中国の国家衛生保健委員会の最新の発表によると、12月17日0時-24時現在における中国国内のコロナによる発症者数は125人、その内訳は、国外から到着した者が36人、本土での発症確認者が89人であるといいます。本土に関する内訳を見ると、浙江省77人(紹興市69人、杭州市4人、寧波市4人)、陝西省7人(西安市)、広東省2人(東莞市)、内蒙古1人(フルンベイル市)、上海市1人、福建省1人(厦門市)となっています。このところ連日二桁が続いており、新年及び春節さらには冬季オリンピック・パラリンピックという大量の人の移動が見込まれる時期を控え、中国国内でも関心が高まっているようです。
 12月18日、国務院聯防聯控メカニズムは記者会見を開き、中国のコロナ感染状況、人流対策について説明するとともに、本年8月以後、中国政府がコロナ対策として取っている「オール・チェーン精準予防コントロール」(中国語:'全鰱条精準防控')による「動態ゼロ化」(中国語:'動態清零')政策の詳細を紹介しました。 コロナ感染状況に関しては、①雲南省ではすでに連続8日間、黒竜江省のハルビン及びチチハル両市も連続4日間新規患者の発生はない、②内蒙古・満州里は基本的に抑え込んで収拾段階に入っている、③浙江省寧波市及び杭州市、上海市などでの最近の新規患者はすべて集中隔離された者の中での発生であり、リスクは徐々にコントロールされている、④浙江省紹興市ではまだ感染の広がりが見られ、患者の発生はおおむね封鎖された地域内であるものの、なお感染広がりのリスクを残している、⑤陝西省西安市と広東省東莞市では感染がまだ広がっており、今しばらく拡散の可能性がある、と紹介しました。その上で、「全体としてみる時、近時のコロナ感染に関しては局地的散発と集団感染が併存しているというのが特徴」であり、感染源は「国外からの入国者及びその持ち込み品並びにコールド・チェーン食品が主」であると明らかにしました。
 新年及び春節さらには冬季オリンピック・パラリンピックに際しての人流問題に関しては、全国一律の対策は取るべきではなく、①重点地域及び重点的人物グループ(例えば空港、港湾、コールド・チェーン関係の従業員)に対する規定の防控対策を厳格に励行すること、②高リスク人物グループ(老齢者、慢性病患者、妊婦等)については不必要な外出・集まりは避けること、③中高リスクに指定されている地域、出入国地点、冬季オリンピック・パラリンピック開催地区に対するより高度の管理対策を維持すること、を指摘しました。この記者会見では、鉄道及び航空部門の責任者もそれぞれの対策について説明しましたが、人流を確保しながらコロナ対策にもこれまで以上にきめ細かい対応を取るというものであり、人流を制限する趣旨の発言はありませんでした。  以上の説明・発言の背景にあるのは、これまでの「動態ゼロ」を目指す中国のコロナ対策が成功しているという自信であり、要チェック者を科学的に絞り込むことで、新年・春節・冬季オリンピック・パラリンピックを楽しみにしている人々の満足感を奪わないようにするという考慮です。特に、防控を精準にすることに関しては、「平時に出入国地点のある地域の常住人口の登記及び流動人口の把握をしっかり行うことを基礎として封鎖管理案を制定し、コロナ感染者が現れた場合には24時間以内に疫学調査を完了して濃厚接触者を確保し、集中隔離、地域封鎖などを精準に行い、影響を受ける対象者をやみくもに拡大しない」、としています。
 私がもっとも注目した「オール・チェーン精準予防コントロール」(中国語:'全鰱条精準防控')なるもの(8月から実施しているとの説明ですが、私が目にしたのは今回が初)に関しては、国家衛生健康委員会疫情応対処置工作領導小組専門家グループの梁万年組長が以下のような解説をしています。専門外の私には理解が及ばない内容が多々ありますが、中国のコロナ対策が別次元の世界で行われていることは理解できますので紹介する次第です。

 「オール・チェーン精準予防コントロール」による「動態ゼロ化」段階における防控目標は、極力感染者の発生を抑えるとともに、いったん発生した後は、高い効率性で散発患者と集団感染に対処し、最長潜伏期間内に防控をやり遂げ、最小限の社会コストで最大の防控成果を挙げることである。"「オール・チェーン精準予防コントロール」による「動態ゼロ化」段階"が意味することは以下のことである。
「外防輸入、内防反弾」という防控総方針を遵守するという前提のもと、本土でコロナ感染者が出現した時は、効果的総合的な防控措置を採用し、しらみつぶしでコロナ感染チェーンを速やかに切断することで速やかにストップさせ、「ゼロ化」を達成することにより、最小限のコストで最大限の防控目標を獲得する。これは、中国の防控の経験の総括であり、中国における最善の選択である。
 「オール・チェーン精準予防コントロール」の含意に関しては、伝染病の3つの部分・段階から理解することができる。
 第一、感染源の防控。一つは、「外防輸入」に関して精準な遠隔防控(浅井:遠隔防控の意味は分かりません)と入境後のクローズループ管理(中国語:'閉環管理')を実行すること。同時に、物品を介した伝染も精準に防控する。二つ目は、モニタリングの強化。例えば、発熱外来におけるモニタリング精度を高める。三つ目は、PCR検査強化。例えば、高リスクな職場で働いている人物グループに対しては「応検尽検」を確実にやり抜く。四つ目は、ウィルスの変異に対する観測強化。
 第二、感染ルートの防控。一つは、ヒト、モノ、環境を対象とする防控の堅持。二つ目は、地区、クラス別の精準管理の採用。例えば、発生状況に応じて地域のリスク度を高、中、低に区分し、感染が発生した後はさらに封鎖、管控及び防藩の三種類に区別する。これらの分類に当たっては、段階的な精準化、ステップ・バイ・ステップによる管控単元の縮小を行う。我が国の2年間のコロナ防控においては、当初は省を単位としていたが、精準化が進むことによって市、県、郷鎮、コミュニティへと対象単位が絞り込まれるようになっており、今後はさらに単位を絞り込むことが理想である。管理対象を絞り込むことができればできるほど、管控措置はますます効率、効果を高めることができる。
 第三、感染し易い人物グループの防護。一つはワクチン接種の全力推進。二つ目は、関連科学研究の強力な推進。例えば、薬物研究、検測試剤及び検測方法のさらなる改善。三つ目は、衛生運動の展開。特に、基層における防控の能力・レベルをアップさせること。