12月1日、安倍晋三氏は台湾「国策研究院」」主催のフォーラムで演説し、日本は「台湾が武力侵略を受けることを許すことはできない」、「「台湾有事」は日本有事と同じこと」であり、「日米同盟にとっての有事とも言える」と発言したそうです。さらに安倍氏は、「この30年間で中国の軍事費は42倍となり、日本の4倍に達している」、「今後の30年間、中国の経済及び軍事費は毎年7%上昇すると見込まれ、これは世界にとってもっとも重要かつ危機に満ちた時代となる」とも述べ、先島諸島、与那国などの離島は台湾から100キロ前後離れているだけであり、台湾問題で「直面する挑戦」は、尖閣、与那国などの「日本領土」、領海が直面する「挑発」にほかならないとし、「我々はあらかじめ前線配備し、空、海、海中からの中国の様々な軍事挑発を防がなければならない」と指摘した上で、「「台湾有事」は日本有事と同じこと」であり、「日米同盟にとっての有事とも言える」という上記発言を行ったといいます(12月1日付の台湾「中央社」通信の報道内容を紹介した環球網報道)。
 安倍発言に対しては、同日の中国外交部定例記者会見で汪文斌報道官が、また、在日中国大使館の報道官も強く批判する発言を行いましたが、さらに同日夜、中国外交部の華春塋部長助理が垂秀夫大使と緊急に会見し、安倍前首相の発言について厳正な申し入れを行い、次のように述べました。

 華春塋は次のように述べた。日本前首相の安倍晋三が本日行った台湾問題に関する極端に誤った発言は、中国内政に対する乱暴な干渉であり、中国の主権に対する公然たる挑発であり、「台独」勢力を無法にも後押しするものであって、国際関係の基本準則及び中日4政治文献の原則に深刻に違反するものである。中国はこれに断固反対する。日本は歴史上、中国侵略戦争を発動し、中国人民に対して極悪非道の罪行を犯しており、台湾問題についてあれこれ発言するいかなる資格も権利もない。中国は、日本が深刻に歴史を反省し、歴史の教訓をくみ取ることを強く促す。いかなる形ででも中国の主権を損なってはならず、「台独」勢力に対していかなる間違ったシグナルを発してもならない。国家主権と領土保全を守る中国人民の確固たる決意、確固たる意志及び強大な能力を軽んじるべきではなく、間違った道をますます遠くまで歩んでいくべきではない。さもなければ必ず火遊びして自ら焼け死ぬことになるだろう。
 12月2日付(ウェブ掲載は1日20時31分)の環球時報は、「思い上がりの中国威嚇 日本を火遊びに引きこむ安倍」と題する社説を掲載し、「安倍のごときやからに中国と対抗する間違った道に連れ込まれない(ことができるかどうか)という点に、日本の集体的智慧とIQ(知能指数)が試されている」と結論する、以下の厳しい論調を展開しています。
 毒に満ちた発言は安倍の腹の中で長きにわたって鬱積していたのだろう。こうした発言は、日本の為政者が中国に面と向かって吠え立てるはずがないものであり、安倍も首相職から離れてはじめて心ゆくまで空威張りできるということであって、落ち目にある安倍の焦燥感と失望感を反映してもいる。しかし仮に日本がこのような台湾海峡政策を実行するとなったら、それは日本の自殺であり、それも経済的自殺には留まらない。
 日本の右派政治屋が分かる必要があるのは、中日の力関係はすでに逆転しており、中国を植民し、抑圧した夢はもはや終わり、あの時代は二度と戻りはしないということだ。安倍の家系は政治世襲家族であり、極めつけの右のDNAがあって、しかも彼の母方の祖父にまで遡るということだ。今日、「中国脅威論」で日本人民を騙し、日中対立を煽るということは、日本右派のお家芸である。
 日本民族には島国特有の危機感があり、安倍等の右派政治屋はこの種の危機感を猛り狂って弄び、中国が統一すれば日本の海上ルートの安全を脅かし、さらには釣魚島、琉球等を「武力で奪取する」と、日本の民衆に信じ込ませようと躍起になっているのだ。安倍が影響力を保つためには、台湾問題を弄ぶのがいちばん注目を引きやすい。彼は日本を改憲に持っていこうとしており、改憲を自らの「歴史的功績」とする野心がある。
 とは言え、安倍以下の右派政治屋が如何に切歯扼腕しようとも、中国がますます大国になるのを阻止し得ようはずはなく、中国の統一プロセスを妨げ得ようはずもない。中国の力は、彼らの周囲の環境を強力に制約し、彼らの妄想が日本の現実の政治路線になることを阻止するに足る強力なものだ。安倍は中国の国防予算が日本の4倍だと言っているが、彼がはっきり分かる必要があるのは、「台湾有事」に際して日本が軽率に干渉するならば、それは卵で石を打つに等しく、中国の壊滅的反撃に見舞われること必定ということだ。
 日本軍国主義はかつて日本人民に致命的な災難をもたらした。我々としては、その記憶が働いて、日本社会が右派に追随することを押しとどめさせる壁となることを願っている。中国は必ずや統一するのであり、日本の将来を台湾海峡の今日的現状と縛り付けることはできないということであり、日本に必要なことは、統一を遂げた中国と友好的に共存する準備をすることである。
 台湾の未来についてアメリカに望みを託すことはできず、日本もまた、アメリカが中国と対抗する日本を手助けすることに望みを託すことはできない。日米同盟は万能ではなく、日本に必要なことは、常理にしたがって中国と和諧的に共存することである。中日は、相互に尊重し、互恵互利の原則に基づいて交流することによってのみ、ウィンウィンを実現することができる。アメリカと組んで中国と対抗する道は日本にとって邪道であり、戦略的な袋小路でもある。
 歴史はいずれ、中日の民意の対立を作り出そうとする安倍の輩が日本の新罪人であることを証明するだろう。なぜならば、彼らは、日本を冒険主義的な戦略方向に連れ込み、一方で中国の仇敵となり、他方ではアメリカに付き従うことにより、中国台頭という大きな背景のもとで、中米の間で戦略的に行動するスペースを作り出すという歴史的チャンスを自ら失うことになるからだ。日本の役割はさらに矮小になり、さらに「共犯者」となっていき、その戦略的自主性は東アジアで最低の一つとなっている。
 安倍のごときやからに中国と対抗する間違った道に連れ込まれない(ことができるかどうか)という点に、日本の集体的智慧とIQ(知能指数)が試されている。
 11月30日、中華日本学会、中国社会科学院日本研究所と社会科学文献出版社は、『日本青書:日本研究報告(2021)』を発表しました。コロナ禍の影響を受けながらも中日民間交流が進展したことを指摘し、来年(2022年)の国交正常化50周年に向けて中日が協力して中日関係を安定的に発展させることの重要性を強調しています。
 また、ロシアのプーチン大統領も11月30日に、「ロシアは投資を呼びかける」フォーラムで発言した中で、歴史的にかつてない良好な露中関係を指摘しつつ、中国の軍事力増強に何の不安も感じていないと述べた上で、中国を脅威扱いし、AUKUSをはじめとする対中国軍事包囲網形勢に躍起になっているアメリカ以下の西側のアプローチを痛烈に批判しました。
 以上の二つの事実は、私たちが「アメリカの色眼鏡」を外し、中国を実事求是で見直す曇りない眼を持つことが喫緊の課題であることを教えてくれていると思います。