席が政策を変える様子は見えない。
 習氏は13日、視察先の海南省で「ゼロコロナを堅持し、油断や厭戦気分を克服していく必要がある」と発破をかけた。
 習指導部が政策変更に踏み切らないのは、「他国より封じ込めに成功している」(衛生当局関係者)ことが大きな理由だが、それだけではない。
 習氏は3月17日、最高指導部メンバーである政治局常務委員を集めた会議で「わが国の感染対策は世界をリードする地位を保ち、中国共産党の指導と社会主義制度の顕著な優位性を十分に示している」と語った。ゼロコロナ政策を政治制度の正統性アピールに利用してきた手前、否定や変更は難しい状況だ。
 習氏にとっての最重要課題は今秋の党大会だ。3期目の続投のためにもこれ以上の感染拡大は許されない。党関係者は「すでに政治的に敏感な時期に入っている。コロナ対策は、強化はあっても緩めることはない」と言い切る。
 その姿勢は、今後のリスクともなりうる。中国の感染症の歴史に詳しい青山学院大の飯島渉教授は「今後もゼロコロナ政策と相性の悪いウイルス変異が起こる可能性が高いので、対応はますます難しくなるだろう。政策を変える自由度を自ら封じてしまっているだけに、これから襲来するかもしれない感染の波に対応しにくい社会になってしまっている」と話す。
 しかし、中国の対コロナ政策、特に「動態ゼロ」戦略は、人命(特にコロナに弱い高齢者及び基礎疾患を有するもの)尊重を根底・出発点に置いています。「人民を中心とする」('以人民為中心')ことを政治の根幹に据える中国ならではの政策であり、戦略なのです。もっとも、「デモクラシー」も「民が主」が本義ですから、例えばアメリカで約100万人、日本で29057人(18日20時現在)という途方もない数の人がコロナで亡くなったことの重みをもっと深刻に考えるべきだし、この数字を前にして「ウィズ・コロナ」を当たり前の前提とする議論・主張を行うのは「言語道断、沙汰の限り」と私は思います。上記の朝日新聞報道は、コロナ問題の根幹は奈辺にあるかを忘れてしまった西側メディアの人権感覚の怪しさを体現する以外の何ものでもありません。
 4月11日付けの中国青年報は、国家衛生健康委員会の新型コロナ対応工作領導小組組長で、清華大学教授の梁万年が前日(10日)、メディアの取材に応じて行った発言を一問一答形式で詳しく紹介しました(ほかのメディアも紹介していますが、これほど詳しく紹介したのは中国青年報のみ)。「動態ゼロ」戦略に対する疑問の声にも正面から誠実に答える内容で、中国のコロナ対策の内容を理解することができます。中国のコロナ対策がいわゆる「政治主導」ではなく、科学的判断に基づいて行われている(ちなみに、アメリカではトランプ政権の時にファウチ博士等の科学的知見を軽視して今日に至る大惨事を引き起こしました)ことを確認することができます。中国のコロナ対策を詳しく理解する上で好個の材料だと思いますので、内容を紹介します。
(問) 上海の対策上の難しさはどこにあるのか。今はどの段階に至っているか。
(答) 第一に、今回の上海のケースはオミクロンBA.2によるもので、感染速度が従来のデルタ株などに比べて極めて速い。また、隠匿性が特に強く、無症状感染者、軽症者が占める比率が極めて高くて対策が非常に難しい。
 第二に、最初の頃は感染ルートが比較的はっきりしていたが、次第に市中感染が起こってしまった。今日では上海市16区すべてに患者がおり、ほとんどの地域で病例が生まれ、感染の広がりも大きく、広範囲の市中感染が起こってしまっている。デルタ株に対応していたやり方ではだめで、もっと果断で断固とした措置を執らなければならない。
 第三に、上海は国際都市であり、いかなる対策、措置を執るにしても、要求されるレベルが極めて高くなる。
 また、上海は国際及び国内の交通が頻繁で、市内拡散防止と同時に、外への広がりを防止し、しかも国外からの持ち込みをも防止しなければならない、という三方からの圧力にも直面している。この点は、他の都市とは違う上海の特徴である。
 具体的対策に関しては、システム的な考え方と方法によって対応することが必要で、個人、基層レベルから区、市に至るまでの効果的なシステム的対応が必要だ。皆さんが考えを一つにし、確信を持って当たることが求められる。
 さらにまた、生命及び健康に対する危害に対抗することに加え、都市としての機能を維持し、人々にとって不可欠な生産と生活を保障するにはどうすればよいか、ということも極めて難しい課題だ。
 どうやってもっとスピーディに、もっと精確に、もっと効果的に、もっとよく、コロナ対策と社会経済の発展と人々の正常な生活という三者間のバランスを図るか、これが上海という巨大都市が直面している重要命題である。
(問) 「動態ゼロ」に対しては様々な意見が出ているが、正しい理解とは?
