11月30日に中国の王毅外交部長は「北京-東京フォーラム」の開幕式でスピーチを行い、その中で、中日両国の国民感情に大きな違いが生まれていると指摘するとともに、これについて深く考える必要があると問題提起しました。これは、このフォーラムが行っている両国世論調査において、中国人の対日好感度が上昇傾向(尖閣問題を受けて2013年に5.2%だったのが、その後は2014年:11.3%、2015年:21.4%、2016年:21/7%、2017年:31.5%、2018年:42.2%、2019年:45.9%、2020年:45.2%)を続けているのに対して、日本人の対中好感度は逆に下降傾向を続け、本年には10%まで下がったという結果を踏まえたものです。中国側の発表には日本人に関する数字は含まれていませんが、内閣府が毎年行っている「外交に関する世論調査」によれば、日中関係が良好だと思う日本人は、2013年:6.8%、2014年:9.5%、2015年:12.4%、2016年:12.5%、2017年:14.9%、2018年:18.3%、2019年:19.4%ですので、下降傾向を続けているというフォーラムの世論調査結果とは異なるものの、低い水準であることは間違いありません。
 12月2日付けの環球時報は、黒竜江省社会科学院東北アジア研究所の笪志剛所長の署名文章「三つの立ち後れが民衆感情の違いをもたらしている」を掲載し、日本人の対中感情が悪化している3つの原因として、中日実力差の拡大の影響、日本メディアのゆがんだ報道姿勢、日本政府の世論工作上の責任を挙げました。おおむね首肯できる内容ですし、私たちが考える必要があることを率直に指摘していると思いますので、要旨を紹介します。

 「北京-東京フォーラム」が行った世論調査結果は、両国民の認識が水と油のごとく違っていることを示している。一衣帯水なのに、両国民の心理的距離はなにゆえにかくも離れてしまったのだろうか。中日国交正常化48年の発展を見る時、民間レベルの友好は中日関係が曲折を経ながら前進する上での安定装置であることを確認することができる。中国の対外関係の歴史の中で、中日のように人民大会堂で国交を慶祝する例はほかにどれぐらいあるだろうか。ところが近年は、民間友好の風向計はしばしば歴史認識の対立によって左右され、文化交流のバロメーターは現実の矛盾によって影響され、人々の感情という安定装置は民族主義によって置き換えられ、メディアに引っ張られて、民族的ポピュリズムが日本人の対中感情を左右するようになっている。
 1980年代の蜜月的な友好はなにゆえに今日のごとく凍り付いてしまったのか。「三つの立ち後れ」が解きほぐすことのできないもつれを生み出している。
 第一、中日間の実力比が時を追う毎に拡大していることに対して日本側の心理的な適応が立ち後れていること。20世紀に日本が対中援助を開始した時期は、中日間の発展の格差が際立っており、日本の優越感は顕著で、両国民衆の理解及び認識のレベルも比較的高く、好感度は歴史的ピークに達した。ところが、今日においては中日間の実力は逆転し、拡大傾向にあり、日本民衆の心理的な落差と自己喪失感は顕著である。日本を長年にわたって支配してきた「海洋・日本と陸地・中国、工業・日本と農業・中国」という受け止め方がガラガラと崩れ、中国の強大な発展に対する不安と恐れの心理が増大し、中国民衆の対日好感度は一直線で上昇してきたのに対して、日本民衆の対中好感度は逆に下降して、巨大なコントラストを呈することになった。日本民衆の対中感情を圧迫しているのは、経済トップの座を日本が中国に譲り渡さなければならないというような簡単なことではなく、島国である日本に根強い危機的心理と競争意識との間のバランスが崩れたことによってもたらされたものである。
 第二、民衆が正しい方向で物事を理解することを促進する上でのメディアの役割がますます立ち後れいていること。日本民衆が対中感情において低いレベルで徘徊するという雰囲気を作り出す上で、日本メディアの集中度と喧噪度は桁外れと言える。あら探しで名高い日本メディアは、国民に対して中国情報を伝えるに当たっては、あら探しに長じ、たゆみなく批判するスタイルに徹している。およそ中国に関しては、奇をてらうかさもなければ極端に走るかのどちらかであるし、問題にぶつかれば、あしざまに罵るかさもなければ悪者扱いにするかのどちらかである。中国はあたかも化粧を他人任せにする小娘であるかのごとくであり、その長所は見えっこないし、良さも分かりっこない。その行きつくところは、日本民衆に映る中国は厚化粧厚装束の仮面人間に変じてしまい、偽りのように見えるし、本当に偽物だと考えてしまうことになるのだ。
 第三、民衆感情をレベル・アップするという政府の役割がますます立ち後れていること。民衆の対中好感度の増進を推進する点において、日本政府がやることは、口先ばかりで中身が伴わないというのが常である。すなわち、時に応じて、意識的あるいは無意識に民意が偏る方向に引っ張り、あることないことで狭隘な民意に取り入って、それとなくネガティヴな民意を利用することによって政府の大国外交、周辺外交、地政学ゲームに利用する。中日関係も時に実利時に対立という流れの中で度々軌道から離れ、日本民衆の対中認識も知らず知らずのうちに誤った方向に引っ張られ、民衆の対中感情が悪化に向かうことも時の流れということになる。
 中日民衆間に存在する感情面における大きな違いについては、両国が共同して原因を探し出して解決する必要がある。当面の急務は、民間友好の旗を再び掲げ、民間の友好・交流によって中日相互理解再構築という基礎を大きく発展させることである。急を要することは、若者の間の理解と交流を推進することによって中日友好という未来を継承する若者の認識に接続させ、ポスト・コロナの両国の民衆感情がともに向上するように推進することである。喫緊の課題は、中日メディア間の意思疎通と協力を深めることにより、建設的な世論によって中日民衆の感情増進にふさわしい環境を作り出すことである。