5月28日の中国外交部定例記者会見で、共同通信の記者の質問(日本とEUの首脳会談及びその後に発表された共同声明で、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と表明したことに対するコメントを求めたもの)に対して、趙立堅報道官は堰を切ったように、日本政府に対する激しい批判を行いました。菅首相訪米と日米首脳会談及びその後の共同声明を受けて、バイデン政権の対中国批判キャンペーンに脇目も振らず同調する菅政権(とくに茂木外相)の暴走ぶりは目に余るものがあり、最近の中国側の対日論調は、菅政権との間での「日中関係改善の望みはゼロ」、同政権には「もはや匙を投げた」という判断がありありで、官民を問わず日増しに厳しさを増しています。趙立堅報道官の以下の発言はいわば、反中キャンペーンに盲進する菅政権に対する中国政府の公式見解と言えます。私がチェックした限り(見落としていたらごめんなさい)では、この総括的日本批判の趙立堅発言を紹介したメディアはないので、敢えて紹介する次第です。
 ちなみに、私は7月7日からまた「梨の木アカデミー」で日中関係をテーマに6回の講座を担当することになっています(日にちは、7月7日、21日、8月4日、夏休みを経て、9月1日、15日、29日の予定)。その第1回目では戦後の日中国交正常化以前の時期をふり返る予定です。具体的には、日中関係の「井戸堀人」と言われた先覚者の一人である政治家・宇都宮德馬と、中国研究の第一人者・竹内好に着目し、彼らの言説から日中国交正常化実現のための真の課題は何であったかを確認したいと思っています。私は二人の指摘に「我が意を得たり」の思いを確認しつつあるのですが、実際の日中国交正常化はこれらの課題の実現からは遠く離れた「次元」で現実のものとなってしまいました(第3回の予定テーマ)。日中国交正常化後においても、日本政府は二人が指摘した真の課題を直視し、解決する努力をすることはなく、それがために日中関係は常に波乱含みを強いられてきています(第4回及び第5回の予定テーマ)。
 菅政権の今回の暴走と「反中」において本質を同じくする自民党政権の日中関係を揺るがす行動は、1972年以前にもありました。岸政権のときと佐藤政権のときです。しかし、岸政権及び佐藤政権のときは日中共同声明以前でした。しかし、今回の菅政権の「反中」暴走は日中共同声明を「歯牙にもかけない」という点で、前二者とはまったく次元を異にしています。「歴史から学ぶ姿勢が欠落している」自民党の本質がふたたび顕現化したといってしまえばそれまでのことなのかもしれませんが、「歴史の民」であることを自認する中国からすると、もはや怒りを通り越して、負の歴史を執拗に繰り返す日本政治によってアジアの平和が突き崩される危険性(台湾海峡有事)をひしひしと感じていると思います。

 (質問で言及された)日欧の言論は双方の関係を正常に発展させる範疇を完全に逸脱しており、国際の平和と安定を損ない、地域国家の相互理解と信用を損ない、第三者の利益を損なうものであり、声明にいう「より安全、民主、安定の世界を建設する」という目標と明らかに背馳するものである。我々は日欧指導者の共同声明における関連する言論に強烈な不満と断固たる反対を表明する。中国は引き続き、国家の主権、安全及び発展の利益を確固として守り抜く。
 私はさらに以下のことを強調したい。すなわち、近頃、日本政府は中国を抑え込むという利己的な下心に駆られて、国際関係の基本原則をわきまえず、さまざまな場で続けさまに中国をあげつらい、「中国脅威」を騒ぎ立て、「徒党」を組んで地縁政治的な対決を宣伝し、嘘偽りの情報に基づいて中国を侮辱中傷し、中国内政に乱暴に干渉している。このような誤ったやり方は合作共嬴の時代的潮流とまったく逆行するものであり、中日関係及び地域の安定に対して不利な影響をもたらしている。
 私は再度次のことを強調する。香港及び新疆の問題は純然たる中国内政であり、いわゆる人権問題なるものはもともと存在せず、いかなる外国政府、機関及び個人も干渉する権利はない。台湾は中国の領土であり、中国はいかなる国家によるいかなる方式での台湾問題への介入も絶対に許さない。中国は必ず統一せねばならず、また、必ず統一する。台湾海峡情勢についていえば、両岸統一こそが地域及び世界の平和と安定を守るための最善の答である。日本は手を伸ばしすぎるべきではなく、ましてや、至る所で風を煽り、火をつけるようなことをすべきではないと忠告申し上げる。
 海洋にかかわる問題に関しては、この地域の関係国家の共同の努力のもとで、東海及び南海の情勢は総じて安定を維持している。中国は国家の領土主権と海洋権益を断固守るとともに、関係当事国と協商交渉を通じて違いを妥当に処理し、共同してこの地域の平和と安寧を守ることを願っている。日本が本当に海洋を重視しているというのであれば、福島核事故の核汚染水処理問題について、自ら尽くすべき国際的責任と義務を無視し、全人類の生命健康及びグローバルな海洋の衛生安全を顧みず、即刻海洋排出の決定を撤回しないというのはなぜなのか。日本の口癖である「自由開放」とはまさか「自由排放(排出)」ではあるまい(浅井:「開放」と「排放」との語呂合わせの皮肉)。
 私は以下のことを強調したい。対中関係においては、「マイクロフォン外交」は正しい方法ではなく、攻撃中傷は逆の結果を招くだけであり、徒党を組むことは助けにならず、脅迫対決に至ってはさらに出口はない。日本は早々に崖から転げ落ちないように手綱を引き締め、自らをよくよく管理することだ。