(答) 「動態ゼロ」はコロナ対策における総方針であるとともに、2020年の武漢以来、数十回起こっている国内各地のコロナ対策の中で形成されてきた戦略的対策である。多くのケースで証明されてきたように、「動態ゼロ」戦略は中国の実情に合った、またベストの選択だ。
 「動態ゼロ」の核心は、患者が発生しまたは感染が起こった場合に、速やかに発見し、速やかに囲い込んで感染ルートを断ち切り、最終的に一つ一つを潰すことによって継続的な市中感染が起こらないようにすることである。ただし、「動態ゼロ」とは「完全ゼロ」を意味するものではない。今の我々では完全ゼロをやり遂げる方法はない。
(問) 「動態ゼロ」を実現するためにするべきこととは?
(答) 「動態ゼロ」の精髄はスピーディさと精確さである。「スピーディ」であるということは、異なる変異株に対して、それよりもっと速く走るということだ。実際、今の上海でやっていることはオミクロンBA.2との時間的な競走であり、「速さで速さを抑える」必要がある。それをやり遂げるには、スピーディに発見し、スピーディに処置することになる。「精確さ」ということは、"適時に抑え込むことを保証する点で有効である"という意味合いにおいて精確でなければならないということだ。感染者を如何に精確に割り出すか。今はPCR検査と抗原検査を合わせることで感染者をより精確に割り出している。
 感染者を見つけた後は、濃厚接触者さらには濃厚接触者の濃厚接触者をいかに早く割り出すか。すでに感染してしまった可能性があるこれらの人を保護し、さらなる隠れ感染を防止する。このことは、如何にしてより精確に疫学調査を行って感染の可能性がある人の感染ルートを見つけ出すかということに関わってくる。
 また、精確な臨床治療を行い、「一人一人に適した対策」(中国語:'一人一策')で病状の進行、悪化を防止する。
 最後にそしてもっとも精確さが求められることは、感染コントロールと正常な生産生活ひいては社会経済発展との間の精確なバランスを期することだ。
 これらの一連の精確さをやり遂げるためには科学性が求められるし、防疫コントロールを細心の注意を払ってやり遂げる必要がある。
(問) 上海は短時間で「動態ゼロ」を実現できるだろうか。
(答) 中国がこの数年で作り上げてきた「動態ゼロ」の方針は、具体的なプロセスの中ですでに成熟してきている。というのは、この方面の仕事のためのまとまった道具箱を今や持っているからだ。
 「動態ゼロ」は上海でも防疫コントロールの総方針であり、絶対に貫徹しなければならない。「動態ゼロ」戦略は上海防疫コントロール上のベストな選択、ベストな方針である。
 確かに、上海の状況は深刻、複雑だ。しかし、感染源のコントロール、感染ルートの切断そして感染しやすい人のグループを保護するという三分野で有効な措置を執ることができれば、「動態ゼロ」の実現は可能である。確固とした確信を持つべきである。
 我々には基礎がある。伝染病をコントロールする主要な手段は発見、管理及び治療であり、上海にはその能力がある。上海には豊富な医療資源があるし、全国からの応援もあり、感染者あるいは感染の可能性がある人を効果的に収容、隔離し、管理を強化すれば、さらなる拡散は防げるし、感染ルートを断ち切ることもできる。このウィルスは主に呼吸系統で感染するので、接触さえしなければ感染が続くことはない。もう一つ、感染しやすいグループの接触は減りつつあるし、ワクチン接種も強化している。
 感染源のコントロール、感染ルートの切断、感染しやすいグループの保護、この3分野の仕事をきっちりやれば、いかなる伝染病に対しても勝利することができる。上海が今取っている一連の総合措置は正にこの3分野におけるものであり、しかも、技術も能力もある。
 上海市の人々の理解度は高く、我々を支持してくれている。私は来てみて非常に感動した。封鎖、管理コントロール、PCR検査、どれに対しても人々は積極的に応じてくれる。この文化があり、この上海市民の素質があれば、勝てない困難はあり得ない。
(問) オミクロン株の危険性については?
