7月2日に清華大学で開催された第9回世界平和フォーラム(同大学主催、中国人民外交学会共催)で3日に基調講演を行った王毅外交部長は、「朝鮮半島核問題」に言及して、問題の主要な責任はアメリカにあると強調する、以下の注目すべき発言を行いました。ちなみに王毅はこの講演の中で、イラン核を含む主要な国際問題にも言及しています。イラン核問題では「アメリカが一方的にイラン核合意(JCPOA)を脱退してイランに最大限の圧力をかけてきたことがイラン核危機の根源である。問題の解決は問題を生んだものの責任である。アメリカは誤りを正すべきであり、まずは全面的かつきれいさっぱりとイラン及び第三国に対する不法かつ一方的な制裁を取り消し、イランの相応する行動を引き出し、交渉の突破実現を推進するべきである」と述べました。のっぴきならぬ中米全面対立を背景にして、王毅がこれまでの慎重なアプローチをかなぐり捨て、朝鮮核及びイラン核というもっとも敏感な国際問題についてアメリカに問題の責任があると明确に断じ、政策を根本的に改めることを要求する発言を行ったものと理解することができます。
 王毅の基調講演の全文はまだ中国外交部WSで紹介されていません。同WSに紹介された王毅基調講演のダイジェストによれば、その内容は中国共産党成立100周年の習近平演説の対外関係部分(アメリカの圧力には絶対に屈しない)の敷衍とも見られ、全文紹介を待って改めて取り上げるつもりです。しかし、朝鮮核問題に関する王毅発言は、①「根本原則」「「必須方策」「「正しいプロセス」という新しいワク組み設定、②朝鮮はすでに措置を取ったのでボールはアメリカ側にある、②国連安保理決議の遡及条項起動(による朝鮮経済民生支援)という明確な提起(浅井:2019年5月13日の中ロ外相会談後の共同記者会見の際、王毅は「朝鮮半島の完全な非核化実現、朝鮮の安全に関する関心についての解決、経済発展の獲得、半島の長期にわたる平和と安定の実現、ということが中ロの共同努力目標である」と発言したことはあります)、という3点で朝鮮の立場を明確に支持するものであり、従来のバランスを心がける立場から大きく踏み出したものです。とりあえず紹介する次第です。

 朝鮮半島核問題に関してもっとも重要なことは、平等な対話及び平和的解決の大方向を堅持することである。半島核問題は30年近くも延々と続き、曲折と反復を何度もくり返してきた。我々は一貫して、対話交渉と平和解決が根本原則、段階的かつ同じステップで進むことが必須方策、半島の非核化と和平メカニズムの同時推進が正しいプロセス、であると考えている。中国は朝米双方が最近流している情報を重視しており、半島の対話緩和の流れに有利となるすべての言行を支持する。アメリカは、数十年にわたって朝鮮に加え続けてきた軍事的な威嚇及び圧力を反省するべきであり、朝鮮の合理的な関心を正視して解決するべきである。朝鮮が非核化及び情勢緩和についてすでに取った措置を考慮し、アメリカは誠意を持ってこれに応えるべきである。国連安保理もまた、タイミングよく朝鮮に対する制裁決議の遡及条項を起動させ、朝鮮の経済民生状況の改善を助けるべきである。半島の問題は中国の玄関の問題であり、中国はこれまでどおり、半島に長期にわたる平和と安定が実現するまで建設的な役割を発揮していく。