(答) 国際国内の流行した地域について見るとき、その危険度はインフルエンザより大きい。特に高齢者の病死率はインフルエンザの数十倍であり、80歳以上を取ってみれば100倍以上である。
 中国は人口が多く、上海は2500万人。時間の経過とともに高齢者の感染は避けがたく、手抜きでもすれば、高齢者その他の弱者の健康被害は大きくなるから、大いに警戒しなければならない。
 ウィルスの危険度を測るには、一般的に感染力がどれほど大きいかを考える。つまり、一つの地域あるいは一つの都市でどれだけの人数が感染したか、これがウィルスの危険度を測る上での一つの特徴である。
 疾病の深刻さに関しては、個体とグループとに分けて考える。個体に関しては、感染後の重症ひいては死亡の比率がどれほど大きいか。グループに関しては、ある地域で感染したグループの中で、どれほどの人数が重症・死亡になったか。公共衛生の角度から見るときは、個体についても考える必要はあるが、疾病の危険度を測る上ではグループに着目することがもっとも重要だ。
 オミクロン株に関してはもう一つ重要な特徴がある。それは新型ウィルスの特徴でもあるのだが、常に変異するということ、しかも変異の方向性が見えないということだ。これほど大規模な範囲の流行、感染となると、変異が起こり、しかも悪い方向での変異となると、健康に対する危険度はさらに大きくなる。
(問) オミクロンは「大型インフルエンザ」なのか?
(答) インフルエンザとは明らかに違う。感染速度がインフルエンザより速いし、隠れ感染度もより大きく、そのために大規模感染を引き起こしやすい。
 オミクロンは誰でも感染しやすいが、特に基礎疾患がある人と高齢者だ。上海の高齢者人口の比重は高く、基礎疾患がある人の数も多い。オミクロンによる個体としての重症化率と死亡率は低いが、絶対数としては膨大になる。
 総合的に考えて、オミクロンを「大型インフルエンザ」と見ることはできない。科学的証拠の裏付けがない考え方は捨てるべきだ。信じてほしいのは、我々が取っている対策は科学的であり、疾病に対する認識に基づく政策であって、確たる証拠、根拠に基づいているということだ。
(問) 西側諸国のように諦めて開き直る(中国語:'躺平')わけにはいかないのか?
(答) グローバルに見ると、新型コロナ対策に関しては早くから現在に至るまで一貫して論争がある。専門的角度からいうと、対策は二つ。一つは包囲して閉じ込める(中国語:'围堵')、もう一つは利益と弊害との間のバランスを取る(中国語:'缓疫')、そのいずれを取るかということだ。
 前者は、発見したら囲い込み、断ち切る。後者は、一歩下がって医療衛生資源が逼迫しないかどうかを目安にして対策を決定する。この二つの違いは、よって立つ理念の違いから生まれる。
 中国は最初から一貫して「外からの持ち込みを防ぎ、内からの再発を防ぐ」(中国語:'外防输入、内防反弹')方針で、ウィルス感染を抑え込む政策をとってきた。その基にある理念は、習近平のいう「人民至上、生命至上」であり、我々にとってもっとも重要な理念だ。
 グローバルに見るとき、こうした理念をとらない国もある。つまり、異なる理念に基づいて異なる政策がとられるということだ。オミクロンに関しても二つの方向がある。一つは利益と弊害との間のバランスを取って感染を放任する、もう一つは中国の「動態ゼロ」だ。皆さんが見ての通り、放任した結果、影響が生まれている国、地域がある。しかし、中国は「動態ゼロ」を堅持し、「人民至上、生命至上」の理念を堅持する。しかも我々は大いに自信を持って「動態ゼロ」にする能力も、対策も、基礎もあると考えている。「動態ゼロ」でいけば、最小のコストで最大の効果を獲得できる。
(問) 西側諸国が「動態ゼロ」を行わないのはなぜか?
(答) 中国本土は総体としてクリーンである。「動態ゼロ」を行わない国々はクリーンではなく、「動態ゼロ」のチャンスがもはや失われているということだ。中国には時間的なウィンドウとチャンスが今もあり、上海もそうである。
 もっと重要なことは、中国には圧倒的な制度的優位性と人々の文化的見方が備わっているということであり、しかもそれらは中国特有のもので、我々は極めて巧みに組み合わせることで「動態ゼロ」戦略を実行しているということだ。
 特に強調したいことがある。「動態ゼロ」に関して、人々は経済発展、正常な生産生活に影響があるのは大きな問題だと考えている。しかし、そういうふうに両者に因果関係があると見なすのは科学的ではない。現に、各国が取っている一連の措置も、すべてコロナの危険性を軽減するためであり、そのことは認めなければならない。つまり、どの国家、地域も、コロナが危険を増やすことは望んでいないのだ。
 しかし、いかなる対策によってその危険性を軽減するか。それは各国の選択である。つまり、理念、政治、文化、制度を総合的に考慮した上での選択ということだ。中国が選択したのは「動態ゼロ」であり、すべての可能性を尽くして人々の身体の健康と生命の安全に及ぶ影響を軽減すると同時に、やはりすべての可能性を尽くして防疫コントロールと正常な生産生活との関係において精確にバランスを取るということだ。両者の関係において精確にバランスを取るということも一種の選択である。短期間の間封鎖するのは、より長い正常な生産生活を取り戻すためである。つまり、上海で厳しい管理コントロールを行うのは、全国というより大きな範囲の、また、上海ではより長期的な、正常な生産生活を取り戻すためなのだ。したがって、この種のバランスを計る際には、より大きな視野、よりシステム的な方法、より高みに立つ眼力で、長期的に得失を考える必要がある。この点は非常に重要であり、単純なゼロか開き直りかの二者択一ではない。
(問) 無症状感染者がかくも多いことについての見方は如何?
(答) オミクロン変異株とはかなりの時間闘ってきたが、率直な感想を言えば、来たのが早すぎるということだ。これまでの闘い方では追い越すことができず、我々にはもっと速さが求められている。もう一つは、感染力が強すぎるということだ。放っておいたとすれば、1人の患者から9.5人が感染する。これは国際的に公認された数字だ。
 だから、我々が今やっているのは、あらゆる手段を講じて1以下に引き下げるということだ。1人からの感染が1人以下になればターニング・ポイントが来たということであり、感染の広がりを食い止められる。
 もう一つの問題は、今のウィルスが感染する世代間隔(中国語:'代际间隔'浅井注:「伝染病の感染力に関する重要指標」とのことですが、素人の私は初めて接する用語です。) が極めて短いことである。過去一週間では世代間隔が3日前後で、世代ごとにパラメータが増大している。このことからも、防疫コントロールの難しさのほどが理解できるはずだ。
 感染した人にすぐ症状が現れるとは限らない。例えば、5人が感染したとする。理論上5人に症状が現れるのが3日だとすれば、症状が現れるものは検査で分かるが、隠れ感染で症状がない人は自ら進んで検査することはない。この3日の間に接触する人は感染するだろう。隠れ感染の人に症状が現れたときには、その人はすでにほかの人に感染させてしまっている可能性が十分あるし、すでに2代、3代と感染しているかもしれない。この点が防疫コントロールでもっとも難しいところだ。世代間隔が長ければ、発見したときに囲い込んで管理し、抑えることができるし、少し遅くなったとしても、1代、2代に関わる問題とはなってはいない可能性もある。上海の人々は、なぜこんなにPCR検査を繰り返さなければいけないのかと、理解してくれていない可能性があるが、以上の理由で、「きれいさっぱり」を心がける必要があるということだ。少しでも漏れがあると、急速な指数増大が加わるから、感染も急速に広がることになる。(浅井:このパラの訳は、私が「世代間隔」の意味がよく分かっていないため誤訳している可能性があります。お気づきの方が指摘してくださるとうれしいです。)
(問) どのような条件が満たされれば、静態管理(注)を終了できるのか?
(答) 現在の上海ではすでに市中感染が起こっており、感染してしまった人の多くは自分が感染していることがまったく分からない状態だ。こういう状況の下で、我々としては、社会全体についていかなる基準を設ければ、感染を抑え、社会的な感染の広がりを抑えることができるかということを考えることが必要となる。その効果を計るときの重要な一つの指標は、毎日報告される発生数あるいは毎日の新発生数のほかに、感染継続性が切断されたかどうかを見るというのが極めて重要な観点であり、感染が続いていかないこと、これを我々は追求するわけだ。
 現象面では、毎日の報告数、毎日の新しい病人の数は減っているが、その減少がどの程度までになっているかということは実際の感染者とはまた別の概念である。つまり、今日報告された数字は数日前に発生した感染である可能性が高く、時間的にズレがあるわけで、必ずしも感染者数の上昇または下降を表していない。重要なのは発病曲線を見ることだ。この曲線で表される基数によって流行の趨勢を見るということだ。これは世界各国も同じことだ。
 しかし、オミクロン株は特にずる賢く、ほとんどの人は症状がないから、発病曲線、発病時間を科学的に確定しにくい。そこで、PCR検査を行った時間に基づいて見ていくことになる。
 市中感染ルートが遮断されたか否か、見つけた新規感染者がすべて監視対象内か否か。現在の上海はまだこの二つを成し遂げる段階には至っていない。逆に言うと、すべての感染者が濃厚接触者あるいは監視対象者であることが実現したときに初めて、「動態ゼロ」目標を達成したことになる。
(注) 「静態管理」と「都市封鎖」とは異なる概念である。例えば、4月16日付けの西寧晩報によれば、静態管理には2つの特徴がある。一つは「三つの一律業務停止」、もう一つは「三つのしない」である。前者は、①指定重点企業及び民生保障の公共サービス以外のすべての経営単位が業務を停止すること、②条件を備えたスーパー、薬局、医療機関以外のすべての商店等が営業を停止すること、③公共交通、タクシー、予約配車すべての営業を停止すること。後者は、住民が集まらない、流動しない、外出しない。ただし、静態管理においては、病院に行くなどの必要があるときは許可を得て出かけることができる。
(問) 上海の人々にはPCR検査疲れが生まれているようだが。
(答) オミクロン株の流行パラメータに基づいて見るとき、上海の感染者数が毎日上昇するという指数的な状況は見て取れない。ということは、我々が取っている措置が効果を現しているということであり、指数的な上昇傾向は抑えたと言える。この点は極めて重要であり、状況は膠着状態にあるということであり、正に胸突き八丁にさしかかっている。
 我々はこの時間的なウィンドウをがっちり握り、多くの市民を含めて力を合わせることが必要で、力を合わせる上での核心はみんなが認識を一つにすることだ。「オミクロンは大型インフルエンザであり、大捕物などをする必要はない」などの間違った認識は捨てる必要がある。我々は「大捕物」をしているのではなく、科学が要求することをしているのだ。
 国によってはやらないものもあるが、それは理念が違うからであり、さらにいえば、基礎的な条件と能力に違いがあるからだ。我々には理念があり、能力があり、しかも条件と基礎もある。「動態ゼロ」戦略をやらないという選択はない。
 皆さんには、確信を持ち、党を信じ、政府を信じ、今取っている政策と措置を信じてほしい。今後は段階的に、予防地区、管理地区、封鎖地区に分類するから、皆さんも一定の範囲内で活動できるようになるだろう。さらに重要なことは、デマを信じず、デマを飛ばさず、力を合わせて決まった時間を頑張ることであり、そうすれば、速やかに曙光が見えてくるだろう。
 最後に蛇足を一つ。4月18日付けの科技日報は、国家衛生健康委員会から得た情報として、以下のデータを紹介しています。
○ 4月17日現在の中国のPCR検査能力は5165万管/日。
○ コロナ発生以来今日までのPCR検査数は延べ115億人。
○ 全国1.31万の医療衛生機構で約15万人の技術人員がPCR検査業務に従事。
○ 全国の医療衛生機構すべてが6時間以内に検査結果を出すことが可能。
○ 混合採取検査技術(5人分、10人分及び20人分を1回で検査する)による検査方法の進歩。
○ 西安、鄭州、天津では1日で1200万人のPCR検査を完成した実績。